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94年3月7日住宅港湾委員会質疑全文
住宅白書の「住宅費負担ポテンシャル」用語について質疑

◯曽根委員 今回の白書は二号目ということで、発行のいきさつというか、意義については、最初の「まえがき」のところに、これが住宅基本条例の第四条に規定された、住宅政策の総合的な推進に資するために、住宅に関する調査を定期的に実施するとともに、需要及び供給、利用状況並びに価格及び家賃その他の住宅に関する動向等を白書で公表するというふうに述べられているわけです。
 私も急いで本文を読ませていただきましたが、一見して、都内の住宅問題についての全面的な記述にはなっていない。かなり重点的な選択を行って記述がされているように思うんですが、住宅局としては、この白書をつくるときに、どういう観点で記述の選択をし、どういうところに重点を置いて記述をされたのか、その点をまずお聞きをしておきたいと思うのです。

◯沼生住宅政策担当部長 ただいまございましたように、住宅白書作成の目的は、住宅基本条例に定めてございますとおり、経済社会情勢により変化する住宅に関する動向等を的確に把握し、住宅対策の総合的な推進に資するとともに、具体的でわかりやすい形で都民に情報を提供するために作成しているものでございます。  前回の東京都住宅白書 '92では、東京の住宅問題について、その歴史や地域性、都民のライフサイクルと住まいの関係、住宅市場の特性、まちづくりから見た住まいなど、幅広い角度から調査、分析を行ったところでございます。
 今回の東京都住宅白書 '93の作成に当たりましては、住宅に関する動向等を総括的に取り上げました、創刊号である住宅白書 '92に続く第二号の白書として、都民すべてに共通する生活の基盤である家計に焦点を当て、都民の住まいと暮らし向きを特集テーマとし、暮らし向きの状況をあらわす家計と住居形態や住居費との関連につきまして、調査、分析を行うとともに、第2章で、住宅の供給状況を初め最近の住宅に関する動向、第3章で、ここ一、二年の住宅施策の展開についてまとめた内容としたところでございます。

◯曽根委員 今ご説明があったように、確かにこれを見ますと、東京都のここ一、二年の住宅施策の新たな内容をかなり盛り込んでいるという点で、これからどういう方向をねらっていこうとしているのかということが、かなり色濃く反映しているというのが私の印象なんですが、第1章の記述というのは、暮らし向きと住居費負担の関係などで、これは現状把握として、例えば冒頭にあります、都内から他県への移転は住宅事情によるものが相変わらず多いという問題とか、それから借家世帯では、支払い可能な家賃では、結局、居住水準を犠牲にせざるを得ない現状であるとか、また、特に所得の低い世帯ほど住宅費負担が重くなっている問題、持ち家の世帯でも、住宅ローンなどの負担がバブル崩壊と不況でさらに重くなっているということ、相続に関する深刻な問題など、ある程度、都民の住宅難の一層深刻になっている部分について反映している記述も見られると思います。
 しかし、1章の後半の住宅政策に触れた部分、それから第2章以後の住宅動向や東京都の住宅政策に関する部分では、これは、マスタープラン以降、東京都が主として民間主導型の住宅政策に重点を置いてきているという点や、この間答申が出たばかりですが、住政審の都営住宅家賃の制度の改定案の内容などがかなり大幅に、この記述の大半を占めているという点で、住宅の白書というよりも、後半部分に来ますと、東京都の住宅政策の宣伝物のような内容ではないかという印象を大変強く持ったわけです。
 予算も手間も、一見して随分かかっているなという気がしますが、我が党がかねてから指摘してきたように、民活型、民間主導型の住宅政策では、本当の意味で現実の都民の住宅難の解決は難しいという点から見て、こういうものに重点を置いた白書の記述というのは、せっかく白書として出しながらも、東京の住宅動向の今後を占うという点では意義が半減してしまうのではないかという点を、まず最初に指摘をしておきたいと思います。
 それから、各章の中で、今回第二号で新たに取り上げている問題、それから、記述として新しく出てきている問題について幾つか質問をし、また、意見も述べさせていただきたいと思うんです。
 先ほどご説明でもありましたが、今回、第1章の住居費負担の考え方、住居費負担の分析の中で、住居費負担ポテンシャルという言葉が新たに出てきました。これは私は非常に、意味がどういうものなのかというのがなかなかわかりにくかったんですが、この要約の中には、住居費として支出可能な範囲の目安となる額と書いてあります。これは私、ちょっと使い方によっては非常に──変な使い方をするんじゃないかという危惧の念を抱いたんですが、この住居費負担ポテンシャルというものの実際の内容、費用的な内訳というのはどういうものが含まれているんですか。

