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住宅港湾委員会94年2月21日

応能応益家賃制度・住宅政策審議会答申の問題点を追及

 

◯曽根委員 私は、先日の二月三日の審議会に出席した委員として、まず初めに、この答申が行政部会案として検討され、答申として決定された経過について一言述べておきたいと思います。

  審議会は、初めての公開の審議の場であったにもかかわらず、実質審議時間を四十分しかとらずに打ち切られてしまいました。私自身も、用意していた意見や質問も大半は発言できないままに、結局態度だけを表明せざるを得ませんでした。非公開の場でつくられた素案をとにかく押し通すだけという強圧的、また、極めて形式主義的なやり方であったと思います。

私は初参加ですけれども、これで二十五万戸の居住者の今後に重大な影響をもたらす抜本改定の審議といえるのかという点で非常に驚いたと同時に、情けない思いがいたしました。率直な感想を申し上げておきます。

  それから、答申の内容についても、第一に、現状に対する基本認識として、東京都が都営住宅の供給拡大に鋭意努力をしているとか、それから、希望しても入れない都民の家賃とわざわざ比較して、都営の家賃は安過ぎるという点など、偏った見方が土台になっているといわざるを得ません。

 それから、制度改定の方向にしても、まず基準家賃を大幅に引き上げ、その上に入居基準を超えた居住者には、入居基準自体が、全国と比較して東京の場合、明らかに実態に合わないのを無視して、収入超過者というレッテルを張って、割り増し家賃では家賃限度額をもとに上乗せを行うと。全体で七割の住宅に対する値上げ、平均しても二割、全体で百五十億円の増収を見込んでいるという点です。

  さらに三番目には、応益調整にしても、立地を極端に重視するやり方に変更することで、応益調整指数というのは、それが〇・一ふえるだけでも、家賃負担が、一月に今回の場合六千円以上、年間七万円以上上がるわけですが、この指数が都心などでは〇・四近く上昇する例が出てくるなど、極端な家賃増額につながってしまうという問題点。

  それから、都内勤労者の年間の平均収入よりも百万円以上下回っているにもかかわらず、高額認定者というふうに認定されますと、受け皿となる公共住宅も十分に確保されていないのに、制裁的な高額家賃をかけられる、まさにお金の圧力で追い出しをかけられるという制度になってしまう点など、以上四つくらいの問題点を指摘しましたが、到底認められる内容ではない、重大な改悪があるということから、これを押し通してしまうことに厳しく反対せざるを得なかった。

  そこで、この答申を受けて東京都は──今日の不況のもとで、ほかにも生活関連の公共料金の引き上げがいろいろと計画されているわけですから、今後、当事者でありながら、今回の改定の中身に意見すら述べる機会を与えられていない居住者の要望や疑問に直接きちんとこたえる、それを反映させる努力を抜きにして、このまま決定していくというようなことはあってはならないと思うわけですが、具体化に当たって居住者の声をどう反映させる考えなのか、この点をまず初めにお聞きしておきます。

 

◯竹内管理部長 居住者の意見の反映についてでございますが、居住者の意見につきましては、審議会において居住者代表二名を含めた関係者四名の方から意見を聴取し、これらの意見につきましては、例えば低額所得者のための低廉な家賃制度という基本を踏まえるとともに、不公平を是正する応能的家賃負担の仕組みを導入するなどといった、おおむね意見を反映した答申となっていると考えております。

  なお、答申では、新しい家賃制度への移行に当たりましては、何よりも入居者を初めとする広範な都民の理解と協力を得る必要がある、そのための周到なPRを欠かしてはならないとされており、また、とりわけ入居者に対しましては、新しい家賃制度の趣旨と仕組みを周知徹底することが要望されてございます。

  入居者を初めといたします広範な都民の方に対しまして、PRについて十分配慮してまいりたいと考えております。

 

◯曽根委員 PRという問題については、これは審議会の答申であって、これから具体的な問題は住宅局が案をつくり、これは議会で決定をしなければ実施はできないわけですから、これが実際に決まったわけではない。家賃がこれでかけられるというふうに決まったわけではありません。

  にもかかわらず、最近、もう居住者には、あたかも答申が決まったかのような通知が一斉にばらまかれているとうい状況で、これは私は、やり方としては順序が違っているんじゃないかと思います。

