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財政委員会速記録


平成二十六年十一月二十日(木曜日)

事務事業質疑「国の税収を奪う攻撃と有効にたたかうために」

〇曽根委員 最後の質問になりますので、よろしくお願いいたします。

 先日、十七日に、私も委員として参加した都税調で最終答申が決定されまして、都に提出をされました。私も一部については意見を述べましたが、答申全体の提出には賛成をいたしました。

 答申の報告、質疑は、定例会の中で行われるということですので、今回は、これに先立って、この答申の中で示された税制改革のあり方の検討方向を参考にして、これまで、私も法人減税の問題やそれから地方法人課税の問題は質疑をしてきましたので、きょうは、都が税制改革のあり方について、国にどう物をいうべきかという基本点について幾つか質問したいと思います。

 答申では、税制改革の方向として三つの検討方向というのを提起しています。その一つは、地方分権を推進する税制改革であること、二つ目に、財源の持続可能性の確保がされること、三つ目に、今日の時代に合った公平性が担保されること、この三つです。これは、時宜にかなった適切な検討報告であるというふうに私たちも考えておりまして、これに沿って基本点を聞いていきたいと思います。

 まず、地方分権、地方自治の前進のための税制改革という点で、最大の問題は、かねてからいわれているように、地方自治体が全体としては六割の仕事をしながら税収は四割にとどまっている、この財源不足をどう補っていくのかという問題についてです。

 答申案にも提起されているように、地方全体として不足する財源を、できれば、できるだけ自主財源として賄っていくことが必要なわけですが、そのための目標や戦略というのは、東京都においては検討されているのかどうか。そして現状では、大都市部とそれ以外の道府県の足並みがそろっていないという中で、この大きな目標に向かってどう取り組んでいくのかについて、都としての方針が必要になると思いますが、これについての検討状況をお聞きしたいと思います。

〇加藤税制部長 地方が自主自立的な行財政運営を行うためには、権限とそれに見合う財源が必要でございます。とりわけその自主財源たる地方税の充実が欠かせないということでございます。その際には、税収が安定的で偏在性の小さい地方税体系を構築することが重要でございます。

 また、税源移譲というのがございまして、これまでも、所得税から住民税へ三兆円の税源移譲を行いました。ただ、その結果、地方交付税が大きく減らされて地方が疲弊をしているという現状がございます。特に、財政力の弱い地方自治体に対しましては、税源移譲をしてもまだ足りないということになりますので、地方交付税制度の機能を適切に発揮させ、必要な財源を手当てすべきだと考えております。

 こうした地方財源が不足する中、地方が対立することなく一体となって、こうした総体としての地方税財源の拡充を国に求めていく、これが都としての進め方だと考えております。

〇曽根委員 この地方と国の財源のやりとり、税源移譲も行われましたが、この中で一貫して東京都は、偏在性を小さくすると、地方の財源において、そういう観点から、例えば、住民税の累進制をやめて、さらに、所得よりも住民の生活そのもの、つまり家計消費に課税する消費税が最も偏在性が今少ない税金の一つとして、ここにより多くの財源を求めるという方向に流れがつくられてきたというふうにいえると思うんです。

 そうすると、やはり、低所得の人からの税金が一番取りっぱぐれがないといいますか、逆進性という、いわゆるそういうものが強い消費税に、だんだんと地方の財源を依存していくという、大変国民にとっては危険な方向に進まざるを得ない、ここに大きな問題があるというふうに私達捉えております。もっと究極的に、超公平な頭割りの税金ということになれば、人頭税ということになりますが、これがサッチャー政権の崩壊の原因にもなったといわれております。

 こうした方向は、やっぱり住民犠牲を強いていくものとして、根本的な財源確保の方向性の見直しが必要だということを申し上げておきたい。また消費税の問題については、後日、請願陳情の審査がありますので、そのときに譲りたいと思います。

 もう一つは、持続可能性の確保、財源が安定的に確保できる、今後も持続するというような点から見てどうかということなんですが、少子高齢化の急速な進行と国、地方の財政危機という中で、財政収入の持続可能性をどう考えていけばいいのか。

 この前提として、税制度の改革に当たっては、少なくともその改革によって少子化がもっとひどくなったり、または財政危機が深まるような事態は何としても避けなければならないという、これは大前提の問題ですが、いかがでしょうか。

〇加藤税制部長 現在、政府が進めております税制改革は、少子高齢化が急速に進展する我が国において、持続可能な社会保障制度の構築と財政の健全化、日本経済の再生を同時に実現することを目的としております。

〇曽根委員 そういうことが目的であり、東京都も基本的にはこれを認めてきているんだと思います。しかし、目的はそうだといい張っても、国の税制改革が、一方では、消費税で庶民に重い課税を進める一方で、大幅な法人減税をこれからやっていこうというふうにしていることは、間違いなく格差は広がりますし、国民の中に貧困率を高めて、広く課税する消費税さえ、行く行くは取りにくくなるような事態を招く危険がある。
 こういう点では、財政の健全化を展望しているとは、私はいえないと思います。これまでも財政危機や少子化がなぜ進行してきたのか、この分析や反省が足りないということが大きな問題だと思うんです。

