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各会計決算委員会94年6月3日

 都営住宅政策家賃のなりたちと

 「応能応益」家賃制度の問題をえぐる

◯曽根委員 私からは、都営住宅の家賃を定める基本となる現在の政策家賃制度、それが今回、二月三日の答申に基づいて応能応益的家賃制度という形が提案されているわけですが、もともと政策家賃制度がどのようにして成り立ってきたものか、それがまた、この間の検討の中でどのような変更をしようとしているのかについて、何点かお聞きしていきたいと思います。

  最初に、現在都営住宅は、第一種ではその入居基準の中間の金額に対して一六%、第二種では同じく一五%を家賃負担率として掛けているわけですが、この制度がいつできたもので、負担率の根拠となっているものはどういうものでしょうか。

 

◯吉田参事 現行の政策家賃制度に類した制度がいつできたかということでございますが、それまでの法定限度額家賃制度から、その法定限度額家賃を政策減額する形で三十五年以降、現在に近い形をとっていると聞いてございます。  負担率につきましては、現在の一種一六%、二種一五%は、おおむね四十年代の初めに定着したということになってございますが、当時の具体的な資料が余り残ってございませんので、負担率そのものの設定根拠を示す記録は手元に残ってございません。

 

◯曽根委員 何か、昭和四十年代最初のころにつくられた制度なので、根拠というのがはっきりしないというお話なんですが、私が聞いているところでは、当時、その後も長い期間、東京都の住宅対策審議会の会長であった谷重雄さん、都立大学の名誉教授だと思いますが、この方の住宅家賃に関する理論、いわゆる家賃にかける家計からの支出の割合として、世帯の状態によって負担率はいろいろ変化するけれども、いずれにしても、その負担率はエンゲル係数とのかかわりで、ある限界点を持っている、それを超えることがほとんどないという、経験的な家賃負担のいわば限界率といいますか、限度率といいますか、そういうものに基づいているというふうに聞いているんですが、これが、東京都の住宅対策審議会の会長でもあったわけで、東京都の一六%、一五%の根拠になったというふうに考えていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

◯吉田参事 先ほど申し上げたとおり、当時の具体的な記録がございませんので、明確に、ただいまのお話が四十年代初めの都営住宅の使用料の負担率の根拠になったかどうかは不明でございますが、確かに当時の生計分析等を用いまして、おおむね十数%台の住居費負担が示されている例がございます。

また、ただいまお話しの谷先生のいわゆる谷方式というものが、そのころ前後に先生のご研究の結果出されているという経緯もあり、その辺のことが東京都の設定に影響を与えたとは推測できるところでございます。

 

◯曽根委員 当時、谷先生が書かれた本がなかなか見つからなくて、「住宅問題入門」という昭和四十三年に書かれた、学者の書いたものとしてはわかりやすい本を私は参考に読ませてもらったんですが、その第二章の住居費と家賃というところで、谷先生は二つの重要な、歴史的につくられてきた家賃についての経験則といいますか、これを述べているわけです。

  その一つというのは、近代史の中で、商業もしくは工業都市が形成されて、そこに農村からいろいろな勤労者が集まってくる。大体が賃貸住宅に住むことになって、その家賃というのが、世界的に見て大体同じ傾向をとっている。例えば、イギリスでは古いことわざですが、その当時、一週間に六日働き、一日の働き分で住まいを得て、二日分の働き分で食べ物を得るというようなことわざがあるように、収入のうちの大体六分の一程度を住居費、もしくは家賃に充てるというような考え方がずっととられてきている。

  偶然かどうか、当時、日本ではまだ江戸時代ですが、水野忠邦という人が、やはり家賃については六分の一と定めるという天保の改革を行っているということで、歴史の中で、都市に集まってきている勤労者の賃貸家賃というものが、自然の成り行きの中で大体収入の六分の一、一六%程度のところに落ちついてきているという経験則といいますか、そういうものがあるということをまず一ついわれているわけです。

  もう一つ重要なのは、戦後の日本の世帯の中で家計を分析してみると、例えば持ち家の人、賃貸の人、また、公共住宅に住んでいる人で家賃の負担率は違うんだけれども、いずれにしても共通しているのは、エンゲル係数が低い場合には、家賃負担率というか、住居費負担率というのはエンゲル係数と比例して伸びていくんだけれども、エンゲル係数がある程度高くなる、つまり、生計費の中で食費の割合が高くなってくると、今度は逆にエンゲル係数が高くなるほど住居費負担率が逆比例で下がってくる、つまり途中で折れ曲がるわけで、そこに屈折部分ができる。これが限界点となっているという、これは戦後の世帯分析の中で経験則を述べている。