  それから、私も審議会の冒頭で、とにかくこの改定案が初めて二月三日に公開されたわけですから、居住者はそれまで具体的な改定案については知らなかった。にもかかわらず審議会で、その当日に決めてしまうのはおかしい。当然審議会として、権限として、必要に応じて居住者の意見、関係者の意見を聞く聴聞会を開けるわけですから、これを開くべきであるし、答申の内容を見ても、居住者の生活実態、またそれに対する今回の改定の影響について、それから、都内に住まなければならない都営住宅居住者の高物価や環境問題、それから地方との格差、入居基準の実態に合わない問題などについては全く触れられていない点を見ても、居住者の意見を改めて聞いて、それをどうやって反映させるのかという努力が必要だということを強く申し入れたんですが、聞き入れられませんでした。本当に残念です。

  しかし、東京都としてはこの点について、これから具体化を進める上での責任がありますので、改めて強く求めておきます。

 それから、内容に入りますが、最初に、先ほど申し上げました答申の基本的な都営住宅の家賃の現状に対する認識の問題で、冒頭の文章のところに、都営住宅の供給拡大の努力は東京都によって鋭意続けられているというふうに書いています。

私も審議会で申し上げましたが、最近では都営住宅の建設、新築戸数は極めて少なくなっています。昭和五十五年の鈴木都知事就任当時、もう既に二十三万戸に達しておりましたから、現在の二十五万戸、十五年間に二万戸ちょっとしかふえていないという、これは厳然たる事実であって、鋭意努力が続けられているという表現は極めて偏っているといわざるを得ないと思います。

  それで、これに対して応募が大変多いというのは、もちろん事実だと思いますが、この実態についてちょっとお聞きします。

  この三年間の都営の新築募集戸数、これは十月に行われているものですが、この応募数と倍率、この三年間、どういう推移になっているかをお答えいただきたい。

 

◯竹内管理部長 この三年間の新築都営住宅、都公募分十月分の募集戸数と申込者数、応募倍率でございます。  まず平成三年度では、第一種住宅三百三十六戸の募集に対しまして申込者数は二万六百三十八人、応募倍率六十一・四倍。

また第二種住宅は、五十二戸の募集に対しまして申込者数一万六百四十九人、応募倍率は二百四・八倍。平均いたしますと八十・六倍となります。

  平成四年度では、第一種住宅三百五十二戸の募集に対しまして申込者数二万三千三百七十一人、応募倍率は六十六・四倍。また第二種住宅百二十五戸の募集に対しまして申込者数一万七百十二人、応募倍率八十五・七倍。平均いたしまして七十一・五倍となります。

  平成五年度では、第一種五百六戸の募集に対しまして申込者数二万九千二百七十二人、応募倍率五十七・八倍。また第二種住宅七十一戸の募集に対しまして申込者数一万一千三百六十人、応募倍率百六十倍。平均いたしまして七十・四倍となってございます。

 

◯曽根委員 今、三年間を出していただきましたが、第一種と第二種を比べて、平成四年はちょっと違いますが、平成三年と五年では、第二種の応募倍率が第一種を三倍ぐらい上回っている。こういう点で見ても、第二種に該当する方の希望が非常に強いというのがわかるのですが、残念ながら、ここのところ新築で第二種の募集戸数は極めて少ない。こういう点でも、同じ新築の募集の中でも、きちんと都民の希望に対して供給の努力がされているのかという疑問、私、この点だけでもするわけです。

  次に、この同じ三年間の空き家募集の倍率。これは件数ではなくて、倍率だけ第一種と第二種とお願いします。

 

◯竹内管理部長 都営住宅の空き家の五月公募でございますが、都公募分の倍率でございます。

  平成三年度、第一種住宅で四・四倍、第二種住宅で六・五倍でございます。平均しまして五倍でございます。

  平成四年度、第一種住宅で四・一倍、第二種住宅は六・一倍、平均いたしまして四・七倍でございます。

  平成五年度では、第一種住宅六倍、第二種住宅が七・一倍、平均いたしまして六・三倍でございます。

 

◯曽根委員 数字を挙げていただきましたが、明らかに一けた倍率が違います。新築募集は数十倍もしくは数百倍になっているわけですが、空き家募集の方は数倍程度です。

  これは、当然申し込み方も、空き家募集が行われる地域、住宅の広さ、これはやはり極めて狭くて不便なところが多いというのが実態です。それから、募集される住宅の大半におふろがついていない。そういう設備面も含めて、やはり新築でなければということで、これだけの差がついている。

