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平成21年都議会予算特別委員会 3月11日総括代表質疑
電通独占のオリンピック・新銀行追加支援よりくらし雇用住宅を
○石川副委員長 曽根はじめ委員の発言を許します。
   〔石川副委員長退席、委員長着席〕
○曽根委員 日本共産党都議団を代表して質問いたします。

●離職者への都営住宅の臨時提供を急いで

 最初に、都民が今、切実に求めている住宅対策について質問します。
 都はこの間、都内の住宅戸数が世帯数を超えているから、住宅は足りているという態度をとってきました。
 しかし、格差と貧困が広がる中で、仕事はあるが、日雇い派遣などワーキングプアとなり、住まいを失ってネットカフェやファストフードなどで寝泊まりする人が、国の調査でも都内に二千人以上になっています。また加えて、不況を理由にした大企業の派遣切りで大量の失業者が職場と寮からほうり出されています。
 我が党は、議会でも予算要望でも機会あるごとに、知事に緊急に都営住宅の臨時提供を求め、知事も検討しましょうと答えていますが、どう検討し、具体化されてきたのかお聞きします。

○只腰都市整備局長 離職者への都営住宅の活用につきましては、ご承知のこととは存じますが、都営住宅は高齢者等、住宅困窮者の入居希望が大変多いということなどの事情を踏まえまして、都民の立場から見た公平性、離職者に対する支援施策の動向、建てかえ事業への影響などを考慮しながら、昨年来、慎重に検討を進めてきたところでございます。

○曽根委員 ほとんどの県では、住宅部門が音頭を取って、離職者の県営住宅はもちろん、市長村営住宅、国の雇用促進住宅、都市機構住宅などと調整して住宅を提供しています。
 都営住宅の提供については、工夫によって解決の道があるはずだというふうに考えます。
 例えば長期の建てかえ事業を行っている大規模団地では、ローテーションと矛盾しないようにかなりの戸数を確保することが可能です。
 例えば五千戸規模の村山団地の場合、最近、団地内で建てかえ後の新築住宅に三百世帯以上が移転したばかりで、あいた方の住宅はガスも電気もまだ使えます。ほかにも、しばらく建てかえ待ちになっている住宅が約百二十戸、建てかえ後の住宅でも約百戸の空き家があり、にもかかわらず、一般募集は再生計画中であることを理由にずっと行っておりません。住民からはもったいないの声が出ています。一般募集とあわせて離職者への臨時提供等を両立できるではありませんか。
 また、都民住宅についても約千六百戸の空き家があり、そのうち都の直接施行の都民住宅約六百戸が常時あいております。三宅島の被災者用にも活用しました。ファミリータイプが多いわけですが、ルームシェアということも検討できるはずです。
 そこで、都市整備局長に伺いますが、失業とともに住居を失った離職者に対する都営住宅の一時利用をさらに工夫して実現、拡大させるべきだが、どうか。来月からでも早速やるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

○只腰都市整備局長 先ほどもご答弁いたしましたが、離職者への都営住宅の活用につきましては、介護職などへの就労支援事業に応募し、対象となった方に限りまして、本来の入居対象者の入居や建てかえ事業に支障を及ぼさないことなどを条件に、適切に対応していく考えでございます。
 現在、就労支援事業の進捗による民間住宅の活用状況などを踏まえまして、都営住宅を活用する戸数や具体的なスケジュールについて検討を進めておりまして、四月以降、早期の実施に向け努めてまいります。

○曽根委員 一日も早い実現を求めて、次の質問に移ります。

●オリンピック招致事業は電通に独占されている

 オリンピック招致事業が広告大手の電通に事実上独占されている問題について質問いたします。
 我が党は、情報開示請求で得たオリンピック招致関係の委託に関する文書を詳細に分析してきましたが、その結果、浮き彫りになったことは、電通による異常な独占ぶりです。
 精査した結果、オリンピック招致本部による委託契約のうち、電通が占める金額は二十六億円余りで、本部の委託事業費の八六%、約九割に及ぶことがわかりましたが、これは事実でしょうか。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 平成十八年四月から平成二十一年二月までの当本部の委託契約におきまして、株式会社電通が受託した金額は二十六億三百方円で、委託契約全体に占める比率は八六・五%であります。また、これを件数で見ますと二八・四%となりますが、これは金額が多いのは、申請ファイルですとか立候補ファイルの作成でございまして、こうしたファイルの作成に当たりましては、関連する調査がございまして、オリンピックの招致、運営の実績があること、IOCの公式スポンサーの業務を請け負っていること、あるいは、これらを通じた人的、あるいは情報的なネットワークを持っているという委託がふさわしいということがございまして、その結果、同社に委託したということでございます。
 また、成果としても、申請ファイルの段階では七都市の中で1位という実績を上げております。

○曽根委員 私たちも調査に基づいてパネルをつくりました。(パネルを示す)余りに異常な割合ですが、この出発点は、今、荒川本部長がいろいろお答えになった中で、二〇〇五年十一月に知事本局から発注された東京オリンピック招致準備にかかる基礎調査という外部委託、これが最初です。これが出発点になっています。このパネルをつくってきました。
 これは企画提案方式で、電通、野村総研、三菱総研、人材派遣会社のアデコ、コールセンター大手のベルシステム24の五社に、一カ月で企画を立てるよう指示され、審査までにアデコとベルシステムの二社が辞退をしまして、結局、電通、野村、三菱の三社の案で審査をされ、電通が選ばれて、特命随意契約で受注したものです。
 基礎調査の委託の際に、五社を比較検討したといいますが、その五社以外の企業はどう検討したのか、どういう経緯で五社を選んだのか、お聞きします。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 ただいま先生からお話のありましたオリンピック招致準備にかかる基礎調査でございますが、これは平成十七年三月、都議会定例会の所信表明におきまして、知事が東京へのオリンピック招致を表明しました。これを受けまして、今までに開催されたオリンピックの実績、招致戦略、都内競技施設の現状等、東京にオリンピックを招致するための必要な情報を収集、分析するために委託したものでございます。
 本調査につきましては、今お話がございましたように、応募のあった業者の中から、指名選定委員会を設けまして、そこで五社を選定し、そのうち二社が辞退したため、残り三社による企画審査会を実施しました。その三社の提案内容、情報収集能力、調査体制、企画構想力、積極性、実績の六項目について審査した結果、株式会社電通の企画が最も高得点を獲得したため、同社と契約したものでございます。
 これまでの経緯でございますけれども、東京都の物品買入れ等競争入札参加資格を有し、かつ該当の営業種目に登録のあることを条件に参加業者を募集いたしました。募集のあった業者の中から、指名業者等選定委員会において五社を選定いたしましたが、経緯等の詳細につきましては、選定委員会の文書の保存期間が経過しているため廃棄されており、詳細は不明でございます。