◯沼生住宅政策担当部長 東京都生計分析調査におきましては、家計の消費支出を、米、家賃、電気代といった生活上欠くことのできない基礎的支出、ピアノ、映画観覧料などのより嗜好的な選択的支出、借金返済や生命保険料等のその他の支出、税、保険料等の支出に分類して分析をしております。
 今回の勤労者世帯の住居費負担ポテンシャルにつきましては、これらの家計支出のうち、家賃、地代、設備修繕費、住宅ローン返済等の住居費関係の支出を除いた額を実収入で説明する関数により推計し、実収入から、この推計方式による基礎的支出、選択的支出、その他の支出及び税金、社会保険料等の支出を差し引いて算出したものでございます。
 したがいまして、この住居費負担ポテンシャルは、家賃等の住居費や預貯金等として支出し得る額が実収入に応じてどのような額になるかの目安になるものと考えております。

◯曽根委員 つまり、基礎的な支出とか選択的支出、社会保険料等々を除いて、今都民の方が平均的に使っている住居に関する費用、それから預貯金の中身がこれに集まっているというふうなことになりますよね。それが、住居費として支出可能な範囲の目安となる額になるんだという根拠といいますか、こういうのを新たにポテンシャルというような用語を用いて位置づけている意義、また、その根拠はどういうところにあるんですか。

◯沼生住宅政策担当部長 今回のこの住居費負担ポテンシャルを算出した意義ということでございますけれども、東京の勤労者世帯が住居費として支出可能な範囲の目安となる額が、収入階層に応じてどのような実態になっているのかということを把握するために、今回、平均的なものとして推計したものでございます。
 なお、先ほど申し上げましたように、この住居費負担ポテンシャルの一部は、将来に備えての預貯金等に回されることから、実際には、この額のすべてが住居費に向けられるということにはならないと考えております。

◯曽根委員 これは、都民にわかりやすくという立場で書かれている白書だと思うんですが、今のご説明を伺っても、私、大変わかりにくい概念だと思うんです。実際に住居費用に使っている費用でもないし、それから、それが全部住居費に使い得る費用ともいえない。じゃ、その可能性を秘めたものというふうにいえるかというと、そういうふうには限定的にはいえなくて、目安であると。すると一体どういうものなんだということになると思うんです。
 しかし、実際この本の中で、そのポテンシャルをどういうふうに記述の中で活用しているかといいますと、このポテンシャルの負担額を全部住居費につぎ込んだとすれば、三十代で立川あたり、三十代後半では国分寺あたり、四十代後半では荻窪あたりに三DKの賃貸マンションが借りられますよという形で、この本の中では使われている。私、こういう使い方というのは非常に危険だと思うんです。預貯金の中身というのは、これはもう住宅費に将来使うとかいうものだけではない。
 もっとほかにもたくさん老後の不安というのがあるわけで、それに基づいて預貯金というのは行われているわけですから、仮定だとしても、これを住宅費に全部つぎ込んだことを想定して、この辺には住めるんじゃないかという考え方を打ち出すこと自体が、私は非常に現実から乖離しているんじゃないかという点で、こういう用語を今後もひとり歩きさせるようなことがあっては絶対ならないということを指摘しておきたいと思います。
 それから次に、五七ページのあたりに、いわゆる都心の人口が急速にこの間減少している問題に対して、都心の居住の回復についての記述が、これは昨年からもう出されていますが、この中で、新しく東京都が今打ち出している制度などが紹介されています。市街地複合住宅総合設計制度、また、複合空間活用型公的住宅供給支援事業制度等々いろいろ書かれていて、中央区などの具体例も述べられています。
 こうした制度はまだそんなに実績が上がっているわけではない、しかし、今後の新しい施策としてここに紹介されているというふうに説明されていますが、やはり決め手として、この都心区で住める住宅を回復していくというのは、どう考えても公共住宅、とりわけ都営住宅などがつくられていかないと、もしくは民間住宅の場合には家賃補助などが思い切って入らないと到底難しいんじゃないかというふうに思うんですが、そういうものがこの都心の居住回復のところには全く出てこないというのはどうしてなのか、なぜこれが重点として挙げられないのか、その点をちょっとお聞きしたい。

◯曽根委員 新しく生まれてきた政策、制度を重点に置いたということですが、実際それが有効なものかどうかはこれからはっきりしてくると思います。
 しかし、本当の意味で白書が力を持つには、実態として居住がどんどん減っている都心の問題、改めて全面的に分析するということが姿勢として必要だし、その上で欠かせない都営住宅や家賃補助の問題は、この記述から全く外すということは適切ではないんじゃないかということを、これは意見として申し上げておきたいと思うんです。
 それからもう一つ、今回私も驚いたんですが、二月の三日に答申が出たばかりの住政審の答申の内容が非常に詳しくこの本の中には盛り込まれていまして、一体どっちの準備が先だったのかという気がするんです。答申が出てから準備したのでは到底間に合わないぐらいの記述が出ているんですけれども、この中で特に最初の方に出ている、六八ページに今回の住政審の答申というのが、公共住宅の一元的制度への再構築に向けて具体的な取り組みの方向を示しているんだという評価がされているわけです。
 この公共住宅の一元的制度への再構築という課題については、どこで打ち出されたものなのかということと、あわせて、この公共住宅の一元的制度への再構築について、東京都としてはどういう考え方でこれをとらえているのか。さきに本会議でも質問が若干ありましたが、その点をお聞きしておきたい。

