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1993年9月30日住宅港湾委員会
住宅局に新しい都民住宅制度について問題点を質す

「10年たたずして制度はゆきづまる」と早期の制度改善を求めました


◯曽根委員 百四十七号議案、特定公共賃貸住宅、今回条例を出されておりますこの住宅の制度と、都民住宅の新しい制度も含めて、何点か質問いたします。
 バブルの崩壊後も都内の住宅問題ますます深刻なのはご存じのとおりです。これは、かつての低所得層の住宅難だけではなくて、今回対象とされている中堅所得層にまで住宅難が広がってきているというのが特徴だと思います。バブル時代に無理して買い求めたマンションのローン、賃貸住宅の家賃に耐え切れなくなってきている。しかも収入が実質的に下がってきている世帯にとっては、大変深刻な事態が起こっております。公団住宅や公社住宅などに入居した、まあ、そういう意味では運のいい方でさえ、住宅費の重さに泣いているというのは、代表質問でも指摘したとおりです。大体収入の約三割もしくはそれ以上を住宅費に割かなければならないという実態が広範に起きているし、最低居住水準以下、五十平方メートル以下の住宅で我慢しなければならない世帯というのも相当多いわけです。
 こういう中で、都民の都政に対する要望のトップがここ数年住宅問題であるというのはご案内のとおりで、我が党は、こうした都民の住宅難の解決のためには、まず第一に、都営住宅の大量建設というのをかねてから主張してまいりました。同時に、中堅所得層の住宅問題については、やはり都が直接施行する収入の一五%程度以内で住み続けられる応能家賃制度に基づく都立住宅、こういうのを東京都が実施に踏み切るべきであるということを提起してまいりました。
 しかし、東京都がここ数年取り組んできているのは都民住宅、地域特賃や一般型での都民住宅ですが、これは結局傾斜家賃で、公団や公社と同じように、最終的には高額な家賃になってしまい、居住者にとっては大変重い住宅費の負担というのは避けられない。こういう点で、中堅所得層の住宅難を解決することには残念ながらなっていないということを批判してきたわけです。
 今回条例提案されました特定公共賃貸住宅を含めての都民住宅、これについては、これまでよりは家賃の負担を減らすという点や、都内での公的な住宅を供給していく上で一定の効果が期待できるという点で、これまでよりは改善されているというふうに思いますが、入居する都民の立場に立ってみると、やはり大きな問題が残されているということで、以下何点かにわたって、その問題点についてただしていきたいと思います。また要望もさせていただきたい、こう思います。
 まず、初めに、この都民住宅制度の最大の問題というふうに感じるのは、この制度は、入居者を五つの収入階層に分けて、おおむねそれぞれの階層が一八から二〇%以内の入居者負担で入居者の家賃がスタートするようになっておりますが、その後、毎年確実に五%ずつ家賃が上がっていく。最大二十年間それが上がり続けるという制度で、これが入居者にとって、当初は何とか負担に耐え切れるけれども、将来ずうっと五%ずつ上がり続ける家賃にどこまで自分が耐え切れるのかという不安を、やはり入居当初から抱かざるを得ないという点が非常に大きな問題ではないか。
 最初に、この毎年五%ずつ上昇していくという、この入居者負担の五%という数字の根拠を教えていただきたい。
  
◯廣瀬開発調整部長 都民住宅の場合、家賃からの減額は、入居を希望する者が円滑に良質な賃貸住宅に入居できるよう、供給の初期段階に行うものでございまして、入居者の家賃の負担能力が小さい管理開始当初は減額幅が大きく、年数の経過とともに、入居者の負担能力の上昇に見合って減額幅を縮減していくものでございます。
 この家賃の上昇率は、国の特定優良賃貸住宅制度による家賃減額の補助対象基準と同様の上昇率としたものでございます。
  
