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2007年2月22日予算特別委員会そねはじめ質疑
トーキョーワンダーサイトでの身内と側近重用が都庁職員の士気を下げている!四男使うのをキッパリ断念なぜできないか!

〇曽根委員 日本共産党都議団を代表して質疑を行います。
 我が党は、この間、知事と側近による超豪華海外出張や、知事交際費を使った高額な密室の飲み食いに都民の税金が使われてきたことをただしてきました。知事がトップダウンで都政に持ち込んだ重要問題が密室の飲み食いの場で話し合われ、都政がゆがめられてきたことも指摘してきました。石原知事八年で都政の私物化が進んでいることを指摘しないわけにはいきません。
 知事のトップダウン政治と都政私物化の象徴ともいうべきがトーキョーワンダーサイト事業であり、まずこの問題について質問します。
 ワンダーサイトは、知事みずからが認めたように、その設立の当初から、知事の四男延啓氏が深くかかわってきたものです。そして、知事によって、延啓氏の友人である今村有策氏夫妻が登用され、事実上、聖域の事業とされてきたものです。そのため、見過ごすことのできないゆがみが噴き出てきました。
 知事は、自分の身内やその友人を都政で重用するという、地方自治体の長としてやってはならないことをやってきたのです。都民やマスコミの大きな批判の声が噴き上がったのは当然です。にもかかわらず知事は、余人をもってかえがたいとまでいって身内の重用を当然視し、立ち上がり時期の組織的混乱があったというだけで、さまざまな問題を放置していることは、断じて都民が納得できるものではありません。
 私はこれから、一つ一つのゆがみについて知事の考えをただしますので、知事のいう事務方の背中に隠れてみずからは答弁しなかったり、何でも事務方のせいにするのはやめて、堂々と答弁をしていただきたいと思います。
 まず、ワンダーサイトの異常な乱脈運営についてであります。
 私、調べてみて驚いたのですが、とにかくワンダーサイトでは、事あるごとに税金による飲み食いが行われているのです。イベントのたびに交流会やレセプションが行われ、コース料理からワイン、ビールなどの飲食が税金を使って行われています。出演者や関係者の打ち合わせと称して飲み食いが行われています。
 領収書を見ると、生菓子代、和菓子、焼きグリ、ミックスナッツなどのつまみ類、ワイン、オリジナルビール、酒、パンなどという飲食に伴うものがやたらと多いのがここの特徴です。会議費の中にも、飲料代、おにぎり十個、サンドイッチ四個などという支出が多く、今村館長の交際費にも、アイスチョコレート、お食事代などというのが多いんです。
 総務局長にお聞きします。経費を伴う会議の東京都の開催基準はどうなっていますか。

〇大原総務局長 経費を伴う会議とは、個々の事業に関連して協議、打ち合わせ、情報交換等を行うに当たりまして、弁当、茶菓や飲食を伴うものを指します。予算科目上は、節の需用費の一区分でございます細節、一般需用費から経費を支出するものでございます。
 経費を伴う会議の開催基準がございまして、これは、こうした経費の適正な執行を図るため、会議を三つの類型、すなわち、弁当、茶菓を伴う会議、飲食を伴う式典等、飲食を伴う随時の協議、打ち合わせの三つに分類いたしまして、それぞれ取り扱いを明確化したものでございます。
 なお、飲食を伴う随時の協議、打ち合わせにつきましては、社会通念上やむを得ないと判断される場合を除きまして、原則として全廃しております。
 現在、経費を伴う会議につきましては、この基準に基づき適正に行われているものと考えております。

〇曽根委員 東京都では、飲食を伴う打ち合わせなどは原則として全廃し、会議や打ち合わせは、できるだけ昼食、夕食時は避けるようにしているんです。それなのに、ワンダーサイトは、そんなことはどこ吹く風で、税金を使った飲み食いが行われているんです。
 さらに驚くべきことは、今村館長お食事代とか、家村様お食事代、どら焼き二百円、赤ワイン、白ワイン、まい泉の豚カツなどという飲食費が事務局の消耗費として計上されているんです。
 私、渋谷のワンダーサイトにあるカフェクラゲというところに行ってきましたけれども、どら焼きは一個二百円でした。したがって、どら焼きは一個、こういう形で消耗費で出している。こんなものまで事務局消耗費に入れているのです。事務局消耗費がだれのおなかで消耗されたのかわかりませんが、とても常識ではあり得ないことじゃないですか。どうですか。

〇渡辺生活文化局長 文化事業は本来、施設整備などと異なりまして、人とのつながりだとか交流が大変重要な要素でございます。若手芸術家の育成、交流促進を目的とするワンダーサイトについては、これと全く同様でございます。東京都の基準が先ほど述べられましたが、事業の内容、目的が違いますので、東京都の基準をそのまま適用するということは、私はこの場合、適切ではないと考えております。
 展覧会のオープニングだとか、あるいは招待客にそういうレセプションで飲食を供したり、あるいはいろんな交流のためにいろんなお茶菓子だとかそういうものを出すのは、やはり必要なものではないかと思っております。
 先ほど、何とか様お食事代とかございましたけれども、これは確かに、書類の中に用途及びどういう目的かというのが書いておりませんでしたので、情報開示された文書でございますが、確認いたしまして、それぞれ打ち合わせを担当でやったということでございまして、決して不適正な支出ということではなくて、必要な範囲の支出だというぐあいに認識をしております。
 なお、どら焼きについてでございますが、どら焼きは、これはもうご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ワンダーサイトの渋谷で行いました展示会の中の一つの出展物でございまして、そのどら焼きの表面に東京都の下水道のマンホールのふたの文様を押しまして、いわば記念品的につくっているものでございます。そういうものをワンダーサイトの方に来られた方に茶菓として出したり、あるいは、あるときは記念品としてお渡しすると。
 一個というのは、これも確認しましたところ、人数が、ちょうど数が足りなかったので、どら焼きはそんなに長くもつものではございませんので、一つだけ追加で購入したということでございました。

〇曽根委員 局長、簡潔な答弁をお願いしますよ。私どもの方も時間をきちんと厳守するんですから。
 私はどら焼きを買ってきましたよ、見本のために。(実物を示す)確かにマンホールが打ってあるんだけれども、これは普通のどら焼きですよ、はっきりいって。これを記念品だというなら、それじゃ、牛乳一本とかコンビニ弁当二個というのもあるんですよ。これがお土産ですか。赤ワイン二本もお土産ですか。どうなんですか、局長。

〇渡辺生活文化局長 曽根委員もご存じだと思いますが、非常に大量な情報開示の文書を開示しておりまして、千枚以上にわたる文書でございまして、私も詳細まで目を通しておりませんが、打ち合わせその他に必要であるということで支出したものと思っております。
 ワンダーサイトは非常に少人数の組織でございますが、その点で、細かいところまで記載していないというようなところもございますが、適宜その支出内容について確認した上で、必要な経費として支出しているというぐあいに認識しております。

〇曽根委員 私、同じ生活文化局所管の現代美術館に聞きました。都の監理団体なので、都の基準を準用しているということです。なるべく昼食、夕食時は避けているが、十八年度、今年度、一回だけ、外部の人も入った会議で、ほかに日程がとれず、十一時から午後二時ころまでになってしまったので、弁当を出したことが一回だけあるということです。館長交際費は年間わずか一万円です。冠婚葬祭のときに使っているそうです。東京都の各部局も、現代美術館も、ワンダーサイトのような税金を使った野方図な飲み食いはやっていないんです。
 知事、知事のトップダウンで行われているこのワンダーサイトですが、なぜこんなことがまかり通っているのか、調べたことはないんでしょうか。余りにも野方図、乱脈な運営だと思いませんか。知事、いかがですか。

〇渡辺生活文化局長 現代美術館等は非常に大きな美術館でございまして、観覧者が非常に多いということで、いずれにいたしましても、展覧会の観客の方に非常に喜んでいただいていると。
 一方、ワンダーサイトの方は、やはり交流ということとか若手の育成ということを目的としておりますので、やはりそれぞれ提供するものも、おのずから違ってくるというぐあいに認識をしております。
 なお、十八年度から、ワンダーサイトの事業につきましては、東京都歴史文化財団の方に移管をいたしまして、一月から組織、人事を充実して体制を整備しております。執行に当たっては、適正に執行できるように努めてまいります。

〇曽根委員 結局、知事による聖域の事業だから、局長はそんなことしかいえないんでしょう。職員は、知事の重用する今村館長夫妻の意向に逆らえないんですよ。このことがワンダーサイトの乱脈ぶりの原因になっているんです。真相なんですよ。
 もっと驚くべき事態があります。領収書の情報開示をいただいたんですが、その中に、かなりの枚数、上様とあるだけの領収書や発行者名のない領収書、お品代と書いてあるだけで、何に使ったかもわからないものが多数あります。決済の印も押していないものもある。とりわけ二〇〇四年度までがひどいものです。
 監査事務局長にお聞きしますが、このような領収書があった場合、監査でどういう指導をなさいますか。

