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98年3月12日予算特別委員会総括質疑
青しま都政のマル福・シルバーパス切捨て計画に反対論線

◯曽根委員 それでは、日本共産党都議団を代表して質疑に入ります。  我が党が本会議代表質問で指摘したように、財政健全化計画をめぐるこの一年半の経過は、都政のあり方を根本から問うものでした。東京都がごり押ししようとした福祉切り下げ計画は、障害者やお年寄りの方々を初め広範な都民の怒りを招き、多くの部分で切り下げが回避されたのであります。シルバーパス交付と障害者医療費助成が現行制度で維持されたことは、その代表例であります。  しかし、今、重大なことは、民意に反して盛り込まれた幾つかの福祉、教育、暮らしの切り下げが引き続き強行されようとしていることです。中でも大きな問題の一つが、老人医療費助成、マル福の改悪であります。初めに、この問題について質問します。  知事は、当初の局要求の切り下げ幅を少し圧縮はしましたが、ことし六十五歳になる人から、マル福の対象を住民税非課税の人に限るとの提案をしています。これでいけば、五年間で二十二万人からの取り上げで、対象人数も予算額も、現行制度と比べ半減となる大後退となるものであり、到底容認できるものではありません。このような切り下げの理由として、知事は、我が党の本会議代表質問に対する答弁で、介護基盤整備の必要が高まるとともに、給付と負担において、他の世代との公平を欠くという問題が生じているからだと説明をいたしました。  介護の問題についていえば、介護基盤整備は確かに緊急課題ですが、介護サービスを必要とする人の中心というのは、七十五歳以上の主に後期高齢者です。介護基盤整備のためにマル福を切るということは、まだ六十代のうちの方々はご遠慮ください、もっと年をとって介護が必要にならなければ、行政は支援しませんよということになるではありませんか。マル福は、寝たきりの原因になる脳卒中などの疾病の早期発見、早期治療のために大きな力になっています。寝たきり予防、要介護高齢者を少なくするためにも、重要なマル福を介護基盤の整備を理由にして切るというのは、全く道理がありません。  次に、給付と負担における他世代との公平という問題ですけれども、これも道理の通らない話だと思うんです。これは要するに、六十五歳から六十九歳までの高齢者に都独自の医療費助成をするのが、公平性の観点から見て妥当かどうかということです。都の社会福祉基礎調査や高齢者の生活実態調査を見ても、六十代の人が一番不安に思っているのは、健康への不安です。重視してほしい施策に、六十歳を超えると初めて医療が一番になります。そして、六十歳以上になると、何らかの病気で医者にかかっている人が半数を超え、がん検診の結果を見ても、精密検査が必要だという人がふえてきます。高齢者に多い高血圧や糖尿病などの慢性疾患は、症状が出てくる六十代でどんな治療を受けるかでその後の症状が決まるといわれているほど、この年代の医療は重要な意味を持っているのであります。  また、きのうの朝日新聞に「不況下の生活実感」という世論調査結果が発表されましたが、その中の、暮らしの中で一番負担に感じているものは何かという質問への回答を見ますと、医療費が一番負担だという人が、全世帯平均では第三位なんですけれども、六十代では第二位で、ほかのどの世代に比べても特別に多いという結果がはっきり出ています。  一九八二年の調査でも同じ質問をしたときは、医療費の順位は下の方だったんですが、今回、大きくさま変わりしたと記事の中で書かれているように、医療費の負担は全体として非常に重くなってきて、その中でも特に六十代の人の負担感が重いんです。  知事にお聞きします。このように医学的必要から見ても、また、他の世代と比べても医療費の負担感が非常に重いことを見ても、六十代後半の人たちに手厚い助成をするのは、不公平どころか、当然のことではありませんか。知事、どうでしょうか。

◯青島知事 おっしゃられるとおり、高齢に進めば進むほど、病に陥る可能性は高くなっていることはおっしゃるとおりでございまして、その意味から申しましても、老人の医療に対しましては、都といたしましては真摯に取り組んでまいらなければならない課題だと考えているところでございます。

◯曽根委員 それだったら、どうしてこのマル福の削減があるのでしょうか。私の質問にそれだけいい答えをされるんだったら、今度の削減は最初から理屈が成り立たないと思うんです。  特に、昨年九月の医療改悪以来、医療費の負担がさらに一層重くなっているのをもちろん知っていると思うんですが、マル福を受けていても、高血圧や糖尿病で医者にかかると、自己負担が以前と比べて二倍から五倍以上になっているわけです。マル福の適用がなくなると、これがさらに数倍にはね上がる。慢性疾患の場合は大変負担が重くなるわけです。例えば糖尿病で月二万円というケースも出てきます。これは大変だと思うんですよ。  私たちが医療機関に協力してもらって試算した結果ですけれども、今回のマル福見直しで対象外になった人は、年金収入で、月大体二十二万円より上の方、そういうぎりぎりの収入の方が、毎月二万円の医療費ということも起きてくるわけです。医療費負担が重くなったから、必要な診療も控えなければならないというような状況も現実に生まれているわけです。  入院の場合はもっと大変なことになります。二年前、これも東京都の調査で、高齢者の生活実態調査を見ても、六十五歳から六十九歳の人の入院費用は、入院した人の八割が月五万円以上かかっています。また、二割の方が月二十万円以上です。これはいうまでもなく、昨年九月の医療改悪の前の話ですから、その後はもっと大変な負担になっているわけです。  私、先日、マル福切り下げに反対する署名と一緒に、こういう手紙を受け取りました。昨年の九月一日に、六十八歳の夫が突然の大病で四カ月近く入院したというんです。退職して八年、とにかく清く正しくと年金暮らしを続けてきた身に、医療の改悪は大変こたえましたと。これは国の制度改悪ですけれども、今、医療費の負担を下げてほしいというのは本当に切実な思いなんです。  知事は、こういう実態について、先ほど、年をとられた方はやはり医療が必要になる、東京都の助成は必要だというふうにお話しになりましたので、それでは、マル福は後退させるどころか、重要性はますます高まっているというご認識だと思ってよろしいんでしょうか。

◯青島知事 他の施策との総合性も考えなければなりませんし、さまざまな老人医療に対する問題が不公平を生ずることのないようにということにも配慮いたさなければなりませんし、さまざまな角度から検討すべき筋合いのものと考えております。