◯曽根委員 国の制度をそのまま準用したものだということで、これは国会の質疑もあったわけですけれども、結局、入居する方の家賃負担能力が当初は低いだろう、ですから、そこは家賃補助を厚くして、将来は負担能力が上がってくるんだと、これはもう勝手に決めて、それで家賃補助を減らしていく。しかし、入居者のその世帯の事情がその後どうなっていくのかにはお構いなしに、その後変化していく。
 例えば、平均的な勤労者の所得が動向がどうなっていくのか、それから、物価がどういうふうに上がっていくのか、動向がどうかということとは関係なく五%が設定されているというところに大きな問題があるんじゃないかと思うんですが、ちなみに、都内の勤労者の平均的な所得の動向といいますか、ここ数年、平成元年以降ではどうなっていますか。
 
◯廣瀬開発調整部長 都内の勤労者世帯について、東京都生計分析調査によれば、平成元年度は前年度と比較して二・七%、平成二年度は七・七%、平成三年度は三・二%、平成四年度は二・四%、それぞれ上昇しておりまして、平成元年度から平成四年度までの平均上昇率は四・〇%でございます。
  
◯曽根委員 今お話があったように、平成元年以降、平均では四・〇なんですが、平成二年に七・七という上昇があった。これは恐らくバブル時代の影響が賃金の面でも出てきたのかと思いますが、それ以降急速に下がって、平成三年が三・二、平成四年が二・四と。今の状況でいいますと、景気が二番底を迎えるかもしれないということで、この状況がそう簡単に、例えば七%のような上昇が期待できる状況ではないという点で、この十年ぐらいを見てみても、ほとんどやはり三%台なんですね。
 そういう点では、所得の伸びよりもかなり大きい家賃の上昇が起こってしまうということになると思うんですが、そこで、もう少しこの点を具体的に聞きたいんですけれども、今回新しく葛飾区の小菅一丁目でトミンハイム小菅という都民住宅が、計画は前の特賃の時代にあったらしいんですけれども、ここでパンフレットを見ますと、五階層に分けて募集しておりますが、新しい都民住宅の制度で募集が始まっているわけですね。
 これについて具体的にちょっとお聞きしたいんですが、この二年間、平成三年、四年の賃金上昇の平均である二・八%で今後も入居者の方の賃金が上がっていくというふうに仮定した場合、当初の家賃、第一区分の方は七万何がしの家賃ですね、それから第五区分ですが、一番所得の高い方、これは十四万ぐらいになりますか、それが最終的に二十年後にどういった家賃になるのか、それから、そのときの収入に対する家賃の負担率はどの程度になるのか、それを教えてください。
  
◯廣瀬開発調整部長 ただいまの小菅一丁目の事例でございますけれども、当初の入居者負担額をちょっと申し上げますと、専用面積が七二・九六平方メートルの百三号の住戸の例で申し上げますと、第一区分につきましては入居者負担額が七万一千六百円、負担率が一七%。第五区分については入居者負担額が十四万一千七百円、負担率は一八・九%となってございます。
 これが二十年後になりますと、ちょっと負担額そのものの値を持っておりませんが、負担率について申し上げますと、第一区分につきましては二五・四%、第五区分につきましては一八・三%となっております。
  
◯曽根委員 額はちょっと今お答えなかったんですけれども、二十年後を見ますと、当初の家賃では第一区分、所得の低い方の方の負担率が一七%で、第五区分、高い方の方が一八・九。やっぱり所得の高い方の階層に負担率が若干重く設定されているわけですね。それが二十年後になりますと、これが逆転しまして、第一区分の方が二五・四%の負担、第五区分の高い階層の方が逆に下がって、一八・三%の負担になる。
 これはなぜかというと、結局、傾斜でずうっと五%ずつ上がっていって、高い所得階層の方は、大体この住宅でいいますと、七年間たちますと契約家賃に到達してしまう。すると、後は契約家賃で行きますので、二年間で大体四%ぐらいずつ、一般の賃貸の上がる程度のスピードで上がっていくということで、したがって、どんどんどんどん家賃の負担が下がっていく。しかし、その第一区分の方は五%、二十年間上がり続けるために、逆転するわけですね。
 こういうところに、この制度の矛盾といいますか、第五区分といえば、年収一千万円程度の方ですから、ほかにもある意味では住宅問題を解決する道が財政的にいえばまだある。しかし、都営住宅より若干上、または重なる部分の階層の方にとっては、この制度がいわば救いになるかというふうに期待されるところなんですが、相当重くなってしまう。
 それから、もう一つお聞きしたいのは、二十年間たっても、第一区分の方はまだ契約家賃に到達してないわけですね。額をちょっと、お答えがないから申し上げますと、二十年たって第一区分の方の家賃負担が十八万九百円ですね。そのときの契約家賃が二十三万一千九百円ですから、約五万円の開きがまだあるわけですね。そうしますと、その後はどういうふうにこれは扱われるわけですか。
  