〇白石監査事務局長 ただいまワンダーサイトコミッティにおける事例が挙げられましたが、一般的に監査事務局が都における監査で領収書を確認するのは前渡金支出の場合でありますので、その場合についてご説明いたします。
 実地監査において、領収書に発行者名や内訳の記載がない事例等が見受けられた場合は、前渡金支払い予定調書などの原議を調査するとともに聞き取りを行い、使途等が適切か確認いたします。その上で、事案の程度に応じまして、領収書の記載内容の不備について指摘するか、判断していくことになります。

〇曽根委員 これは原議なんかありませんよ。領収書しか残っていない。
 どうですか、生文局長、これは余りに野方図、乱脈だと思いませんか。

〇渡辺生活文化局長 トーキョーワンダーサイトの経理、会計の手続でございますが、ワンダーサイトは当初、規模が非常に小さかったということから、複式簿記などの企業会計方式によらないで、簡易な処理を行っていたわけでございます。幾つか書類についてミスもございますが、いずれにしましても、領収帳等の内容を適宜確認して、適正な支出を行っていたというぐあいに認識しております。
 その後、事業規模も拡大し、監査委員の指摘もございましたので、当ワンダーサイト事業を財団法人東京都歴史文化財団に移管をしております。現在、会計処理は、複式簿記を採用している同財団の規定に従っているところでございます。
 また、先ほど申し上げましたように、財団では本年一月に組織改正を行い、ワンダーサイト事業にかかわる体制を充実したところでございます。今後とも、効果的で適正な事業の実施に努めてまいります。

〇曽根委員 本当に苦しい答弁なんですけれども、今は何とかやっているからというふうな話ですが、少なくとも私が見る限り、二〇〇四年度まではもう本当にひどいですよ。ということは、都の職員は、東京都の補助金がワンダーサイトで飲み食いにどんなに使われようが、どんないいかげんな会計処理がされようが、少なくとも最近まで、知事に逆らえないから関知できないということを意味することになります。公金の使われ方がこれでいいのか、事は重大な問題ですよ。
 知事、今の発言、局長が答弁しましたけれども、知事はどうなんですか。乱脈、余りにもずさんだと思いませんか。知事の認識をお聞きしたいんです。

〇石原知事 具体的には局長が答弁しましたとおりでありますが、決していいわけではございませんけれども、立ち上がりのときに、これがきちっとした組織の中に組み入れられないままに事態がどんどん進行しまして、いろんな事業が、今まで未曾有なことですけれども、非常にアクティブに行われました。その過程で、組織そのものがどこへ吸収されているのかさっぱりわからぬままに走ったうらみがございます。
 ですから、やっぱり支出に関しても、かなり小さな額でもなお、どういう形の責任になるかわからぬものですから、職員の方々がそういうものを残しておられたわけでありまして、それがいい悪いということじゃありませんけれども、いずれにしろ、だんだんそういうことがわかってきましたので、やはりこれはきちっとした組織として組み込む必要があると。過渡的なものじゃなくてきちっとしようということで、担当の関谷副知事に頼みまして整理をいたしました。
 繰り返して申しますけれども、官僚の観念では、ああいう小さな建物の館長というのは課長並みだそうです。しかし、今村君は参与として迎えましたし、あそこの最高責任者ですし、かなり充実した仕事をしてくれておりましたし、常勤ということでして、ならばなお一層、つまりそれは課長ということで、その課長が、身分としては、都の概念では上の部長、局長に物を申す、依頼する。ですから、その中間に立った人間はどう受け継いでいいかわからない乱脈が−−混乱があったようであります。乱脈では決してございません、ただの混乱です。

〇曽根委員 組織の混乱とか小さな額とかおっしゃいましたが、そんなものじゃないんですよ。
 きのうやっと、私たちが求めてきた現金出納簿が開示されました。二〇〇二年度は、帳簿が四月は二日分しかつけていない。五月から後は、七月上旬までしか記載がありません。二〇〇三年度は、あるにはありますけれども、領収書のない不明金が四百八十七万円もあります。決して小さい額じゃありませんよ。一つの家族が年間暮らせるぐらいのお金が不明金になっているんですよ、本当に。二〇〇四年度は百一万円の不明金がある。銀行などでは、一円不明金が出たって大変ですよ、これは。徹夜で調べます。ましてや公金です。
 知事、あなたがワンダーサイトに送り込んだ今村館長夫妻の責任が重大なんですよ。こんな経理が許されるわけはない。知事、東京都で、もし都庁の中であれば当然行われるでしょう、実質的に責任を負っている今村館長に不明金の返還を求めるべきじゃないですか。知事、どうですか。あなたが参与にも任命し、館長もお願いしたんだから、知事、どうですか。考えを聞かせてください。

〇渡辺生活文化局長 ワンダーサイトの経理でございますけれども、先ほど申し上げましたように、複式簿記でなくて簡易な処理方式をとっておりました関係で、未収金だとか未払い金の整理だとか、あるいは小口現金の整理だとか、また自動引き落としだとか、そういうところで、領収書が必ずしもその年度に発行されていない、あるいはそういうのがございます。そういう点で計算をいたしますと、単純に領収書を合計するだけでは合わないところが出てまいります。私どもの方も精査をしておりますが、今申し上げたような数字にはならない。もっと小さな数字であろうと思います。
 ただ、一部、講師謝礼の際に領収書をもらい損なったとか、そういうのがメモで残っておりますが、決して不正な支出であったというぐあいには認識しておりません。

〇曽根委員 私たち、これを計算して、大変な計算をして出したんです。もし違う計算があるというんだったら、後で出してくださいよ。
 知事が今村館長夫妻の、自治体はもとより民間でも許されない乱脈の限り−−やりたい放題ですよ、実際。これを容認していることは、都政全体の士気を大きく低下させています。ところが知事は、今村夫妻と自分の責任は棚上げにして、専らまじめに働いている都の職員の方に責任をなすりつけている。職員に対する誹謗を繰り返しているじゃありませんか。
 先ほど、先日の「サンデープロジェクト」で、渋谷の新館を開く前に、今村氏の下にいる役人たちは合法的な手続をとってみんな休んじゃった、サボタージュだと発言したことについては、事実は違うということが確認されました。知事たるもの、事実を確かめてから物をいうべきであって、あなたは本当にそういう事実をゆがめる発言が多いんです。厳に慎むべきであります。
 知事は口を開けば職員はだめだといっていますが、実はだめなのは、知事が都政に引き込んだ側近の方です。側近を都政から引き揚げさせることこそ、都政の活性化の道です。今の石原都政には、地方自治体としての最低限のモラルさえ失われたといわざるを得ません。
 今、例えば国民年金で生活している高齢者は、食事代も削り、身を削って暮らしているんですよ。働けど働けど生活保護基準以下の給料しかもらえないワーキングプアの若者は、これはテレビ放送もありましたが、ノリ弁一つを二回に分けて食べているんですよ。それなのに、ワンダーサイトでは野方図に税金で飲み食いで、毎日毎日ですよ、この領収書は。こんなに山になっているんだから。飲み食いやり放題。知事交際費での、例えば一人三万円とか四万円とかいう飲み食いも問題ですけれども、こういう野方図は絶対都民は認めませんよ。
 重大なことは、このような乱脈運営を続けるワンダーサイトの予算がこの間八倍にもふやされているのに、都の文化施設予算や都の文化芸術鑑賞事業などは軒並み減らされていることです。同じ期間に、都民芸術フェスティバルは五六%、都響の運営費が六四%に減額されているのと比較すると、優遇扱いは歴然としています。
 もっと少額ですけれども、関係者にとっては貴重な支援の事業で廃止、縮小されたものがたくさんあります。毎年十万人の小中学生が生のオーケストラを鑑賞してきた音楽鑑賞教室も、中学生対象の文楽教室、歌舞伎教室も廃止されました。高校生対象のオペラ教室やバレエ教室も廃止されました。あんまりひどいじゃありませんか。
 知事、他の文化芸術振興予算を削りに削っておきながら、若手芸術家育成といってもワンダーにだけお金をかけることは、自治体としての文化施策をゆがめるものではありませんか。これは知事の基本施策にかかわることですから。

〇渡辺生活文化局長 東京都といたしましては、昨年五月に東京都文化振興指針を策定いたしまして、総合的、体系的に文化政策を実施しております。そのもとで、新進、若手アーチストの育成、支援事業は重要な柱であると位置づけて推進しているところでございます。
 なお、都立の文化施設の予算を削減したというようなお話がございましたが、これは、各文化施設が質の高い企画によって大きく観覧者数を伸ばしております。また、自主収入、記念品だとかスーベニアショップの収入その他の大幅増収を図るなどの運営努力を行った結果、都からの支出も削減できたものでございます。
 事実、日本経済新聞が昨年十月に行った全国美術館の実力調査では、総合評価で、写真美術館、現代美術館がトリプルAの評価を受け、それぞれ全国第三位、第六位にランクされております。また、行ってよかったとする利用者調査では、上位三位をすべて、現代美術館、東京都美術館、それから庭園美術館が独占をしております。
 さらに、来年度予算におきましては、収蔵品の収集費用を一億円超ふやしておりますし、新たな基金も二百億円ほど計上しているところでございます。

