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1月31日都議会文教委員会でのそねはじめ質問
30人学級、高校改革(連携型中高一貫校、自己PRカードなど)に付いて

●病弱養護の高等部設置と社会教育の充実について

〇曽根委員 二つの請願について何点か質問したいんですけれども、分野も、また要望事項も多岐にわたっているので、高校全員入学とか、学区の問題などについては、後の方で入試制度についての陳情が出ていますので、その際にまとめて質疑をさせていただくようにしたいと思います。
 最初に、要望について二つほどお願いしておきたいんですが、障害児教育について、このゆきとどいた教育をすすめる都民の会の請願の中に三点出ているわけですね。(2)に病弱養護学校に高等部をつくることと、(3)は社会教育の一層の充実というのがあります。これはちょっと時間の関係で要望にしますけれども、病弱養護の高等部の設置については、一昨年来、片浜養護学校の問題などもあって、ぜひ、高等部設置は悲願であるという声があり、場所も含めていろいろ提案もほかの会派の方々もされたわけです。前向きに検討するという話もありました。
 今、盲・ろう・養護学校全体の見直しに入っているわけで、その中に組み込まれるようですけれども、少なくとも東京都は病弱のために、要するに、ほかの障害の子どもと一緒に障害児の養護学校の高等部に行くか、それとも普通の高校に行くか。しかし、結局、普通の高校に行ったけれども、病弱のために途中で断念せざるを得なかったというような実態についてもつかんできているというお話ですので、全体の見直しの中に解消されない間題として、高等部がないのは病弱だけですので、ぜひ設置方、前向きに検討を引き続きお願いしたいと思います。
 それから、社会教育の充実については、先ほどお話のあったように、都の単独事業としては地域活動促進事業ということで、これは五日制が月に一回か二回始まったあたりからやってきたわけですよ。今もやっているわけですが、平成十二年度(二〇〇〇年度)から新しい事業はもう打ち切りということになって、あと三年もすればなくなってしまうわけですよね、この事業は。したがって、もう国の補助事業しか大体残っていないようになってしまいますので、都の単独事業として五日制が本格実施されている今こそ、特に都立養護学絞に通う、特に障害が重い子どもたちの居場所がないという間題について対処をお願
いしたいと考えます。
 以上二点、要望しておきます。

●30人学級の実現を

 質問は、三十人学級が二つとも要望に入っておりますので、この問題について何点かお聞きしたいと思うんです。

 この丸木さんが代表になっている「ゆきとどいた教育をすすめる都民の会」の請願は、今この人数でいくと百四十一万五千八百七十人になっていまして、この間、三万人ぐらい積み上がったんですが、団体の方にお聞きしましたら、住所が不備なのではねられたものを加えれば、団体として議会に提出したのは百六十三万を超える署名が提出されているそうです。
 もちろん都議会に出される請願陳情で、これだけの規模で、しかも、繰り返し毎年要望が出されている請願はほかにはないと思います。ぬきんでた運動の規模になっているわけです。
  私も何度か三十人学級、少人数学級について質問しましたが、きょうはちょっと学習の中身の問題も含めてお聞きしたいんです。たしか二年ほど前だと思うんですが、我が党の吉田議員が、少人数学級の優位性について質問した際に、横山教育長から、学習集団としては少人数はすぐれているが、生活集団としては切礎琢磨ができるだけの人数が必要であり、現在の四十人学級が必要だという、大まかにはそんなような趣旨の答えがあったと思います。その後、東京以外の各府県で、四十人を下回る学級制度が広がってきております。

  この会の皆さんは、もちろん学力不足の不安が非常に広がっているのももちろんだが、何よりも学校で起きているいじめや不登校などの問題を解決していくためには、先生の目がなるべく一人一人の子どもに行き届くように、学級定員をせめて三十人以下に、定時制高校生はもっと少なくということですが、小中学校は三十人以下にすべきであるとの趣旨でこのような多数の署名で実現を求めてきているわけです。

