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はじめ通信10−1010<堀船水害はなぜ再発したのか・・NO.13>
都議会質問記録(2)・・与党質問から見えるもの
「50ミリ」盾にした都の責任逃れに手を貸しながらも
住民の怒りを受け
「50ミリ」超える対策を要望


●前号で紹介した、かち議員の質問をはじめ、都議会第3回定例会では、堀船水害問題で本会議や委員会での質疑が行われ、都議会各党が東京の異常な都市型水害問題に、どういう姿勢で臨んでいるかが浮き彫りになりました。
 この記事では、与党各党の全ての質問を要約で紹介し、そこから見えてくる特徴を分析したいと思います。
 (分析の都合上、本会議から委員会まで、各党議員の質問と答弁にQ1.とかA2.という通し番号を付けました。質疑の要約は曽根の責任で行いましたが、可能な限り質問の趣旨を正確に紹介したつもりです。)

●なお民主党は、第1党として最大の質問時間と議員数を擁しながら、また北区の地元で複数の都議がいながら(ひとりは議長)、本会議・委員会を通じて、この問題でいっさい質問に立ちませんでした。今後も期待するのは無理だということでしょうか。
  以下、日程順に与党各党の質問を紹介します。

<9月28日代表質問>

●自民党 三宅議員

Q1.近年、一〇〇ミリ超の局地的集中豪雨が多いのを踏まえ、中小河川で現在の整備水準・時間五〇ミリを超える降雨対応など治水対策を発展させるべきだ。今後、中小河川整備をどう進めるか見解を伺う。

Q2.河川整備のほか、内水氾濫軽減の取り組みも重要。東京は張り巡らされた下水道管が雨水の排除や貯留という重要な役割を果たしてきた。五〇ミリ対応を進め、局所的豪雨に対し、クイックプランなどによる浸水被害の軽減は評価する。
 しかし最近のゲリラ豪雨による被害状況を考えると、さらなる浸水対策の強化が求められる。浸水被害軽減のため下水道事業をどう進めるのか所見を伺う。

〇松田下水道局長

 
クイックプランでは、四十二地区で雨水貯留施設整備など緊急的な対策を実施、浸水被害の軽減を図ってきた。
A1.現在、浸水の危険な二十地区を重点に、雨水排除能力の増強のため、下水道幹線やポンプ所など基幹施設の整備を進めている。
 さらに浸水被害の影響の大きい大規模地下街対策として、これまで整備している新宿駅や池袋駅周辺など四地区に加え、上野・新橋駅周辺など五地区対象に、時間七五ミリの雨に対応できる貯留施設など整備を進めていく。

A2.加えて石神井川流域など七つの河川流域のうち、地盤が低く浸水被害が発生しやすい地域について雨水を排除する能力を増強するため、貯留施設の整備など新たな施設計画を順次検討していく。
 今後も浸水被害を軽減するため、地元区や河川整備と連携を図りながら、下水道事業を着実かつ積極的に推進していく。

●公明党 藤井議員

 
この夏、都内を集中豪雨が襲い、河川洪水による浸水被害や、下水道からの内水はんらんなど甚大な被害が発生した。公明党は災害状況を確認、翌日都知事に、五○ミリを上回る局地的集中豪雨に対応できる河川整備の促進、都民を守る万全の体制を強く求めた。
Q3.都は五○ミリ対応で河川整備を進めているが、一○○ミリを超える集中豪雨に対応できていない。早期にこれらの降雨に対応できるよう対策を進めるべきだ。
 都心部で河川の整備水準を引き上げるには、一時的に河川の水をためる調節池の活用が有効であり、技術会議は六月二十八日の最終報告で、複数の調節池を連結する広域調節池の構想を提言した。
 環七の地下に石神井川の調節池を新たに整備し、南側にある神田川・環七調節池と北側に建設中の白子川の地下調節池を連結すれば、各河川で対応力が大幅に向上する。今後の河川整備を進める上で広域調節池は効果的な方策と考えるが、都の見解を求める。