〇曽根委員 いろいろおっしゃっても、予算を削ってきたことは間違いないんですよ。現代美術館なんか、いろいろ企画を工夫していますよ。予算がないから工夫せざるを得ないんですよ。新しい作品なんかほとんど買えない状態じゃないですか。知事のトップダウン事業だけ伸ばして、後は削るということで、まともな文化行政ができるわけはありませんよ。
 知事、現代美術館も、実はコンテンポラリーアートの若手育成事業をやっているんですよ。毎年やっているMOTアニュアルという企画で、今も五人の若手作家の展示を現在しています。現代美術館は、公立の現代美術館としての役割をしっかり自覚して、多様で多彩な現代美術の全体像を把握し、整理して都民に示す、これが公共の美術館の役割だということで、例えば子どもたちのワークショップもあります。
 大体、若手の育成というときに、制作者だけでなくて、教員や学芸員やインターンや、それから実習の方など、専門家とコミュニケーションしながら育っていくと。このコミュニケーションを大事にしているんですよ、現代美術館の若手育成というのは。
 若手支援といいながら、なぜこっちの方を軽視するのかと。自分のお気に入りのワンダーサイトだけにてこ入れをするのかと。ここのところ、ちょっと知事の考えをお聞かせください。

〇石原知事 私はどちらの施設にも、別に偏重した価値を置いているわけではございません。ただ、現代美術館は現代美術館なりに体裁を整えて、そういうふうなことをしておりますけれども、もっとその陰にある、本当にこれから可能性のある若い芸術家のヒンターランドというのは手を結んでいない。
 ですから、予算が偏重しているといわれますけれども、やっぱり育っていく、これからとにかく、芽を出しかかっているのにたくさん水を与え、光を注ぐのは当たり前じゃないですか。もう既に育ったものは、それは自前でやっていけばよろしいので、例えば現代美術館にしろ写真美術館にしろ、今までと違って、経営能力のある人を館長に迎えることで成績が上がってきている。私は大変結構なことと思います。

〇曽根委員 知事はいつも、若手を育てるのはワンダーしかないようなことをおっしゃっていますけれども、とんでもありません。今私が紹介したように、若手芸術家を本当にすそ野から育てるという仕事に多くの自治体が取り組んでいるんですよ。世界はもちろんですけれどもね。
 ワンダーサイトだけ破格の予算で優遇し援助するというのは、自治体の文化芸術振興のあり方をゆがめるだけじゃないんですよ。美術界の中の、それもコンテンポラリーアートといわれる世界にさえ、狭い価値基準による差別を持ち込むことになりかねないわけです。例えば、美術界の一番メジャーな雑誌である「美術手帖」、最近の「美術手帖」を見てくださいよ。(実物を示す)ほとんどコンテンポラリーアートの紹介ですよ。ほとんどこれが中心です。美術大学だって、かつての油絵だとかそういうものよりも、今コンテンポラリーアートが中心になってきているんですよ。もう間口は非常に広がっているんです。知事がいつもおっしゃるように、狭い世界じゃないんですよ、もう。
 そういう中で、ワンダーサイトだけに予算を八倍も伸ばして、ほかはもうかすかすになっているということでは、これは自治体としての文化行政には絶対ならないんですよ。若手は本当の意味では育ちません。このことは申し上げておきたいと思うんです。
 それから第二に、知事の四男延啓氏を重用しているために、直接的にゆがみが生じている問題についてただしたいと思います。
 トーキョーワンダーサイトの実態を調べて感じるのは、知事自身を初め、ワンダーサイトの今村館長や、それにかかわった特定の都の幹部職員らが、知事の四男延啓氏に、とにかく公費を使って出張させたり、作品発表の場を与えたり、あの手この手を使って、四男の方の芸術家としてのステータスをいかにアップさせるか、これに躍起になっていることです。
 開示されたメールなどのやりとりを見ると、例えば延啓氏がワンダーの関係で台湾に出張したときも、今村館長が公費を出させようと画策しています。石原−−これは黒塗りになっていますから、何とか両氏は、やはりワンダーサイトからの調査委託でできませんか、こういう文書をメールで送っています。つまり何とか公費で出張にしたいということを、もう盛んにやっているわけです。
 二〇〇五年の調査委託であろうが−−調査委託の可能性をこうやって探っているということは、結局、知事の四男の方だからということで、何とか税金でと、こういう発想になっているんですよ。こういうことはやっちゃならないことだというふうに私は思うんですが、知事はどう思われますか。

〇渡辺生活文化局長 お話のことにつきましては、今村館長から事務局にあてたメールの内容から質問されているということでございますが、当該メールの内容は、石原延啓氏の旅費がワンダーサイトから支出されないことを前提とした上で、単に調査委託の可能性を問い合わせたものだと思います。
 今村館長が公費を出させようと画策したという指摘は当たりませんし、また、今村館長がすべてを取り仕切って職員を意のままに使っているというのも、実際にはこの件については調査委託は行われておりませんので、その辺の指摘は当たらないと思っております。
 また、氏は、結果として自費で台湾を訪問しておりますので、出張にも当たりません。

〇曽根委員 調査委託であろうが、直接旅費を出そうが、とにかく公費を使わせようとしている。そういうふうにメールでも画策をしているということはもう、これが画策といわず、何が画策というんですか。
 また、二〇〇五年のニューヨークの芸術サミットに、市の招待で東京都の代表として参加した中に延啓氏も加わっていた問題も見過ごすことはできません。延啓氏がシンポジウムに参加して発言している、これはホームページに音声つきの映像が出ています。わきには今村夫妻も映っていますよ。このときも延啓氏は、自分をワンダーサイトのキュレーティングアーチストだと自己紹介していますが、これも正式の肩書がついていなかったときですね。
 ニューヨーク市の招待のシンポジウムで、キュレーティングアーチストという、そのとき実在しなかった肩書をなぜ使わせたんですか。

〇渡辺生活文化局長 平成十七年二月の都市の公共芸術戦略サミットには、都側からは、都の職員及び文化担当の今村東京都参与が出席をいたしました。また、主催者側からアーチスト等の出席を求められたということで、トーキョーワンダーサイトからの推薦を受けまして、生活文化局におきまして、オブザーバーとして石原延啓氏と今村佳代子氏の二名の出席を決めたものでございます。
 当時、石原延啓氏は、既にキュレーティングアーチストとしての任期が切れておりましたが、ニューヨーク市の姉妹都市委員会に対して、東京都が石原延啓氏についての略歴を紹介する文書を送付する際に、任期に関する誤りを見落としていたものと思われます。また、石原延啓氏及び今村館長もその辺について、任期について、きちんとした認識がなくて、お忘れになっていたのかなと思っております。

〇曽根委員 今村館長は、だって自分で任命する権限者ですよ、そのキュレーティングアーチストを。明らかに虚偽の肩書をニューヨークに送っているんですよ。この責任を見落としたとかいって指摘できないのは、後ろに知事がいるからにほかならないでしょう。これも知事のトップダウン事業の害悪なんですよ。知事が、今村氏がどんなにひどいことをしてもかばい立てしているからですよ。
 延啓氏をワンダーサイトで使い続ける限り、こういうふうなことが次々と起こることは明らかじゃありませんか。知事、どう思いますか。こういうことについてどう思うか、知事のお考えをさっきから聞いているんですよ。だめですよ、局長じゃ。どうなんですか。

〇石原知事 いろいろご指摘のようですけれども、当人も本当にほとほと愛想が尽きまして、もう二度と東京の仕事は嫌だと。本当に、私が余人をもってかえがたいと申しましたのは、彼の才能云々じゃなしに、とにかく融通をきかせて、ほとんどただ働きに近くやってもらって、しかも余人をもって、なるほどというような作品を、特にダボスの会議のバックグラウンドがそうでありますが、そういうことをやってくれるから、私は余人をもってかえがたいといったんで、当人は、そういう表現そのもので随分傷つきましたし、もう二度と東京の仕事はごめんだといっております。(発言する者あり)私の責任じゃないでしょう。これはとにかく今村館長に預けていることですから。

〇渡辺生活文化局長 今村館長の方の任免行為で、あたかも故意があって経歴を詐称したというようなお話でございますが、今村館長の方の責任と権限で、逆にキュレーティングアーチストの任期を延長していればよかったのかなと思いますが、その辺は、民間の方で、詳細についての手続について精通していなかったのかなというぐあいに思っております。

〇曽根委員 そんな、肩書を延長することを知らなかったんじゃないんですよ。四人で行っていますよね。ほかの三人のメンバーは都で派遣していると、ちゃんと旅費が公費で出ているんですよ。しかし、公費で出張費が、延啓氏の場合は正式決定した文書もないし、公費も出ていない。つまり肩書がない民間人であることはよくわかっているんですよ。だから税金が出ないんですから。にもかかわらず、正式な東京都の文化行政の代表としてシンポジウムには出ちゃっているんですよ。ここが問題だといっているんです、さっきから。
 そして、無理して延啓氏を派遣してどうなったかと。これは国際的な問題ですよ、ニューヨーク市の芸術サミットですからね。延啓氏のニューヨークでの発言を調べた週刊誌は、東京都の公共芸術の実情を全く理解していなかったというふうに報道しています。これはその週刊誌に書いてあるんですけれども。
 知事、コンテンポラリーアートというならば、東京には広く人材がおります。知事はそんなことも知らないはずはないです。なぜワンダーサイト関係者のみを派遣し、現代美術館など多士済々の人材を派遣しなかったのか。知事の意向をしんしゃくして、今村館長夫妻が無理をして延啓氏をそのニューヨークの舞台に送り込む。だからこんなことになるんですよ。
 延啓さんは何といっているか知りませんが、知事の責任で、延啓さんはもう使わないと、ワンダーサイトからも人事を一新するということをなぜいえないんですか。どうですか、知事。そういうお考えはないんですか。