 私は、これはまさに正論であって、都も最近、学校の最大の問題は、いじめ・不登校の問題であるというふうに認識を示しているわけですから、この要望を受けとめて、少人数学級に踏み出せない理由は、もはやないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○比留間学務部長 東京都教育委員会では、児童生徒が社会性を養うための教育効果の観点、一方、基礎学力などの向上に配慮して、きめ細やかな指導を行っていくには、学級とは異なる少人数の学習集団を編成し、指導していくことがより効果的であるというふうに考えております。
 こうしたことから、学級編制基準につきましては、引き続き四十人として、教科等の特性に応じて多様な学習集団を編成し、少人数の授業を実施するなど、指導の充実に努めているところでございます。

○曽根委員 先ほど私が紹介した横山教育長の答弁と全く同じ認識だと思うんですけれども、既に都が進めている習熟度別の少人数授業、少人数指導、これはモデル実施の段階からいよいよ本格実施に、各校にそのための加配された教員が配置されてきています。既にこのように始まっているわけですが、都として習熟度別授業による学習の少人数化といいますか、そういうやり方がよりすぐれているというふうな成果が現に把握できているというふうに考えていいんでしょうか。
○近藤指導部長 基礎的・基本的な学力の定着と向上を図り、個性を生かす教育を充実するためには、児童生徒の習熟の程度や興味、関心に応じた少人数指導を推進していくことが大切でございます。都教育委員会では、少人数学習集団による指導を効果的に進めるため、平成十三年度より研究推進校を設置してございます。
 この推進校の報告では、少人数指導を行うことにより、児童生徒が学習に意欲的に取り組むようになったこと、教員が児童生徒の学習状況をより正確に把握できるようになったこと、また、個に応じたきめ細かな指導が一層可能になったことなど効果が上げられております。
 今後とも推進校における研究の成果をリーフレットにまとめるなどいたしまして、多くの学校にこの成果を広め、少人数指導を一層推進してまいります。

○曽根委員 少人数指導、なかんずく文部科学省の方針のように、習熟度別もしくは課題別、単純な分け方ではなくて、そうした到達度に応じて分けるというやり方については、もう既に多くの専門家から、子ども同土の差別感が起きやすいとか、それから、私はさらに重要だなと思うのは、例えば二クラスを三クラスに小分割させていって、例えば算数や国語などについて個別にグループ分けして行った場合、自分の担任している子どもの状態が、その担任が要するに主要な授業をですね、つかみにくくなってくる。

 それから、授業の準備のために、同じ時間に同じ学年全部のクラスは同じ科目をとらなければ少人数ができないとか、やっている先生の側から言えば、非常にカリキュラムが組みにくくなるというふうな問題を含めて、さまざまな間題点が指摘されているわけです。要は、この少人数学級制度と少人数授業、習熟度別授業との比較において、都が言っているように、習熟度別を引き続き進めていくと、その方がいいんだというだけの根拠をお持ちになって、あえて進めていこうとされているんでしょうか。

○比留間学務部長 東京都教育委員会の学級編制基準と少人数指導に関する考え方は、先ほど申し上げたとおりでございまして、学級編制基準につきましては、生活集団として維持するため・に現行の四十人をということで、先ほど申し上げましたとおり、少人数指導については効果を上げているというふうに考えております。

○曽根委員 私は率直に言って、ほかの県ではですね、一つの学校の中で文部省の加配を受けて、少人数指導の習熟度別授業をやっているクラスもあれば、そういう学年もあれば、もう一年生から既に少人数学級制度が始まっているという事態が現実に起きていて、同じ学校の中で二つの制度が動いていると。したがって、具体的に比較検討がされざるを得ないというところにもうきているわけですね。

