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臨海開発特別委員会96年5月20日

 臨海懇談会の都民要望が反映された抜本見直B意見の見直しを提言

 

◯曽根委員 臨海副都心開発懇談会の最終報告を受けて、都としての見直しの方針を策定していくに当たり、日本共産党都議団の意見を申し述べておきます。

  懇談会の最終報告は、現行開発の継続を求めるA意見と、抜本見直しを求めるB意見を対等の扱いとした両論併記となりました。事務局を務めた港湾局が結論先にありきの答弁を繰り返したり、また、これを誘導する資料の提出を行ってきたほか、現行開発継続への一本化をもくろむ激しい動きがあったにもかかわらず、これらを退けたこと自体が抜本見直しを求める強い世論の反映であります。

  B意見の提案する、大型オフィスビルの新たな建設をやめて、開発の内容を都民の意向に沿ったものに転換させ、今後の投資を抑制し、都民の負担も軽減しようという大きな方向は、これまで我が党が提案してきた方向とも基本的に一致しています。

したがって、日本共産党は、東京都がB意見の大きな方向を基本としながら、その具体的内容は、多様な都民の要望を反映させてよりよいものに練り上げ、緑や森、文化、スポーツ施設、防災、住宅、福祉施設の整備などで臨海部を都民の憩いの場とする開発に転換する抜本的な見直しを行う、そうした方針を策定するよう求めるものです。  また、何よりも重要なことは、その手続として、知事が有識者に検討を依頼した結果が二つの意見の併記となったのですから、ここから都民がどのような選択をするのか、その意向を確かめて進めることであります。

このことは、住民自治の原則の立場からいって当然の責務です。拙速は避けて、まず都民の声を聞き、公聴会や世論調査、さらには都民投票なども実施して、広範な議論の中で、都民の合意によって見直しの方向を定めていくべきであると考えます。

  以下、その理由について述べます。

  そもそも臨海副都心開発で何度となく見直しがいわれてきたのは、開発計画それ自体に根本的な問題があるからです。だからこそ抜本的に見直さなければ、これまでと同じように、矛盾を先に延ばして、より拡大することにしかなりません。

  その第一は、もともと都心から六キロと比較的近い距離にありながら都市空間として残されてきた臨海部を、新たに副都心にするという都市計画自体の問題にあります。

  この計画が業務機能を膨張させて東京一極集中を加速させるとともに、一日に四十五万人にもなる臨海副都心への出入り人口の相当部分が、その地理的条件から都心を通過して行き来することになり、東京の都市問題を激化させることは、最初から指摘されてきたことでもあります。

防災面でも、貴重な空間を喪失させるだけでなく、軟弱地盤の上の巨大開発を行うこと自体の是非が問われてきたところです。さらに環境の面からは、ヒートアイランド現象や大気汚染を悪化させることなど、基本的な問題が幾つも出てきています。

  第二の根本問題は、バブルの継続を前提にした、その財政計画です。

 都民の貴重な都有地を大企業のオフィスビル建設に提供することの批判をかわすために、バブルの高地価が続くことを前提に、都が先行投資する基盤整備費は、進出する企業からの権利金、地代収入で賄えるので、都民に負担はかけない計画であると強調されてきました。

  ところが、バブルの崩壊による地価の下落で、当初三十年間で七兆円見込んでいた収入が二兆円を割り込むという事態となり、この皮算用は完全に破綻しました。一転してオフィスの過剰、これが臨海部への業務機能整備のその根本を問うているわけであります。

 以上のような根本問題があるからこそ、都民の世論も明確なわけです。

 ことし二月に都港湾局が発表した臨海副都心に関する都民アンケート調査でも、見直しに当たっての配慮点や、どのような施設がぜひ必要だと思うかとの問いに、都民が上位に挙げたのは、共通して、広域防災拠点の整備や、公園や緑地の充実などで、都心のオフィスの受け皿とか国際ビジネス拠点などオフィス立地については、いずれも下位にとどまったわけです。

