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臨海開発特別委員会96年4月19日

 臨海開発続行より抜本見直しが、都民負担は軽くなることを解明

 

◯曽根委員 前回の臨海特別委員会は二月の十九日でしたから、ちょうど二カ月がたつわけですが、いよいよ懇談会の最終答申が近づきました。それで、この間特徴的だったのは、先ほどご報告のあった三月九日の一日都民臨海懇談会、ここで、意見を発表した都民のうち、これまでの副都心づくりとは異なる抜本的な見直し論が多数を占めて、残った土地は緑や森にすべきだとの意見が相次いだことであります。

  これに対して港湾局は、四月三日の第十四回懇談会に、開発継続の場合とそうでない場合の都民一人当たりの都民負担を比較した新しい試算を出すなど、いわば反論を試みてきたわけです。しかし、これには即座に懇談会委員からも批判がありました。推進派の委員からさえ、今回のような資料が出されれば、いちゃもんが出ると、何でこんな資料を出すのかという発言さえあったわけです。

  そこで、私はまず、今回新たな都の試算で示されました、現行の開発で進めるなら都民一人当たり七万三千円の負担だが、開発を中止すればこれが十二万六千円になるという、この比較の問題について質問します。

  最初に、私、この比較を見て大変疑問に思ったのは、港湾局のいっている開発中止の場合、都民のもとには都有地という財産が残るのではないかということです。都有地は開発中止の場合はどれくらい面積が残りますか。

 

◯安樂港湾局開発部長 臨海副都心四百四十八ヘクタールございますが、この大部分は道路、公園あるいは小中学校の用地として地元区に提供される、こういうものでございまして、それを除いた有償で処分できるのは、宅地が百五十九ヘクタールでございます。そのうち既に処分しているものが五十一ヘクタールありますので、今後に処分できるものは百二ヘクタールでございます。

開発を中止した場合には、この百ヘクタールがそのまま未利用地として残る、こういう感じになっております。

 

◯曽根委員 百二ヘクタール、約百ヘクタールということです。仮に港湾局の前回出された試算例1の地価、平米当たり百十六万円で換算しますと、一兆一千七百億円くらい都民の財産として残るわけです。これに対して、開発継続の、いわばモデルとして出されている試算例1によると、半分の土地を売ってしまうということです。

  副都心開発続行の場合とそうでない中止の場合とを公平に比べるためには、都民の税金による負担の上に、都有地を売るか売らないかの違いによって生ずる都民に残る財産の差額を加えなければ意味がありません。

これは公営企業会計でいえば、いわば常識であります。まず、この比較には、こういう基本的な問題点があるということを指摘しておきたいと思います。

  さらに、この土地の関連でもう一つ重要な問題があります。試算例1の前提条件に書かれていませんでしたが、九三年九月の見直しのときに、都有地百八十三ヘクタールについて、埋立事業会計からの現物出資扱いにして、臨海会計の土地の買い取り経費を一兆一千六百億円も削減しました。

  そこで、お聞きしたいんですが、試算例1の有償処分面積百五十九ヘクタールのうち、埋立会計が現物出資している面積はどれだけでしょうか。

 

◯安樂港湾局開発部長 試算例の有償処分面積百五十九ヘクタールには、有明北の埋立地で造成される土地は四十一ヘクタールございますが、この中の有償処分される予定になっております十六ヘクタールが含まれております。これを除いた百四十三ヘクタールが現物出資する面積となります。

 

◯曽根委員 そうすると、つまり、これから埋め立てる有明北の貯木場の跡、この部分を除けば、有償処分して臨海会計が収入を得る土地のすべてが、もともとは埋立会計のものなわけです。

九三年九月の見直し以前には、埋立会計から有償移管することになっていたわけで、本来だったら、都民の財産である埋立会計にお金を払わなきゃならないはずのものだったわけです。それを出資という、返さなくていい仕組みにしたこと自体、重大な問題として私たち当時厳しく批判をしました。

それにしても、出資ということですから、配当というものが受けられるはずなわけですけれども、試算例1の中では、出資した埋立事業会計には配当金を払うことになっているんでしょうか。

 

◯安樂港湾局開発部長 試算例の1では、平成四十六年度に収支が均衡する、それ以後黒字になるというふうに算定しておりますので、投下資金の回収が行われる平成四十六年度までは配当は想定しておりません。

 

◯曽根委員 とんでもない話だと思うんですよ。試算例1が想定した収支均衡の三十八年後まで、一切配当金も払わない。それ以降の遠い将来のことを考えても、大体そのときに埋立事業会計そのものがあるかどうかもわからない。