 ですから、率直に言って、この二つの制度どちらをこれからとっていくべきなのかということについて、よほど明確な根拠を持たないで、ただ習熟度別をやっていて、今ここに成果があるからいいんだというふうにはならないと思うんですが、その点をもう一度お聞きします。

○比留間学務部長 先ほどご答弁申し上げましたとおり、児童生徒の社会性を養うためには、生活集団として学級には一定の規模が必要であるというふうに考えてございます。 したがいまして、学級編制の基準は引き続き四十人ということにいたしまして、教科等の特性に応じて多様な学習集団を編成していく、こういった形で進めてまいりたいというふうに考えております。

○曽根委員 都の考え方がそうだというのは、さっきから繰り返されているんですが、それを何の根拠も持たずに、いつまでもそういうことを言い続けていることはできないと思うんです。
 例えば私、前からよく引用されている国立政策研究所がですね、おととし、前の国立教育研究所から「政策」という言葉が入って、より政策的なことを課題にしようということなんでしょうね。スタートして、最初に取り組んだ学級規模に関する調査研究という研究紀要が出ていますけれども、私、詳しく読ませていただきました。
 これを見ますと、なかなか興味深いんですよね。この調査のやり方というのは、全国の公立の小中学校の都市部、町村部など平均しまして五百八十校を抽出して、学級規模を十二人から二十人まで、二十一から二十五人までというのを五段階に四十人まで分けて、さまざまな角度から比較調査を行っているわけです。さらに、そこから百七十学級を無作為抽出するという二段階方式の抽出をやって厳密に調査をするという点や、八割以上の回収率という点でも信頼性の高いものだと思うんです。
 ここで出ているのは、理科と数学については、例えば、同じ問題での到達度テストもやっているわけですね。確かに二十人以下のクラスの平均点が、他の人数のクラスよりも、どの問題でも少しずつ高いと、つまり学力の点でやはり違いが出ているということです。
 しかし、統計上意味がある・・ここでは五%以上の差を統計上意味があると見ているんですが、そういう差は見られないというのが学力についての判断なんです。
 私に言わせれば、これは当然のことであって、統計上の差が出るほどならば、現場でははるかに大きな違いが出るわけですよ。しかも、四十人学級制度の中で、たまたま二十人以下の学級とか、何人の学級とかということを調べているわけですから、四十人学級制度の小中学校の中で差が出ちゃまずいわけですよね。

 二十人以下の学級がよかった、こっちはまずかったとならないわけですから、当然、先生方は努力して、同じレべルになるように現場ではやっているわけですから、差がつきにくいわけです。そういう結果だろうと思うんですが、ところがですね、この研究で、少人数と大きい人数で明らかに違いが見られるというふうに指摘されているのは、むしろ子どもたちの学校生活に対する意識に大きな差が見られるというふうに言っているんですよ。生活集団の方をここでは違いを認めているんです。
 例えば、「友達のせいで授業に集中できない」とか、「間違えたとき笑われたり、冷やかされた」 とか、「授業や話し 合いが終わるのに時間がかかり過ぎる」などの、いわゆるネガティブな経験は少人数学級ほど少なく、大きい人数の学級ほど多い。逆に、「友達が困っているとき、だれかが助けた」 とか、「自分のクラスはまとまっていると感じる」などのポジテイプな経験は、少人数が大きい人数の学級よりも多いという差がはっきり出ています。これは小中学校ともに共通して出たというふうに指摘されているんです。

 つまり、学習の効果の違いも私はあると思います。ただ統計的には出にくいだろうと、ね。あると思いますが、ここでははっきりと、生活集団としては、子どもたちの経験からいって、よりポジティブな経験、ここの学校でよかったと思う経験が少人数学級の方が明らかに出ているという研究結果を発表しているんですよ。これはもちろん皆さん知らなければならない立場だと思うんですが、こういうことさえ、もう国の研究所でさえ出ているということについて、どう受けとめますか。