○曽根委員 この調査というのは、過去五回のオリンピック大会の調査とか、招致戦略の調査分析比較などの一方で、関連施設の条件とか、東京開催の経済効果まで入っていて、かなり多岐にわたる調査内容です。とてもアデコのような人材派遣会社や、ベルシステムのような電話コールセンター会社のような企業に任せられる内容ではないんじゃないかと思うんです。わずか五社ですよ。なぜこういう企業まで指名したのか、私、納得いかないんですけれども、五社の中になぜ人材派遣会社や電話コールセンターの会社が入ったんですか。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 先ほども申し上げましたように、これらの業者につきましては、東京都の物品買入れ等競争入札参加資格を有し、かつ該当の営業種目に登録があるという、東京都に登録してある業者の中から応募がありまして、そうした業者を選定したものでございます。

○曽根委員 とても納得できる説明ではありませんし、人材派遣会社なんかよりもふさわしい企業は、この東京に無数にあると思うんですよ。しかも、アデコは最近、違法な人材派遣を繰り返して業務改善命令を受けているわけです。いわくつきの企業ですよ。
審査に残った三社は、確かに総合商社のシンクタンクが二社と電通ですが、オリンピックとなれば、調査事項すべて、先ほど申し上げました点をカバーできる点では、おのずと広告会社が有利になるようになっているじゃないですか。実際、最終審査の評価は大きく開いて電通が採用されています。
 広告業界というならば、ほかにも大手では博報堂やアサツーディ・ケイ、東急エージェンシーなどがあるじやありませんか。こういうところこそ指名して、二社が落ちたんだったら、より公正な企画競争をさせるべきだったんじゃありませんか。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 当時の詳細を記録する文書がございませんので、正確なことは答えられませんが、今お話になった業者の中で、電通はそれなりの能力があるということは先ほど申し上げたとおりでございます。

○曽根委員 我が党は最近、博報堂にもお話を聞きに行きました。指名の要請が本格的に行われた様子はありません。とにかく最初から電通ありきで特命随意契約が行われたとしか考えられません。
 そして、この基礎調査に電通が決まると、こめ調査結果に基づいて、招致計画が一貫して電通に流れていく仕組みになっている。(パネルを示す)
 開催概要計画書は、この特命随契の理由の中に、基礎調査と高い関連性を有するという理由で、やはり特命随契で電通に行きます。これが基礎調査の十倍近い値段の八千九百十三万円。そして、さらに申請ファイルについても、仕様書で開催概要計画と整合させることが条件になっておりますので、やはり特命随契で電通に行って、この金額は六億九千八百万円。翌年の立候補ファイルも申請ファイルと一体だからということで、全部特命随契で電通になっていく。これらの委託は、競い合いは全くありませんでした。
 それだけじゃありません。この大きな仕事を電通がとると、そこから派生して、例えばパンフレットの作成や都バスの車体広告、ラッピングバス、文化プログラムの作成、テレビ番組、しまいには最近つくったTOKYO体操の開発まで、ありとあらゆる仕事が全部電通に流れ込んでいく仕組みになっているわけであります。
 これはまさに、電通の電通による電通のためのオリンピックではありませんか。大体、自治体の契約は、できるだけ多くの地域の活力を生かすために、委託先などを平準化し、分割して仕事を出すのが主流になっているときに、オリンピックだからといって、こんな独占を許していいんでしょうか。どうでしょうか、基本的な点で。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 ただいまの先生の発言の中で、何か自動的に電通の方に契約が流れるような、流れ込む仕組みというふうなお話がございましたけれども、決してそういうことはございませんで、私どもの方は、できるだけ公平に内容を審査し、その上で各社からオファーをとり、その上でそれぞれの会社が実績があるかどうか、あるいはIOCとのネットワークがあるかどうか、特に招致というものは一つのライバルとの競争でございますので、そういったライバルに勝てるかどうかというような観点から会社を選んでいるわけでございます。
 しかしながら、確かに多様性を図ることは必要でございまして、そういった能力の必要ないような場合につきましては、いろいろ多様化を図っているところでございます。
 先ほど電通以外の会社の名前も出ましたけれども、いろいろと我々の方からも話を向け、しかしながら、結果としてはこういう形でなっているわけでございます。

○曽根委員 いろいろ探したといったって、全部特命随契ですよ。理由を見ると、前の事業を委託されれば、その理由から、委託したという事実から次の事業も委託できるようになっているんですよ。
 しかも、今、答弁の中で、IOCとの関係や招致におけるライバルとの競争という点で強いということが話にありましたが、実はオリンピックだけじゃないんです。生活文化局の担う文化やスポーツのあらゆる分野にも電通が幅をきかせています。
 お聞きしますが、生活文化スポーツ局の文化、スポーツの事業委託で、電通の占める金額と割合はどうでしょうか。

○秋山生活文化スポーツ局長 平成十八年四月から平成二十年十二月末までの文化振興費とスポーツ振興費の委託料及び役務費のうち、電通及び電通の子会社、関連会社との契約額は約七億一千万円でございまして、割合は五一・八%でございます。
 また、同期間における電通及びその子会社等との契約を、当局の委託料及び役務費の全体の中で見ますと、その割合は一四・五%となります。
 なお、電通及びその子会社等との契約につきましては、入札、企画提案方式によるほか、特命随意契約につきましても、それぞれ適切な理由により特定指名業者として選定しております。
 なお、先ほど委員の方から、電通に自動的に仕事が流れ込む例といたしまして、TOKYO体操が指摘を受けましたけれども、TOKYO体操の契約につきましては、いわゆるコンペ方式、企画提案方式によりまして、三社の企画提案の中から最高のものを選んだという経過になっております。