それが平均もしくは平均以下の収入の勤労者世帯では、一五ないし一六%のところに家賃負担の限界点があって、これを超えることはまずない。当時、勤労者の家計、エンゲル係数が高いということは大体ぎりぎりの生活をしているので、食費とか、こういうものは切り詰めると限界がありますから、どうしても住居費の方でこれを切り詰めて、家計をやりくりする。したがって、エンゲル係数が高い家庭では、どうしても住居費負担は居住水準を犠牲にしてでも一定の水準以上は充てられない。

  これから公共住宅を提供する場合、もちろん居住水準はあるべき姿で提供するというのが公共住宅の一つの役割ですが、しかし、家賃については市場よりも安くするといっても、一五、六%のところを大きく超える家賃を設定すると、先ほどいったような所得の低い世帯にとっては、事実上、二〇%とか三〇%という家賃は、長い意味でいうと耐え切れなくなって、公共住宅としては住みにくくなってくるということから、東京都の都営住宅についても、やはり所得の平均以下、低い世帯に対しては一五ないしは一六%を限界としての家賃を設定するのがふさわしいという、これが恐らく政策家賃制度の根拠になっているんじゃないかというふうに思うんです。

  これはその後、国の方でも住宅宅地審議会で、こうした政策家賃の考え方というのが取り入れられていると思うんですが、このときの住宅宅地審議会における政策家賃の考え方というのは、どういう負担率を考えていたんでしょうか、それをお答えいただきたい。

 

◯吉田参事 お話の昭和五十年の国の住宅宅地審議会答申では、住居費負担については弾力的に考えるべきであるとしながらも、当面、次のとおりが妥当としておりまして、所得五分位階層の第一分位における標準世帯の負担限度を世帯収入のおおむね一五%程度とし、それをまた収入、世帯人員等に応じ調整すると答申がされてございます。

 

◯曽根委員 これは東京都が早くから実施してきた政策家賃の制度と負担率が、国の住宅宅地審議会の中でもいわば追認されているということだと思うし、その後、東京都も政策家賃を決める負担率の根拠として、宅地審議会の答申をお使いになっていると思うんです。

ところが、今日における住居費負担率というのは一般的にどういう程度になっているのかということなんですが、これは最近、住宅白書も出されましたけれども、持ち家、または賃貸それぞれについて、また、その平均では都民の住居費負担率はどの程度になっているんですか。

 

◯村上住宅政策担当部長 平成四年の東京都生計分析調査によりますと、まず、賃貸の方でございますが、民間賃貸住宅に住んでいる勤労者の平均収入が月収で五十四万余でございます。月額の住居費、家賃の方でございますが、その平均が約八万四千円でございまして、住居費の負担率は一五・五%となってございます。

  また、持ち家の方でございますが、住宅ローンを返済している持ち家世帯の平均収入は月収で約八十三万でございます。一方、月額の住宅ローンの返済額は約十一万五千円でございまして、月収に占める比率は一三・七%となってございます。

  なお、これらの数値は、いずれも世帯の収入のレベルでありますとか、あるいは住宅の入居時期、あるいは購入時期などがさまざまな方々の単純なる平均値でございます。

 

◯曽根委員 平均値ですが、都内はかなり民間賃貸住宅が高いわけで、居住水準を維持しようと思えば、人並みの広さの家に住もうと思うと、本当ならもう少し家賃負担率が高くなってもよさそうなんですが、一五、六%のところに落ちつく、限界点があるというのは、谷先生の理論がつくられた当時、三十年前と今も変わっていない。大体百年以上、こういう傾向というのは変わっていないわけで、ここはそういう意味では、自然につくられてきた勤労者の家賃の負担率の一つの法則だと考えていいんじゃないかというふうに思います。