○比留間学務部長 ただいま文部科学省の国立教育政策研究所の研究の内容のご紹介がございましたけれども、その研究の内容は、それは一つの成果といたしまして、東京都教育委員会としては、先ほど来ご説明申し上げておりますように、生活集団と学習集団を適切に組み合わせて教育の効果を上げていく必要があるというふうに考えてございます。

○曽根委員 同じことで頑張ってもしようがないと思うんですけどね。私、主幹制度の導入のときに議論したときに、( 「短絡的な発想だよ、それは」と呼ぶ者あり)当時人事部長で、今、総務部長の中村さんが、今、学校で起きている最大の問題はいじめや不登校の問題だと、いうふうにおっしゃられたので、私もそうだと思うんですよ。(発言する者あり)ちょっと静かにしてくださいよ、質間しているんですから。
 ( 「何を言っているんですか、明確にしなさいよ」 と呼ぶ者あり)
 不登校やいじめの間題、それを解決するためにも主幹制度が一つの大きな役割を果たすとおっしゃった。
 そのときに、まさにいじめや不登校の入り口になりそうな友達との関係、いわゆる差別感や冷やかし、そういった、子どもの気持ちが壊れていく、そういう経験が、大きい人数のクラスでやはり多いという結果を発表している、こういうのをまともに正面から考えるならば、切磋琢磨とか言っている場合じゃな
くて、いじめや不登校は引き続き大変な大問題なんですから、まともに解決しようと思ったら、やはりそういう研究結果を受けとめて、せめて比較検討をちゃんとやろうというぐらいにならないんですか。

○比留間学務部長 学級編制の規模の考え方については、先ほど来ご説明申し上げていますように、児童生徒が社会性を養っていくためには一定の規模が必要であると、こういうふうに考えております。それと、学習集団の問題については、少人数指導ということで工夫をして、それを組み合わせてやっているところでありまして、あわせて、いじめ、不登校、こういった問題行動に対応するための努力というのは、これは各学校で全力を挙げて努力をしているところでございます。

○曽根委員 らちが明かないんで、もう少し具体的に。先ほど言いましたように、ほかの県では、少人数学級制度が小学校の一年生ぐらいから始まり、その上の学年では、相変わらず文部科学省の加配を受けて、習熟度別の授業をやっていると。もう比較せざるを得ないわけですよ、どっちが本当に子どもたちが落ち着いて勉強でき、クラスとしてもまとまって、いじめや不登校がなくなっていくだろうかと、解決できる道が開くだろうかということで。

 そういう中で、既に踏み出している各県から、さまざまなレポートや報告が出ているし、私が聞くところによると、東京都の教育委員会の皆さんもそういうことを直接聞く機会もいろいろ持っておられるというふうに思うんですね。そういうのを聞いていて、やはり私も調べてみたら、少人数学級制度については、どの県でも学校の先生方や、もちろん子どもたちや父母からも大歓迎を受けているというふうに聞いているんですが、当然
そういう話も受けとめておられると思うんですが、いかがですか。

○比留間学務部長 各道府県によりまして、学級編制の間題についてさまざまな考え方があるということは承知しておりますし、それから、取り組みをしている他の道府県との間で東京都教育委員会も情報交換はしてございます。他県のそういった動向については、今後とも必要な実態の把握に努めてまいります。

○曽根委員 もうほかの県では白黒が−−白黒つくというのはおかしいですね。どっちの制度が主流とすべきかという決着はついていきますよ‥実践的にもう。したがって、東京都が頑迷な習熟度しかやらない。だから、それしか皆さんはつかみようがないわけですね、現実に、今都内では。そういうことを続けていくならば、学校についての各自治体での大きな取り組みの流れから取り残されていくというふうに思います。

