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はじめ通信10−0908
堀船水害はなぜ再発したか(シリーズ7)
「水防計画」は本当に有効な見直しがされたのか

●5年前の水害の後、都が首都高への指導のなかで、現場護岸の復旧・補強など以外に、最も見直しに力を入れたとされているのが「水防計画」でした。
 今回の水害についての住民説明会でも、首都高の弁明は、もっぱら都の指導の下に見直しされた水防計画に基づいて着々と工事現場と河川の安全管理を行ってきたが、今回はそれをこえる規模の水害であり、想定外の自然災害であるとのくりかえしでした。

●首都高には河川管理の実績がないのに、なぜ水害の後も委託したのかという質問に対する都の答えもまた、首都高が都の指導で見直しされた水防計画にもとづき対策をとってきたことを全面委託の重要な理由としていました。

●5年前の水害では、都の設計と工事仕様に従わず、現場で余った鋼材の使いまわしでかさ上げ護岸を整備するという、誰が見てもあまりに”テキトー”としか言いようがない手抜き工事の部分から水害が発生しました。
 首都高が、都市水害の危険をまともに検討せず、水位がコンクリートを越えてかさ上げ護岸の高さまで上がってくるとは考えていなかった甘さが露呈しました。

●その同じ首都高に、水害の後も引きつづき河川管理を全面委託するからには、2度にわたる知事名の指導文書にも明記されたように、「今後再びこうした溢水事故を発生させないため」に、いっそう厳しく安全確保に努めるべきなのは当然です。
 また最大の保障の一つとされてきた「水防計画」が、ふさわしい内容を持っていたのか、また本当に有効に見直されていたのか検証する必要があります。

5年前までは工事現場と作業員の安全確保に限定

●そねはじめ前都議と日本共産党区議団は、5年前の水害直前の「平成17年度水防計画書」と、平成22年度、つまり今年の水害直前の水防計画書を資料として取り寄せ、比較検討しました。
 その結果、元もと「水防計画」は、護岸や河川の安全管理の目的が、工事中の作業員の安全を守ることに限定されているという大きな限界があることが分かりました。

●平成17年度版には、石神井川流域の降雨情報の収集、水位測定と警戒基準、災害警戒体制つくりや連絡網、作業員の避難と工事現場の浸水防止方法などが中心で、付け足し程度に「河川の増水に関する付近住民からの問い合わせには適切に対応」、「道路冠水が起きた場合は迅速に水防活動」に当たること書かれていますが、護岸からの溢水防止対策などはありません。
 最大の弱点は、水防計画の対象地域が現時点で工事を行っている区域に限定されていたことです。そのため、5年前の水害場所は当時すでに工事を終了しかさ上げ護岸を造った後だったために「水防計画」区域に入っていなかったことが問題になりました。

都の指導で「沿道住宅の浸水軽減」加えたが

●今年度版の水防計画書には5年前の計画内容に加えて、前回水害をふまえたいくつかの追加見直しが行われています。

@水防計画対象区域を、首都高が都から河川の管理委託を受けている全域に広げました。
 河川管理を委託された区域の中で、工事現場以外の水防計画がなかったこと自体おかしいので当然の措置といえます。

A工事現場の外の沿道住宅などに水害が及ぶのを軽減するため、土のう積みなどの緊急対策が盛り込まれました。水防区域が工事区域以外にも広がり、工事現場の浸水を防ぐだけでは済まないとの認識の反映だと思います。

B水位感知器を前回水害地点付近に設置し、水位の観測地点(護岸に大きなメモリをつけ肉眼で確認するもの)を下流側に増やしました。

C工事区域外に拡充した土のう積み地点の配置図が添付されました。(上の図の中心から四方にはなれた4箇所の赤い太線が土のう積みラインです)

●以上のように「水防計画」は5年前まで、年度ごとの工事現場とそこで働く作業員の安全対策が中心のきわめて限定されたものでしたが、都の指導を受けて、防災対象を河川の管理委託区域全体に広げるとともに、周辺住宅地域への浸水を軽減するとの記述も盛り込みました。

なぜ土のう積みラインを護岸から遠ざけたのか

 しかし8月27日の区議会防災委員会で福島区議が指摘したように、新たに加えた土のう積みなどの水防対策には致命的な欠陥がありました。
 それは上の図のように、浸水防止の土のう積みのラインが、護岸からはるかに後退した場所に設定されており、7月5日にはそのラインさえあっという間に濁流にのみこまれて土のうを積むいとまなどなかったという事実です。

●なぜ護岸のところで溢水を防ぐ対策が打てなかったのか。

◇第一は、新たに水防計画に加えられた以下の文章を読んでも明らかなように、水害が発生した時点から、土のう積みなど浸水対策を開始するよう設定されていることです。護岸から水が溢れ出してからでは浸水を止めるラインは大きくバックせざるをえません。

  <平成22年度水防計画から抜粋>

 (4)水害発生時
  @水害が発生した時、首都高速道路鰍ヘ、東京建設局内に水害対策本部を設置し、河川の水位、周辺の冠水状況、水害状況を収集し、関係機関に連絡するとともに、水害の軽減および復旧支援にあたる。

   (中略)

  C請負者の現場職員・水防要員(協力会社)は、現場詰所の晴海工事G、建設管理第二Gからの指示を受け、水害の軽減及び復旧作業にあたる。
 ・沿道住宅等の浸水を軽減するため、道路排水施設等の機能維持、土のう積み等の作業にあたる。
 ・沿道住宅等の水害復旧支援作業にあたる。

◇第二に、コンクリートや鋼材の護岸は土の堤防と違い、その上部に土のうを積む場所がないため、護岸のところで緊急の溢水防止は困難だということです。

●その結果、水が溢れ出してから工事現場内の格納庫から土のうを出し、それを工事現場外の道路までバックさせて積み上げるという現実味のない計画とならざるをえませんでした。
 おそらく水防計画見直しの際、住宅地域への浸水防止を掲げながらも、これまで通り土のう積みを中心としたやり方の範囲内でおさめようとしたことが要因でしょう。

このページ右上の写真は、7月5日溢水した現場のいまの状況ですが、護岸の後ろに1トン級の土のうをずらりと並べ堤防の上を広げてからそこに40センチの高さまで土のうを積んでシートで覆っています。この作業は水害が迫ってからでは間に合いません。
 後ろには、首都高のかさ上げで満足できない企業が自分の敷地にさらにかさ上げした土のうを積んでいます。首都高の水防計画の信頼が失われた象徴というべき姿ですが、土のうを積む費用を出せない一般住民の不安はどう解決されるのでしょうか。


住民の安全守れない計画なら「管理委託」は砂上の楼閣

●もし水防計画のなかに、本気で石神井川の水害を再発させないための対策を盛り込もうとするなら、どうしても、最も溢水の危険がある場所から護岸かさ上げや河川の中の構造物の削減、川底の堆積物の浚渫など、集中豪雨の濁流をあふれさせないための抜本的な改善工事を実施するような、抜本的な計画の見直しが必要ではないでしょうか。

●実態に合わない「水防計画」を根拠とした河川管理委託も砂上の楼閣というべきです。
 水害シリーズの2回目で紹介したように、共産党区議団は、石神井川下流域の安全を首都高に任せることは、もはや住民の立場からみて許されないと判断し、都と首都高への申入れで、河川管理の全面委託の返上を検討すべきだと厳しく指摘しました。この指摘の重要性を改めて痛感せざるを得ません。

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