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都市整備委員会 平成二十七年十一月二十七日(金曜日)


都市計画道路第4次整備方針について陳情を質疑

〇曽根委員 それでは、都市計画道路の第四次整備方針についての二つの陳情について質問させていただきます。

 両方とも、多くの都市計画道路が計画されてから半世紀が経過し、地域の実情に合わなくなった道路計画が残されていること、これからは地域のコミュニティへの影響や関係住民の声を反映させることを最優先にすべきだと訴えております。実際にこの間、道路整備をめぐる動きを見ても、地域を分断し、また地域住民の理解と協力を得られない道路計画が、いかに困難をもたらすかも私自身痛感させられております。

 そこで、この間の動きとしては、以前からようやく我が党が求めてきました第四次整備計画の中間まとめについてのパブリックコメントの要約が公表されました。これについて最初にお聞きします。

 中間まとめに対するパブリックコメントで道路整備のあり方全体への意見を除けば、最大のものは個別路線に対する意見だったと思います。九十件以上ありました。しかし、この内容は一切このまとめには示されておりません。

 個別道路に対する意見こそ、最も切実な生活や、また営業がかかった意見が多いわけで、ぜひプライバシーに支障がない範囲で全文公表すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

〇中島都市基盤部長 本年五月に公表いたしました中間のまとめは、東京の都市計画道路が果たすべき役割や整備の基本的な方向性を示したものでございまして、これについて意見を求めるためパブリックコメントを実施したものでございまして、その結果について十月に公表しております。

 年内には具体的な優先整備路線などを盛り込んだ整備方針案を公表いたしまして、改めてパブリックコメントを実施することとしておりまして、年度末に整備方針を取りまとめる際には、現行の整備方針の公表時と同様に個別路線に対します意見の概要やそれに対する考え方、対応方針について明らかにすることとしております。

〇曽根委員 これは都市計画道路全体の例えば交通ネットワークのあり方や、それから都市構想などについては、確かに交通ネットワークが完成すれば、当然交通は円滑化されるところが多いと思います。しかし、我が党の試算でも、残る計画道路千二百キロ以上を全て整備するには約十五兆円もの莫大な費用と、恐らく二十万軒を超える立ち退きが出て、地域のコミュニティは大変大きな影響を受けるだろうし、多くの都民が都外転出を余儀なくされかねません。その全ての道路計画を本当に完成させなければならないのかどうか、今後東京都として、ますます厳しく吟味せざるを得なくなることは間違いないと思います。

 コミュニティへの影響を整備方針の見直しの要素に入れてほしいという今回の陳情の主張は、単にこの陳情者や、また私たち日本共産党だけの要望ではなく、既に他の府県では、このような角度から見直しと、その結果の道路計画廃止も進められております。

 大阪府では、都市計画道路の見直しに当たって、必要性と実現性、二つを掲げておりますが、実現性には三つの基準があって、事業に対する期待度や合意状況というのがあり、要するに地域の期待や合意がなければ実現性は低いと判断し、たとえ必要性が高い道路と行政が考えても、実現性が低ければ、道路の存続について再検討し、その結果によって廃止もしております。

 また、京都府も都市計画道路の見直しに当たって、実現性を判断基準に掲げ、道路計画書のところに、成熟した住宅地や商店街があって、地域の活力やにぎわい、まち並みやコミュニティを維持するのに支障になるとか、また学校などの公共施設にかかっているなどを実現性困難の基準に挙げております。

 地域の期待がない場合、また成熟した住宅街や商店街があって、地域の活用を奪うようなら廃止もある、こうした観点から見直しを図った大阪府や京都府では、大阪で二百八十路線、三百八十六キロ、京都府では百五路線、百十二キロもの区間を廃止にしているんです。

 一方、東京都は、廃止にしたのは一路線、一・三キロ、同じ大都市圏でありながら、余りにも差があります。未整備の都市計画道路は千二百十キロあります。

 私たちは改めて、この陳情者の方がいっているように地域のコミュニティの問題について、これは大変面倒な問題だと思いますけれども、行政として、あえてここに踏み込んで地元の声も聞き、またその地域のあり方を検討していくことが必要ではないか、その上で、今回まだ公表されていない個別路線についての、その路線が通る地域の、まさにその道路にひっかかる地権者の方々の切実な声を−−皆さんも当然パブリックコメントをとったんですから見られたでしょうが、多くの都民がこういう問題があるということを知ることも、都民としての知る権利の一つだと思いますので、ぜひ公表を急ぐようにお願いをしておきたいと思います。

 それで、陳情の趣旨にあるように、今度の優先整備路線を初め、道路の整備方針の最も重要な判断基準、やはり地域コミュニティの問題、例えば北区の補助八一号線、これは四年ほど前に特定整備路線の候補に挙げられましたが、候補段階で除外をされました。その際の最大の理由は、地元の三町会がこぞって、これは急いで整備すべき路線ではないこと、そして地域コミュニティが壊れてしまうなどの反対意見があったからだと聞いております。