  これは重大なことですから、石川局長に伺いますが、三年前に、石川局長が総務部長だったとき、私は住宅港湾委員会の質問で、埋立会計に出資させるのは都民の財産のただ取りと同じことになると警告をいたしました。覚えていらっしゃると思うんです。この試算例では全くそのとおり、売っ払っちゃうんですから、半分は。

出資したものをついに完全にただで取って踏み倒すということになるんじゃないでしょうかね。港湾局のいう開発中止の場合は百ヘクタール、これは都民の土地として、約一兆円余りの財産が都民に返ってくる、しかし、開発継続の場合はそれを使い込んでしまうわけですよ。重大な都民負担がそこにあるということになるんじゃないんでしょうか、局長、違うでしょうか。

 

◯石川港湾局長 開発を継続した場合には、一方では、広域幹線、鉄道、そうしたものができ上がるということで、もっと大きな都民のメリットは私はあるというふうに思っております。

 

◯曽根委員 今局長は土地の利用価値的なことをおっしゃった。土地に交通機関ができると。しかし、都民にとって、東京都の都民の共有財産だった都有地が、開発目標に従って、臨海の場合にはオフィス街をつくるという目標に従って、利用価値が固定されてしまった土地の価値と、それからこれから都民のために自由に計画ができる状態になっている、いわば更地的な土地とではその価値に雲泥の差があることは当然じゃないですか。

  このように、都民の資産である埋立会計が踏み倒されるという、いわばここの資料には出てこない隠された都民負担を加えてみれば、私どもの調査では、それだけで開発続行の場合の方が都民負担が重くなる。つまり、港湾局の資産は逆転をするわけです。

  しかし、百歩譲って、仮にこれを除いて考えて、継続の場合七万三千円、港湾局のいっている中止なるものの十二万六千円、この数字の中身そのものを見てもまたさらにいろんな疑問があります。

 そこで、次にこの数字の中身を見ていきたいと思うんですけど、まず継続の場合の七万三千円、これについては、まず第一に、今後副都心開発続行による都民一人当たりの負担が七万三千円ある、このことを港湾局も認めたわけですが、これ自体都民にとっては大変な驚きであります。

懇談会でも指摘されたように、ある委員は、都民にとっては、この金額だって到底納得できないものだというふうに述べています。これに対して都は、八日の懇談会、それから先ほどの答弁でも盛んに、七万三千円は、副都心開発が中止されても道路計画などはまちづくりに必要だから、都民の負担はゼロにはならないと、資料まで配っていいわけしていますが、この点で、一つだけ聞いておきたいと思います。

  七万三千円のうち、臨海部と都心とを結ぶ広域幹線道路の負担が半分以上を占めているわけですが、これらの広域幹線道路の都市計画決定はいつ行われたのか、また、それ以前は、これらの広域幹線道路にかかわる都市計画はどのようなものだったのか、この点をお聞きします。

 

◯宇口都市計画局臨海副都心開発計画担当部長 臨海副都心及び豊洲・晴海地区の開発を推進するため、五本の広域幹線道路を都市計画決定いたしましたのは、平成五年七月十九日でございます。その内容は、放射三四号線の晴海通り、環状二号線、環状三号線、これの延伸、それから、補助三一四号線と三一五号線を新規に決定したものでございます。

  なお、これらの都市計画決定がされる前の道路関係でございますが、湾岸道路が決定されていたということでございます。

 

◯曽根委員 平成五年の七月に都市計画決定をされていて、その前は湾岸道路しか計画はなかったんです。つまり、副都心計画が出てきて、それで初めて必要になって、広域幹線道路のほとんどは具体化をされているわけです。つまり、臨海への副都心建設などという構想がなければ、広域幹線道路も含めて都市基盤整備自体がなかったんですから、その都民負担七万三千円もあり得なかった。都民大多数が望んでもいない構想が降ってわいての財政負担ですから、納得が得られるわけはないと思うんです。

 もう一つ、試算例1についてお聞きしたいんですが、この試算例では、開発のフレームについて見直しを想定しているんでしょうか。

 

◯安樂港湾局開発部長 さきの試算では、土地利用を変更した場合に収支状況がどう変化するかということを概括的に見るために、例えば、住宅中心であるとか、公園中心、業・商中心というふうに極端な例を選びまして、試算を試みたものでございまして、試算例1の場合には、現行の土地利用計画を前提として試算を行っている、そういう意味で現行型というふうにしているわけでございます。

  今後開発フレームをどう見直していくのか、あるいは見直しの必要があるのか、こういうことにつきましては、こういうものを一つの参考にしながら、今後議論されていく内容であるというふうに思っております。

 