〇渡辺生活文化局長 先ほど申し上げましたけれども、延啓氏につきましては、ボランティアということと、オブザーバーということで派遣をしております。本人はボランティアで出るということですので、あえて東京都が公費を支出する必要もないのではないかと思っております。(発言する者あり)ボランティアにつきましても、これは逆に、ニューヨーク市の姉妹都市委員会の方から芸術家の方の派遣を要請してきたということで、石原延啓氏に参加をお願いしたところでございます。
 それからもう一つ、パブリックアートに関しまして、あるいは現代芸術についてでございますが、美術館で扱うものと、こういうようなワンダーサイトのような、実験的といいますか、さらに美術館で扱うほどの定評を得ていないようなものにつきましては、それぞれ役割分担がございます。
 ニューヨークにおきましてもパブリックスペースワンという施設がありまして、これは東京のワンダーサイトと非常に似たものでございますが、美術館であるMOMA、近代美術館と提携をして、逆に美術館に展覧される前の段階の人たちがそこで活躍をする、あるいは育成をしているというようなことがありますので、おのずから役割が違うし、トーキョーワンダーサイトで適当な場所であったと私は思っております。

〇曽根委員 ボランティアだからいいんだということにならないんですよ。
 我が党が本会議の代表質問で明らかにした、名刺を使った肩書詐称問題があります。ワンダーサイトのアドバイザリーボード、キュレーティングアーチストという延啓氏の名刺をワンダーサイトとして発注したことについて、本会議で生活文化局長は、延啓氏がボランティアとして活動してきた経緯から、今村館長の判断で印刷したと、ワンダーサイトでは負担していないと答えました。では、名刺代はだれが払ったんですか。

〇渡辺生活文化局長 石原延啓氏の名刺の作成、印刷経費は、トーキョーワンダーサイトでは負担しておりません。延啓氏の請求書は本人に渡しておりまして、既に支払われたとのことでございます。
 また、この名刺の使用につきましては、館長が任期切れであるということを印刷終了後認識をいたしまして、石原延啓氏に使用しないように要請し、延啓氏の方は現在この名刺を使用しておりません。

〇曽根委員 知事、今村館長の判断で名刺は発注し、印刷されたと。この発注の原議を見ますと、副館長の家村の印が押してあります。つまり、今村夫妻の責任によって、肩書上虚偽の名刺をつくらせたんですね。知事が任命した文化担当参与である今村氏によって、知事の四男の肩書詐称がやられているんですよ。今村夫妻の責任と、このような人物を任命し重用している知事の責任は重大です。また、延啓氏が委嘱もされていないのに、その名刺を受け取ったり使ったとしたら、延啓氏の責任は免れません。
 知事、どう思いますか。部下の背中に隠れないで、今度は知事自身が答えるべきですよ。どうですか。この名刺の肩書の問題についての知事の見解を伺っているんです。どうですか、知事。

〇渡辺生活文化局長 先ほどご答弁したとおりでございますけれども、一時、キュレーティングアーチストに位置づけられておりまして、ボランティアとして活動していたわけでございます。その後も引き続きボランティアとして活動しておりまして、こういう経過の中から、館長の判断で印刷したということでございます。
 また、平成十八年度からワンダーサイトに完全に事務が移管されておりますので、館長の方は民間の方でございますし、財団における新たな規定の整備等については、それほど詳しくご存じなかったのかなと思います。いずれにいたしましても、本年の一月に館の組織及び人事を再編強化いたしまして、適正な事業執行に努めているところでございます。

〇曽根委員 延啓氏に関するこういう肩書の詐称とかニューヨークへの……(発言する者あり)だって、実在しない肩書を使っているんですからね、海外まで行って。これは明白に今村館長の責任ですね。
 さらに今村氏から、こういう話もあるんですよ。延啓氏を雑誌の編集長にしようという画策がありましたね。我が党が入手した資料によると、ワンダーサイトがクリエイティブトウキョウという季刊雑誌の発行を検討していますね。発行部数は二万部、チーフディレクターは石原延啓氏というのです。ことし三月ごろ創刊号を出す予定だったというものです。
 ことし一月の東京新聞でも報じられていますが、昨年五月ごろ、関係者内で延啓氏を編集長とする季刊誌の発行が検討されていたことがあるはずです。準備号の初めは、四男延啓氏と人類学者の、アートと神話に関する手紙のやりとり、石原知事とロンドン市長の対談、ロンドンオリンピックと文化など、いかにも知事がお気に入りの内容ですよ。東京新聞によれば、今村館長は、幾つもある企画案の一つで、何も実施に移されていないと語ったことが報道されています。
 知事はこの事実を知っていますか。知事、どうですか。

〇石原知事 全く知りません。

〇曽根委員 ワンダーサイトへの知事の四男の関与への批判が高まる中で、この企画は見送られたわけですよ。昨年の恐らく夏ぐらいでしょう。
 東京都が発行する雑誌の編集長を知事の身内が行う。こういう公私混同はやはり許されないと思うんですけれども、知事、もしこれが事実だったとしたらどう思いますか。知らなかったということで、今知ったでしょうから、どうですか。

〇石原知事 その人間の能力次第だと思います。

〇渡辺生活文化局長 東京都の発行する雑誌というお話がありましたが、私、昨年の七月十六日付だったと思いますが、生活文化局長に就任いたしましたけれども、都でそのような雑誌を発行する、生活文化局で発行するという話は一切聞いておりません。
 また、トーキョーワンダーサイトで発案した多くのアイデア、企画の一つにすぎず、結果として実現に至らなかったということは、館長が申し上げているとおりだと思います。

〇曽根委員 さっき知事は、本人の能力次第というお話でしたが、能力があれば、知事が能力を認めれば、身内でも、局長がおっしゃるなら東京都関連のでいいですよ、雑誌の編集長を知事の息子さんがやる、こういうことが許されるのかと。能力次第だというんですか。
 さっきからいっていますけれども、知事の四男とその仲間の異常な重用が抜本的に改まらない限り、こういう企画がまたぞろ出てくるということですよね。出てくる可能性があるということを知事がお認めになっているということですよ。とにかく延啓氏を世に売り出そうという、公費を使わせようという策動が続いている限り、ゆがみが拡大するんですよ。
 これまでの一連のゆがみは、ワンダーサイトこそ、知事の四男の延啓氏を世に売り出すためにつくられ、利用されてきたという批判を浴びても仕方がないと思いませんか。延啓氏をワンダーサイトにかかわらせることを一切やめるべきだと。
 さっき知事は立たなかったから、もうはっきりお聞きします。延啓氏を知事の側からワンダーサイトにかかわらせないと、こう決断をすべきですが、どうですか。

〇石原知事 そういう質問は邪推というか、げすの勘ぐりだと私は思いますね。

〇渡辺生活文化局長 トーキョーワンダーサイト、あるいはワンダーウォール、ワンダーシード事業というのは、広く若い芸術家に門戸を開いております。知事のご子息が、その中でワンダーウォールに何か作品を飾られたという記憶は一切ありません。広く門戸を開いている事業だと考えております。

〇曽根委員 知事は、息子さんがボランティアで働いているからとか、それから昨年の十二月の本会議でも、みんなただで働いているというふうなことをおっしゃっていますけれども、延啓氏には、キュレーティングアーチストとしての報償費二十七万円余りが一たんは支払われているんですよ。後でまずいと思ったのか、返していますけれども、ワンダーサイトに深くかかわっている人たちも、今村館長夫妻を初め、みんな何らかのお金をもらっています。
 知事が昨年の第四回定例議会で、ほとんど無料でやってくれているといって名前を挙げた佐野氏、これが経営するスーパー・ファクトリーには、ワンダーサイトから四百万円以上が支払われていますよ。久住氏にも三十一万五千円が支払われています。昨年の第四回定例議会での知事の答弁は明らかにうそだった、事実と違うといわざるを得ませんが、知事、どうですか。知事、これは知事の答弁です。知事の答弁でしょう。

〇渡辺生活文化局長 石原延啓氏のキュレーティングアーチストとしての報酬でございますけれども、十二月にお支払いしたんですが、自分の活動は当初からボランティアであるということで、お返しになりました。ちょうど三月は、いろんなご事情があって、忙しかったりして、返す時間がおくれたのかなと私は想像しておりますが、三月のこの時期というのは確定申告の時期でもありますので、その辺、きちっと整理をされてお返しになったのかなと思っております。
 それから、いろんな方々がご協力いただいておりますが、場合によりましては、無償ではなくて、実際にいろんなお仕事をしていただくということになれば、やはり正式な契約を結んでお金を支払うということの場面もあろうかと思います。