 それで、少なくとも、私は率直にお聞きしたいんですけれども、昨年、私が紹介したように、中学校の先生の九七%、校長先生でさえ九割以上の方が、今の文部省の新学習指導要領のやり方は現場の苦労をわかっていないという不信感を持っている。その文部省の方針に尽くし従っていていいのかということなんですよ。逆に、本当に現場で起きている問題にまともにこたえようと思ったら、今、少人数学級制度に、少なくともモデル実施とかですね、何か取り組みを開始しようとか、調査してみようとか踏み出していく、そういう姿勢を示すならば、私は百六十万人の署名を寄せた方々、父母の方々が中心だと思いますが、そういう方々はもちろんですが、小中学校で今現場で苦労している、私のかみさんも含めて現場の先生方、校長先生、だれ一人この少人数学級制度の取り組みに待ったと、それは困るよと言う人はいないと思うんですよ。文字どおり、九割以上の圧倒的な学校現場に携わる方々が大歓迎すると思いますが。大歓迎すると思いませんか、いかがですか。

○比留間学務部長 繰り返しになりますが、東京都教育委員会といたしましては、学級が持つ社会的集団としての教育効果等の観点から、学級編制基準につきましては、引き続き四十人として、教科等の特性に応じて多様な学習集団を編成して少人数の授業を実施するなど、指導の充実に努めてまいります。

○曽根委員 何を聞いても同じ答えしか出ませんのでこれで終わりにしますが、少なくとも、横山教育長に最後に聞きたいんですが、私、百六十万人の数字というのは、これは無視できないことだと思うんですよ、人口の一割五分近くを占めているわけですからね。それで学校の現場で聞けば、やはり少人数学級ですよ。少人数指導は、先生から見ると大変なんです、これは。子どもたちだって、特に小学校の低学年では、生活集団と学習集団を分けられないというのが国の研究所の指摘の中にもありました。

 その点では、東京都が決断をすれば、私は現場はやはり歓迎すると思うんです。東京都の今までの考え方はよくわかりましたが、現場の先生方や子どもたちや父母にとっては、この少人数学級制度は、やはり歓迎されるだろうなと個人的には思われませんか、教育長いかがですか。

○横山教育長 学級編制基準についての考え方は、今、所管部長が説明したとおりですがただ一点議論を聞いていてですね、私はその生活集団と学習集団に分けて考える意味は、要するに、教育というのは、厳しい社会に出て、どう対応できる人間をつくるかと、そういう教育を施すだろうかと、そこに本質があるような気がします。ただ、少人数にして和気あいあいとやればいいというんじやなくて、非常に厳しい、そういった教育もやはり必要だろう。まさに生活集団としての教育というのはそこが本質だろうと思っておりますので、現行の学級編制基準を変えるつもりはございません。

○曽根委員 私、横山教育長の本音がよくわかったという思いですよ。社会は確かに競争と差別の社会ですよ、今の日本ははっきり言って。その大人の社会を学校の中に同じように厳しく持ち込んで、学校の中でも子どもたちに競争させて、切磋琢磨という言葉は使っているけれども、結局は、世の中に出たときにショツクを受けないようにということを教育の中でさえやろうとするというやり方は、教育の本旨と全く違うというふうに指摘して終わります。