Q4.浸水対策では、下水道から水があふれる内水はんらん対策も急がなければならない。
 地下街への浸水は地下鉄などの麻痺や人命にかかわる深刻な事態を招く。大規模地下街など浸水危険性の高い地区は優先的に集中豪雨対策を実施すべきだが都の見解を求める。

〇村尾建設局長
 
A3.水害に強い都市へ、中小河川整備を効果的に進め、早期に安全性を向上させていく。
 豪雨対策基本方針や技術会議の報告を踏え、近年の局地的かつ短時間の集中豪雨も視野に入れ、今後の河川整備のあり方の検討を行っており、過去の水害分析や、これまでの河川整備の効果検証等を進めている。
 今後、学識経験者などの意見も聞きながら、河川のさらなる安全性の向上を目指し、必要となる河川施設について検討を深めていく。

 広域調節池について、中小河川の整備では、広範囲に一様に降る台風性の降雨や局地的集中豪雨など、さまざまな降雨に対応することが重要。
 六月の技術会議で提言された広域調節池は、複数の地下調節池をトンネルで連結し、流域を越えて相互に活用できる施設。近年増加の局地的・短時間の集中豪雨の際、特に有効な施設と考えており、今後の河川整備の計画策定に向け、さらに検討を深めていく。

〇松田下水道局長

A4.地下街など浸水危険性が高い地区の下水道施設整備について、新宿や池袋駅周辺など四地区で雨水貯留施設などを整備し、浸水被害の軽減に努めてきた。
 今後、新たに上野や新橋駅周辺など五地区を加え、七五ミリの雨に対応できる貯留施設などの整備を進めていく。
 さらに浸水予想区域図などに基づき、浸水危険性の高い二十地区で、下水道幹線やポンプ所など基幹施設を整備し、雨水の排除能力の増強に努めていく。
 施設整備では一部完成の施設に雨水を暫定的に取り込むなど整備効果の早期発現を図る。

<9月29日一般質問>

●高木議員(自民党)

 
七月五日局地的な集中豪雨による石神井川洪水で、堀船で約四百六十世帯に及ぶ浸水被害。十七年九月にも首都高の工事事故で水害が発生し、五年で二度もの大規模水害。
 北区、都、首都高による大型土のうによるかさ上げが直ちに実行されたことは高く評価する。
Q5.一方、七月三十日地元説明会で、参加者の中から首都高や都の責任との発言も相次いだ。どんな河川の整備がされ、下流部の工事区間でどう安全策がとられているのか伺う。

 石神井川は、王子駅より上流の地形から左岸右岸の高さが違ったり、川より低地に居住者がいるなど水害時の対応が危惧される現状にある。
Q6.地域特性に応じ、調節池設置や下水道整備も含め、川への流出抑制対策など至急検討が必要。
 下流の負担を早く軽減させるには、まず白子川地下調節池活用が有効な手段と考えるが、石神井川から取水の有効性について都の見解を伺う。

 さらに石神井川下流域の下水道事業について伺う。
 下水道局は北区西ヶ原地区や岸町地区などで雨水貯留施設整備、ポンプ所や幹線管渠など基幹施設整備の結果、浸水被害を大幅に軽減させ、地域住民から高く評価されている。
Q7.しかし石神井川洪水では、堀船で多くの方の被災に加え、滝野川など他地域でも内水はんらんが多発した。都市型水害の解消は急務で、積極的対応を講じるべき。
 今回の浸水被害を踏まえ、石神井川下流域の下水道事業の浸水対策について伺う。

〇村尾建設局長

石神井川の整備について、水害から都民守るため、中小河川整備を効果的に進め、早期の安全性向上が重要。
 現在、石神井川では、五○ミリ降雨対応のため、下流から順次、河川の拡幅を実施し、上流部の未整備区間に設置した調節池の効果とあわせて、計画延長に対する治水安全度は八六%となっている。

A5.下流部の工事は、溝田橋付近で、首都高速王子線整備に伴う石神井川つけかえ工事や、都の高潮対策工事を実施しているが、この区間でも五○ミリ降雨対策は完了している。
 工事実施に当って、それぞれ施行者が水理実験やシミュレーションを行い、施工段階ごとに必要な流下能力を保ち、工事期間中においても安全性を確保している。