〇曽根委員 もう知事は絶対立ってこないんですけれども、改めようとする意思がないようですけれども、さらに、能オペラの企画がありましたね。これをめぐる一連の経過。延啓氏や今村夫妻を初めとする延啓氏の友人ばかりか、まさに知事自身も深くかかわって税金を浪費し、私物化してきたことの責任があるといわざるを得ません。
 知事は初めは、あたかも能オペラをやることや、知事自身が脚本を書くことが、作曲を行う細川氏側から持ち込まれたようにおっしゃっていました。しかし、その後、記者会見で知事は、うちの息子も参加して能オペラをやろうという企画が決まったとワンダーサイトから連絡があったので、それじゃ、おれが本を書いてやろうかとなったとおっしゃっています。
 知事、この企画の中で、知事に百万円の脚本料が払われることになっていました。都が行うイベントの脚本を知事が書き、脚本料をもらう。こんなことが許されるんでしょうか。都政の私物化そのものではありませんか。知事、いかがですか。知事、知事、どうですか。

〇渡辺生活文化局長 能オペラの実施主体は能オペラの実行委員会ということで、東京都と違う団体が主催をするということになっておりました。したがいまして、能オペラの脚本料については、知事は、直接の東京都の直営事業じゃありませんが、東京都がかかわる事業であるということから、無償で脚本を提供するつもりでいたようでございます。
 しかしながら、自治体の首長が脚本という著作物を無償で提供した場合、公職選挙法に抵触するおそれがあると、これはもう議会の議員の方々も十分、公職選挙法についてはご存じのことと思います。結果として能オペラが公演中止になりましたから、知事に対しては脚本料は当然お支払いしておりません。

〇曽根委員 そういう場合は、知事が脚本を書くのをやめればいいじゃありませんか。東京には多士済々の作家がいるじゃありませんか。それとも、自分以外はみんなだめだというんですか。なぜ、ほかの人に任せようとしなかったのか。今度こそ知事が答えてくださいよ。知事が、おれが本を書こうというふうに申し出たわけですから。知事、どうなんですか。自分じゃなきゃだめだということなんですか。どうですか、知事。知事ですよ、これは。

〇石原知事 その企画がありましたので、だれかに本を頼むということだったら、私にもアイデアがあるから私でどうだということを申しました。百万円というのは、ちょっと私の原稿料にしては安過ぎますな。

〇渡辺生活文化局長 経過を調べてみますと、オペラの脚本家の選定は、作曲家が作家石原慎太郎氏がいいんじゃないかということで発案し……(発言する者あり)私、きちんと資料を調べた結果、そういうことで、知事も時々思い違いがございますので、必ずしも−−私の調べた結果では、作曲家の提案により、ワンダーサイトでいろいろ相談した結果、お願いしたというぐあいに聞いております。

〇曽根委員 知事は間違いなく記者会見でもおっしゃっているから、こちらが事実だと思うんですが、もう一度確認してくださいよ。知事がおっしゃったんでしょう。別にそのことでどうこうじゃないじゃないですか。知事が、おれが書こうとおっしゃったんじゃないんですか。事実はどうなんですか。

〇石原知事 そうした依頼、あちこちからいろんな形でありまして、私、このケースについてどっちがいい出したか、よく覚えておりません、実際に。

〇曽根委員 とぼけちゃいけないですよ。本当に基本的なモラルをなくしているとしかいいようがありません。
 結局、能オペラはどうなったか。素人集団がやった仕事で失敗して、中止が決まりました。著作権のトラブルが原因だというふうにおっしゃっていましたけれども、外国では作曲家に脚本が従うというのが常識であります。細川氏側だけに責任をなすりつけるのは潔いものではありません。出発のときから考え方の違いを心得て調整することができなかった、企画をした今村館長や延啓氏の責任、ひいては知事の責任こそ問われるべきです。
 しかも、出演者を先に決めていながら、肝心の曲がおくれにおくれるというずさんなやり方も被害を大きくしました。能オペラに要した経費、その後の補償にかかった経費は四百万円以上になります。それに、ダボス会議のトウキョウナイトで、大倉正之助氏に二回でわずか十五分間の演奏をさせて、四男の方の鏡板を披露して、パーティーのための準備経費を含めて一千七百万円以上かかっています。さらに、補償の意味を含めて行われた「伝統と未来」にかかった費用なども合わせると、全部合わせてざっと二千三百五十万円にもなります。このほかにも、補償絡みの事業という疑惑が強いイベントなどがあります。
 私、知事のトップダウンと私物化、このワンダーサイトの乱脈運営のまさになせるわざといわなきゃならないと思うんです。知事の責任は重大です。知事の四男、延啓氏をもうワンダーサイトにかかわらせることはやめるべきなんですよ。ワンダーサイトの人事の一新を図るべきです。知事、もう一度お答えください。

〇渡辺生活文化局長 中止の原因でございますけれども、一方的にどちらが悪いということではなくて、著作権上の行き違いで中止になったというぐあいに考えております。
 また、能オペラに係る経費でございますが、お話のとおり、準備経費、中止に伴う経費合わせて四百八万円でございます。この財源は、ワンダーサイトにおける図録の販売など、ワンダーサイトコミッティの自主事業収入が当該年度は約六百八十万円ございましたので、その中から充当しております。
 また、東京都歴史文化財団が実施した「伝統と未来」というのは、これは独自の、能オペラとは全く違う表現形式のコンサートでございます。現代音楽と能、両方の融合ということの芸術、音楽表現であったということでございまして、代替公演という表現はちょっと私は当たらないのではないかと思っております。
 また、文化振興の観点から、約二千万円の事業のうち、財団が一千六百万円を出しまして、四百万円が入場料収入ということで実施をしたものでございます。

〇曽根委員 関係ないといったって、能オペラをやる日が穴があいちゃったから、そこに埋めたんでしょう。実態はそうじゃないですか。
 はっきりいって、都民はあきれ返っていますよ。ワンダーサイトをめぐる乱脈、ゆがみの最大の責任は知事なんです。ワンダーサイトは、知事が四男延啓氏を世に出すために始めたといわれたって仕方がないでしょう。都の事業に知事の身内を深くかかわらせることは、公的機関として許されるものではありません。立場を超えて、ほとんどの人がそういっていますよ。李下に冠を正さずという最低限の分別もわきまえない都政の運営をする石原知事には、もはや知事としての資格がないと厳しく指摘して、次の質問に入りたいと思います。
 石原都政八年間の中身そのものも、自治体のあり方をゆがめる重大なものでした。知事は東京から日本を変えるといってきましたが、やったのは大型開発です。政府と一体になって、都市再生の名で、超高層ビルのための再開発や三環状などの大型幹線道路整備を進めてきました。都民の税金で負担する必要のない羽田再拡張、都が直接工事する必要のない首都高速道路品川線などに、それぞれ一千億単位でお金が投入されることになりました。
 その一方で、都民の福祉はどうか。政府の年金改悪、医療改悪、介護保険、障害者自立支援法で、どの問題でも知事は都民の痛みに無関心で、政府にはっきり物をいったためしがありません。必要な改革だなどという厚生労働省のいい分を、そのままオウム返しにするばかりでした。
 福祉は予算も削っていますが、削った予算も多額の使い残しを出して、決算でもっと下がる、そういうことを繰り返してきました。だからこそ、多数の都民から、石原都政の福祉施策は評価できないという声が上がっているんです。
 先ほど、公明党の質疑で、福祉と保健の予算は伸びているという話がありました。しかし、知事が就任した九九年度に比べ、福祉と保健予算がふえたのは来年度予算案一度きりですよ。しかもこの間、高齢者人口が三割もふえていることや、実質五千億円もの大幅な税収増に見合ったものでは到底ありません。
 一人当たり民生費は、東京都四万二千円に対し他県は三万二千円、東京都は高い水準だという議論もありました。福祉の多くは、政令市や中核市では県を通さずに直接市の仕事になっています。例えば特別養護老人ホームの整備費補助について、政令市、中核市については県の予算はありません。その事情を考慮せずに、県の福祉費を政令市、中核市も入れた人口全体で割った一人当たりの福祉費は、東京より小さくなるんです。
 しかも、かつて全国に誇ることができた東京の高い福祉水準をつくったのは歴代の知事であって、石原知事の成果じゃありません。そもそも石原都政の福祉を議論するのであれば、今まで何をやってきたかを避けて通ることはできないと思います。
 そこでお聞きしますが、知事は、就任当初の九九年度に比べ、直近の二〇〇五年度決算で、福祉保健局と都立病院への繰り入れを合わせた福祉と保健費を四百五十億円も削減したことを、知事ご自身、どう考えておられますか。先ほどあれだけのことをおっしゃったんだから、知事、答えてください、これは。