●都立高校の地域連携型中高一貫教育指定について

 ○曽根委員 それでは、都立高校の入試制度にかかわつて何点かお聞きしたいと思うんです。
 一つは、先ほどの陳情請願の中にも含まれていましたが、希望者全員をぜひ都立高校を含めた全日制を希望する人は受け入れてほしいという要望が出ているわけです。これについては、公私連絡協議会でしたでしょうか、そこで九六%という計画進学率を設定しているわけですね。
 都の考えでは、毎年暮れぐらいですか、中学生の卒業予定者から全日制希望者の数をとると、そうすると、今由の場合は九五%弱だつた。そういう意味では、九六%の計画進学率というのは、それを若干上回っていて、受け皿になっているんだということのようなんですが、しかし、実際には受験が終わってみると、全日制希望者の中で千名単位で入れない中卒者が出てきて、希望していない定時制に回らざるを得ないという事態が毎年繰り返されているわけです。
 この原因の一つとしては、私立に行けない、都立一本で希望している生徒が、結局のところ都立で受け皿をはみ出してしまいますから、あふれてしまうという問題と同時に、私は、中学生の中で今三%ぐらいいる不登校児ですね、この生徒の人たちが、実際上は全日制に行きたいと本人が思っていても、実際にはそこを受けることが事実上できない。定時制に最初から行かざるを得ないと、本人も含めてあきらめさせられている状況もあるんじゃないか。これは質問をしても正確なお答えというのはちょっと難しいかもしれないので、こういう実態を私も個人的にいろいろ聞いているもんですから、この改善と実態がどうなっているのかということをぜひつかんでほしいのと、やはり不登校を生まないための対策を、先ほども制度問題を言いましたけれども、強化してですね、本当に全日制に気持ちの上では行きたい子が行けるという状況を中学校の中でもつくっていく必要を強く感じているわけです。

 もう一つ、学区を今度から廃止していくわけですけれども、これについてはもうさんざん私の意見を言いました。それと同時に、最近、永山高校など幾つかの高校、商業、工業それぞれありますが、地域との連携による中高連携校というのが指定されました。

 私よくわからないんですが、東京都内の学区を全部廃止して、都立高校はどこの地域からどの学校を受けてもいいというふうにしている一方で、地域の特定の中学校と連携して、そこからの受験生については、学カテストやなんかについては省略をして、簡便な選抜方法で基本的には受け入れる方法で特別の関係を結ぶという高校をつくる。

 だったらば、最初からその地域での高校との結びつきを強めるんであれば、学区制度の改善の中で本来なら対処地域とのまたつながりを別の方法でつくっていくという、つくれない学校というのはどうなるのかということも含めて、政策的な整合性はどうなっているのかという疑問があるん
ですが、いかがですか。

○山際都立高校改革推進担当部長 学区撤廃の趣旨につきましては、学区撤廃の趣旨につきましては、都立高校がそれぞれ特色ある学校づくりを進める中で、生徒の学杖選択幅の拡大を図ろうとするものでございます。しかし、学区が撤廃されましても、例えば、地域の人材あるいは施設の活用など、学校の教育活動を充実させるためには、都立高校は地域との連携を推進していく必要があろうかと思います。
 ご質間にございます連携型中高一貫教育校につきましては、教育課程の編成あるいは教員・生徒間の交流等の連携を深めることによって教育内容を充実させ、個性化、特色化の推進を図るものでございまして、連携型中高一貫教育を実施する高校におきましても、連携する中学校から簡便な方法により受け入れる一定数の生徒以外は、地域の制限なく受け入れることにしておりまして、学区制撤廃の趣旨に反するものではございません。

○曽根委員 私、この連携型の中高連携校ですか、こういう制度をこの学区撤廃した後の各高校の特色化の一つとして制度を活用するということですよね、今、特色の一つとして。
 これは私、非常に邪道だと思うんです。なぜかというと、今まで全国でほとんどの地域連携型の学校というのは、東京で今回指定のあった三宅島、新島のように、ほかからの入学生が基本的にはごく限られたことでしか考えられない、ほとんど地元から高校に行く形だけれども、実際には行かないで、島から出て都内の高校に行ってしまう。それを何とか地域の中に残ってもらうために、それを受け入れましょうというのが各地方の県では過疎対策、少子化対策の一環であり、そこの地元の教育、人材、人の育成を保障するために、窮余の策としてとっている場合が多いんですよ。東京の場合も、ある意味ではそういう性格があるかもしれないけれども、地域からも入るけれども、ほかからも入ってくる。そうす
ると、中学校から事実上フリーパスで入った子どもと、ほかの地域からも結構受けてくるかもしれない。そういう子がまざって高校教育を受ける。私は非常に心配なんですね、こういうやり方は。入った後の生徒間のあつれきなり違いの意識が非常に起きやすいという
ふうに思うんです。
 それから、現実に都が進めている統廃合との関係で見ても、例えば永山高校の近くに稲城高校というのがあって、もう募集停止になりますけれども、これは募集停止になることが第二次計画ではっきりしているにもかかわらず、昨年は倍率ががっと上がったわけですよね。葛飾水元高校でも同じことが起きているわけです。募集停止になるとわかつているのに、そこに殺到したんですよ、受験生が。なぜかというのは、まだはっきりと都の方もつかんでいないようですけれども、統廃合の中で、各地域の、いわゆる底辺校と言われている、学力的になかなか難しい生徒を受け入れてきた都立高校をどんどん削ってきたために、そういうところに受験生が集中するという傾向が、つまりそこなら入れるということですよね、もっと上をねらうと失敗するかもしれないけれども。