  三月に懇談会が都民の意見を聞いた一日都民臨海懇談会でも、その圧倒的多数の意見が、これまでのオフィス中心の開発とは異なる、森を初め動物園、植物園、文化、スポーツ施設、防災空地などの整備を提言するものだったのであります。

  このように計画の抜本見直しが求められ、それが都民の世論となる中で、A意見、B意見は、それぞれどのような方向を示しているでしょうか。

  まずA意見は、副都心計画を覆す積極的理由はどこにもないとして、もともとの計画が今でも正しいとする立場です。当初の都の政策意図を実現するためには、相当程度の業務機能の集積が必要であり、もし大幅に縮小するようなことがあれば副都心の意義が失われると、開発の基本を一切変えさせようとしておりません。

 それどころか、破綻の明らかな財政計画について、当時はすべての人々がバブルの影響を受けた時代であり、これを前提として運営することは当然だったと開き直っています。

途中でバブルが崩壊して収支見通しが暗転しても、全面開発方式を続け、ブレーキを踏まずに今日の被害を大きくしたことについても、副都心の建設という重要な事業の中断がもたらすマイナス効果を避けるためだったといって、これを行政責任ありと批判するのは当を得ていないとまでいい切りました。

  こうした考え方については、懇談会でも、中間的な立場の委員からさえ、これでは何のために知事が諮問したのか根本理由がなくなる、懇談会は、時間と費用を浪費し、単に通過儀礼だったのかといわれても仕方がないと厳しい批判の意見が出されたのは、余りにも当然です。

 A意見が求める見直しの内容は、今後も企業を進出させる条件をつくるために、貴重な都有地を大企業に切り売りする土地処分方式を導入し、企業都市づくりの赤字を埋めるために都民負担の拡大を行うもので、到底容認できません。

  しかも、企業の進出には、都心と結ぶ道路アクセスの不便さを解消する何本もの幹線道路の建設が不可欠になり、そのために約一兆三千億円、そのほかにも必要な基盤整備を合わせると、約二兆円近い新たな投資をしなければ、これから企業は進出してこないのです。

この額は、これまでの投資額一兆四千億円を大幅に上回ります。港湾局の収支試算例でも、すべて企業が順調に進出したとして、やっと三十八年後に回収できるとしているのですが、企業誘致にまた失敗すれば、これまでよりもさらに大きな規模で回収できない金額が膨らむという悪循環で、都民の被害を一層大きくする危険すらあります。  A意見は、臨海副都心開発の抱える根本的な欠陥をそのままに、都民被害を一層拡大していくものにほかならないことを厳しく指摘しておくものです。

  これに対して、抜本見直しを求めるB意見は、基本的には、現計画の欠陥を大きく改善する方向を示しています。  もちろん、今まで根本的な見直しをすることなく、これまでの開発を推進して、今日の事態に至らしめた鈴木前都政と旧与党の責任は重大で、今日、抜本見直しを行ったとしても、都民への被害と負担が余儀なくされている部分があることは、厳然たる事実です。

このためB意見は、都民が何らかの負担をすることから免れないとすれば、開発の内容を都民の意向に応じたものにしていくことが当然と述べるとともに、大型オフィス専用ビルの新たな供給をやめて、これにより不要となる今後の投資を削減し、都民の負担をできるだけ軽減していく方向を示しています。

  臨海副都心で企業などに処分する予定だった土地は、まだ三分の二が更地のままで残されており、都民が求める開発内容への転換は十分できるのです。

B意見では、防災基地、森や原っぱなどの整備のほか、今後の開発のウエートを住宅整備に置いていますが、同時に、第三者機関のまちづくり委員会で審議し、都民の意向を踏まえて改めて方向づけをするとしており、さまざまな都民要望を盛り込んでいくことも可能です。

  我が党は、防災施設や低中層での住宅整備はもちろんですが、文化、スポーツ施設、福祉施設、総合病院など、多様な施設がうっそうとした緑の森に囲まれて配置されるような憩いと潤いの場とすることを提案します。これらは、東京全体のまちづくりのバランスを回復させ、環境の改善にも資する方向と確信するものです。