〇山内福祉保健局長 決算額を比較しまして福祉保健関係費を削減したとのご指摘でございますけれども、決算は予算を執行した結果でございます。
 医療費は、風邪などの流行の有無によって大きく増減するほか、補助事業にあっては、相手方の事業の進捗状況によっても影響を受けます。したがいまして、中身を吟味することなく、単純に決算額のみを比較した議論は、都民に誤解を与えるおそれがございます。まして、決算額を削減したなどということは全く的が外れておるというふうに考えております。決算額は削減できるものではございません。
 先ほど中嶋理事にお答えいたしましたように、真に議論されるべきは決算ではなく予算でございます。平成十一年度予算と平成十九年度予算案を比較しますと、福祉と保健を合わせて約三百億円の増となり、過去最大の予算額となっております。

〇曽根委員 私は知事に聞いているんですが、自治体にとって大事な福祉をさんざん削ってきて、どう考えているのか聞かれて、答弁できないと。本当に知事の資格はありません。
 局長の答弁も驚きましたよ。財務局監修の都財政用語事典というのはお持ちですよね、当然ながら。私も持っていますけれども。何と書いてあるか。決算は行政活動の結果が集約的に表現されるため、議会及び住民による行政監視の最も重要な資料となると書いてあるじゃないですか。違いますか。民間企業の会計だって、決算が極めて大事なことは常識じゃないですか。決算で減らした事実は隠しようがありません。そんなごまかしの答弁は通用しませんよ。
 石原知事のように福祉切り下げをした人は、歴代都知事の中でだれ一人いません。全国の道府県の中でも、九九年度から二〇〇五年度までの決算で、こんなに福祉関係費を減らしたのは石原知事ぐらいですよ。
 石原都政は、財政が厳しいといって、今指摘してきたように、福祉を初め、教育、中小企業対策を大きく後退させる一方、東京をよみがえらせるなどといって、三環状道路や丸の内、汐留などの大型開発に税金をつぎ込んできました。
 このため、投資的経費と首都高速道路などに対する無利子貸付など、経常経費に含まれている投資経費も合わせた投資型経費、これは毎年一兆円規模で継続的につぎ込まれてきたんですよ。知事は、投資的経費を抑制したというふうにさっきおっしゃいましたけれども、事実は、一たん減ったものの、二期目以降はまただんだんとふえ出して、インフラ整備のためのオリンピック基金も今積まれていますから、これも加えると、来年度は、知事が就任した八年前の一兆一千五百億円を上回る規模にまで膨れ上がろうとしているんです。
 知事は、都民のための施策は聖域なしの見直しを求めながら、大型公共事業は聖域扱いをしてきました。しかも、本来、都が負担する必要のない羽田空港再拡張や、都が直接事業に乗り出す必要のなかった首都高速道路品川線などの事業に一千億円単位で都民の税金をつぎ込んできたことは、石原都政の何たるかを示すものです。
 そして、来年度予算ですけど、財政は再建できたなどといって、二〇一六年のオリンピック招致をてこにして巨額の税金をつぎ込もうとしています。ここに、大会施設関係で一兆円、その他の三環状道路などのインフラ整備で七兆五千億円、合計八兆五千億円もかかることになります。そのためのインフラ整備のためのオリンピック基金に毎年一千億円、オリンピック施設の建設着手直前まで積み立てれば、八千億円までに膨れ上がりかねない、ため込みを計画しています。
 かつて鈴木都政は、財政難を口実に都民施策を後退させながら、バブル期の大幅税収を基金としてため込みました。そして、バブル破綻後には、その基金を再開発や首都高への貸し付け、都庁舎を初めとする箱物行政に湯水のようにつぎ込んで使い果たしただけでなくて、巨額の借金までして都財政を破綻に追い込んだ、こういう苦い歴史があります。
 知事、知事が今歩んでいる道も全く同じじゃないですか。鈴木知事が臨海副都心開発と世界都市博をにしきの御旗にしたのに対して、石原知事は都市再生とオリンピックをにしきの御旗にかえただけのことではありませんか。
 今、多くの都民が、貧困と格差の拡大、そして増税と社会保障の負担増、ワーキングプアなど、本当に苦しめられています。そのことに思いを寄せて、こうした投資のほんの一部でも、たくさんの人を助けようと思わないのか。本当に東京都民は不幸な知事を持ったといわざるを得ません。
 石原都政は、財政が厳しいといって、今指摘したように、福祉を初め、教育、中小企業対策を大きく後退させながら、東京をよみがえらせるなどといって、三環状道路や丸の内、汐留などの大型開発に税金をつぎ込んできたんですが、このため、投資的経費と首都高速道路に対する無利子貸付など、結局一兆円規模がつぎ込まれてきたんです。
 先ほど、公明党の議論で、都債及び投資的経費について我が党を誹謗するような見解がありましたので、一言述べておきます。
 第一に、一般会計の都債は、財務局長が答弁したとおり、制度変更のあった特別会計になった都営住宅分を控除すると、石原都政で四千億円もふえたのが事実です。普通会計ベースで九千六百九十二億円の減少というのは、バブル崩壊後の鈴木都政時代の財政難の時代に一兆円規模で大量発行された都債の償還が始まったことによるもので、知事の功績ではありません。
 また、今年度、来年度で都債残高大幅減になったのは、隠れ借金である減債基金の積み増しが行われたからです。この隠れ借金というのは、石原知事が都債発行をバブル崩壊前の一九九二年以前にとどめていれば生まれなかったもので、半分近くに減らすことも可能だったんです。
 また、この間、都税収入は、二次にわたる財政再建推進プランの見込みよりも三兆三千億円もふえており、借金を減らし、借金依存体質を転換することは可能だったんですから、六兆七千億円もの借金が残されていることこそ異常です。
 石原知事になってから投資的経費が二割以上削減されているということについても、投資的経費以外に経常経費に含まれる投資のための経費があることを無視した議論です。首都高速道路への貸付金を初めとする投資経費と投資的経費も合わせた経費は、九九年当時の一兆円を超える規模にもうなってきているんですよ。
 公共事業の中身についても議論がありましたが、石原都政のもとで都営住宅の新規建設をゼロに抑え、公園や中小河川などの中小企業のための公共事業を減らして、大手ゼネコンのための投資をふやしてきたのが事実ではありませんか。このことについては、中小建設業者から強い改善要望が出されていることを指摘しておきたいと思います。
 まあ、財政について勉強されたらいかがという言葉は、そのままお返ししたいと思います。(発言する者あり)
 子ども医療費助成についても一言申し上げておきます。
 小中学生の医療費助成が日本共産党の実績といえないなどという議論がありましたが、とんでもない話です。我が党が二〇〇四年の第三回定例会代表質問で、他党に先駆けて中学生までの医療費助成を提案し、公約にも掲げ、実現に向けて努力をしてきたのは事実です。昨年六月には自民党、公明党などが申し入れたと答弁がありましたが、このとき、我が党も申し入れを行っています。
 また、昨年九月の条例提案は、都民要望実現に向け、議会の権能を発揮するための当然の努力です。だからこそ四会派が共同提案し、五会派が賛成したんです。
 大体、公明党はこの間、都民要求実現のために一度でも条例提案をしたことがあるんですか。自力で条例案をつくり上げる苦労を一度ぐらいされてはいかがですか。
 私たちは、九月十三日の議会運営委員会に条例案を提出し、記者発表しています。その後、二十六日の本会議答弁で、自民党、公明党、我が党のそれぞれに、中学生までの医療費助成について具体的な検討に入っているとの局長答弁があり、今回の制度につながったのが事実の経過です。(「だったら質問をしろよ」と呼ぶ者あり)
 では次に、介護基盤整備の状況について質問をしたいと思います。
 厚生省が発表していた老人保健福祉マップと全国国民健康保険団体連合会の資料で、各都道府県の高齢者人口当たりの介護サービス整備率の順位が発表されています。デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホーム、老人保健施設について、九九年度と直近の東京都の順位を示してください。(発言する者多し)これは質問です。質問しています。

〇川井委員長 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

〇川井委員長 速記を始めてください。
 質問を続けてください。

〇曽根委員 質問しました。

〇山内福祉保健局長 財団法人長寿社会開発センターが当時の厚生省の協力を得て取りまとめた老人保健福祉マップによれば、平成十一年度における通所介護の利用延べ回数の高齢者人口に対する割合は、四十七都道府県中、東京都は三十五位であり、同じく短期入所生活介護は四十五位であります。また、特別養護老人ホームの定員の高齢者人口に対する割合は二十七位であり、同じく介護老人保健施設は四十七位でございます。
 一方、社団法人国民健康保険中央会が取りまとめた各都道府県国民健康保険団体連合会の平成十七年度における支払い件数の高齢者人口に対する割合では、東京都は通所介護が四十三位、短期入所生活介護は三十九位、特別養護老人ホームが三十九位、介護老人保健施設が四十七位でございます。
 以上、お尋ねのあった都道府県別の順位についてお答えいたしましたが、介護サービスの充実度はこうした順位で単純に判断するのではなく、地域ごとのニーズに対する充足度により適切に評価すべきでございます。
 こうした観点から、都は、介護保険の保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的な基盤整備に努めてきており、おおむね計画どおりに必要な施設整備が進んでおるところでございます。