○曽根委員 企画提案方式ですが、特命随意契約ですよ、事実として。
 それから、今のお話で、生活文化スポーツ局全体としては一四・五%だといいますが特命随契です。 例えば東京大マラソン祭り、これは四千四百五十万円、スポーツイベント企画が二億円、オリンピック文化プログラムが一千万円、テレビ番組など、電通が大変占めています。先日のレインボーウオークも電通なんです。
 しかも、これには補助金で行っている事業は含まれておりませんので、例えば大東京マラソンは入っておりません。東京マラソンへの都の補助金は毎年一億円、この使い道は、交通規制などの広報だとか、ラジオコマーシャルなどで、これも全額電通が受けています。
 文化も、十一億円かけている文化発信プロジェクトの全体を仕切っているのが電通で、その中の企画としても東京大茶会、こういうイベントも四千五百万円で受けています。これ、すべて特命随契です。
 こういう文化やスポーツというのは、一つ一つの企画を見れば、大茶会とか、TOKYO体操とか、これは電通以外にも委託できる企業はたくさんあるはずで、全体を電通が持っている企画に仮になったとするならば、できるだけほかの業者にも仕事を分けていこうというのが行政の立場じゃないでしょうか。何でもかんでも電通に特命というのは、一体どういうわけですか。文化、スポーツですよ。いろんな業者がいるじゃないですか。どうでしょうか。

○秋山生活文化スポーツ局長 先ほど東京大茶会の話も出ましたけれども、これは価格のみによって競争することでは全く成果が得られませんで、やはりその企画、そういったものを審査するということでございまして、いわゆる特命随契の類型に、確かに形式的には該当いたしますけれども、企画提案を審査して、一番いい企画を採用するという考え方でやっております。
 また、先ほどレインボーウオークが電通にという話がございましたけれども、レインボーウオークにつきましては、日本ウオーキング協会との共催でございまして、ウオーキング協会がたしか電通の方にみずからの仕事の一部を発注したということじゃないかと理解しております。

○曽根委員 私は東京都だけが頼んでいるといっていませんよ。
 いろんな団体を通じた補助だって、電通に結果として行っているじゃないですか。幾ら何でもひど過ぎます。電通のほかにイベントを取り仕切れる企業はないかのようではありませんか。これははっきりいって、実態として癒着としかいいようがありません。
 大体、電通がオリンピックに商業主義、コマーシャリズムを持ち込んで、いかにありとあらゆる分野で稼いできたかは有名な話です。四年前に電通の会長を引退した成田豊氏が、最近の日経新聞にそのいきさつを詳しく書いております。「私の履歴書」というんでしょうか。しかもそこには、三十年以上前に都知事選挙で石原候補を応援したときの思い出まで書いておりまして、知事と電通とはそれ以来のつながりではありませんか。しかも電通は、この知事選挙のときに知り合った浅利慶太氏と、ともにその後、長野五輪などオリンピックビジネスに本格的に乗り出していっています。
 招致までで終われば、今、電通は数十億円。しかし、もし東京招致が決まったら、さらにもうけが拡大できると。こんなうまい話はありません。だからこそ、公正取引委員会は二〇〇五年十一月の報告書でも、広告取引の分野においては、長年、寡占的市場構造が続いてきたと、明らかに電通意識した異例の指摘をしています。都政でも、電通の寡占市場構造になっていることは極めて重大だと思いますが、そういう認識は、知事、お持ちになりませんか。いかがですか。

○石原知事 曽根委員の認識、一つ欠けているところがあるんですね。あなた、広告業界をご存じない。私は電通の仕事にちっとも満足しているわけじゃなくて、随分だめを出していますすが、なぜ電通を選ばざるを得ないかという背景には、電通が持っている影響力、例えば雑誌とか新聞とか、ローカル誌も含めて、このカバレッジというのはほかの広告会社は及ばないものがあるんですよ。一つのイベントについて、これを全国に普及しようと思ったら、結局、あそこをとらざるを得ない。そういう力関係があるんです。そういうものを、同じお金を出して一つの物事を頼むにしても、波及的効果の電通を選ばざるを得ないという事情があるということは、あなた、常識として知っておいた方がいい。

○曽根委員 公正取引委員会が二〇〇五年に寡占市場構造が続いてきたと指摘をしたのは、この広告業界で働いている、もしくは下請で入っている中小企業が、本当に契約書も何もなしに、一方的に上から単価を抑え込まれて、非常にひどい目に遭っているからなんです。公正取引という点で問題があると指摘しているわけですよ。
 ですから、公正な広告業界の育成を図るためにも、電通じゃなきゃできないところはやむを得ないかもしれませんよ、それで選ばれる場合は。しかし、ほかのさまざまな企業があるところでは、積極的に平準化を図る、分割発注を図る、こういう努力が必要だということはぜひ申し上げておきたいと思います。
 知事が、もともとオリンピック招致をトップダウンで持ち込んだことが、こういった面でも都政をゆがめているということを指摘しておきたいと思います。
 都民が求めているのは、オリンピック招致よりも、暮らしや雇用を守ることですよ。さっきも都営住宅の問題、私、指摘しましたけれども、ましてや、オリンピックの名による九兆円の巨額投資はもちろん、知事とつながった広告大企業が独占的な利益をむさぼるようなオリンピックはだれも望んでおりません。オリンピック招致から撤退すべきことを述べて、次の質問に移りたいと思います。

●新銀行破綻の責任は旧経営者だけでない。知事と都の責任を認めよ

 次に、新銀行破綻の責任の問題で質問します。
 最近、新銀行東京による調査報告書が発表され、一千億円近い損失がほぼ明らかになった二〇〇六年八月以降に旧経営陣が必要な手だてをとらなかったことだけを問題にして、損害賠償請求の訴訟を検討するとしています。
 報告書の最大の問題は、調査対象事項として旧経営陣の法的責任の有無と因果関係、責任追及の方法しか挙げていないことです。つまり、最初から東京都の責任追及を除外していることです。
 一体新銀行東京は、東京都の責任の有無とか、東京都の責任と新銀行の損失との関係とか、損害賠償については、今後全く問題にしないということでしょうか。都の受けとめはいかがですか。

○佐藤産業労働局長 今般の外部弁護士によります調査報告書は、法的責任を追及するという観点からの整理をされておりますが、その検討に際しましては、設置以前、また、現在までの間についての詳細な調査をした上での判断をしているところでありまして、現に調査報告書の中にも、都の監視についてのくだりも付記されているところであります。

