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 体験的マンションレポート(12)2・1・30

高層住宅の危険性をなぜ無視するのか

●いま23区内では、
マンションを建てる時に14階程度は当たり前で、北区でも赤羽西口など、いくつか20階を越える集合住宅も造られています。都営でも浮間一丁目に都営と都民、シルバーピア兼用の二〇階の公共住宅が建てられました。

●超高層住宅は、一般的には眺望の良さから人気が高いといわれますが、少なくとも桐ヵ丘団地の再生計画では、住民アンケートで九割の人が高層より、低層の階に住みたいと希望し、最初に都が設計した30階建ては二次計画で22階に、さらに19階へと変更されました。

●このことに一番影響したと思うのは、桐が丘の住民がほとんど中層のアパートに住み慣れていたことと高齢化が進んでいたことですが、一番衝撃だったのは、ちょうど桐が丘の再生計画が出された直後の89年8月におきた江東区南砂での超高層マンション24階での火災ではないかと思います。

●世帯主が仕事で不在の日中、たしかテレビの発火でカーテンなどに引火し、出火もとの住宅だけ全焼しました。部屋には障害でねたきりの女性が一人で取り残されましたが、無事救出されました。

●超高層住宅では、ガスや灯油など火の使用が禁止され、防災センターなども義務づけられています。木造に比べて遥かに火災が起きにくくされており、その後も20階以上の高さでの火災は都内で一件もありません。そのせいか、その後も高層住宅の危険性について、突っ込んだ検討はされてきませんでした。

 私がいまだに不可解なのは、このマンション火災で寝たきりの女性が救出されたのはマンションの防災機能のお蔭ではなく、まったくの偶然でしかなかったことがほとんど問題にされていないということです。

●当時区議だった私は、事故直後に現地調査にいった都議の飯田幸平さんから「実は24階から女性を救出したのは、マンションの女性の清掃作業員で、偶然いちはやくかけつけた作業員が、エレベーターが使えないため女性を背負って24階から階段で歩いて降りた」という事実を聞いて、これは大変なニュースになるだろうし、今後の高層住宅の在り方に重大な影響も与えるだろうと思いました。

●ところが私の知る限り、この事実はNHKの特集番組でわずかに触れた程度で、大きく取り上げられませんでした。その後も阪神大震災でポートアイランドの超高層住宅で、直接の被害はなかったものの停電でエレベーターが止まったままで数週間も暮らさなければならなかった時、高齢者や障害者はどうだったのか、余り注目されていません。

●最近、赤羽台団地建て替えで36階住宅が提案されたので、改めて12年前のマンション火災後の高層火災対策を調べました。(1)15階以上の住宅は防災センターで集中管理する。(2)センター要員は、認定証と技術講習を義務づける。(3)五年ごとに実務講習を受ける(4)防火扉を火災の風圧で動かぬ様にする。以上が改善内容でした。これでは、自力で階段を降りられない居住者が多数になった時の対策としては全く不十分です。

●私は、住宅というのは高齢者や障害者も安全に暮らせる必要があるし、とくに高齢化した公共住宅の建て替えは、火災や地震でエレベーターが止まっても全員を迅速に救出できる方法が確立されないうちに超高層を採用することは大きな問題だと思います。例えば建物の外側にレールをつけて救出できる自走式のゴンドラなど、技術的には十分可能だと思います。

●ニューヨークのビルへのテロをみて、日本のビルも、飛行機が突っ込んだときにあんな風に崩れるかどうかという分析がある科学雑誌に載っていましたが、本当の教訓にすべきは、あれがビジネスビルではなく住宅だったら、大半の人が1時間程度で避難できなかっただろうという事ではないでしょうか。

 マンションの高層階に住もうと考えている方は、元気な今の自分ではなく、自分が高齢になった時のことを考えて選ぶ必要があるように思います。


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