◯曽根委員 今いろいろいいわけつきでお話がありましたけれども、実は懇談会で、四月三日ですが、最終報告について、それぞれの委員から私案が出されました。副都心推進派の委員からは、開発フレームの見直しはやむを得ない、つまり、商業・業務地域の縮小はやむを得ないというふうな私案が出されているわけです。

業務・商業の開発フレームが縮小すれば、その分臨海会計の収入が減るわけです。試算例1の長期収支の均衡年次の三十八年後、これをさらに後方にずらすか、それでもおさまらなければ、これ以上、つまり七万三千円以上の都民負担をまたお願いしなきゃならないという点でも、ここにもまた新たな都民負担が生まれる可能性があるということを指摘しておきたい。

  さらに、前回の委員会で私が取り上げましたが、公共施設用地の一般会計負担分が、処分価格を現行より引き上げることによって、消防署や警察署の土地買い入れに百六十億円、国際展示場用地は年間四十九億円の負担増が平成十九年度以降、年率三%上昇で続くということで、二千百億円、合わせて約二千二百六十億円、都民一人当たり約一万九千円の税金による負担がこの面でもふえている、この分も加味されなければ私はおかしいと。

  では次に、もう一方の、港湾局がいっている開発中止に伴う都民の負担十二万六千円の方について伺いたいと思います。まず問題なのは、東京都が試算したような開発中止の形は、懇談会の委員も、多くの都民もだれも主張していないものだということです。

ちょっと聞いておきたいんですが、港湾局が四月三日の懇談会に示した開発中止に伴う負債額と費用額の考え方として、幾つかの前提条件を付していますが、進出企業や第三セクターとの関係で、どのような状況になるという前提を置いているのか、お聞きします。

 

◯安樂港湾局開発部長 開発中止に伴う費用の計算では、進出企業につきましては、一次公募企業で契約済みの十社に対して、都の契約違反を理由に権利金を返還せざるを得なくなる、こういう前提を置いて試算をしております。また、第三セクターにつきましては、中止により経営が非常に困難になりますので、東京臨海熱供給など、五社の負債額のうち、都の出資割合分を東京都が負担する、こういう試算になっております。

  それから、委員ご指摘の点ですが、この資料を出したのは、これは懇談会の委員からの資料要求がありまして出したものでございます。

 

◯曽根委員 だれからの要求があったかはともかく、東京都が責任持って出したということですから、お聞きしたいんですけど、一次進出の企業も三セクも大変な状況になって総崩れだと、だから、都が権利金千三百億円全額を返す、三セクの負債も出資分については清算して全部返す。

つまり、でき上がったものもやめてしまうということになっているんですが、そんなことはだれも求めていないし、現実にも合わないわけです。

 懇談会では、副都心にならなければ経営ができないからうちは撤退するなどという進出民間企業の代表の委員の発言がありました。しかし、現実はそんな撤退を考えるような状況でしょうか。例えば、最近臨海部の台場地区に開業した日航ホテルを私も実際見せてもらってきました。

私が行ったのは大雨の日だったんですが、お客さんであふれていました。広報担当者の説明では、都市型リゾートホテルというコンセプトで、全室にバルコニーをつけて、レインボーブリッジや東京湾が眺められるようにし、ちょっと豪華に泊まれるのが人気を呼んで、主に都内の若いカップルなどで、週末は予約はいっぱいだ、全体の利用率も六割と当初の目標を上回っているそうであります。

副都心でなければつぶれるなんという状況では全くありません。むしろ、都民の求める憩いの場に全体を転換していけば、かえってホテルの環境や人気もさらによくなると思います。

  それから、商業施設ですが、ファッションタウンに入居した大塚家具、これも日曜日には札どめにしたほど、どこも好調であります。これが企業のための副都心でなくて、例えば都民の文化、スポーツ施設などがさらに整う方向になれば、これらの企業にとってもプラスになるわけです。

確かに業務ビルなど、思う方向になっていないところもありますが、しかし、これについても、三日の懇談会で進出企業の代表が東京都にだまされたとか、全額補償してくれなどという意見をいったのに対して、開発推進派の委員からさえ、たまりかねて、企業の側も公募のときには進んで応募したじゃないか、その後の社会状況の変化で今のようになったのはやむを得ないことなのに、だまされたとかいう問題ではないと、これをたしなめる発言をしているくらいであります。

  当然この企業自身の見込み違いというのは、自分自身でも責任を負うべきことだというのが民間の論理です。こうした状況を見ても、進出企業十社への権利金の全額返済千三百十四億円などすべき性格のものではないし、ホテルなどの例を見ても明らかなように必要ないものだということだと思います。

 それから、もう一つ、三セクが全部つぶれて東京都は少なくとも出資割合分の赤字を全部返済するために千四百五十五億円必要だ、こういう想定ですが、これもちょっとどうかと思うような想定なんです。