○曽根委員 中には東京都の関連の問題も出てきます。しかし、冒頭述べましたように、調査報告書の調査の目的そのものから、東京都の責任を調査し、明らかにしてしていくということは外されているんですよ。これでは、都の責任を問うことが、最終的には法的責任も含めてできなくなってしまう。これは、結局、設立時の責任を問うていくと、現経営陣が設立時に都の幹部だったわけですから、そこにはね返ってくるからじゃありませんか。自分たちの責任は、あくまでも回避して済まそうなんていうことは絶対に許されないことであります。
 しかも、調査報告を読むと、こういうふうに書いてあるんです。新銀行から提供された資料の調査分析、関係者のヒアリングなどに調査の材料を限定しているんですよ。そうすると、新銀行のマスタープランをつくる中心となった大塚氏や津島氏が、都や自分たちに都合の悪い資料など出すわけないじゃないですか。しかし、そういう中でも、先ほどちょっとお話がありましたが、調査報告には、例えば想定を大幅に上回るデフォルトを発生させるような融資等が行われた、その要因として、スコアリングモデルを活用したポートフォリオ型融資を挙げ、これがマスタープランによってもたらされたことなどを指摘せざるを得ませんでした。もし調査対象を旧経営陣に限定していなければ、当然こういうことがわかっていれば、都の責任にも言及せざるを得なくなっていったはずなんです。
 さらに、調査を依頼した相手もひどいものです。昨年十二月二十三日の毎日新聞インタビューで、知事が自作の小説について聞かれて、こういっていますね。「いい友達がいてね。牛島信って、彼も小説を書くんだけど、経済問題の優秀な弁護士なの。彼に、「こういう設定ってできる?」とか、知恵をかりてね」と語っています。
 知事にお聞きします。新銀行東京から調査依頼を受けたのは、知事のいういい友達である牛島弁護士ですよね。そうすると、知事は、知事みずからがかかわる問題の調査に知事の友人を選ぶと。およそ常識では考えられないことで、やってはならないことだと思いますが、いかがですか。

○石原知事 それは少し筋違いのいい分じゃないですか。友人は友人でありますけど、私が知る限り、日本で最も優秀な経済問題に精通している弁護士を選んだわけであります。

○曽根委員 幾ら優秀であって、知恵をかりるといっても、これは架空の小説世界じゃないんですよ。莫大な税金が被害に遭ったこの調査の報告なんですよ。私は、余りに身勝手が過ぎると申し上げておきたいと思います。
 銀行の破綻の責任については、既に調査報告の前に、昨年十二月末、金融庁が業務改善命令の中で、新銀行は過大な事業規模の追求、スコアリングモデルのみに依存した融資審査、管理等に起因して大幅な損失を計上してきたと、明確に指摘しています。この指摘について、東京都はどう受けとめておりますか。

○佐藤産業労働局長 今回の業務改善命令では、今お話のありました新銀行東京は過大な事業規模の追求、スコアリングモデルのみに依存した融資審査、管理等に起因して、大幅な損失を計上してきた。その後に、同行は、これに対し、経営陣の大幅な交代、業務の重点化、大幅なリストラ等の対応を進めてきたとしながらも、内部管理体制や法令遵守体制などについて、さらなる改善を求めたものであるというふうに認識をしております。したがって、新銀行東京においては、これを真摯に受けとめて、業務改善計画を確実に実施していくことが重要であるというふうに我々は認識をしております。

○曽根委員 私が質問しているのは、新銀行が、過大な事業規模の追求、スコアリングモデルに依存した融資審査、管理等に起因して、大きな損失を計上したと、金融庁が明確に指摘している点を都としてどう受けとめているのかと。つまり、これこそが都が中心になってつくったマスタープランで定めたことではありませんか。その点、そらさないで、はっきり局長、答えてください。

○佐藤産業労働局長 先ほど今回の外部調査の報告書の件が委員から出されましたので、その報告書に基づいてご説明させていただきますけれども、スコアリングシステムについて、その検討をしたメンバーは、きょう別の機会にも申し上げましたけれども、後に新銀行の執行役となる代表取締役以下七名の方たち、そのほか監査機関、コンサル会社等々の専門家によって検討なされた成果を得て、これが決められ、また、銀行において採用されたというものであります。
 そして、今金融庁の業務改善命令でありました過大な事業規模というお話がありましたけれども、これは銀行がみずから策定した経営目標、それに向けて、銀行がみずからの経営努力をした、そのことを指しての金融庁の指摘であるというふうに理解するのがごく自然なことだというふうに考えます。

○曽根委員 局長の答弁には明らかに二つごまかしがありますよ。
 まず第一に、経営陣が事業計画を自分たちで決めたんだといいますが、マスタープランの融資目標を若干下方修正した程度です。しかも、昨年のこの議会で、私、明らかにしたように、開業前の年の二〇〇四年十一月十六日に、銀行から都の幹部に対するブリーフィングの中で、当時の津島銀行設立本部長が、マスタープランの数字と社内的な目標数値が余りにも乖離することになると、出資者として耐えられないと。本来のポートフォリオ型融資ができなくなるようなことがないようにと、繰り返し銀行側にマスタープランの遵守を要求しているんですよ。
 まさに金融庁の指摘したことは、都の責任に起因することであることは明白じゃありませんか。局長の答弁は、本当に卑怯だと思います。

 もう一つごまかしがあります。マスタープランというのは、税務協会に委託し、旧経営陣も加わった組織でつくったんだというのも、実はごまかしです。
 ここにパネルをつくってきました。マスタープランの策定の経過を詳しく書いたものです。これを見てわかるとおり、税務協会に新銀行のマスタープランづくりを委託した契約期間は、二〇〇三年六月から翌年の三月までですが、その一年以上前から新銀行の構想は検討されてきています。
 税務協会への委託事業が始まる二〇〇三年六月と七月に都議会で財政委員会が行われていますが、新銀行の基本的な構想が詳細に報告され、議論されています。そこで、当時の大塚出納長が一年近く前から我々の中で検討してきたと答弁もしています。マスタープランの基本点は、すべて税務協会に委託するころには固まっていたということが実態であって、七月四日の財政委員会ですべて議論されたのが議事録に残っていますよ。