  こういう希望にもこたえるという点でも、新築できちんと供給していくということが、都民が強く求めている都営住宅の建設の内容であるということは、この中身でも明らかだと思います。

  次に、この答申の中で問題にしている、民間の住宅家賃との格差という問題なんですが、答申の二ページに「青山や渋谷といった都心に立地する利便性の良い住宅でも、他の地域にあるものとほとんど変わらない一万円台、二万円台の家賃のものがあり、同様の地域で、同じ収入階層の一般都民が負担する住居費と比べ、その負担水準の差が著しい。」とあります。

これは、一見するともっともなように聞こえるんですが、例えばここに出ている青山、北青山に都営住宅がありますけれども、この北青山の付近で、現在、民間の、例えば都営住宅の今の新築と同じぐらいの規模の民間の住宅、どれくらいの家賃になっているわけですか。

 

◯吉田参事 青山地区の民間賃貸住宅につきまして、最近のもので都営住宅並みの六十平米台のデータはございませんが、五十平米台では二十九万円程度であると把握してございます。

 

◯曽根委員 これぐらいの家賃ですよ。それでも最近少し下がったという感じですよね。

  それで、この答申の中で、入居基準をオーバーしているといっている収入超過者の一番ぎりぎりのライン、年収が四百九十万から五百万程度のところの方が、この民間住宅に住んだとしますと、収入に対する家賃の負担率は何%になるんですか。

 

◯吉田参事 例えば年総収入五百万円、月収では四十一万六千六百六十六円になりますが、その世帯の方が、先ほどの二十九万円程度の民間賃貸住宅の家賃を負担した場合、その負担率は約七〇%となります。

 

◯曽根委員 これだけの家賃払って都営住宅に、この収入基準を超えた方が北青山に住むかという問題です。私は、どう考えても常識的には住めない、住むはずがないと思います。

場所を移りますよ。仮に、都営住宅基準を超えたからということで、善意であそこを出たとします。とても同じところには住めません。

しかし、ここでは、同じ地域で同じ収入階層の一般都民が負担する家賃と比べている。実際には住んでもいない人と、その負担家賃を比べるという、比べられないものを同じ土俵に乗っけているというところに、この答申の中の詭弁があります。

実際には、都営住宅の中で、こうしたことを理由にして、高額の所得者に対しては、北青山では十七万円の家賃が今度はかけられてきている。

これで、これが嫌ならば民間へ出てくださいということになるわけですが、しかし、周りに住むなんてことは到底考えられません。だからといって、同じ都営住宅の中で、北青山じゃなくて、いや多摩の方でもいいですよといっても、そういう住宅変更は今事実上できません。

そういう点で、民間に住んでいる方は、例えば北青山に住めなければ、ほかの地域を探すことはできますけれども、都営住宅の入居者については、同じ土俵では考えられない条件があるわけですから、こういう比べ方は極めて恣意的だと私は思うし、また、それは実態ともかけ離れているといわざるを得ないと思います。

  もちろん審議会でも指摘しましたけれども、もともと青山にしろ、新宿にしろ、渋谷にしろ、低家賃の木造の住宅、古い住宅はありました。しかし、このバブルの中で全部はぎ取られて、都営住宅が残ってしまった。そういう流れをつくったのは、東京都自身の都市計画に問題がある。こういう点も、この答申では全く触れられていません。この点も指摘しておきたいと思います。

  次に、収入超過者の問題なんですが、東京都で、先ほど話が出ました、生計分析調査に基づいて、都内の勤労者の収入分位を見ますと、国が公営住宅の入居の基準の上限としている世帯の収入平均の三三%、三分の一、このラインは、東京都の勤労者の収入分位の中で、七分位に分かれていますので、下から三番目の第三階層に入っているわけですよね。

この第三階層の収入分位は、何%の方から何%の方までを含んでいて、その平均の年収はどの程度なのか、これをお答えいただきたい。

 

◯沼生住宅政策担当部長 ただいまお話がございましたように、東京都生計分析調査におきましては、調査世帯につきまして、年間収入額につきまして、小さいものから大きいものへ順番に並べまして、これを七等分したものを七分位階層区分として設定してございます。