◯廣瀬開発調整部長 管理期間が終了した時点で、家賃が当該終了時点における住居者負担額の一・二倍を超える場合には、終了時点の入居者負担額に一・二を乗じまして、その額を新たな入居者負担額とし、契約家賃にすりつくまで家賃減額補助を継続するようにして、激変緩和の措置を講ずることとしておるわけでございます。
  
◯曽根委員 本来であれば、二十年たてば、契約家賃にもういきなりいってしまうと。この家賃補助制度は切れるわけですよね。しかし、激変緩和だということで、二割ずつ上げましょうという話ですね。しかし、二割アップというのは、今までの五%のアップよりもさらにそういう意味では激しい上昇になるわけで、二年間ですから、二割のまた二割で、四割四分上がりまして、第一区分の方はその時点で二年間で契約家賃二十三万何がしにすりつくというふうになりますね。そのときの家賃負担率というのは三〇・八%になってしまう。
 この点は、今の制度のお話でいうと、数としてはそういうふうになるわけですが、そのとおりですか。
  
◯廣瀬開発調整部長 契約家賃が十六万三千円というものが、二十年たちますと二十三万一千円、こういうふうになります。これは第一区分の場合でございますけれども、負担率は二十年目には二五・四%、こういうふうになってございます。
  
◯曽根委員 二十二年後です。
 
◯廣瀬開発調整部長 失礼いたしました。二十二年後については、ちょっと手元に資料がございません。
  
◯曽根委員 前に資料を求めておけばよかったんですが、これは計算すればわかることで、三〇・八%ということになるわけで、この時点で三割を超えるわけなんですね。やっぱり今現状で民間の賃貸に入っている方で三割超えて大変だという方がいっぱいいらっしゃいますが、そういう状況に、厳しい計算だと、仮定の上での話なんですけれども、なる可能性は大いにあるということ。中堅階層の中でも、所得の高い方の方にとっては、この制度はある意味では、一たんは家賃の負担は上がるけれども、将来的にはむしろ下がってくる。そういう点ではかなり有利な制度とはいえるけれども、低い第一、第二区分の階層の方にとっては、非常に厳しい負担の重さに耐えなければならない制度になってくる。
 二十年間ずっとこの制度が続けられるとすれば、こういう問題にどう対処するかということをどうしても考えなければならないというふうに思うんですね。
 それと、具体的に小菅のことでもう二点お聞きしたいんですが、一つは契約時の敷金ですね。これがパンフレットを見ますと、五十万何がしということで、第一区分の方も第五区分の方も、つまり収入に関係なく、当初家賃はいろいろ違いますけれども、一律同じなんですね。これはどういう根拠によるものですか。
  
◯廣瀬開発調整部長 敷金でございますけれども、敷金については契約家賃の三カ月分、こういうふうに決まっているわけでございます。各階層の区分での違いはないわけでございます。
  