◯沼生住宅政策担当部長 この公共住宅の一元的再構築の提言につきましては、平成二年の住宅政策懇談会の報告におきまして提言をされている内容でございます。
 この懇談会の提言におきましては、現在の公営、公社、公団の各公共住宅制度につきましては、次のような問題点が指摘されているところでございます。
 一つは、世帯の構成などに応じた住みかえが的確に行われていないということ。このために、公共住宅で最低居住水準未満世帯が多いという実態もあるということ。それから、都営住宅居住者の約四割が収入超過者となっている反面、公社住宅居住者の三割が公営階層に該当しているなど、収入階層に応じた役割分担が不明確になっていること。それから、各公共住宅において新旧の著しい家賃格差が存在することなどの、管理面を中心とした問題等が指摘されているところでございます。
 これらの問題に対処するためには、長期的な方向として、公共住宅の一元的制度への再編が望ましいというふうに考えまして、都といたしましては、これまでも国に対し要望してきたところでございます。
 この一元化の具体化に当たりましては、住宅政策懇談会の提言の中でもさまざまな段階にわたっての提言がなされておりますけれども、そういった住宅政策懇談会で指摘されております一元化の具体化に向けての課題等につきましては、国に対しましても今後とも働きかけてまいりたいというふうに考えております。

◯曽根委員 東京都がとらえている公共住宅の一元化という点について、今、住政懇の中身について説明がありましたが、住政懇で述べられているのは、今の都営住宅の主に管理上の問題、公社住宅居住者との収入のオーバーラップしている問題だけではなくて、まず基本にあるのが、公共住宅というのは、今後、民間市場の役割を補完するものであるという大きな位置づけをしている点だと思うんです。
 これは、今まで都営住宅を含めて公共住宅を軸にした都内の賃貸住宅をつくっていく上での位置づけから、大きく民間市場の補完的な役割という方向に公共住宅を位置づけ直したという点が最大のこの住政懇報告の特徴だと思うんですね。そういう中で、補完的な意味を持っている公共住宅を、その役割にふさわしく一元化するという形でここに位置づけられている。ですから、現に実際の流れを見ても、都営住宅はその後、大量建設という課題は消極的になってしまったという点も、現実の問題として出ていると思うんです。
 さらに、この住政懇では、この一元化の中ではっきりと、東京都においては都営住宅について応能応益家賃制度の導入を図ることを期待したいと。この制度は原則として法定限度額を契約家賃とし、入居世帯の収入に応じ、これに応益度を加味して入居者負担額を個別に調整しようとするものである。こういう方向が打ち出されて、今回、住政審答申は応能応益制度そのものではなくて、応能応益的制度ということで、基準家賃をもとにした制度は守られたわけですけれども、しかし、一部に、このような法定限度額もしくは家賃限度額の考え方が収入超過者などについては当てはめられた。そういう点で私、この白書に述べられているように、今度の答申というのが、住政懇で打ち出された一元化、その中身として、都営住宅については法定限度額をベースにした家賃体系という方向を示すものだという点で、私は正確に書いているなと思ったんですが、こういう方向については私たちは絶対に了解できない。
 今までせっかく守ってきた都営住宅の政策家賃制度、これが辛うじて、全国基準であるために実態には合わないけれども、しかし、都営住宅居住者の家賃負担を適切なラインに抑える力を発揮してきたというふうに思うので、これを法定限度額を基準に応益調整をしながら減額する形のものに切りかえていくという方向は、私たちは了承できない。この白書では、この家賃制度については手放しで評価をしているわけですけれども、この点については私たちは反対であることを改めて指摘をしておきたいと思います。
 それから最後に、これは意見ですが、都民住宅制度についても、この白書の中でかなり大きく期待を寄せて、新たな制度としての発展を期待をするような記述になっていますが、これは昨年もこの委員会で議論したように、都民住宅制度については確かに、当初家賃において中堅所得層の入居者に家賃負担を軽減する家賃補助制度があるわけですが、しかし、二十年間毎年五%ずつ家賃が上がり続けるために、場合によっては、入居者の住居費負担額が三割を超える場合が出てくると。この白書の中でも述べられている、
 東京都が関与する住宅については原則として二五%以内に家賃負担を抑えるんだという、この考え方すらも超えて家賃負担がかかっていく制度であるという点、これは強く改善を求めているわけですが、そういった点の記述は当然一方であってしかるべきではないかと思います。そういう点が全くなしに期待だけを寄せているというのは、私は偏ってしまうんではないかというふうに思うので、その点もあわせて指摘をしておきます。
 住宅白書は出たばかりなので、私も十分読み込んでいないんですが、今後も予算審議の場などを通じて、この問題についてはいろいろと必要に応じてぜひ質疑をさせていただきたいと思います。

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