したがいまして、この七分位階層区分の第三階層は、全体を一〇〇%として七等分したうちの低い方から三番目の階層となりますので、その収入分位は二八・六%から四二・八%の範囲となります。

  平成四年度の東京都生計分析調査によりまして、勤労者世帯の年間収入による七分位階層で見ますと、第三階層の平均の年間収入は六百五十六万六千円となってございます。

  なお、同様に、個人営業世帯等も含めました、都の全世帯の年間収入の七分位階層区分で見ますと、第三階層の平均の年間収入は六百三万円となっております。

 

◯曽根委員 勤労世帯で見ると六百五十六万で、三三%ですから、この収入階層の半ばよりもちょっと下ぐらいのところに国基準を、東京都の中の世帯で見た場合に当てはめたところにラインがあるわけですが、実際には、国の基準に基づいて、第一種の標準世帯の入居基準というのは四百九十万ですから、六百三万だとしても、百万円以上の差がここにあって、実際には、もし全国基準を東京都の独自の基準で三三%で当てはめれば入居基準に入る方も、現在、入居者の中で特に収入超過者という名前をつけられている、という扱いを受けているわけです。

  こういう実態の差について、東京都も国に、この是正を要望しているはずですし、国の方でも、最近、総務庁の行政監察報告の中でこのことを指摘して、全国では平均で三三%、下から三三%で基準を決めて、入居者を決め、入居基準を決め、それを東京都にそのまま当てはめているけれども、東京都の勤労者で見ると、それは実際には二五・二%しかカバーできていませんよということを指摘しております。これはどうしても是正が必要だということを指摘しておきます。

  それで、さらに、高額所得者とういふうに認定をされますと、明け渡しの義務が発生するわけですけれども、最近明け渡した世帯の件数、それに対して東京都が公共住宅をあっせんした、もしくは融資を行った、それから自力で転出した方、これは昨年度について結果で出ていると思いますので、実績をお願いします。

 

◯竹内管理部長 平成四年度の高額認定者は一万六百三十三人でございますが、明け渡しされた方が九百六十一人ございます。その転出先でございますが、公団、公社住宅へ二百三十二人、都融資のあっせんをお受けになられた方が百十一人、自力で転出された方が六百十八人でございます。

 

◯曽根委員 公営住宅法では、高額所得者に対して明け渡しの義務を課していると同時に、これに対して事業者である東京都は、公共住宅、公的住宅などの供給について特別の配慮を行わなければならないというふうに定めています。

しかし、実態として九百六十一戸、昨年度明け渡したうちの、公団、公社住宅の供給が二百三十二戸、融資のあっせんを含めても三百四十戸程度で、残りは自力転出。この中には、公共住宅の提供を希望したけれども、希望に合わなかったり、実際に供給の戸数が少なかったということから、自力転出せざるを得なかった方がいるのではないかというふうに思うのですが、実際に明け渡し義務のある高額所得者がどれぐらい年間いるのか、そして、これに対して公共住宅はどれぐらいの数が確保されているのか、これをお答えいただきたい。

 

◯竹内管理部長 実際に明け渡し義務のある者は、先ほど申し上げましたように、昨年度では一万六百三十三。そうしまして、公団、公社の平成四年度実績の割り当てでございますが、合わせまして三百三十五戸の割り当てを受けてございます。

  先ほど申し上げましたように、実際にごあっせん申し上げたのは二百三十二名ということでございます。

 

◯曽根委員 実態として、入居基準、高額所得の認定基準自体が実態に合わないということも反映して、認定者が最近物すごくふえています。

しかし、それに対応する公共住宅の供給は、これは東京都だけでは決められません、公団、公社から割り当てをもらわなきゃならないのですが、これは実態に到底合っていないというふうにいわざるを得ない。

この中には、全然違う地域の公社、公団住宅をあっせんされたという例もたくさんあります。それでは希望にもかなわないという点で、ここの改善は急務だということを指摘だけしておきます。

  私は地元が北区なんですが、地元の団地で、桐ケ丘団地、それから最近は浮間にも新しい都営住宅ができました。北区はかなり都営住宅が多いんですけれども、桐ケ丘団地の第一種で、古い住宅、それから新しいといっても桐ケ丘は昭和五十一年ぐらいが最新なんですが、この方の住宅で、高額所得者の家賃を決める場合に基準となる家賃限度額はいかほどになるのか、お答えいただきたい。