◯曽根委員 つまり、当初の時点での本人の負担する家賃ではなくて、そのときの契約家賃の三カ月分を敷金として取るという形になっている。すると、収入が高い区分も低い区分の方も同じになってしまうわけですね。しかし、実際に普通の民間のアパートに入るようなことを想定しますと、第一区分の方にとっては当初の家賃の七カ月分を敷金として払わなければならないということになるわけなんです、実際問題は。そういう点でも非常にその時点での負担が重いんじゃないかと思うんですが、その三カ月分というのは、何らかの根拠があって設定をされていますか、ちょっとお聞かせ願いたいんですが。
 
◯廣瀬開発調整部長 三カ月分の根拠でございますけれども、国の特定優良賃貸住宅制度におけるものが三カ月ということになっておりますので、都民住宅についても三カ月となっているわけでございます。
  
◯曽根委員 国の制度に基づくといわれると、そのとおりなんですが、この条例案を見ますと、家賃滞納などによる明け渡し要求の権限が、三カ月滞納があった場合に明け渡し請求権が出るということが書かれているので、恐らくその担保といいますか、そういう意味の性格があるんじゃないかと思うんですが、そのときに、本人が払う家賃ではなくて、契約家賃の三カ月分を担保するということは、仮に家賃滞納があって三カ月たって本人が払わない、明け渡しになるといったときに、今まで補助を入れてきた分を含めて取り戻すということの担保として設定されているというふうに考えざるを得ないんですが、その点はどうですか。
  
◯沼生住宅政策担当部長 都民住宅制度の今回の家賃でございますけれども、入居者が本来支払うべき契約家賃につきまして市場家賃を勘案して設定し、また実際に入居者が負担する額につきましては、入居者の所得階層区分に対応して、各階層区分の中間の収入額に一定率を乗じて初年度の入居者負担額を定め、その額を次年度以降五%上げていく。で、それを契約家賃に到達するまで二十年間を限度として契約家賃から減額するという方式をとっているわけです。
 敷金につきましては、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律の中でも、こういった公共賃貸住宅につきましては、敷金とかというものは取ってもいいけれども、一般の民間住宅で取っているような取り切りの権利金とか、そういったものを取ってはいけないという規定になっておりまして、そういった点で、今回の公共賃貸住宅というのは意義がある、意義の一つでもあるわけです。そういった観点から、敷金については、入居者が本来支払うべき契約家賃について、その三カ月なりの額を取るということが基本的な考え方です。
  
◯曽根委員 考え方はわかりました。
 この小菅の場合について今申し上げましたけれども、さらに都心区でこういう住宅をつくった場合は、もっと当初家賃との格差が大きくなるわけですね。仮に契約家賃が当初で二十万円以上、二十五万円ぐらいあった場合には、第一区分の方は、本当に十カ月分ぐらいの敷金を最初に払わなければ入居できないということになりかねないわけなんです。ですから、当初のハードルがこのために非常に高くなる。
 ですから、この敷金の問題は、今考え方はわかりましたけれども、家賃補助が入ってないというところからこういうことになるわけで、この点では改善が必要ではないかと思うわけなんですね。
 それからもう一つ、小菅の場合、住宅の募集が二つに分けて行われていますね、一般型と特賃型ということで。第一、第二、第三階層までと、第四、第五階層に分けて、第四、第五階層の方が十二戸、第一から第三階層の方が十戸と、むしろ高額の収入の方の方に若干多く募集がされているんですが、こういう募集のやり方は今後も続くのか、それとも都民住宅の新しい制度で変わっていくのか、その点をお聞きします。
 
◯廣瀬開発調整部長 特定優良賃貸住宅供給促進事業制度を活用した今後の都民住宅の募集に当たりましては、原則階層と裁量階層を分けて行うのではなくて、供給対象である収入分位が二五%から八〇%の所得階層を一括して募集していくこととなります。
  