 今、そういう受験生の中での不安からくる底辺校に集中する、もしくは募集停止がわかっている学校に、ここなら大丈夫だろうということでばっと集中しちゃうということだって起きているわけです。だから、永山高校がこういう地域連携型をとることが、逆に言うと、そういう子どもたちが入ろうと思っても、地域連携でそれぞれ縛りをかけて学区を狭めるというようなことにもなりかねない。非常に難しい問題を逆に引き起こすことになりかねないと思うんです。

 私は、もともと学区でもって、多少周辺学区やほかの学区から入れる学校をつくつて、そして、今まで基本的には他学区からの受け入れ枠を大きくはみ出すようなことがなかったわけで、現行制度を改善しながら、学区制度については全廃はまだ時期尚早であり、もっと十分な見直しが必要だというふうに言ってきましたけれども、今度の中高連携校ではそういう矛盾が起きかねないということを指摘したいと思います。

●自己PRカードの問題点について

 それからもう一つ、自己PRカードについて、これも前に文書質問したことがありますが、いよいよ作成が行われて、間もなく提出になると思うんです。自己PRカードを生徒がどのように書いて仕上げようとしているのか。それに対して、受験の指導の先生や担任の先生が、どういう指導のかかわり方をそれぞれやっているのかは実態をつかんでおられるでしょうか。

○仕留間学務部長 自己PRカードにつきましては、受験者が志望校に入学を希望する理由、中学校での学習活動や部活動の中で、特に自分として努力したことや、その成果を受験者本人が記入すると、こういうものでございます。生徒が記入いたします際に、担任の教師が必要に応じて指導や助言を行っているということは聞いてございます。受験者本人が、自分のよいところを志願校に伝えるという自己PRカードの趣旨からいたしますと、生徒の実態から大きくかけ離れた内容となるような行き過ぎた指導が行われることは望ましくありませんが、こうしたケースはほとんどないだろうというふうに考えておlります。
 一方、評価する都立高校の方でございますけれども、自己PRカードの評価に当たりましては、各学校がそれぞれ評価基準を定めまして、入学を希望する理由、中学校での具体的な活動状況やその成果、こういったものを採点するもので、単に文章が整っていれば高得点になるというような内容のものではございません。
 また、東京都教育委員会といたしましては、各高校に対して、自己PRカードに記載された内容から受験者のよいところを読み取ることができる評価基準を作成するように指導を行っているところでございます。

○曽根委員 たとえ評価基準のよいところを読み取るようなというふうに指定したとしても、これは百点から百五十点まで点数がつくわけですよね。点数で差がつくわけですよ。
 したがって、これは競争になるわけですね、点数によって。なりますよ。満点を全部つけない以上は競争になるわけですよ。だから、公正な競争になるのかどうかということは、どうしたって問われるわけですよね。学カテストであればマル・バツがつく。しかし、これはマル・バツをつける性格のものじゃないですよね。ですから、書いてあること一つ一つについて他の受験生との関係での相対的な点数をどうつけるのかという非常に難しいことになるわけです。
 しかも、私のところに、生徒の近親の方から寄せられた事例によると、担任の先生が相当手を入れているものもありますよ。しかし、担任の先生が見て、ここはもっとこういうふうにした方がいいよという程度ならば、そう大きく実態とは離れないと思うんです。