 

◯吉田参事 ご質問は、桐ケ丘団地についてということでございますが、具体的団地に関するデータは慎重に扱わせていただきたいと存じますので、大変恐縮ではございますが、当該地区における建設年度ごとの標準的な限度額を、一種住宅の限度額全平均、約五万三千円との比較でお示しすることにとどめさせていただきたく、ご了承賜ります。

  桐ケ丘地区につきましては、建設年度の古いもの、例えば昭和三十八年度といたしますと、専用面積が四十平米程度でございますが、限度額は、全平均五万三千円の一〇%減程度。新し目のもの、建設年度を昭和五十年度といたしますと、面積が五十平米程度で、限度額は、全平均五万三千円の五%増程度とみなしてよろしいかと存じます。

 

◯曽根委員 こういうデータというのは、私は、それぞれの入居者が、どれぐらい実際に自分の払う家賃が上がるのかということを知る上でも、議会の中できちんとそれを踏まえた議論をする上でも必要なデータなので、公開をしていただきたいというふうに思います。

  今、大まかな数字が出ましたけれども、桐ケ丘で第一種、昭和三十八年、どちらかというと古い方ですが、ここの家賃で法定限度額が五万三千円の一〇%減、四万八千円程度ということになる。この住戸に住んでいる入居者が、高額所得として認定された場合、一・四が掛けられますので、六万円以上の家賃がかかってくるということになります。六万円と七万円の間ぐらいになるんでしょうか。

こういう家賃というのは、どの程度のものかと思って、桐ケ丘団地の周辺の民間のアパート、貸し家、こういうところをちょっと不動産屋さんに聞いてみました。

昭和三十八年当時建てられたところで、あいているところはもう余りないんですけれども、実際に人が住んでいるところでどの程度か。当時は余り都営住宅のような形のアパートはありませんが、一戸建ての貸し家ということで、同じ広さ、おふろがないという条件で見ますと、家賃は四万円から四万五千円程度です。一軒家で庭つき。

ですから、私はこういう高額所得者の家賃というのは、実際には北区などでも周辺の町場の民間家賃よりも高くなってしまって、非常にペナルティー的な色彩の濃いものになってしまうという実態になると思います。

  同じく北区なんですが、浮間に最近新築の都営住宅が建ちました。平成元年の建設ですか、六十二平米なんですが、ここの家賃限度額、それからその直近にあります昭和五十六年ごろの都営住宅の家賃限度額をお聞かせください。

 

◯吉田参事 先ほどの桐ケ丘地区と同様な形でお示し申し上げますが、浮間地区の場合、五十六年度でございますと、おおむね専用面積が六十平米程度を基準といたしまして、全平均五万三千円の二割増し程度の限度額になろうかと考えます。また、平成元年度建設、入居は最近のものになるかと思いますが、その場合は、五万三千円全平均の八割増し程度とみなしてよろしいかと存じます。

 

◯曽根委員 浮間の新築、あそこは二十階建てですけれども、そこでは約九万円程度の家賃限度額になり、ここで高額者が出てくると、これはちょっと先になりますけれども、十二万六千円程度の割り増しも含めた付加使用料となる。これはどの程度のものかと──これは新築の方なんですが、最近、浮間の地域でも民間の家賃は大分下がってきまして、つい先日、私の自宅に入った新聞の折り込みのチラシに、新築の賃貸マンション、民間のものですが、賃料が一月十万六千円というのが出ています。これは、この都営住宅のすぐお隣の地域で、浮間一丁目十四番地。広さは少し狭いんですけれども、新築でもう既に十万円程度、下がってきて出ているわけです。

  それに対して、都営住宅で高額所得者になると十二万円以上の家賃になるということでは、民間を上回っていく。新築でも同じ問題が出るという──私は、非常にペナルティーとして重要だという点と同時に、民間の方の家賃がやっと少し下がってきて十万円程度になってきたところに、都内で一万人以上もいる高額所得者に対して、今いったように町場の民間家賃よりも高いものがかかってくるということが、民間の新築家賃に影響しないだろうか。率直にいって、一万人の方々がいずれは都営住宅を出なきゃならなくなるわけですね、明け渡し義務ですから、それを受けとめる、かなりの数が民間で用意されているかと思うんですが、わざわざ都営よりも安くしなくてもいいじゃないかという話が出ないとも限らないと思うんですよ。