 例えば主な点を挙げれば、この下のほうに書いておきましたが、まず、担保主義を超えた融資の考え方を聞かれて、大塚出納長は、従来の担保主義を超越した新たな仕組み、ポートフォリオという塊としてとらえる方式を採用し、全体の中で貸し倒れの損失を吸収するんだと答弁しています。
 さらに、後発銀行のメリットについて聞かれて、先発金融機関の失敗に学びながら、不良債権ゼロの出発でリスクの高い融資ができるんだと答えています。
 重要な点は、融資の審査をどうするのかというふうに聞かれまして、スコアリングモデルを使って、一々目ききなんか要らないで、スコアリングモデルの中でチェックすることで、極めて短時間のうちに結論が出てくるなどとも答えているんですよ。
 経営監督や説明責任について聞かれたら、三つの委員会による委員会設立会社方式をとること、どこかの委員会に都や都議会の意思が貫かれるような人が入って、会社をコントロールするというふうにいっています。
 三年後の黒字転換についても、人員や店舗を紋った低コスト、外資系を含めた金融の最大限活用、ITを使ったICカードの導入で、役務収益を見込むんだと説明しています。
 ここにはマスタープランの中心内容がほぼ網羅されているんです。つまり、マスタープランの中身は、知事と都の幹部らがこの一年前からいろいろ相談して、経営陣が登場する以前につくられていたことは明確ではありませんか。
 これでも都に中心的なマスタープラン作成の責任はないといい張るんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 まず一点目の観点でございますが、二点目にも通じるんでしょうけれども、マスタープランを強引に押しつけたというようなご主張、昨年の一定のときもありましたけれども、今回の報告書でも、これはさらに追加に書かれておりますが、マスタープランは確かに東京都の立場として作成したことは事実でありますけれども、これを受けて銀行が中期経営計画をつくったのもまた事実であります。その段階で、融資目標額がダウンサイジングされたことも事実であります。
 さらに、銀行が発足して、その後の景気の一部に回復の兆しが見られて、不良債権処理を終えて、リスク負担能力が回復したメガバンクが、中小企業の無担保融資等に取り組みを始めると。そういうような環境の変化の中で、新銀行を取り巻く経済金融情勢、また競争条件に大きな変化を生じてきたと。それが、当初の銀行が抱えた状況でありまして、そういう中で新たに銀行がつくった中期経営計画に基づいて、さらに中に銀行で中期経常目標を策定したわけであります。その中期経営目標というのは、そういうような、その当時の銀行を取り巻く経済金融情勢を十分に斟酌した上で、新銀行の責任のもとに策定された中期経営目標であります。この目標に向けて、経営陣が目標達成のために努力をしたというのが事実の経過であります。
 それから、マスタープランの策定についてでありますけれども、今お話のありました時期の問題でありますけど、マスタープラン、しかるべき成果物としてでき上がるまでには、恐らくいろいろな検討過程があったかと思います。
 さはさりながら、実際にマスタープランが発表されました○四年二月までの間には、当然マスタープランの基本的な概要を含めた、さまざまな検討が直前まで恐らくなされていたものだというふうに考えるのが当然だと思いますし、その間には、先ほど申し上げました新銀行の後の執行役になる方々も、その中のメンバーとしていたというのも事実であります。

○曽根委員 私がさっき指摘したマスタープランを都の責任でつくったことと、同時に、マスタープランから離れるなということを、当時の津島本部長は、繰り返し繰り返しブリーフィング会議で銀行側に要求していたこと、このことはお答えがありませんでした。この事実が、後で若干の修正はしましたけれども、結局は、早く融資を決めなきゃならない。目標は大きい。だからこそどんどんと安易な融資が行われていくという流れを銀行の中につくったことは間違いなんですよ。
 しかも、旧経営陣が加わった時期ですけれども、これは私たち調査しましたが、二〇〇三年十一月なんですよ、最初の方が税務協会の委託時の中に加わってくるのは。この時期というのは、もうその月に基本スキームが発表されて、マスタープランの骨格というのは表に出ているんです。その直前に新しく取締役になる方が入ってきて、その方の話では、基本スキームというのは、金融の専門家として文言の修正が精いっぱいで、ほとんどそのまま発表されたというふうに証言もされています。
 ですから、やはり骨格は、前々からつくられてきていて、マスタープランの発表のときには、大塚さんたちが議会でさんざんいろいろなことを、ふろしきを広げて、その中身が全部盛り込まれたんじゃないですか。これだけ都議会の公式の議会で、バラ色のプランを並べ立てて、都民の税金一千億円を、投入を承認させて、全部失敗したわけです、この五つの内容は。どれか一つでも引っかかったものはありますか。全部失敗しているんですよ、これは。こうやって、都民と議会を欺いた大塚出納長の責任は重大じゃありませんか。どう思いますか。

○佐藤産業労働局長 再三申し上げておりますけれども、大量の不良債権を発生させて経営を破綻させた、これは経営者の責任であります。それは大前提でありますので、そのことを都民の税金が失われたことの最大の責任者として、法的責任までをどのように追及できるかというところの検討を銀行がするのは当然でありますけれども、まさに経営の責任が第一であると。その次に、それを監督すべき委員会設置会社の取締役会があるわけで、そこの不十分さがあれば、株主として東京都がそれに物をいうか、こういう段取り、順番になるのが当然だと思います。

○曽根委員 旧経営者の責任については、ないとは私たちいっていませんよ。当然、重大な責任、幾つかあります。しかし、開業後の経営者責任を問うのであれば、やはり支配株主としての東京都の責任も免れないと思います。わざわざ元の都の幹部を配置した社外取締役も、融資がどんどん焦げついて損失が拡大していたのに、動いた形跡が全くありません。都自身だって、毎回株主連絡会に出席しながら、目標達成に努力をというだけで、都民の税金が失われていくのを、手をこまねいて傍観していたではありませんか。
 また、昨年春の銀行の内部調査報告の中で、仁司氏の行った不適切な業務執行の例として、例えばスコアリングモデルのみに依拠した審査を強く奨励し、目ききや職人芸という言葉は使うなとの発言を繰り返したというふうに、昨年春出された報告書にありました。
 ならば、東京都の側でさっきの大塚氏と同じ発言を繰り返していたということですよ。こっちの仁司旧経営陣の方の責任が追及されるのに、そのもとをつくった知事や大塚、津島氏らの責任をなぜ問わないのか。これでは都民は納得できないと思いますが、どうですか。

○佐藤産業労働局長 東京都が、何度も同じ答えになって恐縮ですけれども、マスタープランをつくって、それを政策として議会にご説明を申し上げて、一千億円の出資の議決をいただいて、都民の税金を注入して、銀行を立てたわけですね。銀行の立てた設立趣旨というのは、なかなか当時の金融環境の中で疲弊した中小企業に資金が回らない。これを何とかしたいという切なる思いの中で、この銀行を立てたわけであります。
 それで九千七百億円の融資残高を指標にしていくというような計画の中で、銀行が立てられたわけでありますけれども、当然、東京都の発案の立場とすれば、この計画に沿った業務実行が当初行われることを銀行側に期待をし、物申すことは当然のことであります。
 しかしながら、それをもって銀行経営が成り立たないという判断をするのは経営者の問題であります。経営者が、もしこれが成り立たないという判断をするのであれば、東京都からのどのようなそういう圧力といいますか、声がかかったとしても、それは自分としてはできないということで、業務を大幅に変更するなり、自分が身を引くなり、それを判断するのが最高責任者の経営者の判断すべきことであります。

