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財政委員会速記録

平成二十六年三月十七日(月曜日)

2014年度予算質疑「都施設の維持更新増大のもとで新規巨大公共事業の抑制を」



〇曽根委員 私からも、今後の都の財政運営について幾つかお聞きしたいんですが、都の課題として、今後数年間、ハード、ソフト、あらゆる面で、かなり大きな仕事、それも新しい分野の仕事に取り組まなければならないと思います。

 特に、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを都民の理解と協力のもとに成功させるためには、競技施設を初めとする適切な施設整備を行うとともに、都民生活全体に喜ばれるような財産を残していく、まちづくりの財産を残していくという点でも、暮らしやすいバリアフリーのまちづくりや都民スポーツ環境づくりなど、こういうことをも含めた準備を進める必要があると思うんです。

 また、本会議や予算特別委員会でも私たちも強調しましたが、保育や介護を初めとした都民福祉の分野でも、東京は何よりも施設整備がおくれているという点を取り戻すためのかなりの費用、予算の確保も必要になります。

 さらに、今お話もあったように、防災のまちづくりの課題、また、都の施設の防災も含めた維持更新の課題も切迫しております。

 これらに必要な財源を確保しながら予算運営をしていくと、今まで以上に厳しい計画性が問われていると思うんです。

 そこで、まず最初に、主要施設十ヵ年維持更新計画の進捗状況について、昨年の事務事業質疑で植木委員からもお聞きし、また、本会議質問でも取り上げましたが、まだ実態がよく見えないところがあるということで、少し具体にただしておきたいと思います。

 計画全体の概算の事業費は約八千三百億円と設定され、平成二十一年度から三十年度までの十カ年を三期に分けて進めているところですが、既に二十四年度からは第二期に入っておりまして、計画期間の半ばを過ぎようとしております。一期目は二千七百億円の見積もり、二期目は三千億円の見積もりとされていますが、現在の進捗状況は、それぞれどこまで進んでいるのでしょうか。

〇室木建築保全部長 事業の進捗状況を予算ベースで見てみますと、計画期間におきます概算事業費約八千三百億円のうち、一期につきまして、二千七百億円の計画に対して予算が二千五百億円、すなわち約九割が予算化されております。

 また、二期につきましては、三千億円の計画に対しまして、二十四、二十五年度予算及び二十六年度予算案まで含めますと、二千四百億円の見込みとなります。

 したがいまして、一期、二期、合わせて予算化が四千九百億円の見込みとなり、概算事業費全体の約六割となってございます。計画期間が十年のうち、来年度が六年目であることを勘案いたしますと、おおむね順調に推移していると認識しているところでございます。

〇曽根委員 金額的には、来年が六年目で、全体も六割が予算化されてきていると。順調のように見えるんですけれども、実態として、一つは、建物の件数について、どこまで件数がこなされたのかという質問を昨年したときに、余りはっきりしたお答えがなかったと思うんです。

 一期目の施設、それから、二期目にもう入っておりますので、それぞれ対象件数に対して何件ぐらいの予算化がされているのかをお聞きします。

〇室木建築保全部長 一期の状況につきまして、予算措置の状況から整理してみますと、第一期の計画施設として具体に名前の挙がっているものは二百件でございます。このうち百六十八件が着手しているところでございます。このうちの未着手だった案件につきましても、土地問題の整理、あるいは計画内容の確定など与条件が整い次第、順次着手しておりまして、二十六年度予算案まで含めますと、二期に入って十五件が着手または着手見込みであり、合わせて百八十三件となります。したがいまして、現段階で約九割が着手または着手見込みとなっているものでございます。

〇曽根委員 今、一期目のみについて、予算化も九割、件数も約九割ということで、一致しているようなお話だったです。これも、実態を正確に反映しているかどうかということなんです。
 例えば大きい施設もあれば、かなり小規模のというか、中小の規模の施設もあります。今残っている事業で、一期目で残っているのが、例えば国際フォーラムや、それから、国際展示場などは、もう着手はされているという件数に入っていると思いますけれども、実際は、これから残された改修の予算が、かなり残っていると思うんです。で、定着に入っていると。