三セクの中で二次公募以降の開発が中止すれば、一番打撃を受けるのは臨海熱供給だろうというのは、懇談会でも推進派の委員から指摘がありました。

  そこで、お聞きしたいんですが、臨海熱供給がこれまでに設置した温水とか冷水のボイラー、配管など設備投資は開発のどの段階まで対応するものでしょうか。

 

◯安樂港湾局開発部長 平成七年十月に稼働いたしました臨海熱供給事業の設備は、原則として始動期に建設されまして、平成八年度中に開業する事業所の需要に対応できるように施設を整えております。なお、設備のうちでプラント、建物、あるいは輸送導管の容量、こういうものは段階的に増強することは非常に困難なものでありますので、将来の増加を予想いたしまして、先行的に投資している部分でございます。

 

◯曽根委員 今年度中に開業する施設に合わせているわけですから、そんなにむだはないわけです。その設備投資の総額は幾らか。

  それから、今先行投資といわれましたが、第二次公募以降の建物への熱供給のための先行投資分は幾らなのか。また、先行投資の中で熱供給の会社負担は幾らなのか、まとめてお答えいただきたい。

 

◯安樂港湾局開発部長 熱供給株式会社がこれまでに行った設備投資の総額は八百七十七億円でございます。このうち、プラント、建物、輸送導管、先ほど申しました先行投資額は約百六十億円でございます。先行投資百六十億円のうちの会社の負担する額でありますが、臨海会計が会社負担を行っておりますので、その残りの部分の約三十億円程度、これに固定資産税等の負担を入れますと、約五十億円になるというふうに思います。

 

◯曽根委員 先行投資そのものは百六十億円ですが、会社の負担は五十億円、私、会社に行って直接聞いてきましたが、会社の説明では、電気事業やガス事業と同じ性格のエネルギー供給事業として熱供給事業法で規制されており、公共的性格から過大な設備投資は厳しく制限されているそうです。

したがって、先行投資分は八百七十七億円のうち二割弱ですから、第一次公募で決まっている企業の残りが立ち上がれば、第二次公募は考えなくても何とか赤字にならずにやっていける財政計画になっているということでした。したがって、万が一、この第一次公募の残り分で一部建たなかったとしても、そのかわりに残りの用地に都民のための医療施設とか、福祉施設とか、熱供給を利用する施設が入れば、赤字にならないということです。

  それから、開業前は、空気を運ぶんじゃないかといわれた臨海新交通はどうか。これはさっきお話もありました。私からは、臨海新交通の現行経営見通しで、今年度一日乗車人員何人と想定したのか。それに対して、ことし四月一日以後の平均一日乗車人員は幾らかをお聞きします。

 

◯三河港湾局港営部長 平成八年度の需要予測では一日当たり四万三千人を見込んでおります。これに対しまして、本年四月一日から十七日までの利用実績を申し上げますと、一日平均約五万二千人となっております。しかし、乗客の内訳を見ますと、定期的な利用客よりもむしろ催し物等への来訪者、いわゆる臨時的な利用者が圧倒的に多いわけでございまして、経営見通しという点では必ずしも安定的とはいいがたいというふうに考えております。

 

◯曽根委員 さっきは順調という話だったんですが、今ちょっと雲行きが怪しいという感じなんですけれども、しかし、見通しを大きく超える乗車人員になっている。

私も先日大雨の中で乗ったわけですが、朝九時半過ぎに新橋を出る車両で、通勤のピークを過ぎているのにホームの長い行列が全部乗れずに半分残ってしまう。もちろん車内は国電並みの混雑で、ドアにだれかのレインコートの端が挟まって飛び出した状態のまま発車していきました。

  大雨の日でしたから、観光の乗客はごくわずかで、ほとんどが毎日通っているらしい通勤客です。このことについて、モデルビルを経営している臨海副都心建設株式会社のある課長さんは、自分も通勤のとき車内であるOLが話しているのを聞いたと、うちのビルはまだ少ししかテナントが入っていないのにこんなに込むんじゃ、この先どうなるのかしらとOLが話していたと。

実際モデルビル三棟の今現在の入居率は約二割程度です。大半はことしから来年にかけて入居してくるので、これから大変なことになる。少なくとも国際展示場の大規模なイベントには直通バスをどんどん出させることと、あとは「ゆりかもめ」が今最高六分間隔なのを、最大限の五分間隔までダイヤを詰めてもらうしかないと、その課長さんは話していました。