〇曽根委員 東京都の傾向が明らかに右肩下がりで低迷していることは、はっきりしているじゃないですか、今の局長の答弁でも。
 二〇〇六年度の状況は、答弁があったように、デイサービスは四十三位、ショートステイ三十九位、特別養護老人ホーム三十九位、老人保健施設四十七位で、全国最低です。ちなみに、認知症の高齢者グループホームも全国四十五位ですよ。高齢者人口当たりの整備率で全国トップクラスなのは訪問介護と訪問入浴だけで、この二つはいわば民間営利企業が主な担い手だからですよ。石原都政のもとで、かつて全国をリードした東京の福祉は、今は昔になりました。
 総務省が普通会計決算の歳出総額に対する民生費の比率の全国順位を二〇〇四年度まで発表していますが、東京都は九九年度は全国二位だったんですね。しかし、二〇〇四年度は二十二位まで低下しています。中でも大きく落ち込んだのは老人福祉費で、全国二位だったのが、二〇〇四年度は三十二位です。平均以下、下から数えた方が早いぐらいですよ。
 知事、今度こそ答えてください。高齢社会対策が緊急課題になっているときに、介護基盤の多くが全国最低水準、老人福祉費の割合は全国三十二位、こんなことでいいんでしょうか。どうなんですか、知事。今度は答えてくださいよ。先ほど一方的なお答えをされたじゃないですか。

〇山内福祉保健局長 介護サービスの総合的な充実度を評価する上で、介護施設の整備数のみを指標とすることは適当ではございません。都が十七年度に社会福祉基礎調査の一環で実施した高齢者の生活実態調査によれば、介護が必要となった場合に自宅での対応を望む高齢者が約七割に達し、五年前の約五割から大幅にふえております。このように高齢者のニーズは、かつての施設志向中心から在宅志向へと急速に変化してきております。
 ある有識者によれば、全国四十七都道府県の中でも、東京都は、住みなれた自宅で暮らし続けられるよう支援する在宅サービスが充実しているため、施設に頼らなくても必要な介護サービスが受けられる地域の代表であると分析し、昨年、全国紙にも取り上げられております。これによれば、東京都は一人当たりの高齢者が受ける介護サービス量と保険料負担との調和がとれており、いわば理想の地域であると紹介されております。

〇曽根委員 在宅介護の訪問介護とか訪問入浴、こういう民間営利企業が担い手のところがいいからといって、施設が必要な人というのは、四万人待っているんですよ、特別養護老人ホームだけで。こういう方々が待たされているという現実は変えることはできないんですよ。
 例えば「十年後の東京」の中でも、福祉は大変お粗末です。世界に先駆けた超高齢社会の都市モデルをつくるといわれたが、中身は介護ロボットの活用です。話になりません。高齢者福祉についていえば、絵にかいたもちどころか、まともな絵もかけていないじゃありませんか。
 特別養護老人ホームの待機者は、もう四万人に急増しています。八十歳とか九十歳になるお年寄りとその家族が、一年、二年と待たされている。ところが、知事は、特別養護老人ホームの整備費補助を九九年度の三割まで削減しています。在宅介護の苦労がどんなものか、知事は少しでも考えたことがあるんですか。
 横浜市は、二〇一〇年度までに、入所の必要性、緊急性の高い高齢者はおおむね一年以内に入所できるようにすることを明らかにして、来年度予算案でも整備費補助を一・七倍にふやしています。
 介護基盤のおくれだけではありませんよ。石原知事は、寝たきり高齢者の老人福祉手当を廃止しました。都の老人医療費助成、マル福は対象年齢を縮小してきましたが、ことし六月末で完全に廃止されます。シルバーパスも全面有料化しました。
 しかし、全国の多くの政令市は、敬老乗車証の無料パスだとか老人医療費助成を継続、維持しているんですよ。千葉市は、無料の敬老乗車証、老人医療費助成、寝たきり手当をいずれも維持しています、お隣の千葉市は。敬老乗車証は、第三セクターが運行するモノレールにも適用していますよ。
 これらの政令市は、例えば養護老人ホームを利用した生活支援ショートステイ、在宅寝たきり高齢者の訪問健診、高齢者のための住宅リフォーム助成など、新しい課題にも足を踏み出しています。
 やるべき課題は、知事、たくさんあるんです。都民の暮らしの実態は、福祉の拡充を切実に求めているということを申し上げておきたいと思います。
 次に、知事のトップダウンで進められている築地市場の豊洲移転について伺います。
 築地市場の豊洲移転は、一九九九年九月に石原知事が突然築地を視察し、狭い、古い、危ないと述べたことから、それまでの築地での再整備がほごにされ、豊洲移転に転換したものです。
 二〇〇一年に東京都と東京ガスの間で結ばれた豊洲の用地の譲渡に関する合意文書がありますよね。東京都側の代表はどなたですか。

〇比留間中央卸売市場長 築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意は、東京都副知事と東京ガス株式会社副社長とで調印をされておりまして、東京都副知事は、当時の中央卸売市場担当の浜渦副知事でございます。

〇曽根委員 昨日、豊洲の防潮護岸工事の補正予算が採択されましたが、基本合意書には、その防潮護岸の整備経費は土地区画整理事業の事業費から除外すると書いてあります。また、基本合意によれば、防潮護岸の整備経費は開発者負担の仕組みを見直すとしていますが、見直しの内容はどういうものですか。

〇津島港湾局長 開発者負担の見直し内容についてでございますが、築地市場の移転決定前におきましては、埋立部は土地区画整理事業区域に編入することとし、防潮護岸の整備費の負担割合は、公共負担と開発者負担がそれぞれ二分の一でございました。
 その後、平成十三年に築地市場の豊洲移転が決定し、当初の土地利用に大幅な変更が生じたことなどによりまして、埋立部は土地区画整理事業区域に編入されないこととなりました。そのため、防潮護岸の整備費の負担方法については、市場が市場予定地前面部の防潮護岸の所有権を取得することなどを勘案し、適正な負担となるよう見直しを行ったものでございます。
 具体的には、全体事業費のうち、市場予定地前面部の防潮護岸は、所有権を取得する市場が整備事業費を開発者負担として市場会計で負担し、残りの防潮護岸は、防潮機能とともに親水性にすぐれた緑地を都民に提供する公共的な目的から、公共負担として一般会計と臨海会計とで負担することとしたものでございます。

〇曽根委員 浜渦副知事が担当です。知事の発言を受けて、豊洲の用地を所有していた東京ガスに日参し、譲渡を迫っていました。しかし、東京ガスは自社での開発を計画して、土地の譲渡を渋っていた。これは当時、報道されました。実際に東京都に譲渡を拒否する文書の申し入れも行われていたはずです。
 それが一転して譲渡に至った。知事、豊洲移転を進めるために、東京ガスに何らかの譲歩あるいは便宜を図ったのではありませんか。

〇比留間中央卸売市場長 築地市場の豊洲移転につきましては、平成十年から業界団体と時間をかけて協議を進めてまいりまして、十三年十二月に東京都として決定をしたものでございますけれども、この間に東京ガスとは十分に協議をしながら、この点については進めてきているものでございます。

〇曽根委員 本来、防潮護岸整備費は区画整理事業の経費に計上され、土地利用者がその受益に応じて負担するのがルールですよね。そして、防潮護岸部分を区画整理事業から切り離すという意味は、現所有者の東京ガスの負担とならないようにすることになります。負担区分の見直しは、東京ガスが換地後の所有者としても負担が発生するために、その分を外すことを目的としたものです。
 このため、負担割合は、「ゆりかもめ」の駅前の一等地を所有する東京ガスがゼロになって、かわって市場が開発利益の見合いで四六%、残りの五四%を一般会計と臨海副都心事業会計が二分の一ずつ負担することとなりました。当初案で六百億円、変更された後は四百四十四億円のこの事業費は、市場が二百六億円、一般会計と臨海副都心事業会計が百十九億円ずつ負担することになったんです。
 なぜこんな譲歩、都が巨額の負担を引き受けてまで移転をしなければならなかったのか。そこからは、何が何でも築地市場を豊洲移転しなければならない背景があったとしか思えません。
 築地市場は、知事のトップダウンで始められた二〇一六年のオリンピックのメディアセンターの会場予定地とされています。しかし、築地市場を豊洲に移転させることには、多くの市場関係者や消費者団体などから反対の声が上げられ、食の安全の問題としても疑問の声が上げられているんです。
 一つは、豊洲に移転することで不便になるということです。現在の築地は高速道路のランプが近くにあり、地下鉄も日比谷線と大江戸線が直結しており、徒歩圏内には浅草線、有楽町線などの駅があります。一方、豊洲は「ゆりかもめ」があるだけで、しかも新橋や有楽町からは三十分もかかり、徒歩圏に幾つも駅がある築地とは歴然の差があります。市場関係のある新聞は−−電車で買い付けに来る人が結構まだたくさんいるんですよ。個人商店には足回りの悪い立地でも、大型トラックで大量輸送する大手には良好な交通条件だと指摘しているほどです。
 第二には、世界の築地のブランドがなくなることです。築地は今、世界最大の水産物市場で、それこそ世界各国から魚が集まり、競り落とされた魚は首都圏を超えて出荷されています。また、都内には築地の名前を冠にした飲食店や商店が多数ありますが、これらのお店は今後、築地の名前が使えなくなってしまいます。
 アーチストの坂本龍一氏は、ロハスクラブというホームページの対談で、あんなすばらしい場所を壊しちゃうなんて理解できないね、築地市場を世界遺産にしてもいいと思うと語っています。また、世界スローフード協会のカルト・ペトリーニ会長は、築地市場の移転など必要ないと述べ、協会として反対を表明しています。
 第三に、何より重大な問題は、移転先の豊洲の用地が、かつて東京ガスの生成工場があったことから、砒素やベンゼン、シアン化物、水銀などの危険な有害物質が基準値をはるかに超える数値で見つかっていることです。砒素は大変な猛毒で、環境基準の四十九倍もあります。発がん性物質であり揮発性のあるベンゼンは千五百倍、青酸カリのもととなるシアン化物は四十九倍、水銀は二十四倍です。
 現在、原因者である東京ガスが、東京都の基準に沿って行った土壌調査に基づいて土壌改良を実施していますが、専門家や市場関係者からは、東京ガスの土壌調査は極めて不十分だという批判が上げられており、再調査を求める声が上げられています。
 知事、少なくとも法で定める調査を都の責任で実施すべきではありませんか。知事、いかがですか。