◯曽根委員 先ほど、年をとられると医療が必要だ、東京都も援助しなければならないと。そして、今のお答えは、他の施策との総合性、いろんな配慮をするというお話でした。  この施策は、今まで対象から外されていた方がいますよね。社会保険本人の人たち、これが昨年の九月改悪以降、自己負担の割合が一割から二割にふやされております。その上、薬剤費の一部負担が加わったために、確実に二倍以上の負担になっているわけです。  私は、同じ六十五歳以上になって、社会に働いて貢献しているという方々、やはりこの制度を社会保険本人まで拡充するという必要が強まっていると思うのです。だからこそ、先日の本会議でも、ほかの会派の方からも、社会保険本人をマル福の対象から外すのは、高齢者の自立を否定するようなものだとの議論も出ております。積極的に社会保険本人への枠を広げることは検討すべきと思いますが、見解をお聞きしたい。

◯青島知事 社会保険本人について、国民健康保険の被保険者等と比べまして、低い負担で受診できますし、就労による収入もございますことから、助成の対象とはいたしておりません。ただいまのご指摘につきましては、ご意見として承らせていただきます。

◯曽根委員 ぜひ積極的に検討していただきたい。最初の答弁から見ると、大分後退していますよ、それでは。  さて、先ほど自民党の代表質問の中でも問題になりました、医療費助成制度の中での整合性の問題、これはやはりマル福の切り下げは道理がないと思うのですね。心身障害者の医療費助成は現行制度のまま継続を決めた、これは賢明な措置だと思います。しかし、マル福は大後退、どう考えてもおかしい。私もこれは大変疑問なので──これは皆さん共通に抱いている疑問ですよね、先ほども話がありましたように。  知事は、さきの本会議代表質問の答弁で、マル福は年齢により一律に助成の対象とするものだからマル障とは取り扱いを異にすると、先ほどもそういう答弁がありました。それでは、なぜ、やはり年齢で一律に助成する乳幼児医療費助成は拡充するのか。知事、この点はどうでしょうか。

◯青島知事 ただいまのところ、明確に少子高齢化が進んでおりまして、この状況の中で、子育て家庭に対する経済的支援の充実を図ってまいりますことは、少子化に対する歯どめになるということを考えておりますし、その意味から、十年度に助成対象年齢を一歳引き上げまして、四歳未満といたしたところでございます。

◯曽根委員 年齢により一律に助成の対象とするものであって、それでも乳幼児医療費助成は、子育て家庭への経済的支援の充実で、少子化に歯どめをかけなければならないから、拡充したというわけですね。そうすると、年齢により一律に助成するものだからマル福を切るというのは理由にならないですよね、これは。どうなんでしょうか、知事、もう一度お答えください。

◯青島知事 ご指摘のように、医療費助成問題につきまして、老人医療費のように年齢により一律に助成の対象とするものと、心身障害者医療等のように、障害の重さなど、その個々の状況を踏まえて行うものとでは取り扱いを異にすると、先ほどの質問者のご質問にもそのようにお答え申し上げました。今回の見直しにおきましても、そうした観点に立ちまして、老人医療費につきましても、乳幼児医療につきましても、そのような経済的な状況などを踏まえまして勘案をしたところでございます。

◯曽根委員 その問題はさっきお聞きして、乳幼児医療費との違いは何かと聞いたら、乳幼児医療費の方は少子化の歯どめのためにやるんだと。では、マル福の方はどうなんだということになるわけですよ。そうすると、また一定年齢による基準だと出てくる。  もう一つお聞きしますけれども、年齢による一律支給のシルバーパス、これは現行制度どおり守られたわけです。しかし、これを維持しておきながら、マル福は大後退というのも整合性がないと思うんです。今、少子化の方はいろいろお話しになりましたが、このシルバーというのは、高齢者を対象としている点でも、それから一定の年齢が来れば大体一律にもらえるという点でも、マル福と全く共通した要素を持っている福祉の制度です。それが片や、これを単に守った、維持したというのではないですね。一たん削減案が出たわけですよ、シルバーも。半分切っちゃおうという話が出たわけですよ。それを知事はわざわざ、いや、もとに戻すんだと知事査定を出されたわけでしょう。ところが、マル福は、削減は少し縮まったかもしれないが、しかし、削減のままだ。この差は一体どこから出てくるんですか。一定年齢だけじゃ説明つかないじゃないですか。知事、答えてください。

◯青島知事 シルバーパスにつきましては、高齢者が社会参加をする上で大変重要な足でございまして、大変利便性も高く、一般の方々に十分に利用いただいているところでございます。しかしながら、財政健全化の上から、聖域を設けずにすべての施策について洗い直し、点検をしていこうというところからその話も出たわけでございまして、いずれにいたしましても、細かく点検をして、必要欠くべからざるものについては重点的に配分し、そうでないものは一律に削減をしていこうという方向で検討したわけでございますが、高齢者の社会参加という意味から利便性の高いシルバーパスにつきまして、これの配布の方法とか、その問題については考える、考慮する必要があるだろう、しかし、この制度自体を温存する必要があるということから考えまして、このような施策にしたわけでございまして、その点もお含みおきいただけると思います。

◯曽根委員 乳幼児医療費助成について聞くと、年齢の問題以外に少子化の歯どめなんだと、シルバーを聞くと、社会参加のための支援なんだと、それぞれ意義はおっしゃるんです。では、マル福の削減というのはこの年齢による制限でもって、今回はそういうものは、マル障のように個々の状況に応じて行う施策とは区別するんだという理屈では、このシルバーや乳幼児医療費の助成との関係で説明がつかなくなるじゃないですか。その点を私はお聞きしているので、この点について明確にもう一度、知事、お答えいただきたいんですけれども。

◯青島知事 加齢によって一律に生じる病というようなものに対しまして、個々に違った問題として対応しなければならないという明確な区別があるわけですから、その区別を重視していかなければならないと考えているわけでございます。

◯曽根委員 もう一度お聞きしますよ。一定の年齢に応じて行う施策に、私は三つ挙げました。乳幼児医療費助成、それからシルバーパス、そして今回削減が出ているマル福です。いずれも一定年齢が来れば福祉の対象となるものです。ところが、知事は、一定年齢が来たものと、マル障のように個別の状況に対するものとは違うんだ、だからそれをマル福の削減の一つの理由にしました。だから、私は、シルバーや乳幼児医療費との違いは一体何なんですかと。そちらはそれぞれ意義はお話しになったけれども、マル福削減の意味はこれでは出てこないじゃないですか。もう一度ちゃんと、そのマル福削減がシルバーや乳幼児医療費との関係でどこが違うのか、どこが違うからこれを削ろうというのか、そこを説明してください。

◯渡辺副委員長 知事に申し上げますけれども、明確にひとつ答えてください。

◯青島知事 高齢者を取り巻きます社会経済状況の変化などを踏まえまして、給付と負担の公平及び世代間の公平に配慮いたしまして、所得制限の見直しを行うこととしたものでございます。