  こうして見ると、港湾局のいうような開発中止で臨海部の進出企業も第三セクターも総崩れになるという想定は現実とかけ離れているということなんですよ。

臨海会計の借金返済以外に第三セクター経営対策費一千四百五十五億円、それから、一次公募企業の権利金返済千三百十四億円、これは必要ないことは明らかですし、それに加えて臨海道路の整備費も副都心にしないのであれば急ぐ必要のない費用ですから、都民の憩いの場への転換を行うための財政措置は、港湾局の試算より大幅に軽減されます。

  これに対して、開発継続の場合は、都民の資産を踏み倒して、さらに負担も大きくなるということですから、東京都が提出した副都心続行の方が都民負担が軽いという試算は、どう計算してみても、私は逆転すると思います。

  しかも、ここで改めて指摘しておきたいことは、都民が求めているのは、港湾局のいっているような中止したまま、あとはペンペン草を生やしておけなんてことじゃなくて、残った貴重な都有地を都民の憩いの場にするよう開発の内容を変えていくべきだということなんです。

それがまた、既にでき上がった施設を有効に活用していく道でもあり、最も都民の犠牲の少ない方法でもあります。今回の試算の、完全に中止するなどという比較の想定が適切でないということを私はいっておきたいと思います。   

さて、こうした都民合意の道を選んでいけばいいんですけれども、そうではなくて、これまで東京都が推進してきた現行の副都心開発をさらに今後も続ければどうなるのか。

私は、東京都がかつて地価の上昇で莫大な開発利益が見込めるから、都民に財政で迷惑はかけないなどといいながら、臨海副都心開発を強引に推し進め、その結果、地価の暴落で都民の税金を大量につぎ込まなければにっちもさっちも行かないところに追い込んでしまった、このことが臨海副都心開発の財政的な破綻の中身であって、これに何の責任もとらず、また反省もしないばかりか、今ごろになって、開発者利益が見込めない分は都が公的に負担するのが本来の開発のあり方などといって、都民に赤字を押しつけること、これこそがまさに都民を欺くものだと思う。

  先ほど、どなたかの意見で都民の七万三千円の負担が都民全体のためになるから、当然だみたいないい方がありましたけれども、とんでもない話であります。

  開発の財政破綻について、これは懇談会でも意見がありました。これは開発にかかるコストの面から指摘があったわけですが、これをちょっとお聞きしておきます。

  試算例1では、現在の臨海部の平均地価を平方メートル当たり百十六万円としているわけです。臨海副都心開発を試算例1のやり方で継続していった場合、その土地の価値は現在価格に直して幾らになるわけですか。

 

◯安樂港湾局開発部長 試算例におきましては、平成二十二年までに域内、域外、都市基盤の整備を終えることになっております。それまでの総事業費が、埋立事業会計からの移管経費相当額を合わせますと、二兆九千九百億円を投入する形になります。

これを有償処分面積百五十九ヘクタールで割りますと、一平方メートル当たりは百八十八万三千円ということになります。これは平成二十二年の価格になりますので、この価格を平成八年度現在の価値に戻してみますと、例えば年四%の利子率で戻した場合には百三十万六千円、五%の利子率で戻した場合には百二十万七千円というふうに算定されます。

 

◯曽根委員 四%でも私高いと思いますけど、百歩譲って四%で百三十万、これは単位面積当たりの開発コストというような意味合いになります。現在の地価の百十六万円は、この開発にかかるコストを下回っているわけです。

懇談会ではこのことを指して原価割れという指摘もありました。つまり、この百十六万円で企業に売却したりすれば、それだけで開発の赤字を膨らませていくことになるわけです。

これだけを見ても土地を売却すべきでないことは明らかです。港湾局の試算している方向というのは、この赤字分を都民の税金の負担をふやして、それで穴埋めしながら切り抜けようというものだということは前回指摘しました。犠牲を何でも都民に転嫁していくという姿勢が、私は臨海にいろいろ建てている三セクのオフィスビルのテナント誘致、こういうところにもあらわれていると思います。

 ちょっと具体的にそのことについてお聞きしたいんですが、臨海副都心建設のフロンティアビル三棟、それからタイム二十四など、聞いてみると、最近次々入居テナントが決まって、それぞれ入居率の目標達成ができそうだということです。

ところが、低いところでは共益費込みで坪一万円台の賃貸料、フリーレントはどうなんだと聞いたら、ないとはいえませんという話ですから、相当な安売りをして、とにかくオフィス床を埋めているわけです。しかし、この低い賃料を今後上げていけるかどうかわからない。

何しろ海を渡って都心から企業を引っ張ってきているわけですから、新しくて設備がよいだけじゃだめで、安くなければ来ないわけです。

  結局、業務ビル中心の開発を続けて企業が進出しやすい条件をつくる見直しをしていくということになれば、ますます原価割れの安値競争をエスカレートさせることになってしまいます。