〇比留間中央卸売市場長 豊洲新市場予定地では地下水の飲用の可能性がないことから、土壌汚染対策としては、盛り土による封じ込めを行うこととしてございます。対策といたしましては、地下四・五メートルまでの健全土による入れかえ等の処理や、地盤面での三十から四十センチメートルの厚さのアスファルト舗装及び堅牢な建物による封じ込め等を行うこととしてございます。
 なお、平成十五年に施行されました土壌汚染対策法や改正されました東京都土壌汚染対策指針では、対策として封じ込めを行う場合は、五十センチメートル以上の盛り土あるいは三センチメートル以上のアスファルト舗装を行うこととされております。
 平成十年の東京ガスの調査と平成十五年に施行されました土壌汚染対策法とでは調査方法に違いがございますけれども、新市場予定地では、汚染物質が未検出の区域も含めまして敷地全面にわたって対策を講じるため、法や新たな東京都の指針に照らしましても安全性に問題はなく、再調査の必要はないというふうに考えております。

〇曽根委員 到底納得できない答弁です。
 第一に、私が聞いたことに答えていません。聞いたのは、法に沿った調査を実施することです。対策は調査結果に基づいて実施されるものです。不十分な調査からは不十分な対策しか生まれません。法にのっとった調査が実施されていないのに、よく安全性に問題がないといえるものです。
 東京ガスが行った調査というのは、土壌汚染対策法以前の東京都のものに従ったもので、調査地点は九百平方メートルに一地点、しかもボーリングは原則三メートル、汚染が見つかったところは七メートルと、大づかみな調査で済まされていることです。これに対して土壌汚染対策法では、百平方メートルに一地点、深さは規定がなく、汚染土壌のあるところまで実施することになっています。
 調査地点以外のところに汚染物質がある可能性が高いわけだし、調査した深さよりも深い地層にも汚染がある可能性は、専門家から現に指摘されています。
 さらに、土壌改良について答弁されましたが、東京ガスが実施している土壌改良に対する専門家の意見も厳しいものがあります。東京ガスの対策の内容は、第一に、環境基準を十倍以上超える物質を含む土壌は基準以下にする。第二に、環境基準が十倍以下の物質を含む土壌、現在の地盤面から深さ二メートルまでは基準値以下にする。しかし、現在の地盤面から二・五メートルの高さの覆土をすると。したがって、新市場予定地の基盤面から四・五メートルのところまでは環境基準を超える有害物質はなくなるというものです。
 問題の一番は、環境基準の十倍というのは、土壌汚染法にはない規定だということなんです。専門家は、十倍値というのは水質汚濁法や下水道の排出基準ですが、これは工場排水に適用するものであって、土壌や地下水には適用すべきでないと指摘しています。一般の土地利用を前提にした環境基準を、多くの人が口にする食品、しかも生鮮品を扱う市場の用地に当てはめることは間違いです。
 しかも、豊洲は埋立地であって、地震の際の液状化や、地盤が横に数メートルも移動する側方流動の危険がある場所です。地下四・五メートルまで土を入れかえるから大丈夫だ、三、四十センチのアスファルトを敷くから大丈夫だなどというのはいえません。
 我が党は、阪神大震災で被害を出した神戸のポートアイランドを視察してきましたが、埋立地全体が液状化して、土や砂が一面に吹き出していました。日本土木学会は臨海部について警鐘を鳴らしています。
 私が残念なのは、都の姿勢に、都民の食の安全の問題という認識が見られないことなんです。最近も、キンメダイにメチル水銀が高濃度に蓄積されていることが大問題になったように、食の安全というのは都民の最大の関心事の一つです。食品汚染は絶対にあってはなりません。
 市場用地には、水俣病の原因となった水銀や、劇薬である砒素やシアン、六価クロムまで汚染されているんです。ところが、ある雑誌では、都が、環境局が安全だと証明していること自体、安全宣言となっていると答えたと報道されています。豊洲は安全宣言ができる状態なんでしょうか。

〇村山環境局長 お話の記事についてはつまびらかにしておりませんが、土壌汚染対策法や環境確保条例を所管している立場から申し上げれば、中央市場の計画における新市場用地の土壌汚染対策の内容は、現行の法律や条例が求める対策の水準を大きく上回るレベルの安全対策を講じる計画でございまして、したがいまして、この計画が確実に実行された暁には、法律や条例が求める安全を十分確保できていると宣言できる状況になると考えております。

〇曽根委員 とんでもないことですよ。我々は日本環境学会の会長の畑先生にお聞きしてきましたけれども、先生は、築地の移転予定地は三方を海に囲まれた低地、地下水位は高く、しかも潮位の影響で大きく上下する、幾ら覆土を行っても、地下に汚染土壌と汚染地下水が残存している限り、潮位や毛細管現象などによる地下水の上昇で、表層土壌に汚染が広がることは考えられますと指摘しています。
 また、覆土やアスファルト化をしても、ベンゼンや水銀などの揮発性のある物質は蒸発して地表面に上がってくる。覆土の残土自体が地下鉄十三号線の建設残土であって、汚染の危険もあるんです。
 畑先生は、現在の技術で環境基準以下にすることは可能ですが、幾らコストをかけても汚染を完全に浄化することはできない、食品を扱う場所としては危険というしかないといわれています。
 知事、お聞きしたいんですが、土壌汚染の豊洲移転は、この際、断念すべきではありませんか。少なくとも来月に開かれる都市計画審議会への前アセスの提案は見送るべきではありませんか。いかがですか。知事、いかがですか。

〇比留間中央卸売市場長 先ほどもご答弁申し上げましたけれども、豊洲の新市場予定地につきましては、敷地全面にわたりまして二重三重の手厚い対策を施すこととしてございます。したがいまして、現行の法や条例に照らしましても安全性に問題はないと考えてございまして、平成二十四年の開場に向けまして、豊洲新市場の整備を確実に進めてまいります。

〇曽根委員 改めて、知事、いかがですか。土壌汚染の問題というのは未来永劫に残る問題なんですよ。来月には都市計画審議会にかけようとしている。しかし、環境の専門家はみんな危ないといっているんですよ。
 知事、どうですか。今の市場長の答弁をよしとするんですか。どうですか、知事、お答えください。

〇比留間中央卸売市場長 再々ご答弁申し上げておりますけれども、土壌汚染の問題につきましては、手厚い対策を講ずることによりまして安全性に問題はございませんので、諸手続を含めまして、二十四年の開場に向けて確実に進めてまいります。

〇曽根委員 全く無責任です。先日、国会で豊洲移転問題が取り上げられましたが、若林環境大臣は、生鮮品、とりわけ魚類について多くの不安、疑義が指摘されていることを認めた上で、安全の上に安全を期すこと、生鮮魚類の取引という点から、万全の上にも万全を期するという意味で、これで安全だというふうに私どもとしていい切れる状況にないと、国会でも認識を表明しているじゃありませんか。そしてまた、都としてしっかりとこれをチェックしていく立場にあると、都の責任であることも表明しています。
 市場関係者は、地震が起きて有害物質が少量でも検出された場合、生鮮の市場はその時点で終わりだと、食を扱う場所に適しているとはだれの目にも映らないなどと批判しています。また、あるすし店では、うちも築地で仕入れているが、土壌汚染されている豊洲に移転したら、もう使わないといっていました。こうした声に真摯に耳を傾けることがなぜできないんですか。
 そもそも築地の移転話は、知事の視察をきっかけに、浜渦副知事の働きかけで動き出したものです。その築地は、汐留のすぐ横に立地し、有楽町からも至近距離で、面積が二十三万平方メートルもあり、都心に残された最後の大規模用地といわれています。

〇川井委員長 曽根はじめ理事の発言は終えてください。

〇曽根委員 築地市場が都市再生、都市再開発の犠牲にされることがあってはならないことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

〇川井委員長 曽根はじめ理事の発言は終わりました。
 以上で、本日予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 あすは午後一時から委員会を開きます。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時五十五分散会

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