そういう点で、民間の家賃にも連動していくんじゃないかという危惧を大変強く持つわけです。この点も指摘をしておきます。

  先ほど応能減額の話がありました。応能減額というのがどういう仕組みで行われるかというと、説明があったように、申請があって初めて減額制度が適用されるということです。現在適用されているのは家賃の減免制度ですが、これも申請が必要ですね。

最近行った入居者の収入報告に基づいて、居住者の収入分布をとった場合、減免措置の対象となりそうな収入の範囲にいる方は、都営住宅二十五万戸のうち、どのぐらいの世帯がいるのか、そして実際に申請して減免制度を受けている方は何世帯になるのか、これは数字がわかると思います。両方お願いします。

 

◯竹内管理部長 平成四年度での都営住宅で、都が収入を把握している範囲といたしまして、公営住宅法上の所得月額五万円以下の世帯が約五万二千世帯ございます。なお、減免は本人の申請に基づいて行うこととなっておりますが、五年三月三十一日現在の減免されている方は、二万七千七百二十九世帯でございます。

 

◯曽根委員 もちろん、この世帯収入の最初の方の数字は、本人の収入報告に基づく推計値ですから、正確な数字はわからないとは思いますが、およそ半分程度と見ていいんじゃないかと思うんです。

このように、実際には申告すれば家賃の減免が受けられるにもかかわらず、ご本人の意思もしくは制度を知らないために、受けないでいる方もいるんじゃないかというふうに思うんですね。

そういう点で、今度、応能減額の制度がどうなるかということなんですけれども、現在でも、収入報告がない方については局の方で独自に収入を調べていらっしゃると思うんです。

どのぐらいの世帯の数を、本人の収入報告がなかったり、またそれが不備だったために調べているのか、これをお答え願いたい。

 

◯竹内管理部長 平成四年度の収入調査におきまして、入居三年以上の収入調査対象戸数は二十一万余戸でございますが、このうち減免を受けている方、生活保護の受給をされている方などを除きまして、十八万六百十五戸に収入報告書を発送してございます。そのうちの六八・九%に当たります十二万四千三百八十八戸の方から収入報告の提出がございました。

  なお、未提出者あるいは収入報告書を提出していただいた方でも、書類不備等によりまして収入認定ができなかった方につきましては、区市町村におきまして住民税の課税台帳閲覧調査を行いますが、この件数は十万五千六百四十五戸でございます。

 

◯曽根委員 収入報告の通知を出している十八万戸に対して、半分以上の方は、書類が不備だったという場合もありますが、報告がなかったりして独自に調べている。それで収入を押さえることができるわけですが、今回、応能減額制度が導入された場合、本人から申請がなければ、もし局の方で独自に収入を調べて、ご本人が減額の対象であるとわかったとしても適用しない、この制度ではそういうふうになるわけですね。確認の意味でお願いします。

 

◯吉田参事 答申におきましては、応能減額は、居住者からの減額申請とそれに伴う収入申告の提出を受け、それに基づき決定するものと述べてございます。

すなわち、応能減額の趣旨に沿った的確な収入申告を伴う申請が減額の前提になるものと受けとめておりますので、答申にもございますように、その点の周知を居住者に徹底し、ご理解を得て、減額の対象となり、それを希望される方がその機会を失わぬよう努めてまいりたいと考えてございます。

 

◯曽根委員 この制度では、今行われている減免制度と比べて考えてみても、せっかく減額になりそうな人が出たとしても、それが実際に減額の対象になるかどうか、その点では非常にあいまいな問題が残されている。手続上も、申請と収入報告が同時に行われるというふうになっていますが、どのような手続で、どういうふうにそのところが行われるのか、技術的な問題も含めて、まだ未確定であり、私は率直にいって、対象となっても受けられない人が出てしまう事態が生まれかねないと思うんです。

この点も指摘をしておきますが、現在の減免制度についてはきちんと徹底をするということは当然だと思いますし、今度の減額制度については、私は今回の全体の答申について、実施に対しては反対でありますが、減額者の不利益になることがあってはならないという点だけ指摘をしておきます。  今回の応益調整指数について、先ほども申し上げたように、北青山など都心の方では、最大応益調整指数が〇・四上昇するという場合が出てまいります。単純に考えて、新しく設定しようとしている六万一千円の基準家賃掛ける応益調整指数で個別家賃が出てしまうわけですから、〇・一違うことによって六千百円、年間で七万二千円の違いがあります。