A6.白子川地下調節池は、白子川五○ミリ対策として設置する施設で平成二十七年度暫定取水をめざし現在整備中。
 同じトンネル構造の環七地下河川では、当初計画した神田川と善福寺川に加え、妙正寺川からも取水することで、下流の水害を軽減できた。
 この事例を踏まえれば、白子川地下調節池に石神井川からも取水することで下流部の洪水被害軽減が期待でき、その具体的な効果の検証などを進めていく。

○松田下水道局長

A7.石神井川下流域の浸水対策については、被害状況に応じ下水道管の一部を先行的に整備し雨水貯留など、浸水被害軽減に努めてきた。
 今後は、浸水対策促進地区に位置づけている北区堀船や東十条で下水道幹線やポンプ所など基幹的施設整備を進めいく。
 具体的には、王子西一号幹線は、平成二十五年度完成に向け、本年三月に工事着手。王子第二ポンプ所は、過日住民の理解を得るため地元説明会を実施し、早期の完成に向けて着実に取り組む。
 他の地域については、雨水排除能力を増強するため、地元区と密接に連携し、道路上の雨水ます増設を図り、貯留施設の整備など、有効な対策を鋭意検討していく。


<9・30環境建設委員会での与党質疑>

●自民党・高橋委員の質疑

Q8.7月5日、局地的集中豪雨で石神井川が溢水。すぐ上流で17年9月にも首都高の工事事故が原因で被害が発生。理由は別にしても5年のうちに2度の被害を重く受け止めるべき。
 まず今回の溢水の原因は。

A8.溢水した近くで首都高による石神井川付け替えと都の高潮対策工事中だが、50ミリの降雨対策は完了している。7月5日は石神井川流域で中下流部で80ミリの猛烈な雨。特に板橋区で114ミリの記録的豪雨。
 このことから今回の溢水は整備水準を大きく超える集中豪雨によるものと考えている。

Q9.今回は流域の多くで猛烈な雨が降り、50ミリの2倍以上の雨だったことは良く分かった。
 浸水被害を受けて、都、北区、首都高の三者は7月30日説明会を開き、約300名の住民に説明したが、住民から首都高や都が施工している工事が原因との意見もあったと聞く。
 今回の溢水で、都と首都高の工事の影響を伺う。

A9.都と首都高は工事に先立ち、模型の水理実験やシミュレーションで50ミリ降雨に対する安全性を確認している。
 この結果に基づき現場でも施工の各段階で安全性をしっかり確保しながら工事を進めている。
 都としては、工事による溢水への影響はなかったと考えている。

Q10.工事に当たって詳細な検討しながら実施しているなど都と首都高の工事が原因でないことは理解できた。
 しかし仄聞では、溢水箇所の高さはAP5・6mで、隣接の堤防5・8mに比べ20センチ低かったと聞く。溢水箇所の堤防の高さとの関係について伺う。

A10.大変複雑なので丁寧に説明する。
 第一に、溢水箇所は、高潮被害が発生するおそれのある区間で必要な高さは5・8m。
 第二に、溢水した溝田橋付近で、高潮被害の影響を考えず、50ミリ降雨対策を考えた場合の計画高さは5・5mであり、既設の堤防5・6mで安全性は確保されている。
 第三に、溢水箇所は工事中だが、水理実験などで工事期間中でも5・6mの高さで50ミリ降雨を安全に流下できると検証している。
 以上から、50ミリ降雨に対しては、5・8mではなく、工事期間中でも5・6mの高さで施工上安全と判断して、首都高が工事を実施している。

Q11.既設の堤防で50ミリ降雨を安全に流下できることも理解できた。今後も工事を円滑・着実に行うようお願いする。
 とはいっても、5年に2度同じ地域で浸水被害の事実は重く受け止める必要がある。早く住民が安心できる対策を講じるべきだが、河川事業は長期間を要することも理解する。
 そこで、当面の緊急対策が重要。大型土のうのかさ上げは高く評価できるが、安心できる構造に造りかえる必要があるのでは。