◯曽根委員 それで、今の小菅の場合のようになっては困るなと思っていたもので、お聞きしたんですが、このような形で高額の方の方に手厚く募集されてしまいますと、ますます低い階層の方は応募の機会が減ってしまう。むしろ住宅難厳しいところは、やっぱり中堅といっても低い階層の方ですから、そこにむしろ手厚く、枠を設けるなら、こちらの方をうんと厚く募集をしてもらいたいところなんですよね。しかし、その枠をつくらないということですので、応募されて当選した方の、たまたまそのときの分位に応じて補助が出るということになるわけですね。それはわかりました。
 この点では、先ほど申し上げましたように、第一、第二階層あたりに手厚い募集の仕方を工夫していただきたいというのが要望です。
 次に、国の制度では収入階層を三階層に分けて特優賃ではやっているとお聞きしたんですが、東京都の場合、五階層に分けているという点では、若干制度としては、収入区分を細分化することによって、それぞれの収入の方に対応するという努力がされているのかと思います。しかし、五区分に分けても、その区分の範囲の中で中間値をとって家賃を設定しておりますので、やっぱり上と下では差が出てくるんですね。
 一例として、第一区分の方、一番低い所得の方の上限の方と下限の方の当初家賃の負担率はどのぐらい開きますか。
  
◯廣瀬開発調整部長 第一区分の上限である収入分位が四〇%の方の負担率は一五・六%、下限である収入分位が二五%の方の負担率は一九・三%となっております。
  
◯曽根委員 約四%近い開きができるわけです。確かに国の制度に比べれば、五階層に分けてますから、改善されているんですが、その中でも格差が生まれてしまう。ここを何とか平準化に近い形で、一八%なら一八%でそれぞれの収入に応じて負担がかかるというような形に平均化していくには、どういうことが考えられるか。また、そういうことに向けての何らかの制度改善というようなことを考えていらっしゃるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  
◯廣瀬開発調整部長 この件につきましては、現在国に対しましては、平成六年度の要望事項として収入区分の細分化を要望しているところでございます。
 同一区分において負担率の格差が生ずるという問題を解消するためには、段階的な所得階層区分ごとに負担率を設定するという方式から、個々の世帯の収入に適正な負担率を乗じて個別の負担額を設定するという方式に変える必要がございます。このような方式の導入につきましては、今後の研究課題というふうにしてまいりたいと考えております。
 
◯曽根委員 国への要望はわかったんですが、これを本当に公平に負担率を掛けていくという点からいいますと、今おっしゃった応能型の家賃制度と、どうしても突き詰めていくと出てくるんですね、この課題としては。ぜひそこを目指していただきたいというふうに要望しておきます。
 それから、今回国の特優賃制度では、新たに住宅管理者として、知事が指定する法人を加えました。これは先ほど資料もいただいたところですが、ところが、国の制度の方では、公的な住宅の管理に民間の法人まで入れるのにもかかわらず、行政として、その管理者に対する監督権が非常に弱いんですね。ないといってもいいんですよ。建物のオーナーといいますか、認定事業者のみに対して指導が行われる。管理者の方は指定はかかるんですけれども、規制がかからないという、私たちにはとっては欠陥としかいいようがないような問題があったんです。東京都の場合は、先日の本会議の答弁で、管理者に対する指導、助言などを行うという答弁があったように聞いたんですが、その点がどうなっているか、認定事業者に対する指導、監督権と、法人に対する指導、監督権、それぞれについてお答えいただきたい。
  
◯廣瀬開発調整部長 ご指摘のとおり、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律の規定に基づく指導助言、報告の聴取、改善命令は、認定事業者に対してのみ行われるものでございまして、指定法人に対しては認定事業者に対するような、法に根拠を置く指導監督を行使できないわけでございますが、都民住宅の制度におきましては、指定法人に対しても都が直接指導監督できるような仕組みを取り入れてございます。
 例えば、供給計画認定後に、都と指定法人と認定事業者の三者で協定を締結するわけでございますが、その中には、都が指定法人に対して供給計画等に関する指導助言を行うことができる旨の条項を設けており、この条項に基づき都は個別の供給計画に関し、指定法人を指導することができることになってございます。
 また、都の指定法人の制度では、知事の指定を受けた法人は、知事の指導監督に従うことが義務づけられておりますので、これに基づく指導監督もできるわけでございます。
  