  ところが、東京都が最近考えている応能応益家賃制度というのは、政策家賃の考え方に大きく反する流れではないかというふうに思うんですね。住宅政策懇談会の中で、公共住宅に共通のルールとして、公正な市場家賃をベースにし、入居者の所得に応じて家賃を個別に減額する家賃制度が不可欠である、都営住宅については、今後の方向として法定限度額を家賃とし、入居世帯の収入に応じ、これに応益度を加味して入居者負担額を個別に調整する応能応益家賃制度の導入を期待するというふうに報告されています。

これが東京都のとっている応能応益制度の考え方なんですが、平成四年十一月に住宅政策審議会に都知事からの家賃のあり方についての諮問が行われたとき、基本的には住宅政策懇談会で出された提案に基づいて、これを踏まえての応能応益家賃制度の導入を期待するという意味合いで諮問がされたというふうに考えられると思いますが、いかがでしょうか。

 

◯吉田参事 平成四年十一月の東京都知事から住宅政策審議会への諮問におきましては、ただいまお話しの住宅政策懇談会報告の提言の趣旨を踏まえ、都営住宅入居者の適切、公平な住居費負担のあり方についてご検討願いたいと諮問したものでございます。このように、諮問は住宅政策懇談会の提言そのものの実現を諮問したわけではございませんで、この提言は一つの検討素材であり、あくまでも幅広い観点からのご審議をお願いしたものでございます。

 

◯曽根委員 幅広い観点からの審議とか、政策素材ですか、そういうふうにお答えがありましたが、実際には、検討過程では当初から応能応益制度を目指すということで、小委員会や部会でも検討がされていたというふうに私は聞いています。

実際に二月三日の審議会に部会長が報告したときにも、これは応能応益制度が実現できれば好ましいけれども、応能応益的家賃負担制度とせざるを得なかった、しかし、これは現行の法制度内では最善の制度であるというふうな報告がされたと記憶していますので、やっぱり住政審で検討されてきたのは、住政懇で提案された応能応益制度をつくりたい、しかし、結果として応能応益的家賃負担制度という形にとどまったというふうに私は考えられると思うんです。

  この応能応益制度が完全に実現できなくて、応能応益的制度になったと。どこが違うのか、どうしてそういうふうになったのか、その点をお聞かせください。

 

◯吉田参事 一言で申し上げると、住宅政策審議会におきます今回の検討におきましては、現行公営住宅法令、また現行の公営住宅制度の枠内で現実的かつ最善の方法を見出す検討をした結果、いわゆる応能制度につきましても、応能的な負担の形、応益につきましても厳密な意味での応益ではなく、あくまでも法の制度の範囲内での応益的な制度、そのような形で応能応益的家賃負担制度という表現になった経緯がございます。

 

◯曽根委員 今回出された答申の中身、これは詳しく紹介している時間がありませんが、応益調整指数の中身をかなり大幅に変更していて、今まで応益調整指数を決める中では一割程度しか見ていなかった立地条件というのを、四割ぐらいの重さで見るというふうに変わっていますね。

ですから、応益性という点については、いわゆる市場家賃の考え方、固定資産税などに連動して上がっていく、立地条件で上がっていくという市場家賃の考え方をほぼ全面的に取り入れたというふうに考えていいと思うんです。それは部会報告でも出ていますが、家賃限度額、法定限度額などが立地条件を半分、それから建物の住宅の広さや古さ、こういうものを半分というふうに考える考え方になっているので、応益調整指数も大体それに合わせて、応益性という点では一応一貫性を持たせた。これは今、都営住宅に住んでいる方に全体にわたって応益指数というのはかかわっていくだろう。

  ところが、応能制度については、入居基準の中にいる人にしか今回は適用しない。それを超えた人については別の、応能減額ではない法定限度額を根拠にした割り増し使用料をかけるということで、応益性が非常に強い今回の改定案になっているというふうにいわざるを得ないと思うんです。

  この収入超過者や高額所得者について、今回は、これは既に入居するにはふさわしくない階層なんだから、法定限度額――東京都の場合、家賃限度額といいますが、家賃限度額をベースにして割り増しをかけるんだ、高額所得者についてはさらに家賃そのものを家賃限度額に置いて、それに四割増しの割り増しをかけるんだというふうな考え方をとっていますね。

これは明らかに応能というような枠をはるかに超えているというふうにいわざるを得ないと思います。特に高額所得者は家賃負担がどれぐらいまで上がるのか、負担率がどこまで上がるのかの、そういう意味では制限が何もなくなっていますので、政策家賃という考え方は全く捨て去った、これはまさに応能ではないというふうにいわざるを得ないと思うんですが、このような扱いになっているというのはどういうわけでしょうか。