A11.大型土のうのかさ上げは、住民の不安を軽減し、水防の観点から3者協力で緊急実施した。
 これは仮設構造なので、住民にさらに安心感を高めてもらうため、H型鋼などで造りかえる。来月中旬から順次工事に着手予定。

Q12.住民の気持ち考え、着実な事業推進を。
 今回の集中豪雨に限らず近年100ミリを超える豪雨が頻発。地元練馬でも夏場の猛暑と豪雨の増加を実感する。
 練馬の石神井川、白子川は30ミリから50ミリへの護岸拡幅を進めており、さらに危険状態。護岸拡幅に加え、調節池設置で早期に治水安全度を向上させることが重要。私は17年9月の112ミリ豪雨の際、要望してきた。昨年の台風や今年7月5日にも洪水の一部を貯留するなど浸水対策に寄与した。
 建設中の白子川地下調節池の現状と見通しは。

A12.白子川地下調節池は白子川水害の早期軽減のため、目白通り地下に内径10m延長3・2キロ、貯留量21・2万立米のトンネル式で整備中。白子川沿い発進立坑は完成し、到達立坑は用地取得完了。トンネルは年内に着工予定。H27年暫定取水めざし整備に取組む。

Q13.着実な執行を。
 最近の異常気象は地球温暖化が原因といわれ、これによる災害対策は喫緊の課題。現在の50ミリ対応は3年に1回の確率というが、首都の安全度として不十分で心もとない水準。私は早期に次期整備水準に移行すべきと再三主張してきた。
 さらに白子川調節池と環7調節池を結ぶことで、多発する局地豪雨に大変有効と意見表明してきた。今年6月、都の技術会議で既設の調節池を連結した広域調節池が提言され、75ミリ対応をめざすべき都の最終報告があったのは時宜を得た報告で、評価する。
 白子川調節池への石神井川からの取水と、環状7号線地下調節池への連結について伺う。

A13.白子川調節池は白子川の50ミリ対策として整備するもの。環7調節池は当初計画した神田川、善福寺川に加え、妙正寺川からも取水。
 白子川調節池も、石神井川からの取水で下流の水害軽減を期待できるので効果を検証する。
 技術会議提言の広域調節池は、複数の調節池を連結し、流域を越えて相互活用できる施設。近年増加の局地的短時間の豪雨の際、特に有効な施設。
 環7調節池との連携は、昨年度から調査中の今後の河川整備のあり方の中で検討する。

○より高い整備水準に移行する取り組みが必要。狩野川台風級の75ミリを視野にいれ検討し実行に移すことで、100ミリ超えるような教口豪雨に対しても、都民が安心して暮せる東京の実現を図って欲しい。

●公明党・吉倉委員の質疑

Q14.確認のため、石神井川流域の降雨、北区内の被害状況と被害総額を説明願いたい。

A14.石神井川流域で50ミリを越え、中華流の広い範囲で80ミリ以上、板橋区で114ミリの記録的降雨。
 被害状況は、9・29総務省調べで北区の床上浸水173棟、床下浸水267棟、業務系建物が97棟。被害総額は、今後、区が調査したものを都が国交省に提出し、被害総額を確定して公表する。

Q15.被害を防いだり軽減するためにはあらかじめ災害に対する体制を整備しておくこと、関係機関の連携が非常に重要。
 建設局では常時水防に備えた体制を敷いていると聞くが、実際の水害に対応してどういう体制か。7月5日はどのような対応をしたのかお聞きする。

A15.365日盆も正月もなく24時間職員常駐で水防活動を行っている。(中略)
 7月5日当日は、水防本部設置し、258名職員が水防に従事。石神井川は溢水後直ちに現地に職員派遣。緊急連絡受け六建、第三・第四建設事務所の排水ポンプ車、消防団・レスキュー隊とともに被災者支援にあたった。

Q16.大変丁寧な説明ありがとう。溢水箇所は首都高ランプ建設で橋脚の一部が護岸にかかるため河川工事の一部を行っていると聞く。
 河川工事で万全の体制をとるのは言うまでもないが、首都高は当日どう対応したのか。