○曽根委員 幾ら東京都が、中小企業の経営を守るためにつくったといっても、税金をどぶに捨てていいことにならないんですよ。しかも、二〇〇六年八月には、取締役会に報告され、しかも、表に発表された形で、損失の方が利益を上回っていることが明らかになって、この時点で東京都もわかっていたはずだということが、この報告書でさえ書いてあるじゃないですか。したがって、東京都は何らかの株主としての手を打つべき必要があったことは明らかですが、今「圧力をかけても」といいましたけど、何の圧力もかかっていませんよ、この時期に東京都からは。

 知事、お聞きしますけども、仁司氏ら旧経営陣だけに費任を押しつけて、私、良心がとがめないかと思うんですよ。改めて一千億円の税金を毀損した知事の責任をどう考えるか。
 これは知事にお聞きします。

○石原知事 私がこの銀行を提案したきっかけは、就任して間もなく、前任者の時代に東京の信組がいろいろ問題を起こしました。それまで地方の自治体に監督を任せていた金融庁が乗り込んできまして、信組にかなり厳しい枠をはめた。それで、その問題についての取材を、NHKが報道していました。私はそれを見てがく然としたんですが、あれはどこでしょうか。板橋でしょうか。東京の東部の方の零細企業の多いところの信組の支店長といったって、所員が二人か三人しかいない、小さな支店ですけど、そこのスタッフ全員が、こういう通達があったけども、この二つの会社に貸さぬわけにいかないだろう。
 これだけ優秀なものをつくって、しかも、老夫婦が二人でやっている。もう一つの会社は老夫婦と四十代の息子さんが三人でやっている。欠陥品が出だした。やっぱり機械が古くなったからいかんなということで、六、七千万円の機械を購入された。そして、ちゃんとした製品をつくるようになった。ただ、小さな小さな会社ですから、その機械を入れた瞬間に債務超過になるわけです。それは金融庁のお達しで、そういうところに貸しちゃいかんということで、これをどうやってごまかしてその企業に融資しようかということを、信組は事情を知っている、その地域に詳しい、その企業に詳しい、信組の支店長以下二人の所員が鳩首して相談している。これは、非常に私にとって印象的な映像でありました。
 そして、転じて、そのとき金融庁の長官が映りましてね。我々が決めたルールだと。これに従わないものは、貸す方も、借りる方もこの世界から消えていってもらうしかない。冷然といい放った。私は、何とむごい行政の仕打ちだろうかと思ったから、やっぱりそういうところを救い切れないセクターというものをつくらにゃいかぬということで、この銀行を提唱しました。
 これ、本当に不本意、私自身も不本意ですよ。私が、しかし、この銀行を提案してつくったことは絶対に間違っていないと思います。

○曽根委員 さっきもいいましたけど、どんなにそのときに動機が純粋なものであっても、税金を使う以上は絶対にこういうことがあってはならないことは、それは知事だってご存じでしょう。(知事「経営の責任じゃないか」と呼ぶ)そうやって、人に押しつけて、例えば旧経営陣のトップ二人に損害賠償を求め、その他の取締役にまで、報酬自主返済を要求するというんなら、知事、大塚氏、津島氏らは、せめて退職金の返還ぐらいすべきだというのが都民の声なんですよ。このことは申し上げて、次の質問に行きたいと思うんです。

○石原知事 あなたのお話を聞いてて、非常に木本意なのは、仁司なり、その下のあなたがいう二人の幹部がですが、共産党の聴聞には応じても、何で私たちの弁護士に会って、話をしないんですか。とにかくこちらが請求しても、私たちの弁護士に会おうとしない。
 あなた、その仁司君に会ったんでしょう。さっき会ったといったじゃないか。あれ、はったりかね、それじゃ。

○曽根委員 私は、仁司さんに会ったなんて、一言もいってないじゃないですか。税務協会に委託したときに、最初に参加した七人とおっしゃいましたが、幹部の中の一人には私たちは証言を得ました。仁司さんが、別に私たちは会っているわけじゃありません。
 それに、知事が幾らいいわけをしても、一千億円の都民の税金を結局むだにしたこと、そして、そこに群がったのは、決して板橋のような、工場の人たちだけじゃないでしょう。
 ものすごい数の不正融資があったじゃないですか。ブローカーが動いたじゃないですか。議員の口ききもあったじゃないですか。こういうことがあるからこそ、私はいっているんです。

●乱脈経営の新銀行も対象とする金融支援条例の危険

 しかも、今度の・・・(発言する者多し)私は、金融支援条例の問題もやりたいので質問しますけれども、今不況の中で、今を乗り切れば生き残るという中小企業が確かにありますから、それを救済する東京都のだ手立ては必要だということは、私たち重要だと思っています。
 しかし、この金融支援条例には、見過ごすことのできない重大な問題があるんですよ。それは、新銀行東京を対象とすることによって、乱脈経営とか、乱脈融資のつけを都民の税金でまたまた支払う道につながりかねないという欠陥条例だからです。
 この条例は、経営が困難な企業に対して、金融機関が新たな融資を行って、経営を建て直し、融資も返済できるようにするということで出されています。しかし、この場合、条例に基づく融資を行う企業を決めるのは金融機関です。となると、金融機関に目ききの力があるかどうかが問われます。支援の対象は制度融資の枠からも外れるけれども、頑張れば生き残れるかどうかの業者です。このこと自体、よほどしっかり見きわめなければ、次々焦げつきかねないリスクの高い融資です。まじめに頑張っている企業か、悪質な企業かの見きわめができなければなりません。東京都は、目ききの力について、具体的にどういうものをとらえ、また、この融資制度でどう活用していくべきと考えているのか、お聞きします。

〔発言する者多し〕

〇佐藤産業労働局長 日ききの力を具体的にどういうことかというお話でありますけれども、地方銀行、信用金庫、信用組合等といった金融機関では、営業担当者がふだんから企業を訪問して、声かけをするなど、日ごろから中小企業の経営の実情の把握に努めているわけであります。また、融資審査に当たっても、担保に過度に依存せず、事業計画等で将来性を判断するなど、リレーションの強化を重視した経営を行っているものであります。
 今回提案しております支援策では、こうした地域の金融機関の目ききの力を活用して、高い技術力等により、この難局さえ乗り切れば、将来に展望が開ける企業などを支援していく。こういう目的でございます。