 こうした陳情とも同じ趣旨の主張が、例えば北区では八一号線の緊急整備といいますか、特定整備路線で当時は八年以内ですが、整備するというものに入らなかった大きな理由になったわけですが、今回の整備方針の基準にはこうしたことが入っておりません。
 ぜひ入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

〇中島都市基盤部長 今、副委員長からお話のございました補助八一号線の谷田川通りから本郷通りまでの区間につきましては、候補区間の最終選定時期までに地元北区長からの申し入れがあったため、特定整備路線に選定しなかったと聞いております。

 都市計画道路でございますが、都民生活や都市活動を支え、交通の円滑化や防災性の向上、地域のまちづくりなどに大きな役割を果たす重要な都市基盤でございます。このため、この重要な都市基盤でございます都市計画道路の整備を計画的かつ効率的に推進するため、都市計画道路の整備方針を策定していることとしておりまして、引き続き地元区市町とともに骨格幹線道路網の形成、高度な防災都市の実現、地域の安全性の向上、地域のまちづくりへの貢献などの観点から優先整備路線を選定いたしまして、都市計画道路ネットワークの早期形成に向けて努めてまいります。

〇曽根委員 今お話があったように、東京都が都全体の道路ネットワークや都市構想を検討するのは当然です。しかし、道路事業では最終的には計画地域の事業が可能にならなければ、何十年も凍結や紛争が続きかねない、もうそういう争いをしている余裕は都政にはないはずだと思います。事業を進める上で少なくとも地元区市町村や地元議会の判断を最大限尊重し、地元区長が補助八一号線のように優先整備は無理だと判断せざるを得ないような場合は、都で具体化する前に見直しができる仕組みが必要だと強調しておきたいと思います。

 さらに、もっと深刻な争いになっているのが、訴訟が提起された例えば北区の補助八六号線です。優先整備路線から外されていた補助八六号線をいきなり特定整備路線に指定しまして、事業化を決めてしまった都のやり方に厳しい反発の声が上がり、わずか数百メートルの整備区間で地権者多数を含む百十一名の原告団が訴訟を提起いたしました。また、ここは二十年以上前にこの八六号線に接する北区の清掃工場を都が建てかえる際に、今後当該地域のまちづくりは住民との合意で進めると約束していたのが、今回守られていないという点も裁判の争点になろうとしております。

 このように個別路線について、地権者多数から異議の申し立てや訴訟が起こされている場合、事業の推進との関係は都としてどうなるんでしょうか。

〇中島都市基盤部長 事業の実施に当たりまして異議申し立てや訴訟があった場合におきましては、関係法令に基づき適切に対応してまいります。

〇曽根委員 ある自治体の道路行政に携わる幹部は、地権者の多数と裁判で争っている限り、その裁判で何の結論も出ていない段階で事業を進めるのは事実上難しいだろうと話していました。これが良識的な見方だと思います。
 さらに、今後の人口減少社会の中で、いつまでも道路計画に財源を振り向けることができるのかという疑問がこの陳情の中でも提起されております。
 今後の東京都も含む人口減少社会で、道路整備の財源を他の代替施策に振りかえる必要も陳情やパブコメで指摘されていますが、東京都としてはどう考えるでしょうか。

〇中島都市基盤部長 人口減少社会におきましても、将来にわたる東京の持続的発展を実現していくためには、広域的な交流、連携や高度な防災都市、個性的で活力ある地域づくりなどを支える道路ネットワークのさらなる充実が不可欠でございます。今後ともこうした目的の達成に向け、関係区市町と連携の上、必要な財源の確保に努めつつ、必要な都市計画道路を着実に整備してまいります。

〇曽根委員 東京都は、平成二十五年度年次財務報告書で社会保障関係経費が毎年三百億円のペースで増加することを明らかにしています。これは人口減少とは逆比例になっております。このように推移すれば、平成四十五年までのペースで増加、今後二十年間の増加額の累計がおよそ五兆五千億円から六兆円程度になるわけです。少子高齢化社会で社会保障関係経費が増大するとはいっても、今後、道路整備の大胆な見直し、廃止を行う中で、こうした財源も確保していかなきゃならないという課題に直面しております。

 また、一方、少なくともこの十年間、都内で登録された貨物自動車の台数は、私も調べてみましたが、二割減っております。全国の一割減よりも東京の減りは多いわけです。今後は高齢化や少子化の影響で乗用車も減ってくるとの予想もあります。地方では車なしに生活が成り立たない地域が大半を占めている実態がありますが、都内では総体的には公共交通機関に恵まれているのは事実で、むしろコミュニティバスなどはさらに充実が必要で、生活道路中心の整備が求められてくるのではないでしょうか。

 東京都の道路政策を思い切って陳情の趣旨を踏まえて改革することが必要であり、陳情は採択すべきとの意見を述べておきます。

 以上です。


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