その一方で、都心地域でも新たにオフィス開発が進行しているわけです。最近、汐留の開発予定地域で東京都は容積率を変更する方針だそうですが、この汐留の容積率変更は、どういう変更内容で、その理由はどういうものでしょうか。

 

◯秋口都市計画局総合計画部長 汐留地区の用途地域の変更内容は、現行の準工業地域、容積率四〇〇%、建ぺい率六〇%を、商業地域、容積率八〇〇%、建ぺい率八〇%とするものでございます。

変更の理由ですが、当地区は都心周辺部に位置し、大規模な土地利用転換が図られること、業務・商業系ゾーンとして東京の国際化に寄与するよう高度利用を図ること、土地区画整理事業により都市基盤整備が進められていること、また、新橋駅前、銀座と連檐しているなど、地域の状況を踏まえて変更したものでございます。

 

◯曽根委員 八〇〇%となれば、超高層ビルも建てられます。したがって、ここにもまたオフィス開発が始まろうとしているわけです。汐留に限らず都心にはほかにも開発構想がかなり浮上しています。地元の住民のところでは、鉄道跡地という条件を生かした文化の場所にしてほしいなどの提案もあって、我が党は汐留などのこういう都心のオフィス型開発にはもちろん反対しています。

しかし、もしこれらの開発が進められていけば、臨海部でこれと対抗するには、地の利が悪い分、やはり値段を下げざるを得ない、企業の側に有利な条件をどんどん示していくしかなくなるんじゃないでしょうか。

  これは局長にお聞きしますが、局長は、今後副都心開発を続けて、企業の進出しやすい条件をつくっていくことが都民のためになるんだと繰り返し答弁していますが、私が質問してきたように、副都心を続行して企業を進出させるには、都民の税金をつぎ込み、それから都民の財産もつぎ込み、そうやっても四十年先でも黒字になるかどうかという大変無謀で危険な道に一層踏み込んでいくことになる、どうしてこれが都民のためになるのか。都民の負担増大の悪循環が繰り返される道ではないのか、この点についてお聞きしたい。

 

◯石川港湾局長 いろいろ都民の負担がふえるというお話がありましたので、その点からお答えをしたいと思います。例えば、広域五幹線につきまして、確かに平成五年に都市計画決定されたことは事実でございますが、そもそも臨海副都心の計画が出た段階でこの路線については考え方がありました。

しかし、地域の方々との合意がされず、平成五年に合意をされて、都市計画決定をしたものです。都市計画決定は、委員ご案内のとおり、きちっと法的な手続をとって、地域の方の合意を得てやっております。

この五路線につきましては、五年の九月の段階で、負担割合は、開発者負担と税金との負担は五対五ということになっておりました。したがいまして、今回の試算もそれを前提にしておりますので、それ以降新たに、大幅に都民の負担がふえたということはございません。

もともと広域幹線あるいは鉄道につきましては、半分程度は税金をつぎ込む、受益の範囲でつぎ込むというスキームになっております。今回についても、部分的にはいじっておりますけれども、基本的には変わっておりません。

  それから、臨海道路につきまして、これは新海面処分場を行うに当たりまして、搬入ごみ、残土等について、多ルートによる搬入ルートを確保すること、あるいは埋立地の交通について分散をするという目的もありまして、この道路については必要であります。したがいまして、そうした観点から税金と開発者負担でスキームは決められておりまして、この考え方は、今改めて出てきた考え方ではございません。

  それから、企業との関係を申し上げるならば、この開発を行っていく、あるいは博覧会を実施するという前提で民間企業は進出をし、東京都と契約をやってきたわけです。

したがいまして、この前提が崩れれば、当然企業側は都に対してそうした意味での補償的な話が出てきます。その一環として権利金返済という要求が出てくるのは私は当然のことだろうと思っております。

  それから、都民の負担がふえて、あるいは税金が大幅に入ってというようなご指摘でございますが、広域幹線あるいは鉄道等については、何も臨海副都心のためにだけではない、全都的、あるいは鉄道の東京のネットワークの形成という趣旨も入っておりますので、一定の税金の負担というのは私は当然のことだろうと思います。

これも新たに今回そうしたお話が出ているわけではございませんで、平成のこの臨海副都心の計画が出た段階から話が出ておりまして、平成五年の九月の試算のときに、税金と開発者負担がイーブンという形で提案をし、たしか議会においてもいろんなご議論をいただきながら今日に来ているということだけは申し上げたい。

したがいまして、新たな負担がふえたというご議論に対しては私は反論をせざるを得ない。

  それから、もう一つ、破綻という問題については、先ほども申し上げましたけど、こうした公共事業、特に公営企業会計の事業というのは息が長い段階で先行投資したものを回収するわけです。