◯曽根委員 国の制度よりも一歩前進させたということだと思います。入居者に日常的に接するのは、家賃を徴収したり、いろんな建物の管理を進める管理者の方ですので、ここで居住者とのトラブルなどが発生しないようにきちんと指導していただくという点では、努力をお願いしておきたいと思います。
 それから、区市町村などがこの国の特優賃制度を活用して、それぞれ独自の公共住宅を提供しようというようなことが今後考えられると思います。それから、今まで地域特賃制度を使っての区営住宅、区民住宅や市民住宅を計画されていたところは、こちらの制度に移行してくるのかなという気もするんですが、そういう場合の、今まで地域特賃のときに国の補助と地方の補助の中で東京都が負担していた分がありますが、その補助の内容については新しい制度でどうなっているのか、その点をお聞きしたい。
  
◯廣瀬開発調整部長 新しい制度では、国は補助金である特定財源を控除した地方負担分を行政経費の標準的費用とみなして、地方交付税による一般財源として措置をしたわけでございます。このために、区市町村の負担分について助成措置を講じることは、本来困難な状況でございますけれども、従来から実施してきました地域特別賃貸住宅の助成制度を後退させることがないように、支援措置が図れるように努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
 
◯曽根委員 地域特賃時代は、国は要綱だったので、東京都もある意味では東京都独自に補助を出しやすかったんですが、今度法になったので、国は地方交付税で措置すると。そうすると、東京都は不交付団体なので、例えば区部なんかの方で出ないわけですね。そうすると、逆にいうと、都の財政補助が法律上難しくなってしまう、逆に後退してしまうということが考えられるので、ここはぜひ、少なくとも今までの補助率四分の一は必ず出していただきたい。頑張っていただきたいと思います。
 さらに、この特優賃制度を区市町村で活用しますと、東京都と同じようになるとは限らないわけですね。国の方では入居者の区分が三階層ですので、そのまま活用しますと、三階層で募集ということになるわけで、これは同じ都内で、都民住宅で建ったものは五階層で募集されて、区市町村が建てたものは三階層ですよと。こういうのが同じ地域内でそれぞれ建っていくというのは、ちょっと制度上、申し込む側からすると、わかりにくいし、また収入の階層ごとに負担も、やはりさっきいったような格差ができやすいわけですから、区市町村などで、都民住宅と同じように、例えば五階層に分けてやりたいというような場合に対して、東京都がそういうことを支援していくというような道は考えられないでしょうか。その点を一つ。
  
◯廣瀬開発調整部長 国の制度では三段階になっているわけですが、東京都はこれを五段階として実施しているわけでございます。この方式を区市町村が採用するかどうかは、区市町村の地域性による賃貸住宅についての考え方に差異があるわけでありますので、区市町村の主体性に任せるべき問題ではないかと私どもはとらえております。仮に区市町村から五段階の要望が出たときは、それに対応する都の助成を行うことについては、今後の研究課題としていきたいというふうに考えております。
 