◯曽根委員 いや、またそこに戻っちゃうわけですか。要するにお年寄りがいろいろと元気になったとか、先ほどおっしゃっていましたね。他世代との公平性が問題になるんだと。しかし、本当にそういう基準で今回削減するのかということなんですよ。所得基準の決め方、これは私は本当におかしいと思うんです。明快にお答えいただきたいんですが、提案されたマル福の所得基準、これはなぜ住民税非課税基準なんですか。

◯中島高齢者施策推進室長 住民税非課税基準とした考え方でございますが、厚生年金の平均年金額が約二百二十八万円であること、また、老人保健法による食事療養にかかわる標準負担額の減額措置であるとか、あるいは高額療養費制度の自己負担限度額の軽減など、これらの規定を参考にしまして、対象者を区市町村民税非課税の者としたところでございます。

◯曽根委員 いろいろなほかの制度を参考にして決めたということですが、住民税非課税の所得基準というのがどういうものか、本当にわかっているのかというふうに思うんですよ。このパネルを見ていただきたいんですけれども、これは、高齢者とそれから一般世帯のそれぞれの世帯の所得分布をあらわしたものです。下が所得の分布で、それの所得に属する高齢者及び一般世帯の割合が示してあります。この赤い棒グラフのラインというのが一般世帯における所得分布なんです。大体なだらかな山をつくっています。ところが、高齢者は、この黄色い棒グラフですけれども、低所得に物すごく偏っているんですよ。わかりますよね、知事。現在のマル福の所得水準というのはここなんです、青い線です。ですから、高齢者の所得の分布の山のすそがほんのちょっと切られただけなんですよ。ところが、今度新しく設定された基準というのはこの赤いラインですよ。山の頂点なんですよ。この山が真っ二つにされちゃうんですよ。こんな制度の改悪って今までありませんよ。高齢者のこの所得分布の広い山の中の一番頂点をばっさり削って、ここから下は受けられるが、ここから上はだめだと。このラインの線上に物すごくたくさんのお年寄りがいるわけですよ。ちょっと一万円違っただけでも、受けられたり受けられなかったりしちゃうわけですよ。私は大混乱が起きると思うんですよ、こんな基準をつくったら。  ほかにもいろいろ基準があるわけですよね。例えば、住民税の均等割のラインですね。そういう検討はされたんですか。均等割の課税ラインのところという検討はされたんですか。

◯中島高齢者施策推進室長 均等割の部分につきましても、やはり今申し上げましたとおり、平均年金額が約二百二十八万であるということなど、あるいは老人保健法による各種の減額規定が区市町民税非課税の者を対象としているということから、判断をさせていただいたところでございます。

◯曽根委員 均等割でも負担できる能力があるというわけですか。本当に冷たいと思いますよ。均等割だって、均等割のラインというのはこの所得分布の中には乗りにくいと思いますが、大体ここの少し下ですよ。この青い現在のラインよりもずっとこっちに近いところです。  しかし、もう一つ、全国的に見て、老人医療費助成をやっている県や自治体が多くとっているのは、老齢福祉年金のラインなんですよ。それは東京都が今やっている所得基準よりも少し上ですけれども、近いところにあります。大体この辺が全国的に見れば例が多いんですよ。それを東京都は今回こっちに持ってくると。老齢年金のラインも均等割のラインも全部越えて、お年寄りの世帯が一番多いところに線を持ってくるわけですよ。こんな理不尽がありますか。知事、これは公平だと思いますか、こういうやり方が。ここから上はだめ、ここから下だけ受けられる、ここから上は全部だめということなんですよ。どうですか、これで公平ですか。ちょっと知事に聞いているんだ。どう思いますか、知事。

◯青島知事 いずれにいたしましても、いずれかの場所に基準を設けて検討していかなければならないということでございまして、平均年金額が約二百二十八万円であることや、その他の基準額に相当して検討したわけでございますので、高いか安いかの問題につきましては、諸経済事情などを勘案いたしまして、いずれかの点で決めなければならないことであろうかと考えております。

◯曽根委員 知事は経済性でどこかのラインを引かなければならないんだと。どこにラインを引くかはその後の問題だというようなお話ですが、とんでもないことです。  九六年度版の厚生白書、ここにこういう記述があります。この高齢者の所得分布について分析して、とにかく高齢者世帯というのは所得の低い層の割合が非常に高い、持てる層と持たざる者の格差が大きいんだ、したがって、高齢者の負担を考える場合には、ほかの世代よりも──つまり一般世帯のようになだらかな山じゃないから、きめ細かな配慮が必要になるというふうに厚生省も指摘しているんですよ。きめ細かな配慮どころか、最も配慮のない、山の頂上に線を引くという、やってはならない方法をとっているじゃないですか。これでも、どこに線を引くかは二の次の問題なんですか、知事。こういうのが配慮あるやり方だといえるんですかね、どうなんでしょう。

◯青島知事 住民税非課税というのが一定の水準というふうに私どもは考えまして、そのようにしたわけでございます。

◯曽根委員 いろいろ聞いても、ほかの基準と、では住民税非課税基準の方がすぐれた基準として機能するんだという理由を答えられないじゃないですか。まともに答えてないですよ。要するに今回の所得制限強化というのは、高齢者の生活の実態も、それからマル福の制度の大事な趣旨も、全く顧みないというやり方じゃないですか。そのために行政的に真っ二つに線を引く、こういう所得基準を実施したら、私は大変な混乱が起きると思います。例えば、本当は働きたいけれども、ちょっと働いたらマル福はもらえなくなるからやめておこう、そういうことがどんどん起きてきますよ、これでは。こんな所得基準強化は、今からでも遅くない、再検討するべきじゃないですか。

◯中島高齢者施策推進室長 私ども、老人医療費助成制度の見直しをする際に、給付における負担と公平、特に世代間の公平というのがあろうかということを考えておりました。経済的に自立している高齢者が、無料または低額の負担のサービスを受けることで、給付と負担のバランスが失われるということで、逆に、この老人医療費助成制度の発足時に比べまして、若い世代が相対的に減っている、逆に高齢者がふえている、そういう状況の中で、ただいま申し上げました負担と給付のバランスを世代間でどういうふうにとるのか、こういう判断の中で、ただいまご提案申し上げている住民税非課税の者、ここに着目して、者とする、こういう所得基準を設定させていただいた、こういうことでございまして、今後のいろいろな老人福祉施策、高齢者福祉施策を再構築していく中で、ある一つの判断として必要である、このように考えているところでございます。