○服部委員長 発言中はご静粛にお願いをいたします。

○曽根委員 確かに多くの信金、信組は地域金融機関として地域に細かく店舗を配置し、日常から企業回りをし、業者の営業の様子も知っているし、家族のことまでつかんでいます。だからこそ担保力がなくても融資できる、堅実な業者を選ぶことができるわけです。
 問題は、乱脈融資を繰り返してきた新銀行には、目ききの力など期待できないということです。
 最近、ちょっと違うんだという話、さっきありましたが、従業員が百人そこそこで、本店しか店がない。こういう銀行にとって、一万件近い顧客と月一回接点を持つというふうに改善計画に書いてありましたが、こんなことをいっても、大半が電話にならざるを得ません。
 大体、現経営陣の一人、大塚氏は、かつて財政委員会で、スコアリングモデルを使って極めて短期間のうちに一々目ききなんか要らない世界ですよと、堂々と説明していたのに、それをそのまま朝礼でしやべっていた仁司氏だけを責めているんですね、今。
 代表の津島氏も、ブリーフィング会議で、三営業日以内の融資の決定にこだわり、目ききなどできな
いスピード審査体制を押しつけた張本人が、今経営者なんですよ。
 こういう人物達が、責任を当時の経営陣に押しつけてのさばっている新銀行が、改善の努力などといっても、一体だれが信用できますか。何で新銀行がこんな状態なのに、新銀行がこの条例の対象から外されないんですか。

○佐藤産業労働局長 本日もたびたびお答えをしておりますけれども、私どもが、今回提案させていただいておりますこの仕組みは、地域金融機関が、日ごろからおつき合いのある中小企業、いわば顔が見える中小企業に対して、資金融資をしていく。そのことによってデフォルト等々も十分抑制できる。そういう効果もあることを顛麺しながら、つくり上げていく仕組みであります。当然、我々としては、そういう中小企業を対象にして、都内を主たる活動の場としている地域金融機関には幅広く参加していただきたい、そういうふうに考えております。
 そういう意味では、今、特定の金融機関を念頭に置いたり、排除したりと、そういうようなことは当然考えておりません。

○曽根委員 そんな説明では、到底通用しません。
 しかも、もう一つの問題は損失補助の危険性についてです。新銀行を初め乱脈金融機関が、この制度を使って自分の不良債権をつけかえることで、損害を最小限に圧縮して、処理してしまうと。こういうやり方を許さない歯どめが、この条例にあるかどうかという問題です。
 パネルをつくってきましたが、この貸し付けを受けて、新銀行が乱脈融資先に新たな融資を行った場合、どういうことが起こり得るのか。複数の融資を受けている場合、どの融資から返していくかは、融資先企業の判断に任されます。だから、新しい融資を受けた企業が、新銀行にそれまでの債務、既往債務を返済した上で、倒産する危険だってあるわけですよ。そうすると、仕組みからいえば、金融機関がこうむる損失を都が補助することになります。悪用されたら、乱脈融資の焦げつきまで都が損失補てんさせられかねません。
 そんなことがあってはならないと思いますが、いかがですか。

○佐藤産業労働局長 新銀行を例に出してお話をされているので、なかなかちょっと不本意なところでありますけれども、きょうはたびたびご答弁申し上げておりますけれども、本制度の安定的な運営を確保するには、債務不履行の発生を抑制することが極めて重要であるということは当然認識しております。そのためには、例えば制度融資、これはご案内のとおり、保証機関を活用して、車の両輪ともいうべき審査の体制をもって、そういう債務不履行の発生を抑制するというような、制度的な効果を持っているわけでありますが、例えばそういう制度融資と同様に、保証機関を活用していくことも、一つの効果的な措置であるというふうに考えておりまして、これらを含め、今後検討してまいります。

○曽根委員 今信用保証機関の話が出ましたが、例えば信用保証協会のようなところに信用保証してもらうんだとすれば、何のことはない、制度融資の枠を拡大すればよいことではありませんか。
 大体、条例に、融資は金融機関の判断で行うとされているのに、条例にない信用保証機関の話が後で今になって出てくるというのは無責任過ぎますよ。条例が穴だらけの証拠じゃありませんか。
 では、今損失の補助の話について、抑制するといいましたが、どういう場合にどういうふうに行って、判断基準は何なのか。また、補助の判断はだれが行い、審査体制はどうつくるのか。補てんした際の債権回収をだれがやるのか。こういうことは決まっているんですか。

○佐藤産業労働局長 本制度における損失補助につきましては、現在内容について調整中であります。お話の判断基準はお示しできませんけれども、現行の制度融資におきましても、個別企業の債務不履行に対して金融機関の損失を補てんする仕組みがあるわけでありますから、今後これらを参考にして、調整していきたいというふうた考えております。
 それから、補助の判断の件でありますけれども、審査体制ということになるかと思いますが、繰り返しになりますけれども、損失補助め具体的な仕組みや体制というのは、今後調整していくものでございます。
 なお、当然ながら、補助金の執行については適正を期していく考えであります。
 また、債権の回収はだれが行うのかというお尋ねでありますけれども、損失補助の対象となった債権の回収については、例えば制度融資と同様に、保証機関を活用することも一つの効果的な措置というふうに考えております。そうした場合には、一般的には保証機関が個別企業の債務不履行に対して、金融機関に代位弁済を行いますとともに、それに伴う求償権を取得して、回収に当たることになる。そういうことになるかと思います。

○服部委員長 静粛に願います。

○曽根委員 損失を抑制するといっても、リスクの多い融資を金融機関の判断で融資させれば、都はコントロールするわけにはいきません。損失補助の判断基準や体制もまだ決まっていないと。債権回収についても、今検討中でしょう。しかし、補助金の支給ですから、これは所管は都がやらなきゃならないわけですよ。多少保証機関に助けてもらうにしても。その体制が産労局にあるかということですよ。こういうところを見ると、全く歯どめがかかってないじゃないですか。
 しかも不良債権というのは、銀行自身の融資だけではありません。先ほどちょっと話も出ましたが、例えば新銀行には信金の融資に対する保証の焦げつきもたくさんあるんですよ。大体、今保証したうちの二、三割は焦げついているそうです。新銀行の抱える不良債権のうち三分の一近くを、この保証の焦げつきが占めている。これは他の金融機関と比べても、余りにも異常です。この場合は、融資は信金が行うんですが、保証して、焦げつきを抱えているのは新銀行です。信金が、この融資で返済困難な企業に借りかえをさせていけば、新銀行が抱える保証の焦げつきは大きく減らせることになるわけですよ、仕組み上。
 例えば、今パネルをつくりましたが、新銀行の保証が焦げついていれば、通常でいえば、新銀行がこの保証について代位弁済をしなければなりませんが、しかし、ここに東京都の預託を受けて、信用金庫が経営破綻状態の企業に新たな融資を行って、その返済が既往債務に当てられた場合、この新たに東京都が貸し出した方の融資は、結局、返済不能になるわけですよ。その状態で企業が倒産してしまったら、東京都が損失補償しなければならなくなる。そうすると、逆に、新銀行東京が抱えていた保証は、代位弁済が不要になるんですよ。こういうことができてしまう仕組みが、歯どめがかかっていないんじゃないかということをお聞きしているわけです。この点についてはいかがですか。