それは料金なりあるいは土地運用収益で回収するわけです。私はそれはできるということを申し上げておりますし、いろんな試算上からも必ず回収できますので、破綻ということはございません。

 

◯曽根委員 やっぱり反省も責任も感じてもいないというふうに思いますね。具体的に話が出ましたから、一言だけいっておきます。

  まず、広域幹線道路の開発者負担、これは今まで五対五でしたが、今回、試算例1によって、開発者負担をそのまた半分に減らすということが提案されているので、変わってないという局長の答弁は違いますので、いっておきます。

 それから、臨海道路、全体のごみの搬入を複数にする──複数にするために三千六百五十億円の臨海道路をつくるなんてことはありません、それだけのために。

副都心を湾岸道路の真上にどんどん置くからこそ、臨海道路でわきから入れなきゃならないということになっているわけですよ。急ぐ必要のない道路だということを私たちは指摘しているわけです。

  企業が博覧会や臨海副都心全体の改造を前提に──これは昨年の博覧会中止のときにも議論があった話なんですが、このときにも博覧会中止で影響を受けるからということで企業からいろいろ文句が出ました。しかし、その後この補償はどうなったか、必要なかったわけですよ。博覧会中止のときに全体で一千億かかるといった話ですが、これも五百億程度で済んだわけですよ。これが実態ですよ。

  最後に、局長の姿勢ですけれども、港湾局長というのは、湾岸地域の港湾区域の開発の責任者ですよね。それから、埋立事業会計で長い間かかってつくってきた都民の財産である都有地を預かっている金庫番の役割を果たしているわけですよ。一兆円以上の資産があるわけです。

それを預かっている──とんでもない人に預かってもらったものだというふうに私は思うんですよ。自分が預かっているのをいいことに都民の財産を開発の方に振り向けて、これは出資だといって返さない。処分しちゃう、売っ払っちゃう、配当金も出さない、都民もとんでもないことになったというふうに思いますよ。そういう責任者としての責任を私は本当に深く銘記すべきだということを申し上げておきたい。

  鈴木前都政の失政ですけれども、ここまで開発が来て、破綻も明瞭になって、どうしても今都民の税金をつぎ込まなくちゃ開発そのものが立ち直らないというところまで来てしまう、都民が望んでもいない副都心開発に税金を投入するぐらいだったら、私は、これ以上税金を使ったり、都有地を副都心開発に使うんじゃなくて、逆に、未開発で残された三分の二の都有地について、都民の憩いの場として、都民の求める内容に改めて、自然にも配慮した開発にするための最小限の都民負担として提案することこそが、都民の合意も得られるし、犠牲を最小限に抑える道ではないかというふうに強調しておきたいと思います。

  さて、最後に、長期的なまちづくりの観点から見ても、臨海副都心こそ東京の抱えてきた都市問題を解決していく方向を示すような防災、環境に配慮したまちづくりが期待されていると思います。

  臨海のまちづくりにおける都市問題として、懇談会で多くの委員から指摘された環境問題ですが、東京都は四月三日の懇談会に臨海副都心開発によるヒートアイランド現象についての予測調査資料を出しました。

現行計画どおり開発を進めた場合と、今後残りの用地を森にした場合とで比べていますが、真夏の条件ではやはり一度ぐらいの温度差が出るという結果であります。

ほかの調査を見ますと、都心が江戸時代に比べて四度くらい温度が上昇したという話ですから、二百年分の温度上昇の四分の一を臨海開発で生み出してしまうということになります。開発の域内での大きな影響があるということはここでも示されていることです。しかし、都の調査では、域外へのヒートアイラインドの影響はごく小さいものと判定しています。

その点で、調査の前提条件など、資料の中身をもう少し聞いておきたいんですけれども、この調査では、現行計画と森林との比較で豊洲地域についてはどのように設定しているでしょうか。

 

◯砂岡港湾局臨海部開発調整担当部長 今回の調査は、臨海副都心地域の開発に伴うヒートアイランド現象、こういうものが懇談会でも議論になりました。そうしたことから、急遽、臨海副都心開発が既成市街地の気温であるとか、風速にどのような影響を与えるのか、それを主眼にいたしまして調査したというものでございます。

したがいまして、他の地域、これは既成市街地、豊洲・晴海を含めまして、それは変化をしないというものを仮定してやっているというものでございます。

 

◯曽根委員 豊洲開発についてもこの委員会で扱う一つになっているわけですが、現行計画どおりやれば、豊洲の開発にもいろいろあるわけです。これが盛り込んでないということですね。これによる温度上昇効果、私は豊洲の開発が構想どおり進めばやはり温度上昇効果は高くなる可能性があると思います。