◯曽根委員 中島さん、今、無料もしくは低額な負担なんだ、マル福の受けられる人は、そうおっしゃったけれども、とんでもない話ですよ。今マル福だって大変なんです、マル福受けている人だって。それが全部制度が外されて、野放しにされたらどうなるか。通院だって月二万円ですよ。年間、月二十二万円程度の年金収入で。こんなひどい話がありますか。  今、全国でいろいろと老人医療費助成やっていますけれども、住民税非課税ラインというのは、他県の老人医療費助成制度と比べて最も厳しい所得制限になるんですよ。ちなみに、新潟県、富山県、仙台市、千葉市、川崎市、ここは現在所得制限なしでやっています。  老人医療費助成制度は、東京が先駆けて導入し、全国に広がった制度です。全国に誇るべき東京の福祉水準の代表例の一つじゃありませんか。都が独自の老人医療費助成制度、このマル福を導入しようとしたときは、国が簡単に認めなかったんですよ。それを粘り強い交渉をして、例えば後払いでいいじゃないかとか、いろいろ厚生省は文句いったけれども、ついに国に認めさせて、二十九年前の一九六九年に実現にやっとこぎつけたものです。マル福というのは、こういう先人たちの努力の上にかち取られた、そして継続されてきたものであります。それが全国で一番厳しい所得水準まで後退させようというのは、そのことにこそ多くの都民が胸を痛め、また、私たちだけではなく、都議会の各会派の方も共通して、現行水準維持の声を上げているのは当然だと思うのです。  知事、都民の声、それから都議会の共通の声にきちんと答えるという点で、もう一度お聞きしますが、先ほど、一定のラインを引かなきゃならないんだと、それはある意味でどこでもいいようないい方をされましたが、こんなラインの引き方があるかという声にどうお答えになりますか。

◯青島知事 住民税非課税をラインとするというのは一定の理由のあることだと考えます。ということは、憲法で保障されております最低限の文化生活を営むということが基準になってつくられたものでございますから、それを基準にすることも一つの理屈であろうかと考えます。高齢化の進展に伴いまして、介護基盤整備の必要性も高まってまいりますし、給付と負担において、他の世代との公平を欠くという問題が生じないようにという配慮からそのようにしたわけでございまして、ご理解いただけるものと考えております。

◯曽根委員 知事は、都民のお年寄りの方の医療の負担の重さ、生活実態、そういうものを全くわかっていません。都議会で何で皆が声をそろえてこの制度は必要だといっているのか、そのことも全くわかっていない。マル福は大体現行どおり継続しても、向こう五年間必要な予算はふえないんですよ。来年度あと十九億円予算をつけるだけで、現行制度が維持できるわけです。マル福を後退させる理由は全くありません。予算資料にも載っているように、財源的に見ても十分に可能なんです。この点は今都議会で引き続き私たちが追及していきますけれども、知事のこの点での反省と、改めてこの制度の削減の見直しを求めておきたいと思うのです。  さて、次の問題ですが、浪費的な財政構造にきちんとメスを入れるという問題について、質問を何点かさせていただきます。  日本共産党は、政府も都も、財政の改革とか健全化とかを口実にして、福祉には冷たく切り下げのメスを入れながら、公共投資の莫大な浪費は温存されているということを究明してきました。日本の公共投資というのは、社会保障費の約二倍以上、五十兆円と、異常にふくらみ過ぎております。これがまた地方財政をもゆがめてきました。  最近、ジャーナリストもこの問題をよく取り上げております。例えばことしの一月十日付の日経の社説を見ますと、「公共浪費生む土建大国に決別を」という見出しで、「日本の公共投資は世界でも突出して多い。国内総生産(GDP)に占める比率は六、七%台で、欧米主要国の三倍程度にもなっている。」と、私たちと同じ指摘をしております。また、日本の社会資本はまだ不足しているという議論があるが、しかし、欧米の三倍もの投資をずっとこの間続けてきて、なお不足というのは、その非効率性こそが問われるべきであるとも書いております。そして、地方の問題としては、地方のための公共事業というのは俗説であり、むしろ過度の公共事業依存は地方経済の自立を阻む弊害が大きいとも指摘しています。やはりこれは良識だと思うんです。  とりわけ東京都は、日本一豊かな財政をふんだんに公共事業につぎ込んできました。例えば首都高速道路公団への無利子の貸し付け、全国の豪華庁舎の先駆けとなったこの巨大な豪華都庁舎の建設、また、その跡地の東京国際フォーラムの建設など、箱物といわれる巨大公共施設、また、最大のむだ遣いである臨海副都心開発など、もっぱら大型開発優先、土木優先でやってきました。  鈴木前都政の最後には、かつて予算の二割以下だった土木費が三割近くになってしまい、逆に、三割だった福祉、教育費が二割程度に逆転するという事態も起こりました。また、この投資事業の拡大が、バブル崩壊後も、多い年は一兆円規模の起債による借金を繰り返して財政危機を深刻化させてきたものです。  知事にお聞きします。このような国に追随した箱物行政とか大手ゼネコンへのばらまき投資のような財政運営、これは根本的に改めていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

◯青島知事 社会経済状況によりましては、投資的な経費を増額し、さまざまな建設工事を進め、あるいは公共工事を進め、景気浮揚に役立てるというようなことも必要な時期もあったかもしれません。しかし、今回のように財政危機が叫ばれている折からは、投資的経費をでき得る限り削減し、福祉、医療の方に重点的に回していくことが都民の要求であろうということから、私どもはそういうことで転換をしてきたわけでございますが、そのまま放置もできない状態にございますので、それも維持管理していくことも非常に重要なことかとも考えております。