 それから、江戸東京博物館だとか現代美術館は大規模改修はこれからと。現代美術館は設計段階だとお聞きしましたが、これも大きなお金がこれから出ていくというのが残っているということは、件数でも九割、事業費でも予定の九割はいっているけれども、一期目だけでも、かなり費用が膨らんだ場合には、八千三百億を上回っていく危険性はまだ残されているということを指摘しておきたいと思うんです。

 二期目についてはお答えがなかったんで、まだ件数が積算できるところまでいっていないのかなというふうに勝手に推測しますけれども、都民の立場から、こういう状況を見たときに、防災上も、暮らしの上でも、どうしてもおくらせるわけにいかない都立の病院だとか、学校、その他の身近な施設の維持更新が、お金の面や件数の面で、仮に今後おくれが顕在化してきたときに、しわ寄せを受けるというようなことが絶対にあってはならないと思うんですが、その保障があるかどうかという点についてお聞きします。

〇室木建築保全部長 本計画の対象施設につきましては、用途、特性に応じて大きく二種類に整理しておりまして、警察署、消防署、学校、福祉施設などの都民の安全・安心を守るための拠点となる施設と、産業関連、体育施設などの都民サービスを提供していく上で必要な施設とに分類しているところでございます。

 このうち、都民の安全・安心に係る施設について見ますと、一期の計画施設として名前の挙げられている百四十三件のうち、平成二十六年度予算案まで含めますと、百三十四件に着手または着手見込みでありまして、これは百四十三件に対しまして、約九四%に達しているものであります。

 また、耐震化など、都の重要施策の一つとして緊急性の高いものにつきまして、前倒しをして実施しているところでございます。

 今後とも、都民の安全・安心を守るための拠点となる施設を初めとしまして、条件の整ったものから順次着手してまいります。

〇曽根委員 今お話のあった一期目の中では、都民の安全・安心にかかわる、例えば地震の際に、いっとき避難場所になる学校の施設とか、そういうものは九割以上予算化されてきているという点の努力は評価したいと思います。

 一つずつの施設を見れば、いろんな事情でおくれたり早まったりということがあることは、こういう長期計画ですから当然だと思いますけれども、今後、さらに後半期に入って、全体の費用が八千三百億円と見込んだ五年前の時期から見て、さまざまな条件の変化が起きているわけです。先ほど来もお話があったように、入札不調が起きるほどの技術者不足や資材単価の高騰、人件費も上げていかなきゃならないということや、また、オリンピック・パラリンピック競技施設の整備が、課題としてのっかってくる。福祉施設も、今度、知事は長期ビジョンをつくるとおっしゃっていますけれども、それに、今までとは同じペースではいかない、さらに大きな計画ものせなきゃならないということで考えると、かなりの逆風が予想されると。
 この中で事業を着実に進めるために、私は、この時期、ちょうど半分が過ぎようとしている時期に、改めて、全体の事業費八千三百億円で全体が完了できるかどうか。そのことも含めて正確に精査をした上で、後半期の対象施設や事業費などについて、見直しを含めた検討計画を策定して、都民に公表していく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

〇室木建築保全部長 まず、八千三百億円の事業費の関係でございますけれども、ご指摘のように、現段階では一部の資材や、あるいは労務が高騰しております。こういう状況下におきまして、私ども対策としまして、例えば予算見積もりの段階においては、各施設の整備範囲ですとか、その整備の内容について、さらなる精査を行っております。

 また、施設の設計段階におきましては、低コストで調達可能な資材をより多く使用するなど、工夫を凝らしているところでございます。

 今後とも、こうした維持更新の手法ですとか設計などに知恵を絞りまして、全体のコスト管理に努め、総事業費内におさまるよう取り組んでいきたいと考えているところでございます。
 また、計画事業の実施に向けて、現段階では、各局が維持更新計画のスケジュールに沿うよう、与条件の整理に鋭意取り組んできており、その結果、条件の整った場合には、速やかに設計等に着手しているところでございます。

 また、社会状況の変化に伴いまして、さまざまな基準日の改正ですとか、あるいは新たな行政需要が発生した場合には、個々の事業を推進する中で対応しているところでございます。
 今後とも、各局への技術的な支援などを行うとともに、毎年度の予算編成の段階で精査を行いながら、また、状況の変化にも柔軟に対応してまいります。