したがって、〇・四違うということは、月額だけでも二万四千円、年額でいうと三十万円近い違いが出てしまうわけです。それだけ応益調整指数というのは、数は小さいんですけれども、大きな影響力を家賃に対して持っているのが事実です。  審議会の答申の中では、都内を六つのモデルに分けて、それぞれどういうふうに変化するかというモデルを設定していますが、この六つのモデルについて、応益調整指数が上がるのか下がるのか、それぞれについて上がる幅、それも含めてお答えいただきたい。

 

◯吉田参事 お話のモデルは、二月三日の住宅政策審議会のときに参考資料としてお出しいたしたもので、お手元の答申本文に挟み込んであるものでございますが、その三ページの六つの変更モデルについてのお尋ねでございます。この表には、応益調整指数が記載されてございませんので、恐縮ではありますが、初めにそれを申し上げたいと存じます。

 まず、現行制度での指数は、標準立地の比較的新しい住宅、六十二年度のものの指数が約〇・九四、それが同じ標準立地の比較的古い住宅では約〇・四と下がっております。これは、家屋便益の指数の下がりでございます。それぞれ都心立地と郊外立地の住宅は、標準立地の住宅に対し、新しいものも古いものも、それぞれプラス〇・一、マイナス〇・一でございますので、新しい都心が一・〇四、郊外が〇・八四、古いものは〇・五、〇・三となります。  次に、新しい制度の指数でございますが、標準立地の比較的新しい住宅の指数が約〇・八五、それが同じ標準立地の比較的古い住宅では〇・五八となりまして、これは新しい制度が、立地便益のウエートが高くなっていますので、下げ方が少なくなってございます。それぞれの都心立地と郊外立地の住宅では、標準に比べまして、都心がプラス〇・二、郊外がマイナス〇・一五でございまして、すなわち、新しいものの都心が一・〇五、郊外が〇・七、古いものでは〇・七八、〇・四三でございます。

  したがいまして、それぞれについて新しい制度の指数を現行指数と比べますと、比較的新しい住宅、六十二年度のものでは、都心立地のものが微増でございますほかは、指数が下がります。逆に、比較的古い住宅、四十年度のものでは、立地便益の指数が現行よりも残っておりますので、都心立地のものが〇・二八上がるほか、そのほかも若干上がってございます。

 

◯曽根委員 お答えの中ではなかなかわかりにくかったんですが、六つのモデルのうち四つは指数が上がるわけですよね。指数が下がるというのは新築の方の住宅で、しかも多摩の方の郊外か、もしくは標準立地のところが若干下がる程度で、あとは全体上がります。新築の住宅は少ないわけですから、二十五万戸の大半の住宅は、指数は上がるわけです。

これを見ても、指数全体が底上げになっていることは明瞭なんですが、この変動幅を見ても、今まではこの応益調整指数というのは最低で〇・一五、最大で一・一五程度だったんですが、今度は最低が〇・三八ということで、底上げになっている。上が一・二五まで上がるという点でも、この応益調整指数の中身を変更することが、立地条件を極端に重く見るというだけではなくて、応益調整指数全体を底上げすることによって、結果としては、またまた家賃全体を引き上げていく形になっているということも指摘せざるを得ないわけです。

  私は以上、幾つか問題点を指摘しましたが、今度は予算の審議等、それからこれが具体化されて出てくる段階でも、一つ一つ具体的な議論をやっていきたいと思います。

やはり答申が、審議会で残念ながらああいう短時間の中で決められてしまった中で、実際によく吟味してみると、莫大な増額が極端に出てきてしまうなど、非常に居住者にとって耐えがたいような家賃の増額というのが起こってしまうんじゃないか。

それから、実態に合わない収入超過者や高額所得者に対して、本当に制裁的な形での追い出しがかけられてしまうんではないか、こういう不安をぬぐい切れません。

こういう点を指摘して、この答申には私も反対をしたわけですけれども、今後も、そういう立場から積極的に議論をしていきたいというふうに申し上げて、終わります。

 

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