◯曽根委員 最後におっしゃったことの意味はよくわかりませんが、少なくとも前半おっしゃった、やはりこの経済状況のもとで、都民の暮らし、また営業も厳しいという中で、やはり福祉、教育にシフトしていかなければならないというお考えは、そのとおりだと思います。それがまた投資的経費の削減で本予算にあらわれたというふうに、先日来、知事はおっしゃっているわけですが、確かに予算案では、投資的経費は、九六年度対比で約三割削減されました。臨海開発事業なども一部コスト縮減が図られるなど、一定の手直しが行われた部分も確かにあります。我が党の主張を取り入れざるを得なくなったのは間違いないところだと思うのです。  しかし、投資的経費削減の中身には、まだまだ重大な問題が残されています。何よりも、削減の矛先が、都営住宅の建設とか生活道路整備など、生活密着型の公共事業に専ら向けられていることです。  例えば都営住宅の建設は、この二年間で、建てかえも含めて、五千八百戸から四千戸へ四割近く減らされようとしています。しかし、都営住宅というのは、都民要望もまだまだ大変強いですし、阪神大震災の経験から見ても、また人口流出の歯どめとしても、大都市政策として今後も重要であることなど、引き続き公営住宅は都民にとって不可欠な施策で、拡充こそ求められていると思うのです。  また、中小企業の受注率がやはり非常に高い分野だという点でも、今日不況にあえぐ建設業関連の中小企業の支援による景気対策としても、この都営住宅建設は極めて有効な事業じゃないかと思うのですが、それを一番削るというのは、削る方向が間違っていると思うのです。  もう一つは、大型開発などの浪費的経費が今後また拡大していく仕組みが温存されていることであります。例えば臨海開発は、これからさらに二兆円近い都財政投入が始まっていこうとしています。私は、投資的経費のむだ遣いをなくすという観点から、緊急な課題として、一つは公共工事のコスト削減問題、それから、財政悪化の要因となってきた単独費問題、及び最大のむだ遣い、臨海開発問題などに絞って質問をしていきたいと思います。  まず、公共工事のコスト削減についてお聞きしたいのですが、我が党は、昨年の行財政改革基本問題特別委員会でも、豪華過ぎる大型施設の代表例として東京国際フォーラムを挙げまして、財務局のコスト見直しの方針に照らして、吹き抜け空間が多いとか、華美な建材とか、必要以上に費用をかける設計を取り上げ、建築設計の抜本的改善によるコスト削減を求めてまいりました。  それから、土木の分野としては、道路橋の問題を昨年のこの特別委員会で取り上げたところです。多摩川の中流域で最近建設中の道路橋がたくさんありますけれども、このうち、アーチ橋としてつくられている多摩水道橋と、斜張橋という、最近新しく盛んにつくられているつり橋形式の斜張橋の府中四谷橋を比べて、余りにも価格に差があることを指摘いたしました。どちらも往復四車線の道路橋なのに、多摩水道橋は、三百六十メートルの長さで約九十億円、一メートル当たり二千五百十万円かかる予定なのに対し、府中四谷橋は、長さ四百四十六メートルで百五十億円、一メートル当たり三千三百六十万円かかっています。どちらも同じ四車線の道路橋でありながら、設計の違い、主には、つり橋形式かどうかということで三四%、価格に差が生まれている。つり橋構造にすると、三割も割高となってしまうわけなんです。これが府中四谷橋で、恐らく今都内でつくっているもので最大の斜張橋、支柱の間が二百六十メートルもあいているというデザインになっていますが、最大のものではないかと思います。  知事、公共工事でこれだけのコストの差が現実にあるわけです。この特別委員会でも、設計段階から工夫すれば、コストはかなり下げられるということも明らかにしてまいりました。バブル当時計画された橋にはかなり凝ったデザインがあって、こういう斜張橋があちこちでつくられています。技術的にも相当高いかもしれませんが、しかし、一つの橋で百億円を超えるということや、この斜張橋のワイヤー一本でも数千万円、場合によっては億の単位になるとすれば、やはり今日の都財政のもとでは、こういうものについては設計の段階から慎重な検討が必要だというふうに思うのですが、知事のお考えはいかがでしょうか──知事にお答えいただきたいのです。

◯青島知事 橋梁が支柱式かあるいはつり橋式かということは、設計の意図としては、あるいは道路の幅等において基準が設けられ、あるいは合理的につくられたものだろうと予測はいたしますが、細かいことにつきましては存じ上げておりませんので、関係局長から答弁をさせます。

◯佐藤建設局長 お話にありました多摩川中流部の橋梁は、学識経験者等の意見も踏まえ、地域の景観形成としての役割や河川の治水対策との整合性などに配慮し、事業費を含め、総合的に判断して、形式や橋脚の配置を決定しているものであります。

◯曽根委員 そういうふうにお決めになる、学識経験者の意見を聞くとかいうことを私たちは否定するものではありません。当然だと思いますが、ただ、こういう時代の中で、やはり非常にお金がかかる。私も調べてびっくりしたのですが、一つの橋で百億を超えるというものですから、当然、そこにはコストの問題は意識されていいのではないかと思うわけです。  ところが、その後、私たち引き続き調査をしてみて、この道路橋だけが、つまり、府中四谷橋だけが割高なのではないということがわかったのです。今整備している多摩中流の七つの道路橋は、いずれも四百メートル前後あります。  ちょっとパネルを持ってきたのですが、(パネルを示す)主なもので七つ、今かけている、もしくは最近完成しました。これはいずれも四百メートル前後あるのですが、このうち、多摩都市モノレールと道路の二階建てになっている立日橋がたくさんの橋脚を持っている以外は、残る主な橋、六つの橋は、いずれも二本の橋脚で支えられています。  少し調べてみましたが、多摩川のような、河川敷も含めて三百五十から四百メートルのクラスの橋をつくるとき、コスト問題で一番影響するのは、橋脚を何本立てるかなんですね。この場合は、素人が考えるのと逆で、橋脚が少ないほど割高になるということらしいのです。  その理由は、橋脚が二本しかないと、当然支柱の間が大変長くなります。この真ん中の長さの二乗に比例して橋げたの強度が必要になると。したがって、支柱間の長さが二倍になると、強度は四倍必要になる、支柱の間が三倍になると、九倍の強度が必要になる。当然構造も非常に複雑になり、使う鋼材の量も多くなる。また重さが重くなりますから、また強度が必要になる、こういう関係になっているんだそうです。コストも当然比例して増額します。したがって、橋脚を減らしても、二本足構造の方が割高にならざるを得ないということなんです。  専門家にお聞きしますと、橋をかけるときまず考えるのは、足が何本立てられるのかと。二本よりは三本、三本よりは四本がはるかにコストが下がるという話がありました。普通の欄干式の橋よりも、こういう跳梁橋といいますか、つり橋の方がやはり割高になってしまう。そうすると、今六つの橋、これはすべて二本足ですから、六つの橋すべてが、最初からいずれも割高な設計だったということになるんじゃないかと思うのです。  それで、この六つの橋について、橋をかける場所の環境とかその他を考慮すれば、必ずしも二本足でなくても立てられたんじゃないか、わざわざ押しなべて割高になる二本足でそろえたのはなぜなのか、橋脚をふやしてコストを下げる工夫はできなかったんだろうかというふうに、もうこれはつくっているので、今から過去のことをいうのもあれですけれども、今後の教訓にするためには、その点を考えてみる必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

◯佐藤建設局長 一般的にはお話のとおりであります。ですが、橋というのは、古来隅田川の橋をごらんいただいても、あるいは、よくいわれる日本橋を見ていただいても、やはりその地域の文化とか経済力とか、そういうものを象徴するものであります。  釈迦に説法とは思いますけれども、橋の形式やデザインは、おっしゃられる事業費とともに、構造的な美しさや歩行空間の充実、あるいは河川空間の調和など、先ほども申し上げました、地域の景観形成としての役割をも踏まえ決定するものであります。そういう意味では、そのときの時代を背景にして、百年後まで残る橋をということで決定したものであります。