〇曽根委員 計画全体は見直さないで、その中の個々の局の取り組みの事業の中で、設計などのコスト削減とかに努力をしていくというお話ですけれども、例えば教育庁が、この計画をつくった後に策定したと思うんですけれども、第三次の特別支援学校の整備計画というのが、この後に出ているんです。これは、この第二期の中に、都立の特別支援学校が、一応、分野として載っていますけれども、恐らく第二次の整備計画のときの試算に基づくものだと思うんです。

 第三次は、かなり大規模な、教室をふやさなきゃならないという、この間、予算特別委員会でうちの会派の議員がやりましたけれども、あと二百ぐらい足りないという計画ですけれども、それでも、かなり拡充が求められてくると思うんです。

 これが反映されていないということなどは、かなり金額的にも、対象施設も、教育庁の分野だけでも、そういう大きいものが、その後出てきているということですので、これらを取り込んで、新たなグレードアップした計画にしていくというのは、おいおい必要になってくると思うので、これは、ぜひ前向きに検討していただければということを申し上げておきたいと思います。

 それから、財務局さんに質問することではないので、指摘だけにしておきますが、この計画の中にありますように、子供家庭総合センター、第一期の中で行われました整備が、百人町につくった施設なんですけど、この施設をつくるときに、渋谷にあった東京都児童会館と、それから、戸山にあった児童相談センターかな、福祉保健局の分野などが統合されまして−−児童会館は、五百人入れるホールも含めて、年間百万人ぐらいの都民利用がある都立では有数の都民利用施設だったのですが、ホールはなくして、もう極めて機能を縮小した形で、百人町に、この子供家庭総合センターがつくられたと。

 これ今ちょっとはやっているらしいんです。全国の自治体で維持更新を少なくするために、私の住む北区などでは区立の公共施設を一五%削減するというのを行政の側でもう打ち出しているわけなんです。

 こういう中で、もちろん無駄な施設もあるかもしれませんが、例えば北区では、児童館など、子供たちにとっては大事な施設だなと思うものが削減されそうになっているということで、こういうことが東京都であってはならないというふうに思います。もちろん、立川の合同庁舎のように、統合して便利な場所に行って、移って機能も落ちないというような場合もありますから、むげに、全面的に否定はしないんですけれども(発言する者あり)落ちていますか。

 明らかに児童会館の統合については、機能縮小になっちゃったので、このことは指摘しておきたいと思います。

 次に、こうした主要施設の維持更新計画は、都民利用の利便を高めるためにも、着実に進めていっていただきたいんですけれども、それを進める中で、新たな課題もいっぱい出てきているというときに、予算全体の運営について簡潔に聞いておきたいと思いますが、主要施設の十カ年計画については先ほどお聞きしましたが、オリンピック施設の基金も積んでありますが、かなりの財源を使います。

 しかし、既にこの間、来年度の投資的経費は、平成十一年度、九九年度に非常に近づいているというふうに先ほどお話がありました。
 この間、投資的経費が、だんだんふえてきているという傾向にあると思うんですが、この間の動きについてお知らせいただきたいと思います。

〇潮田主計部長 投資的経費の当初予算額でございますが、平成十年度が一兆五百八十八億円、十一年度は九千七十四億円でございまして、二十六年度の九千百八十七億円という数字は、十一年度とほぼ同水準、同程度になっております。
 また、投資的経費の当初予算額は、平成十七年度から十年連続で増加をしております。

〇曽根委員 そのわかりやすい表が、この予算案の概要に出ているんです。確かに十七年度からずっとふえ続けまして、二十六年度で、ほぼ平成十一年度レベルに達するか、少し超えるかというふうになります。

 私は、この一九九九年、平成十一年度のことはよく覚えていまして、この年は、ちょっと不思議なことがあるんですが、大変財政が厳しかった。たしか平成十年度末には、当時の青島知事の似顔絵入りのパンフレットが出まして、東京都は財政ピンチですというパンフレットまでつくったんです。にもかかわらず、投資的経費は一兆円近く計上されたんです。

 これは恐らく、その直前にあった青島知事の公約であった臨海副都心開発の見直しということで、一年ぐらいかけて、懇談会、検討会をやったけれども、ほとんど見直しがされずに、臨海開発、副都心開発続行になったと。それから、中央環状高速道路は、私の地元北区を通っていた王子線がほぼ終了し、新宿線が、当時、工事が佳境に入った時期だと思います。かなりの出資と貸し付けが行われていました。