○佐藤産業労働局長 保証をしている仕組みは、新銀行も確かに保証している機関でありますけれども、一般的には都内金融機関の保証といえば、信用保証協会が制度融資の中で保証している。当然、保証を通じて、今回のケースが、今のような形で、非常に悪意をもって表現されていると思いますけれども、仮にそういうことになれば、それはないことはないのかもしれませんけど、この条例がそんなことを意図しているものじゃないことは、趣旨からして、ご理解いただけないのがまことに残念であります。

○曽根委員 そのつもりがないとか、意図がないといっても、損失補助の基準も体制も何も決まっていないじゃありませんか。例えば新銀行の保証が焦げついた例が具体的にありますので、ちょっと紹介しますが、墨田区のエム・ピー・ジーというこ家庭用浄水器などを扱う企業ですけれども、悪徳商法がマスコミでも報道されて、昨年四月に岩手県から特定取引法違反で行政処分を受け、民事再生法の適用を受けて、九月に倒産した企業です。
 私どもの調査では、ここに登記簿がありますけれども、新銀行東京は、この企業への融資を行った信用金庫の保証を行って、昨年七月十一日に二千九十四万五千五百九十九円の代位弁済を行っています。
 莫大な焦げつき債権を抱えた金融機関にとっては、不良債権を処理するのに、今回の条例の抜け穴ほど都合のいい仕組みはありません。悪用を絶対に防ぎ切れるといえますか。
 もう一度お聞きします。

○佐藤産業労働局長 なぜそのような個別の企業の個別の案件、それがそういうところにあるのか、よくわかりません。そういうのに基づくご質問についてはお答えしかねます。

○曽根委員 さっきもおっしやいましたけど、意図がないといっても、防ぎ切れる保証はないんですよ。損失の補助は、補助金の投入ですから、チェックや債権の回収は、結局、都の職員が、いろいろお手伝いを受けるかもしれませんが、責任を持たなきゃなりません。
 信用保証協会レベルの専門職員を相当人数そろえないと対処できません。実際上、困難です。新銀行東京がかかわる問題について、これは補助金の話をしているんですよ。知事や都は、幾らそんなことはない、うまくいくといっても信用できません。
 新銀行の設立のときも、都が新銀行の経営を十分監視できるとか、想定外の事態が生じても乗り越えられるとか、さんざん大言壮語をはいているじゃありませんか。ちょっと最後にパネルをつくったんですけど、知事が、この間、追加出資について、どういう発言をしてきたかということですよ。
銀行設立当時から、危ないんじゃないかということを専門家からいわれていたんです。
 ですから、定例記者会見でも、そういう質問が出ましたら、貸し倒れが多くなった場合に都税投入はするのか。「しません。」その年の十二月九日、四定の答弁でも、税金の再投入の懸念について、「考えておりません。」二〇〇七年ですね。おととしの五月二十五日、定例記者会見で、四年前に追加出資を否定した立場はどうかと聞かれて、「変わっていません。」、同じ年の六月一日定例記者会見で、追加出資は、「これはありません。」十一月二十二日定例記者会見で、以前も追加出資の考えはないといったが、その考えは、「変わっていません。」最後は、私の代表質問ですが、二〇〇七年十二月十一日、第四回定例会答弁、追加出資はしないと、都民に約束してほしい。追加出資は考えておりません。
 この一カ月半後ですよ、四百億が出てきたのは。だれが信用できますか。
 違うといい張るのであれば、新銀行を初め乱脈経営が明らかな金融機関をこの条例の対象から除外すると。都は乱脈融資のつけはかぶらないということをなぜできないんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 まず、ただいまのご質問にお答えする前に、東京都がそういう補助金の執行に当たっての審査ができるのかというようなお尋ねでありますけれども、現行の
制度融資における損失補助の手続きの中でも、私どもの金融の方で審査を現に行っております。そういうノウハウについては持ち合わせているというふうにご理解をいただきたいと思います。
 それから、知事の発言のくだりがありましたけれども、そもそもこの議論は昨年の一定でさんざんやった議論でありますけれども、まさに新銀行の経営状態の極めて劣悪な状態になった段階で、四百億円の追加出資を今議会に一昨年ですね。お願いしたとき、お話をしておりますけれども、選択肢が三つしかない。こういう中で、どれが一番都民にとって負担が少ないのか。また、中小企業、新銀行が抱えている中小企業の貸し出し先である企業や、または従業員、家族等々にとっての負担が少ないのか。それらを総合的に勘案した中で苦渋の選択ではあるけれども、これしかないということの議論をさんざんさせていただいたわけであります。
 そういう意味では、まさにそれまでの知事の思い等々ありますけれども、その時点における苦渋の選択ということがご理解いただいて、四百億円の出資をいただいた、議決をいただいたということになるかと思います。
 それからもう一つ、本条例についてでありますけれども、るるお答えしてきておりますけれども、都と地域の金融機関が連携して、資金繰りに苦しむ中小零細を支援することがこの条例の目的であります。今まで委員がさんざんご指摘されたような、そのような意味合いをもって、我々はこの条例を提案しているところではございません。

○曽根委員 今局長がお答えになった中で、現在行っている制度融資の代位弁済の審査というのは年間数千件あるそうですが、基本は書類審査です、これは。しかも、条例に明記されない以上は、さっき信用保証機関の話もありましたか、これははっきりいって、まだ検討の対象になりませんよ、条例にないんだから。
 条例に明記されない以上は、この条例の本当のねらいは明白です。条例を撤回し、苦しい企業に本当に役立つものを出し直すべきことを強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)

○服部委員長 曽根はじめ委員の発言は終わりました。
 以上で本日予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 あすは午後一時から委員会を開きます。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
 午後九時五分散会

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