  それから、森林にした場合の前提条件なんですが、有明北の水面の埋め立てを行って、そこを森にするという想定をここではしているんですね。埋め立てて森にするのと、水面のまま有明北を残すのと、どちらの方が気温を下げるのにつながるんでしょうか。

 

◯砂岡港湾局臨海部開発調整担当部長 この調査を実施いたしましたのが風公害研究所というところでございまして、ここは四月三日開催の第十四回懇談会におきまして、次のように説明をしているところでございます。基本的には水面のまま残す方が気温を下げる効果は高いと思われます。

しかし、今回の調査結果から推測いたしますと、有明北の埋立面積が小さいことにより、森林にする場合と比較して気温の高くなる領域が若干はふえますが、大きな視点で見ると、余り影響ないと思われます、こうした趣旨の説明でございました。

 

◯曽根委員 これも都民が求めているように、埋め立てをやめて水面で残せばもっと下がるわけですよね。気温を下げる効果がある。両方とも今指摘した点は、現行計画と森林との差が小さく出るように条件が設定されている。域内のヒートアイランド現象の違いは一度よりももう少し大きくなる可能性がありますし、域外への影響も出るんじゃないかと思います。

  実は、環境庁が「首都圏・その保全と創造にむけて」という報告書を出しておりまして、同じように、臨海副都心地域のヒートアイランド効果を調査した資料が別にあります。こちらの調査では、臨海部の影響で都心地域に夜間〇・五度程度の温度上昇が起こるというふうにいわれています。

今回の都の調査をお聞きすると、この環境庁の調査とのデータの突き合わせはしていないということなんですが、この点を見ても、域外に温度上昇効果がほとんどないというのは、私は疑問があるということを申し上げておきたいわけです。

  以上のように、現行計画は、環境に配慮したとされていますけれども、都の調査でも域内においては明確なヒートアイランド効果が予測されるということは、やはり環境に大きな犠牲を及ぼす大型開発だということになります。

これに対して、臨海副都心にはシンボルプロムナードを二十六ヘクタールとったということが環境に配慮した典型部分のようにいわれて、一般的には緑の地域にカウントされていますが、現実はどうか。

私、現場でシンボルプロムナードを歩いてきましたが、シンボルプロムナードの緑被率は実際には五割にもいかないわけです。現場を歩いても大体半分近くがタイル張りですから、現場の人は夏は照り返しで暑いし、冬は吹きさらしで寒いというふうにいっておって、同じような問題がいっぱいあるんですけど、その一つとして、この間都議会で繰り返しいわれてきた、臨海部だけじゃなくて、東京湾岸地域の公園計画面積、これが千二百ヘクタールにもなるんだという話がありましたけれども、これ、ちょっとお聞きしたいんですが、このうち海面の面積はどれだけですか。

 

◯安樂港湾局開発部長 臨海部におきます公園緑地の計画面積、約千二百ヘクタールでございますが、このうち水域は約五百二十五ヘクタールでございます。

 

◯曽根委員 半分近くが海なんですよね。ですから、いわれているほどには東京湾周辺に緑があふれているわけでもない。ましてや副都心計画で緑が十分にふえるわけでもなければ、むしろ樹林の緑を中心に開発するのに比べれば、一度以上温度を上げてしまうわけです。

  最後に申し上げておきたいのは、この点でも、森というふうによくいわれますが、これを提唱されている懇談会委員の方々も、広義の森というふうに注釈を加えられているように、単に全部木を植えるだけでいいといっているのではないわけです。都民は、臨海部に文化、スポーツ施設や、余り高層でない住宅とか、福祉施設や病院などを整備して、多様な内容で潤いと憩いの場にしていくことを望んでいます。こうした施設がうっそうとした樹林に囲まれて建っているような、懇談会ではベルリンがそういう都市だという発言もありましたけれども、臨海部をそのような場所にしてほしいということだと思うんです。

 私は、港湾局長が前から、一喜一憂せず長期的な視点に立って、国際都市間競争に勝ち抜ける副都心をつくっていくことを盛んに強調していますけれども、都民の大多数はそんなことは望んでいないと思います。長期的なまちづくりだからこそ、副都心を白紙に戻して、都民が本当に納得できるまで時間をかけた慎重な再検討を求めていくと同時に、将来にわたって東京湾沿いの臨海部の自然を豊かに残しながら次の世代に渡したいと都民は願っているんだと思うんです。

  この間、いろんな比較の資料を出されましたが、それを検証していっても、副都心開発の継続ではなく、都民の憩いの場にする開発の方向に転換することが、財政負担も軽減するし、東京の環境を改善に向ける道でもある、このことを最後に改めて申し上げて、私の質問を終わります。

 

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