A16.首都高は自らの水防計画に基づき、日常に現場の安全点検や巡回の実施はもちろん。大雨注意報後、直ちに水防体制に入り、河川水位監視、現場把握、都・区との情報交換、水害情報収集。
 溢水後、直ちに現場状況を都と区、警視庁に通報。水害本部設置し、本社15名、現場に68名確保し、情報連絡、高圧洗浄・排水ポンプ車など5台で道路排水機能確保・清掃、被災地域の復旧活動支援、堤防破損の有無や現場の安全確認を行なったと報告されている。

Q17.答弁いただき、都あるいは首都高が被害軽減に十分な対応とったことが良く分かった。
 防災には自助、共助、公助が必要といわれる。水防活動に加え、住民の自助・共助は大変重要だが、80ミリ超える猛烈な雨のように近年の降雨を見ると、水害の基本対策には河川整備を基本の控除の強化が必要。
 公明は発災直後から現場に駆けつけ救援活動、翌日知事に50ミリを上回る豪雨に対応できる効率的河川整備など対策強化を申し入れた。
 本会議でも広域調節池は効果的と提言した。局長から有効な施設としてさらに検討すると答弁いただいた。
 最後に、今後の中小河川整備をどう進めるか聞く。

A17.都として、整備中の古川調節池や入間川分水路に加え、新たに妙正寺川の鷺宮調節池、善福寺川調節池の基本設計に着手。50ミリ対応のスピードアップを図って行く。
 局地的豪雨の増加を踏まえ、河川整備のあり方の検討を進め、調節池などの増設、高架の検討をしている。
 広域調節池については、近年多発の局地的かつ短時間豪雨に対し、有効な施設としてさらに検討を深める。

○ありがとうございます。広域調節池は、複数を連結し、流域越えて相互に活用できる施設で、局地豪雨に最も有効と考え、実現を強く期待する。


<与党質問から見えてくるもの>

●自民党は、本会議代表・一般質問で水害問題をとり上げ、委員会でも細かく質問し、質問者も北区の高木議員はじめ、練馬、世田谷など水害被害の多発地域の議員が行ないました。

●自民党の最大の特徴は、今回の水害が首都高や都の責任ではないという”責任逃れ”に見事に手を貸していることです。

*本会議の北区・高木議員の質問(Q5)では、住民説明会参加者からの首都高や都の責任を追及する発言にふれながら、自らの見解を述べることなく、都に「工事の安全確保対策」を答えさせることで、言い訳の場を与えています。

*さらに環境建設委員会では、高橋委員の質疑(Q8〜Q11)で、もう一度、水害の原因や住民説明会で出された疑問を質問し、都が「水害の原因は整備水準を越える集中豪雨によるもの」と答え、「首都高や都は50ミリまでの雨量には安全を確保していた」と答弁すると、「理解できました」と納得してやっています。

*さらに溢水した護岸が下流の護岸より20センチ低かったことにも、都が「大変複雑なので丁寧に説明する(A.10)」という、弁明の場を与えてやっています。
 あくまで50ミリ対策の範囲内では安全が確保されており、それ以上の雨量には責任なしという都や首都高の弁明を、最大限スムーズに表現できるよう、答弁する側の立場に配慮した質問の組み立てになっているという印象です。

●公明党の質問も、自民党と同様、都の責任回避を助ける役割を果たしていると思います。

*例えば、環境建設委員会での公明党委員の質疑では、自民党と異なり、水害発生に備えた都の水防体制や、首都高もふくめた水害時の緊急対応について質問(Q15,Q16)し、「都あるいは首都高が被害軽減に十分な対応とったことが良く分かった」などと、手ばなしで評価しています。

*しかし、わが党のかち議員の質疑や、私の水害シリーズNO.7でも解明したように、水防計画は、実際には工事現場の作業員や機材を守ることが主目的であり、その証拠に作業員の避難や現場の警戒は水害前から開始しますが、土のうを積むなど、住宅地などの浸水防止作業は、水害が発生してからしかスタートせず、実際には7月5日に試されたとおり、護岸から水か溢れてからの土のう積みは非現実的であることが浮き彫りになったばかりです。