 そういう点で、やはり一旦始まった公共事業、開発は、なかなかとまらないというのが象徴的にあらわれた。ですから、財政は厳しかったんですけど、一兆円近い投資的経費を予算上計上せざるを得なかったというのが東京都の当時の流れだったんです。

 一方、借金の返済のために積み立てる減債基金の積み立てというのは、あのときはまだ、この積立方式が、十年一括返済ということが始まったばかりでしたから、積立義務額は約二千二百億円だったと思うんですが、来年度でいうと二千八百億円ぐらいですから、それより少なかったんです。しかし、その積立額さえ積めないで、五〇%、一千百億円しか減債基金積み立てができなかったぐらい、最後の年度末の財政調整は大変だったんです。

 その後、何年か後に、五千八百億円ぐらい一気に減債基金を、たまった分を積んだ年もありましたけど、このときは大変だったんです。こういうことを繰り返してはならないということなんです。
 結局、そのときに、臨海開発だとか高速道路をとめられなかった、削減できなかった分が、何年か後に石原知事になってから、逆に都民の高齢者福祉などが約一千億円規模で削減されるという形で、都民犠牲になってはね返ってきちゃったという経過がありますので、これからのことを考えると、私たちは、オリンピック成功のためのハードの費用も当然ながら必要だと思いますし、都有施設の維持更新も必要、福祉のためのハードの事業も必要と。

 これらが当然出てくる中で、少なくとも不要不急の−−私たちは外環をいっていますけれども、そういう事業については極力抑えるということが不可欠だと思うんですが、いかがでしょうか。

〇潮田主計部長 社会資本ストックの老朽化対策、それから、木造住宅密集地域の不燃化、耐震化など、都民の安全・安心の確保に向けた取り組みは、これは着実に進めていかなければならないことはもちろんでございます。また、そうした観点から、これまでもしっかりと取り組んできたところであります。

 また一方では、東京外かく環状道路、あるいは東京港を初めとする都市インフラの整備、これは都民の利便性や国際競争力の向上に大きく寄与するものでありまして、東京の活力を維持向上させる上でも、極めて重要なものだと考えております。

 このため、平成二十六年度予算においても、事業の必要性や緊急性などを十分に精査した上で、こうした都民生活の向上に資する投資的経費に財源を重点的に配分しておるところでございます。

 なお、今年度末、二十五年度の最終補正予算においても、執行状況を踏まえた精査などを行いながら、基金の取り崩し所要額を抑制したことによりまして、平成二十六年度末、先ほどのオリンピック・パラリンピックの基金も別立てにしまして、七千八百二十三億円を確保しておるところでございます。

 今後とも、社会資本等整備基金や都債などの財源を有効に活用しまして、財政負担の平準化、それから、世代間負担のバランスなどに留意しながら、着実に社会資本の整備を推進してまいります。

〇曽根委員 予定した時間を使ってしまったので、最後、一言だけ申し上げておきます。

 財政負担の平準化や世代負担のバランスというのが崩れかかった時期がある、それが平成十年、十一年の前後だったわけです。その負担が将来にわたらないためにということで、その後、世代的にいうと高齢者、それから、障害者などの施策が、かなり犠牲になったことは申し上げておきたいと思います。

 それから、東京の国際競争力ということで、経済の牽引車ということがよくいわれますが、私は、経済のどこを引っ張るかというならば、やっぱり中小企業の経営に資する公共工事のあり方なども、ぜひ重点を置いてほしいと。

 例えば、この間の資料でいただきました中小企業の受注実績でいいますと、直近の平成二十四年度では、先ほどいった大型の道路や港湾施設が多い建設局、港湾局の公共工事が約一千四百億円規模あるんです。この中で、中小企業が大体五割ぐらいしか受注できていないんですが、都営住宅が多い都市整備局とか福祉保健局の公共工事は五百億円弱の規模ですけれども、八割から九割ぐらいが中小企業受注という実績になっておるように、私たちは思い切って、こうした福祉関係、教育、都営住宅などに、公共事業の中身にもシフトしていくことを強く求めておきたいと思います。

 以上で質問を終わります。



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