◯曽根委員 そういった検討は私も当然だと思うのです。デザインも大事だし、自然環境との調和、それから、当然ながら、川の流れをせきとめるような構造にしてはならないということもあるでしょう。しかし問題は、その上で、建設コスト、これがどれだけのウエートで検討されたのかということなんですよね。  例えば九二年につくられた東京都総合実施計画という本がありますが、この中に、多摩中流域の橋梁ということでイラストが載っているんですよ。九二年ですから、今から六年前。そのイラストを見ますと、第二関戸橋、つまり府中四谷橋ですよね、今の名前で。このイメージ図が載っていまして、これはちゃんと斜張橋で絵がかいてあるんです。設計段階のはるか前からなぜか斜張橋の絵がかいてあって、もうこのときからデザインが決まっていたのかなという感じなんですね。したがって、私は、設計のはるか前から、ここはもう斜張橋でいくよというように決めるようなやり方、これはやはり見直していく必要があるだろうと思うんですね。その自然環境をよく調べた上での、そして同時に、もちろんデザインとかそういうことも考えるでしょうが、やはりできるだけ適切なコストでつくっていくということが工夫されてしかるべきではないかというふうに思います。  自然保護という点でも、実をいいますと、この斜張橋で二本で支えるというために、この写真ではわからないのですけれども、この支柱に物すごい重さがかかる。したがって、この支柱の下は、コンクリートの大きな塊が土の中に埋まっているわけです。それをつくるために、この足の下というのは、直径二十メートルぐらいで掘り返さなければならないんですね。ですから、一見自然を守っているように見えながら、こういう二本足の橋というのは、足元を相当傷めているわけです。そういう点も配慮していく必要があるのではないかということを申し上げておきたい。  こういう大型の橋の設計に当たっては、専門家に委託することが多いと思うのですが、その段階で比較設計というのが出て、東京都が検討する上でのいろいろな素材が出てくる。デザインとか費用なども出てくると思います。それを比較考量、検討を東京都はやっていると思うんです。この段階で、とにかくデザインのよいものをというのが大勢だったのではないかと思うのですが、今後の橋梁の建設に当たっては、橋のデザインや個性は、適切なコストの範囲の中で選択するという観点を貫く必要があると思うのですが、いかがでしょうか。

◯佐藤建設局長 現在計画中の橋梁につきましても、地域のランドマークとしての役割等に配慮するとともに、引き続き、コストの縮減に努力してまいります。

◯曽根委員 私、東京都の仕事もよく受けている設計の専門家にお聞きしたのですが、少なくとも二年前までは、経済コストより、金に余り糸目はつけないで、デザインと景観を重視するんだというのが東京都の注文だったと、それが業界の常識だったというふうにはっきり述べておられました。今後の橋梁については、こういうやり方はきっぱりとやめるべきだというふうに申し上げておきたい。(「できないよ、そんなこと。金がないんだから」と呼ぶ者あり)本当、そうなんですよね。  知事にお聞きしますが、国でさえ一〇%のコスト縮減を打ち出しております。土木分野も、橋などの例を見ても、コスト縮減に努力すれば、建設局が掲げているような三・一%の縮減などでとどまるはずがないと私は思うのです。財務局は公共建築物で二割の縮減を行い、下水道局も、来年度から四年間で一八%コストを下げるという計画だそうです。各局とも取り組んできているわけですから、土木工事でも大幅なコスト縮減をすべきではないかと思いますが、知事のご意見をいただきたいと思います。

◯佐藤建設局長 都の土木事業につきましては、建設局が関係局を集めてコスト縮減を進めていますので、私からお答えを申し上げます。  建設局では、昨年十二月に策定いたしました建設コスト縮減に関する行動計画において、十年度末時点で三・一%の縮減を図ることとしました。これは、道路舗装における再生材の利用拡大や、コンクリート構造物における工場製品の活用など、私ども発注者自身の努力により実現ができる直接的な取り組みを積み上げたものであります。  なお、お話の中にありました国の一〇%縮減というのは、工事の平準化など間接的な効果や、資機材の流通機構の改善など民間の取り組みも含めて、十一年度末の目標を設定したものであります。

◯曽根委員 いろいろおっしゃいましたけれども、実際に三割も割高なものがあるわけですから、建築と足並みをそろえて、一〇%、二〇%とコストを見直すということが必要だと思います。  さて、次に、浪費的な投資経費の元凶である単独事業にメスを入れる問題について質問したいと思うのです。  とにかくゼネコン奉仕型の公共事業が全国にばらまかれて、事業を担う地方自治体の財政をも圧迫してきました。その中で東京都は、国の補助がつかないまま、自前の財政で事業を行う単独事業が異常に多いわけです。都は投資的経費を減らしたといいますが、実は単独事業はそれほど減っておらず、バブル経済の以前のレベルから見ても、まだ一・五倍の単独事業を抱えております。ほかの地方自治体と比べても、東京都の単独費の割合は二倍近いものです。東京都の単独事業が特に多いのは、何といっても、臨海開発など巨大開発と、それから幹線道路事業が最大の要因となっているわけです。  東京都は、鈴木都政になってから二十年余り、国の方針に追随して、全国の先頭に立って単独費をふやしてきました。それでも八五年以前は公共費よりも単独費は少なかったのですが、バブルの中で五割を超えてどんどん拡大し、現在九割近くまで単独事業というふうになってしまいました。  知事、二年前の七月に、あなたが知事になって最初の財政白書で、財政状況悪化の原因として、都税収入が近年大きく減少したにもかかわらず、歳出規模は普通建設事業費を積極的に伸ばすなど、拡大傾向にあったことに原因があるとしまして、とりわけ単独事業費は、この十年間で五倍以上の圧倒的な伸びを示していると明確に分析をしています。この視点から見れば、伸び過ぎた単独費の削減はまだ不十分というふうにいわざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。

◯青島知事 従来のバブル時期のように、自然増収が二五%もあるというような状況の中とまるで状況が違ってまいりましたので、同じように投資的経費を用いまして道路あるいは橋梁をつくるにいたしましても、大いに縮減をしていかなければならないとは思います。しかしながら、東京都を生活都市として維持してまいりますためには、橋梁の建設も道路の拡幅も、道路交通渋滞を避けたり、あるいは震災対策などということも勘案しなければなりませんので、危険回避のほか、産業活性化なども含めまして、交通需要の最近の増大も勘案しなければなりませんので、必要最小限のものはつくってまいらなければならないということでございますので、努めて建設していかなければならないものにつきましては、建設をすべきであろうと考えております。