◯曽根委員 今後の研究課題というのは、当面考えないということですよね。
 確かに区市町村それぞれの独自性がありますから、いろんなメニューというのは考えられますよ。しかし、都民の住宅難というのは、例えば私地元、北区ですが、別に北区の中で変わらないわけなんで、都民住宅の方はこういう制度があり、それよりも、より手厚くなるなら別なんですが、そこまでもいかないとなっていたのでは、ちょっとやっぱり問題が残るので、せめて五段階に分けたいというような、東京都と同じようなレベルの上乗せをしたいというものについては、これはぜひ考えていただきたいというふうに思います。
 以上、何点か質問させていただきましたが、冒頭に述べましたように、低所得者とともに中堅所得階層に住宅難が広がっている、この解決に向けて今回の制度が一定の効果が期待できるという点は、我々も見ているわけですけれども、これまで質問してきたような点、一つは、当初家賃が既に一八から二〇%と負担がかかっている。私たちはやっぱり一五%、都営住宅の第二種の一五%以内というのが負担可能な家賃の限界ではないかというふうに考えておりますので、この当初の負担率が既にそれを上回っているという問題。
 それから二つ目に、その後の所得動向や物価に関係なく五%ずつ上がっていく、二十年間上がり続けていくという問題。
 それから三つ目に、所得の高い方が早目に契約家賃にすりついて、その後負担は下がるんだけれども、むしろ低い方の方が相当厳しい状況になるという点では、中堅所得層の特に都営住宅の基準を上回ったあたりの方、入りたくても都営住宅に入れなくなった方にどういう手だてをするのかというのは、今後の課題としては残ってしまうというふうに思うわけです。
 特に順調に収入が上がっていればいいんですけれども、家族の病気だとか失業、倒産、これはもう日々起こっているわけですから、そういう状況にも対応できるような制度というのは、応能型ということで考えていかざるを得ないのではないかというふうに思います。
 それから、当初の敷金の問題等、ハードルを高くしない制度も必要だと思いますし、それらの点を含めて、今後ぜひこの制度は、一定の供給をこれからされていくと思いますけれども、改善をして進めてほしいというふうに思うんですね。
 七月の三日でしたか、NHKの朝の経済セミナーとかいう番組で、国の特優賃制度を取り上げていたのを、私偶然見たんですけれども、そのときにも、大阪の方のNHKでつくった番組なんで、大阪の大学の教授の方がコメンテーターで出ていて、この制度は過渡的なものである、二十年間ずうっとこのまま続いていったのでは、入居者にとって二十年後の家賃というのはどうも現実的でないと。ですから、二十年間たつ前に、この制度そのものについて、入居者の立場から応能制度のようなものを含めて改善をしていかなければならないでしょうという意見を番組の最後に述べていたんですね。常識的な専門家の方の判断というのは、その辺にあるんじゃないかなと思います。
 私たちは、冒頭いいましたように、都立住宅というような構想も提案してまいりましたが、ぜひ応能型家賃制度に向けての改善ということをお願いして最後にしたいんですが、決意のほどをお聞かせいただきたい。
  
◯沼生住宅政策担当部長 ただいまの件でございますけれども、今回の国の新しい制度は、特に民間の市場におきまして不足しておりますファミリー世帯向けの良質な賃貸住宅、この供給を促進しようということが第一の大きな目的になっているところでございます。
 こういったことで、この新しい国の制度を活用しながら、都民住宅につきまして、入居者の初期の負担の軽減を図りながら、供給を拡大していきたいというふうに考えているところでございます。
 家賃及び入居者負担額の考え方につきましては、先ほど説明したところでございますけれども、この新しい家賃方式によりまして、住宅の確保が困難な中堅勤労者が良質な賃貸住宅に円滑に入居できるよう、家賃と入居者の負担能力との乖離が大きいとされる供給初期において家賃負担の軽減を図ろうということを目的としているものでございます。
 都としましては、先ほども申し上げましたように、入居者負担額を五つの階層区分ごとに定めるなど、新しい工夫も凝らしながら入居者負担の軽減に努めているところでございます。
 ご指摘の応能家賃というような問題でございますが、これは大きな課題でございまして、直ちにそういったものを導入するとか、そういったことについて考えることは困難かと思います。特に都民住宅につきましては、幅広い中堅所得層を対象としているということから、民間に居住される方々との関係といったような問題もございますので、そういった点については今後の大きな研究課題ではあろうかと思いますけれども、現時点での導入は困難であろうというふうに考えております。
  
◯曽根委員 今私が申し上げたのは、少なくともこの都民住宅制度、今回の新しい制度をスタートするに当たって、都内の民間住宅も含めて、すべての住宅の方にいきなり全面的に一般的に家賃補助を応能型でやれということではなくて、少なくともこの新しい制度の供給を始める中で、この制度の改善の中で応能型を研究して、実現に向けて頑張ってもらいたいということを申し上げたんで、改めてその点を要望しておきます。
 終わります。

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