 

◯吉田参事 答申にございますように、現行制度におきます収入超過者の負担水準は、入居収入基準内の入居者の負担水準に比べまして低く、いわゆる負担率の逆転が見られること、これは現行制度におきます割り増し賃料の算出が家賃に割り増し倍率を乗じるものにとどまっているためであることで、これを是正し、負担をより適切なものにするには、割り増し賃料の算出を家賃限度額に割り増し倍率を乗じるものに改める必要があること、以上が割り増し賃料の変更の理由であると受けとめてございます。

  また、高額所得者につきましては、答申にございますように、高額所得者は請求を受ければ住宅を明け渡さねばならない階層であることから、明け渡しがなされるまでの間、公営住宅として適切な家賃負担の考え方から切り離して応分の負担を求めるべきであるとされておるわけでございます。応分の負担という点では、応能応益的負担の一環をなすものではないかと受けとめておるところでございます。

 

◯曽根委員 応能負担の範囲内だといいますが、高額所得者については完全に政策家賃じゃありませんね。何%の家賃がかかるかということの設定がない、つまり、青天井になっているわけですから。

  かつては、東京都は高額所得者についてはもう少し配慮をしていたと思うんです。

例えば、明け渡し基準についても都の独自の明け渡し基準を設定していました、国との関係で。これは歴史的にどの程度の明け渡し基準が国の基準に上乗せをされていたのか、その経過をちょっと聞かせてください。

 

◯竹内管理部長 高額所得者の明け渡し基準についてのお尋ねでございますが、過去十年間についてのご説明をさせていただきます。  まず、国の明け渡し基準につきましては、昭和五十九年度から昭和六十年度までは所得月額で二十二万六千円、昭和六十一年度から平成二年度までは所得月額で二十六万九千円、平成三年度から平成五年度までは所得月額で三十三万九千円となっております。

  これに対しまして都の明け渡し基準は、昭和五十九年度から平成二年度まで三十万四千円、平成三年度から平成五年度までは国の明け渡し基準と同じ所得月額で三十三万九千円となっております。

 

◯曽根委員 国の明け渡し基準が月額で二十二万六千円だったときに、東京都は三十万四千円ですから、月額でも八万円ぐらいの上乗せをしていた。年間でいえば百万円近い上乗せをこの時点ではやっていたわけです。

金額的にいえば三割ぐらい上乗せをしていたんですね。ですから、当時、国の基準でいけば七千人以上、高額所得に認定されそうなときに、都の基準があるおかげで千八百人程度の認定で済んでいた。今、資料にありますように、ことしは一万三千人明け渡し請求の方がいるわけですね。とても対応し切れない。

公団や公社の空き家住宅をあっせんしようにも、どうにもならないような状態です。去年よりも公団住宅のあっせん、公社の住宅のあっせんは減っています。

かつては、こういうふうに全く対応できない状況にならずに済んだということがあるわけですね。これがどんどん減らされて、今日では国の基準と同じになっているために、次から次へと、毎年千人ちょっと、退去していく以上の数が高額認定されていますから、ますますふえていくという状況だと思います。

  実際に、じゃ、高額認定されるとどれぐらい家賃の負担が違うのかということで具体例をちょっと聞きたいんですが、都心の場合、非常に応益性が高いということで高額認定の金額が上がるんですけれども、港区の北青山一丁目の都営住宅第一種の場合、現在、個別家賃が幾らで、収入超過者の方が割り増しを含めて幾らの家賃負担、高額所得者は幾らの負担か、これが新しく答申に基づく制度が行われた場合、それぞれ幾らの負担になるのか、お示しください。

 

◯吉田参事 ご指摘の都営住宅について、昭和三十八年建設、三十八・三六平米の例でお示しいたしますと、現行制度での家賃は二万二千三百円、高額所得者になる直前の収入超過者の負担は三万百円、高額所得者になった場合の負担は三万一千二百二十円でございます。

新しい制度での家賃等につきましては、答申時点の試算データでの概数で申し上げますが、家賃は四万七千円程度、高額所得者になる直前の負担及び高額所得者になった場合の負担は、このベースとなります家賃限度額が現在精査中でございますが、一応約十二万円台であるとして、収入超過の負担が八万円程度、高額所得者になった場合の負担が十七万円程度になろうかと推定してございます。