◯曽根委員 知事がおっしゃったようなことは、私たち否定していないんですよ。橋も必要だし道路も必要なんですよ。それから防災の対策も必要です。ただ、やり方が問題なんですよ。  今、必要最小限のものは建設していかなければならない、都民生活に必要なものと、それは私だって大賛成ですよ。しかし、そういいながら、東京都は、普通の自治体ならしり込みするような、国の補助がつかない大型の道路計画もどんどん進めてきました。その結果、都の道路事業の七割を大型幹線道路が占めて、そのまた八五%が、国の補助なしの都単独事業なんです。こんなやり方が地方自治体の公共事業の当たり前の姿ではないはずだと思うんですよね。知事がいうところの着実な推進の、必要最小限の建設の結果が、結局国に追随した公共事業の野方図な拡大、幹線道路などの単独費の拡大、都債の乱発による借金財政の引き金に今までなってきているわけです。都自身が、これは財政白書でも認めていることです。したがって、メスを入れるべきは、必要最小限だということでいくのだったら、こういう事業の中身をよく見直していかなきゃならない。ゼネコン奉仕の単独事業の構造に、やはりこの際しっかりメスを入れてもらいたいと思うのです。  私、本来の公共事業のあり方に立ち戻るということが大事だと思うんですね。国の財政が苦しいといって、単独事業を都にどんどんどんどん押しつけてきた、こういうのを、はい、そうですかと受け取って、自分の財政が大変だといいながら、都費の投入を際限なく続けるというやり方は、もうやめるべきだというふうに思います。  我が党は、幹線道路の整備についても、大型道路、幹線道路の整備一般を否定してきたわけではありません。問題は、内容とやり方です。今後予定されている幹線道路計画は多くの問題もあるし、また、余りにも過大過ぎるんじゃないかということを指摘しているわけです。  そこで、具体的な例として、調布保谷線の道路の問題を取り上げたいと思います。  調布保谷線は、もともと十八メートルで計画された道路です。その後、一部が二十五メートルに拡幅されているところもありますが、最近三十六メートル道路に変更されたのですが、どういう理由によって、また、どんな新しい道路計画に変更されたのでしょうか。

◯佐藤建設局長 いわゆる多摩の南北道路、これは、多摩の市長さん、あるいは住民の多くの方々の悲願でありまして、その中で調布保谷線というのは、今最も急がれている道路であります。これを幹線道路として整備し、住環境を守りながら交通渋滞を解消するというためには、どうしても四車線道路にする必要があります。  で、四車線道路ということになりますと、住環境を改善し、守り、増進する上からも、四車線十六メートルの両側に、幅十メートルの環境施設帯を設けて、緑豊かな快適な歩行者空間をつくり出す必要があります。そういうことで、質の高い道路として整備するという考え方に基づいているものであります。

◯曽根委員 あたかも往復四車線の道路の両わきに、幅十メートルのゆったりとした歩行者の空間が置かれるかのような話に聞こえるのですけれども、実は違うんですよね。  このパネルをごらんいただきたいのですが、都がつくった調布保谷線の道路の計画の横断面を拡大したものです。両側の十メートルずつの環境施設帯のうち、実は歩道というのはわずかなもので、ここにも実は車線が入って車が入ってくるわけです。十メートル全部歩行者が使えるわけじゃないということなんですね。そうすると、実際は道路全体としては六車線になる。しかも、両側からの小さい道路とは、この副道で接続する。  下の図をごらんいただきたい。これは南北道路ですけれども、この図では、下から入ってくる神代植物公園からの道とか、そういう道路は、本道に接続しないで、この副道に接続をするようになっています。したがって、中央の四車線は、大体五百メートルごとにしか交差点をつくらずに、できるだけノンストップで走れるような、通過車両の交通を確保する。地元の生活の車は主に副道を利用させるという振り分けになっているそうです。  なぜこんな道路が計画されたのか、いみじくも道路構造が語っていると思うんですね。つまり、大量の自動車が流れ込むということなんです。都の計画で、この路線は、都市空間の確保を基本目標として、都市間の相互連携を強化し、自立性の向上を図るために、都市の骨格を形成する南北方向、東西方向の幹線道路をつくる、この一つとして位置づけられていますが、北は川越街道、南は神奈川県境までの広域道路なんです。これがこの道路の基本的性格なんですよ。もともとの域内の道路から大型幹線道路へと質的に変化しているのです。  建設局長は、先日の本会議で、道路整備が区市町村会や議会から強く要請されていると述べておられましたが、この調布保谷線については、はっきりいって、地元が要望したというよりは、都がこういう計画変更を持っていって、押しつけたという格好じゃないですか。いかがでしょうか。

◯佐藤建設局長 若干失礼の段に及ぶかもしれませんけれども、前段のお話は、曽根先生とも思われないアンフェアなおっしゃりようであります。六車線道路ではありません。四車線でありますけれども、沿道に駐車場があったり、商売をやっていたり、そういう方は、幅十メートルの歩道あるいは緑道があったのでは商売に差し支える、荷物の揚げおろしができない、あるいは駐車場に入れない、そういうことで、地域の人がご要望する場合には、そこにサービス道路を設置いたしますよという絵を、一般的、標準的な形で出すというのは、我々事業者としては極めて心外であります。  それから、後段のお話でありますけれども、何回も申し上げておりますように、道路というのは都市活動を支える最も基本的な都市施設でありまして、今までも、機会あるごとに多くの機関から早期整備を要望されてきました。特に昨今、公共事業費の削減を受けて危機感を強めた区長会、市長会、町村会などが整備促進を強く要望しているところであります。調布保谷線もその中の一つであります。