*ですから都は、公明党の質問に対し、答弁(A16.)では、土のう積みの計画があったのに実際はできなかったことなど、おくびにも出しませんでした。
 それを知らずに「十分な対応」と評価してしまうことが、被災住民にいかに大きな失望を与えるかを知るべきだと思います。

●ただし与党議員といえども、こういう質問で十分満足しているわけにいかないことは明らかです。

*後の、かち議員の質疑の際、「50ミリ対応」で逃げ回る都の答弁に対し、かち議員が「住民は五年間に二度も浸水被害に遭って本当に大変な思いなんです。ラーメン屋も、機械屋も、もう展望がないと言っています。目の前の川からの溢水を食いとめてほしい。これが切実な問題」なんだと訴えたとき、思わず自民党席から「そうだよ」という声が上がったということです。

*公明党の質問でも、注目すべきは、本会議の代表質問で「早期にこれらの(100ミリ超える)降雨に対応できるよう対策を進めるべきだ」(Q3.)と述べていることです。事実上、整備基準を100ミリ対策に引き上げることを要求したことは注目に値いします。
 ところが残念ながら、局長答弁では100ミリ対策についての明言はなく、公明党も、再度100ミリ対策を求める質問はしていません。

●その代わり、自民党も公明党も、都が「技術会議」で検討してきた、一つの河川の水害防止の地下調節池を、他の河川の洪水にも使うことや、地下調節池を複数連結して広域に活用するアイデアの具体化を要望しています。これには都もかなり前向きな答弁をしています。(Q3,Q6、Q13,Q17)

*このアイデアは、今年6月の都の技術会議で提言されていましたが、7月の水害直後に、わが党のかち議員が都の担当者から説明を受けた時には、「まだ検討段階で、技術的困難もあり、具体化は当分先になる」という話だったそうです。
 それが急速に現実課題に浮上したということは、与党と野党で説明に差をつけたりした(もちろん都の説明で、それはあってはなりません)のでなければ、堀船の2度目の水害への住民の怒り・世論・運動を受けて、石神井川について、50ミリ対応を理由に責任回避を続けるのはもはや無理だとの認識が、与党や都の幹部に急速に広がったのではないかと、私は見ています。

●かたや水害が発生した堀船地域での50ミリを超える対策に、都も首都高もなかなか踏み出そうとしません。

*いちばん分かりやすいのが、現在溢水現場に6メートルの高さで積んでいる大型土のうを、10月中旬には同じ高さでH型鋼による護岸に強化することは約束しても、その後、そのすぐ内側に造成する、最終の高さとなる石神井川護岸整備計画を5・8メートルから6メートルに変更するとは言わないという都の態度です。
 別の都議会議員への説明の場では、水害現場を6メートルに補強したことを、都の幹部が「地元住民の怒りを鎮めるのが目的」と説明したということです。6メートルの高さは、あくまで臨時の”住民対策”であって、都の最終計画とは別物だという都のホンネが鮮明に現われていると思います。

*せっかく水害に備え、鋼材で強固にかさ上げした6メートルの護岸の内側に、それより低い最終護岸を造り、高いほうを「これは暫定だから」と言って撤去してしまうことなど、誰が考えてもありえません。7月5日夜、護岸を越えるあの濁流を一瞬でも見た人なら、「そんなバカな!6メートルでも心配なのに」と叫ぶでしょう。

*その当たり前の計画変更が、今決断できないのは、護岸設計を20センチ上げる費用(はっきり言って大したことはありません)の問題ではなく、東京都のメンツと、護岸の高さが不十分だったと事実上認めることにつながりかねないという判断からでしょう。
 住民の被害とともにJTなど数十億円といわれる企業被害に対する責任と補償問題に、少しでもつながることを避けたいのかもしれません。
 だからこそ、この問題はわが党のかち議員以外、誰も追及しませんでした。

*しかし、私がこの水害シリーズNO.11をはじめ、繰り返し述べたように、石神井川では5年ないし6年に1度は流域のどこかで100ミリ以上の大豪雨が起きており、次第にその規模が拡大して来ているのは間違いない事実です。
 上流・中流域でその洪水の一部を地下に貯留するのは、もちろん大切な対策ですが、そこに莫大な費用をかけている間に、既に2回も水害の辛酸をなめた下流の北区堀船で、つまらぬ意地を張らずに、可能な護岸の計画変更ぐらい決断できないで、どうして都市水害と正面からたたかえるのかと言いたいのです。