 都としても、国と地方における少子化や財政危機の原因をはっきりさせて、その克服と一体で展望を明らかにする必要があります。例えば、東京都としては少子化の克服という点での若干の政策は今出してきていますが、一方で、財政危機の原因というのは、東京都も繰り返し指摘しているように、八〇年代、九〇年にかけて景気対策を理由に膨大な公共事業の借金が積み上がった、これが最大の原因であります。

 しかし、これが現在、大震災からの復興ということを理由にして、全国で復活しつつあるということへの認識は、私は、必要だというふうに指摘をしておきたいと思います。

 それから、今日の時代に合った公平性という点で、どうしてもやっぱりいわなきゃならないのは、日銀の市場への資金投入だとか、それから円安政策によって、たしか輸出産業、自動車産業を初めとして、円高差益だけでも莫大な利益が上がっているようですが、一方で、輸入品を初めとして物価値上げから見れば、賃上げが追いつかない。しかも実質賃金が下がり続けているのに所得はふえていますので、名目所得への課税はふえてくるという状況があり、やはり国民の側には、大きな、何といいますか、被害も出ているというふうに認識しているわけです。

 この点で、この間、株の取引の課税は一部是正されましたが、ずっと減税の恩恵にあずかってきた高額所得者、株投資家、また、大手の企業の法人課税、これは避けて通れない問題だと思います。特に、地方としてできる課税としての法人課税、公平性からいえば、東京で活動する特に大企業などの企業活動を支える東京都の自治体のサービスは莫大なものがありますので、これに応じた応分の企業負担は、今後、適切に拡大していくことは当然だと思いますが、いかがでしょうか。

〇加藤税制部長 法人は、その事業活動を行うに当たり、都市インフラなど地方自治体の行政サービスを受けております。諸外国の税制の動向を見きわめつつも、当該サービスを受ける法人に応分の負担を求めることは必要であると考えます。

 ただ、今、ご負担をふやすという方向でお話がございましたが、地方税法で法定されている中で、もし負担をふやすということになりますと、都が独自に超過課税を引き上げなければいけないということになるかと思います。

 都におきましては、法人事業税及び法人住民税について、大企業や所得の大きい企業に対し、大都市特有の財政需要に対応するため、地方税法で定められた税率を上回る税率を設定し、課税をしております。大企業への負担の拡大は、企業の国際競争力を強化する観点から、法人実効税率の引き下げが議論されておりまして、そうした状況にはないと考えております。

〇曽根委員 私がいおうとしたのに先にいわれてしまいましたが、今回、答申と一緒に法人課税の国際比較といいますか、法人負担、実効税率だけではなく、社会保障の負担なども含めた国際的な企業の負担率としては、日本の法人負担は必ずしも高くないというような客観的なデータ、皆さんもお調べになったわけですけれども、出ておりますし、大企業などの、この間の所得の、利益の拡大状況を見れば、税負担能力には十分余裕があるというふうに思います。

 超過課税の自主権を最大限、まだ使える余裕があるわけですので、検討すべきだし、また、かつて裁判に負けてやめてしまいましたが、銀行など、金融機関の、私たちから見ると、やっぱり明らかに税金逃れというような部分への課税の検討も含めて、裁判で負けないようなやり方で検討が必要じゃないかということは申し上げておきたいと思います。

 それで、企業と同時に、今の住民税の仕組みは、所得の再配分機能が非常に低下しているという状況にあります。国全体の税収の中で、今後、地方税の割合をやっぱりふやしていくということが、私はどうしても必要になると思うんですね。

 地方交付税という形での調整もありますが、やはり地方自身がちゃんと自主財源としての税収を確保していくということが必要になると思いますけれども、そうすると、やはり個人住民税についても、改めて高額所得者への累進課税を検討していく必要が出てきているんじゃないかということを考えているのですが、いかがでしょうか。

〇加藤税制部長 個人住民税は、かつて累進税率を採用しておりましたが、平成十九年の所得税からの税源移譲に際し、その応益的な性格を明確にする等の観点から、一律一〇%の比例税率とされ、自治体が超過課税を行う場合も、一の税率によるものと法に明確に規定されました。

 他方、所得再分配機能は維持するよう所得税の税率構造は累進性が強化されております。こうした経緯を踏まえますと、個人所得に対する課税のあり方というものは、個人所得課税全体で検討すべきものと考えます。

〇曽根委員 国税の所得税は、累進が強化され、地方税の方は、税率は一〇%フラットになった。こういう中で、今、人口減少が起きているわけです。東京は間違いなく、全国に少しおくれるものの、しばらくの期間は人口減少は避けられないわけですね。そういう中で、国税の方は所得税の税率に累進がある、しかし、地方税はない。人口はしばらくは確実に減っていく。となりますと、この税率のまま自治体の所得課税をふやしていくということは、極めて困難ではないかと予測されます。

 基本的な考え方として、自治体の役割が、国全体の行政サービスの中で大きいわけですから、それにふさわしい地方財源を確保するという場合には、地方や大都市にも普遍的に存在するということだけにこだわるのではなく、所得の再配分機能を大いに発揮して、たとえ人口がしばらく減り続けたとしても、所得の多い方には応分の負担をしていただく中で財源を確保するということも、この住民税の中で考えていかなきゃならないということは、大企業への適切な課税評価とともに、高額所得者への住民税の累進課税を検討するという点を申し上げて、私の質問を終わります。



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