◯曽根委員 いろいろおっしゃったけれども、副道にやはり車は通るわけですね。しかも、そこに、営業をやったり、生活している人の車を入れなければならないというのは、中央の車線は通過交通を確保するためだというのは、この構造を見ても、明らかだと思うんですよ。  それから、今も、市長さんの悲願であるとか、町村会から要請を受けていて、この道路もその一つだというお話がありましたが、しかし、この道路計画の変更が浮上した直後の九三年九月の三鷹の市議会で市長が、この計画変更について、こういうふうに答弁しているんです。  実は、平成五年七月二十三日に東京都が来庁した。非公式というおふれだったから担当の方で接触したが、そのとき、三・三・六号線、つまり、今の調布保谷線ですが、三・三・六号線の変更理由などの説明があったと。その内容は、高環境、高品質の道路を目指すということで、いろいろ考えた内容になっており、今定まっている計画幅員が二十五メートルから三十六メートルに変更されるものだというふうに述べています。明らかに地元としては寝耳に水で、高品質、高環境だといって、都から持ち込まれたということではありませんか。これ、市議会の市長の答弁なんです。  これは、国の動きとも連動しております。都の長期計画も、九〇年の段階では、道路について、渋滞解消、高速性、快適性などを強調していたんですが、「とうきょうプラン '95」、これは青島知事のもとでつくられましたが、ここでは、都市活動を支えていくために、四車線や道幅の広い二車線道路を中心とした都市の骨格を形成する道路網を整備するというように、表現が変わったわけです。この中で、九〇年には緊急整備路線に入っていなかった調布保谷線が、突然高品質の道路として「とうきょうプラン '95」に入ってくる、計画変更をされたわけです。国の道路整備十一次五カ年計画を境に、東京都の道路政策も変化しているのだと思うんです。  では、地元住民がどう思っているか、ここが大事な点です。調布でも、三鷹でも、大きな住民運動が起きています。その声は、現在の四車線で十分だというものなんですよ。よく南北方向の道路が渋滞しているといいますけれども、三鷹市の調査でも、自動車の交通量はこの何年か横ばいで、大きな渋滞は余りないと。土日に深大寺公園の利用者で少し込むけれども、これは個別の対策で解決できるというふうに思うんです。全体に交差点を広げる「すいすいプラン」──これは東京都が進めています──とか、バス停のところを道路から少しえぐってとめるバスベイ方式などを取り入れることで、渋滞問題は十分解決できるということなんです。  これに比べて、三十六メートルの道路はどうか。調布保谷線について都計審で審議したとき、私と同じく、地元選出の議員の方が審議会委員で出席をされていまして、この路線について、多摩地域では三十六メートル幅員の道路というのは生活上なじみがない幅員の道路だと指摘をされ、また、既に決定されていたものが二十四から二十五メートルとか、十八メートルで完成した部分もあるというところで、既に生活圏としての町並みはほぼ完成しているところにこの三十六メートルが出てくるだけに、住民の心配は当然のことながら、大きな反響として出てくるというふうにいわれたとも聞いています。私は、この方の指摘のとおりだと思うんです。  何しろ、道路のこっち側から向こう側に渡るのが大変なんですよ、五百メートル行かないと交差点がないんですから。学校の前にこの道路が通る場所はどうするか、道路向こうは学区域を変更しなければならないとか、いわば大きな堀に阻まれて、町が真っ二つに割られたようになってしまう。しかも、もちろん、地域外から自動車専用道路並みの流れで通過交通がふやされるので、新たな環境破壊にも悩まなければなりません。地域の住民がこぞって反対の声を上げているのは、私は当然ではないかと思うんです。  今計画されている、わずか六・一キロメートルですよね、これで一千百億円の事業費で、一メートル当たり千八百万円。多分その七割から八割が都の負担額になるでしょう。これは中層の都営住宅の一戸当たりの建設費に相当します。これが重い財政負担にもなり、これだけ金をかけるんだったら、福祉の施設とか住宅とか、もっとやることがあるだろうと、地元はみんないっているんですよ。見直すべきではありませんか。

◯佐藤建設局長 東京の道路整備は大変おくれていまして、名古屋とか大阪に比べてもかなりおくれています。おっしゃられるように、大変事業費がかかりますし、その間、関係住民の方々の生活に対して多くの制約を与えることは、我々も十分承知しております。ですが、着実に進めていかないと、東京の活力が失われ、経済基盤が崩壊してしまいます。今後とも、全力を挙げて進めてまいります。    〔「北区から来て、多摩のこと、余計なこというなよ」と呼び、その他発言する者あり〕

◯曽根委員 改めていいますが……    〔発言する者多し〕

◯渡辺副委員長 静粛にしてください。

◯曽根委員 私たちは、幹線道路建設について否定しているわけではありません。(「多摩には格差があるんだから」と呼ぶ者あり)私、北区選出ですけれども、東京都を愛しているから、いっているんですよ。何ですか、多摩とどこが違うんですか。いいですか、この道路一本だけでも、庶民にとっては気の遠くなるような金額がかかるんですよ。しかも、問題なのは、この調布保谷線のような大型幹線道路が、最近次々と計画されていることなんです。同時多発的に進められようとしているんです。  私は、おととしの秋に都市計画審議会委員になりましたが、とにかくそれ以来──まだ一年半ですよ、その間に、圏央道の南浅川ジャンクション及びそれ以南のトンネル計画、八王子南道路、調布保谷線、府中所沢線、新滝山街道など、多摩を中心に次々と超大型の幹線道路計画が決定されました。しかも、その道路の幅員は、いずれも四から六車線で、三十六メートル以上の超大型の、かつてない道路なんです。しかも、それぞれ多くの問題を抱えた道路計画です。  これは財務局長にお聞きしたいんですけれども、都の現在実施中の都市計画道路の残事業費は、合わせると四兆四千億円にもなります。この大半が、今までいってきたように都の負担部分になってしまいます。これほど同時に多くの幹線道路を事業化して抱えるというのは、バブル時代の二の舞ではないか、また、単独費を野方図に押し上げるだけで、都財政にとっても余りにも過大ではないかと思うんですが、いかがですか。

◯西念財務局長 道路についていろいろご指摘をいただきましたが、財源が非常に厳しいわけでございますが、東京における道路そのものは、先ほど来から建設局長がお答え申し上げておりますように、外国の諸都市並びに日本の大都市に比べて非常におくれてございます。  したがいまして、財源の許す限り、道路整備については取り組んでいかなければいけない、特に多摩地域の道路整備については最大の課題であろうと、このように考えてございます。しかしながら、限られた財源、今非常に財源が厳しいわけでございますので、従前のような計画のテンポで事柄は進んでいけないのかなと、このように考えております。

◯曽根委員 そういうことをいっているから、メスを入れられないんですよ。都財政を破綻させてきた原因は、こういう単独費の野方図な拡大だと。後半におっしゃったように、これから道路事業をやるに当たっても、今一遍に計画がスタートしているんですから、本当に極力抑えていかなければならないということを指摘しておきたいと思うのです。  住民の合意も得られていないし、住環境に甚大な影響を与える、しかも都の財政を一層圧迫するこのような道路事業を、財政が皆さん自身が厳しいといっているこのときに、なぜ同時に幾つもやらなければならないのか、住民の反対を押し切ってまで強行しなければならないのか。ここにメスを入れてこそ、都財政の立て直しと都民のための施策が両立できるということを指摘しておきたいと思います。  続いて、最大のむだ遣いの投資、臨海開発について、西田議員が関連質問を行います。(拍手)      ───────────

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