同時に、こうした開発への転換は、これまでの基盤整備をむだにするのでなく、むしろ都民のために生かすことができる道です。

  オフィス開発を続けるのでなければ、今後必要となる交通基盤の整備は、高速鉄道の大崎までの延伸や新交通の延伸など公共輸送機関の建設を中心とすれば、十分賄えます。

隣接の豊洲・晴海開発をあわせて抜本的に見直せば、広域幹線道路の整備量は、B意見の中で豊洲・晴海開発を前提に上限として示した現行の計画の六割という数字よりも、さらに大幅に削減できると考えます。広域幹線道路の建設は、現行開発を継続した場合、今後最大の投資額が必要となるものであり、こうした方向での見直しによって、都民負担が大幅に軽減されることになります。

  また、憩いの場として整備されることは、商業施設やホテルなどの現在の進出企業や第三セクターにもプラスになる方向です。

こうした既進出企業からの地代収入や、今後、残りの用地に都民要望に基づく施設を民間も含めて適切に配置すれば、そこからの地代収入や適切な使用料収入なども見込めることから、現在の先行投資額を回収していく見通しも開けるのであります。

  抜本見直しによって、これまでの負債の一部を防災施設とか公立の公共施設などの整備による都民の負担で補っていくことになりますが、しかし、そのことによって、臨海部に残された三分の二の土地が都民のために使える場所として戻ってくることになるのであります。

現行の開発を継続すれば、それ以上の額の税金投入を強いられることになる上、残るのは、大企業のためのオフィス街と、幹線道路による周辺住民への騒音や大気汚染あるいはヒートアイランドなどの環境破壊ではありませんか。

 以上のことから、私どもは、抜本見直しの方向こそ、今、選択すべきであることを改めて指摘するものであります。  最後に、これから都の見直し方針を策定していく上で、まず都民の意見を聞き、都民的な議論を行うという、そのプロセスが重要であることを重ねて強調したいと思います。

  これだけ大規模な開発事業で、これまで行政が進めてきた計画を都民の意向に基づいて見直し、都民の参加で今後の開発が進められていくようになるならば、それは、まちづくりの民主主義という点でも、日本における画期的なモデルともなるものです。

  欧米諸国では、住民参加による徹底した検討で、このような開発計画の大幅な修正が行われることが、むしろ珍しくありません。

サンフランシスコの湾岸開発、ミッションベイでは、八〇年代に都市開発ラッシュの弊害が明らかになる中、超高層のオフィス都市づくりはもう望ましくない、環境に負荷が大きいなどの市民からの意見で、百回ものさまざまな市民参加の会合が持たれ、徹底した議論で、見直しに十年をかけ、低中層住宅や公園など公共スペースを大幅にふやす見直しがされたということは、以前にも議会で紹介いたしました。

  ましてや東京の臨海副都心開発は、出発点の四十ヘクタールから、当時の金丸副総理の臨海視察を経て、あれよあれよという間に、その十倍以上の四百四十八ヘクタールになるなど、都民の知らないまま、短期間に強引に進められて今日に至ったのであります。その反省から、今こそ都民との協議と合意で見直しを進めていく方向に踏み出すべきときなのです。

  都の方針案を都民の意見も聞かないで六月定例都議会までに出してしまうというような拙速はやめ、公聴会や世論調査、さらには都民投票なども実施し、全都民的な議論を起こして、そこで浮き彫りにされる都民の意向にだれもが納得する中で、都としての見直しの方向を定めていくべきです。

  ちょうど一年前の世界都市博中止は、さまざまな妨害がありましたが、知事が都民の声を直接聞いて、国民的な議論となる中で、圧倒的な世論で中止の決断が円滑に実現されました。

青島知事が、臨海副都心開発の徹底見直しというみずからの公約に立ち返るなら、都民の世論に依拠して、都民とともに、その方向を選択していくことが求められていると考えます。

  以上を述べて私の意見表明を終わります。

 

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