●このほかにも、注目すべき質問や答弁がありました。

<1>公明党議員の質問(Q14)で、今回の水害の被害総額を聞いていますが、その答弁(A14)を見ると、「被害総額は、今後、区が調査したものを都が国交省に提出し、被害総額を確定して公表する」と答えており、今後のこととして、まず北区が区内の被害の総額を調べることが表明されています。
 いまのところ、北区が水害被害の金額的規模について、いささかでも調べたようすはありませんが、区議会では、水害対策協議会からの陳情で、今後の被害補償への展望をにらみながら、被害額について調べるよう求める項目が、全会一致で採択もされています。
 この答弁は、都としても、北区の被害総額調査を当然のこととして、都に提出させ、国に上げるため待っていることを示すものとして、重要な意義を持つことになります。(もしかすると質問者も答弁者も、被害総額の調査が、いま北区で大変なタブーになっているのを知らなかったのかもしれません)

<2>自民党議員が「溢水護岸が隣接護岸より20センチ低かった」問題を質問した(Q10)のに対して、都側は、「大変複雑なので丁寧に説明する」と前置きして、第一に、溢水箇所が「高潮被害の危険性」に対しては5・8mが必要と認めながら、「第二に、高潮被害の影響を考えず、50ミリ降雨対策を考えた場合」は5・5mで良く、7月5日は集中豪雨の被害だから「既設の5・6mで安全性は確保されている」という説明を行い、20センチ低かった責任は問われないという論理を展開しています。(A10)
 つまり高潮の被害と豪雨の被害を完全に別けて考えようとしていますが、現実には複合して被害が起きる場合が多いはずです。
 
高潮被害のモデルとされる1958年の狩野川台風のときも、都の水害データによると、東京湾の水位が平均満潮水位2・11mを80センチ上回る2・9mの高潮が発生したと同時に、石神井川流域などで最大1時間76ミリの豪雨も起きており、この複合で大水害になっているのです。
 7月5日夜の溢水の場合も、単純に豪雨による被害だけとは言い切れません。水害は東京湾の満潮直前に起きており、干潮時に比べ70センチ近く湾の水位が上がっていた可能性があり、隅田川をさかのぼって石神井川出口付近で高潮の水位が起きていたとも考えられるからです。
 都が第三に挙げている水理模型実験での「安全証明」も、水害シリーズ(9)で指摘したように、模型の出口付近の水位を決める際、東京湾の平均満潮水位から計画された本来の水位・3・96mではなく、隅田川の3観測所の50ミリ降雨の年の水位の実績から80センチ低い3・11mに設定しましたから、本来想定すべき、東京湾満潮時と豪雨が重なった場合の想定になっていないのです。
 もし7月5日に高潮被害も複合して起きていたのが事実なら、都は基準の5・8mにかさ上げしていなかった責任をどう捉えるのでしょうか。

<3>自民党議員の質問(Q12)への答弁(A12)で、白子川地下調節池の事業が昨年度から再開され、白子川沿いの発進立て坑が完成し、到達立て坑も用地確保ができたと答えています。
 調べてみると、白子川地下調節池の発進立て坑は、練馬区大泉の関越自動車道の入り口付近にあり、そこから目白通りの地下を通って、到達立て坑は、石神井川と目白通りの交差する、富士見台付近になっています。
 だとすれば既に用地を確保したという石神井川の立て坑を早期に完成させ、ここからもシールド掘削することにより、平成27年を待たずとも、石神井川からの取水が可能なはずで、工事の進捗を図る工夫ができそうだということもわかりました。
 しかも、西北西の白子川方向だけでなく、東南方向に目白通り地下を進めば、約3キロで練馬区役所付近に到達し、環7地下河川北端から2キロ程度まで接近させることも可能なのです。
 石神井川に視点を当てた、都の技術陣の大胆な提言を、石神井下流に住む一人としてぜひとも期待したいところです。

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