 しかし、ある生徒は不登校経験で、したがって、先生から勧められて三部制の定時制を受ける。三部制の定時制というのは倍率四倍以上ですよね、大変な難関ですよ。不登校経験の生徒が難関の高校を受けなければならないんですよ、今。そのために、その生徒さんの告白によるとうそを書いていると。リサイクル活動に参加もしていないのに、先生には本当のことはちょっと言えないので、先生から勧められたある団体の活動に参加した、喜ばれたというふうなことも書いてしまったということを近親の方に相談したわけです。

 このうそは、絶対にこれがちゃんと書かれていれば、だれもチェックできないでそのまま高校へ行きますよ。参加していないよりは、している方がいいに決まっているんですから、それで点数が取れるかもしれない。難関の高校を受けるんだから、それぐらいのことを考える生徒がいても不思議じゃありませんよ。

 しかし、これは公正な競争には反するわけですよね。反することを生徒がやってしまったときに、それを正すことができなければ、これは教育じゃないですよ。そういうことがチェックできないでしょう、高校の側では。チェックできないものを点数つけて、それで落としたり、合格したりできますか、これ。私、制度的には根本欠陥だと思うんですが、いかがですか。

○比留間学務部長 この自己PRカードの内容でございますけれども、大きく欄が三つに分かれておりまして、その学校を志望する理由、それから選択教科でございますとか総合的な学習の時間の取り組みの状況、それから諸活動の、これは例えば部活動とか、今お話がありましたようなボランティア活動というのはここに該当するわけですが、基本的には、この自己PRカードというのは、生徒本人が記載するものでございます。
 ただ一方で、中学から高等学校の方に調査書というのが送られますが、同様に、この中で諸活動の記録という欄がございます。当然、中学では進路指導の一環として、担任の教員が子どもたちとこういう問題についてはきちんと子どもたちのよいところを引き出す、あるいはどういう活動をしてきたかということを話し合う、それも進路指導の一環でございますので。そういう生徒に対する指導ということが中学校で行われて、そういう調査書というものが記載されている、こういうシステムになってございますので、今お話しのような内容が事実かどうかというのはわかりませんけれども、各学校でそういう進路指導の
面で、教員と生徒の間の信頼関係に基づいたきちんとした指導がなされていくべきだろうというふうに考えております。

○曽根委員 今最後におっしゃつたことは、学務部長の希望としてはわかりますが、それを保障する手だてがないんですよ。しかも、これは中学校の段階でも行わなければならないというけれども、それをやらせているのは東京都のこの自己PRカードがあるゆえなんですよね。しかし、それは無理ですよ、中学の先生といえども。 不登校で、自分の日常生活の中で何をやってきたかまで全部知り尽くすことまではできませんよ。

 だから、子どもの心の傷を残すだけになってしまう。こういうことだって起きかねない。さっき事実かどうかとおっしやったけれども、事実ですけれども、こういうことが起きても不思議ではないわけですよ、現実の問題としては。特に不登校の経験者については、難関なんですから、全日制にはなかなか行けないわけですから。三部制の定時制に行けといったって、それは今大変な難関でしょう。

 ですから、私はもしどうしてもやるというんなら、全員満点にせざるを得ないと思うんです。よほど変なことが書いていない限り、基本的に満点をつけるしかないんですよ。もしくは、この制度はもう少し検討というふうにならざるを得ないと思うんですよ、これは。これは別に教育の専門家じゃなくたって、一般人の常識として、公正な競争が保障されない制度を強行突破してはならないということは、教育者ならばだれしも考えなければならないことだと思うんです。そのことを申し上げて終わります。

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