  なお、ただいま申し上げましたように、現在、新しい制度でのデータの精査中でございまして、特に家賃限度額が十万円を上回るもの、これは都営住宅二十五万戸のうち一%にも満たないケースではございますが、特にこの辺につきまして精査してございますので、一部、ただいまの試算が変動する場合もありますので、ご了承願いたいと存じます。

 

◯曽根委員 これからどういうふうな制度をつくるかは別にして、答申に基づいてそのまま適用すれば、標準四人世帯で六百九十万という明け渡し基準を超えているか超えていないかで、現在は三万百円と三万一千二百二十円の違いですが、今度の制度では八万円と十七万円の違いができるんですね、この基準を一円でも超えれば、厳密にいうと。ここが変わってくる。

一体、今、都営住宅に住んでいる方の収入がふえるということは悪いことなのかといえば、別にそんなことはないわけで、ただ基準があって、明け渡し義務が生じる。

しかし、公営住宅法の第二十一条では、この場合において、明け渡しの請求を受けた者に対しては、事業者は、その者の入居している公営住宅の明け渡しを容易にするように、公営住宅以外の公的資金による住宅への入居等について特別の配慮をしなければならないというふうに、わざわざ法に定めているわけです。

ですから、入居している方にとっては明け渡しの義務が生ずると同時に、事業者である東京都にも公的住宅を提供する特別の配慮の義務が生じているわけです。

  しかし、実際には一万三千人も高額所得者が出てきてしまうと、とても対応し切れない。しかし、家賃だけはこのように、現状でいえば五倍の家賃をかける。これは非常に一方的なやり方じゃないかと私は思うんですが、まさにこれは制裁的な家賃のかけ方だというふうにいわざるを得ない。 出るに出られない人に家賃だけはばんとかけるというのは、制裁じゃなくて何だというふうに思うんですが、その点はどういう見解をお持ちでしょうか。

 

◯吉田参事 先ほどもお答えいたしましたとおり、答申におきましては、高額所得者については、明け渡しがなされるまでの間、公営住宅としての適切な家賃負担の考え方から切り離して応分の負担を求めるべきであるとされてございまして、高額所得者につきましては、公営住宅法の範囲内におきまして家賃を家賃限度額とし、さらに、その家賃限度額に最高倍率の付加率を掛けた付加使用料をいただくという実施案で検討しているものでございます。

  なお、答申は、この高額所得者を含めまして、従前の負担から新しい負担への変更におきまして、その増額の程度が大きい場合には、必要に応じ激変緩和を考慮することが適当であるとしてございますので、直ちに新しい負担額に到達するのでなく、何年かかけて段階的に行くということが考えられるものでございます。

 

◯曽根委員 最初の話に戻りますけれども、高額所得の認定というのは、高額所得という名前がついていますが、実態は東京都の平均の勤労者の賃金というのは七百六十万円ぐらいになっているわけですから、高額じゃないわけですよ。平均以下の収入でしかない。

そういう人がどれくらい家賃負担できるのかといえば、当時、谷重雄さんが算定したように、大体、一五、六%の家賃負担が限界であって、それを超える家賃の負担をかければ家計に響く、食費を切り詰めなければならないということで、事実上は無理なんだ、負担できない。

居住水準を犠牲にして、民間の場合にはどんどん狭いところに移っていくというふうになっている。公共住宅がそのまねごとをして、こういう人たちを追い出すためにこれだけの破格の家賃をかけていいという方法は私はないと思うんですよ。

  そういう点で、東京都がせっかく政策家賃というのをつくって、一五、六%でも家賃負担の限界ですから、決して適切ではない、本来ならば低所得はもっと低目に設定すべきだというふうに考えていますが、政策家賃という考え方は、都市で働き、住んでいる勤労者にとっては必要な考え方だと思うんです。

それを全く投げ捨てて、こういうような市場連動型の高額家賃につながるような応能応益的家賃制度の導入は、都民は認められないものだし、もちろん都営住宅居住者については大変な負担をかけることで、こういう点は撤回すべきだというふうに考えています。

今度、六月の議会に提案するということが報告されていますが、私たちはその段階でまた改めて議論しますけれども、導入の撤回を求めるように強く要求して、質問を終わります。

 

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