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98年9月8日経済港湾委員会請願審査

東京港の非核証明方式導入の陳情に採択を主張

◯曽根委員 東京港の入港艦船に対する非核証明の提出を求めてほしいという陳情について、何点かお聞きして、また意見も述べたいと思います。  この問題は何度か都議会でも取り上げられましたし、私たちも物をいってきました。整理してみますと、大体二つの側面から論じられてきたと思います。第一には、自治体における平和行政の課題として、当然のことながらこれが大きな課題になってきているという問題です。ここに陳情者の理由も添えられておりますけれども、非核三原則は国是である、しかし、アメリカの政府は、理解するとしながらも在日米軍艦船の核武装については肯定も否定もしないという立場をとっている、また有事の際の持ち込みは否定していないという点から、核の持ち込みについては疑惑、灰色の状態だということから、これの白黒をつけなければならないんだということで、東京都に対してそれを求めてきているわけです。  それから、陳情者は、昨年の九月も含めて最近になって、東京港に「ブルーリッジ」、第七艦隊の旗艦ですけれども、繰り返し寄航している、そこには明確に劣化ウラン弾という、核兵器ほどではもちろんありませんが、人体に湾岸症候群といわれるような影響を及ぼすといわれている放射性の弾丸が積み込まれている、このことが今後公然とした核兵器持ち込みにつながる危惧がありはしないかということも指摘をしているわけです。  さらにいえば、ガイドラインの立法化が今行われようとしておりますので、このことはますます現実問題になってくるだろう。そういう中で、東京都が平成七年に平和アピールを行ったことを高く評価して、この具体的施策として東京港の非核化をぜひやってほしいということだと思います。  平和行政の問題については、前におられる港湾局の方々に聞けることは限られているわけで、聞く場所を変えなければならない問題も多いと思います。ただ、港湾業務によって核持ち込み疑惑の灰色の状況に一石を投じる方法として、ご存じのとおり、非核神戸方式というのがあるわけです。昭和五十年から二十年以上にわたって行われております。  そこで、神戸市が神戸港におけるこの方式を取り始めてからの神戸港への外国艦船の入港状況について、ご存じでしたら、お願いいたします。

◯阿部港営部長 神戸方式と申しますのは、外国艦船の入港の際に非核証明書の提出を求めるというものでございまして、昭和五十年三月の神戸市議会の核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否に関する決議に基づいて実施されているものであります。決議以降の神戸港における外国艦船の入港実績は七カ国延べ十八隻でございます。この中に米国艦船の入港はないと聞いております。

◯曽根委員 米軍の艦船はその後全く寄航しなくなった。それ以前は何度かあったようですが、非常に鮮やかな結果が出ているわけです。少なくとも神戸港においてはこの灰色状態を解決したというふうに、これまでの二十年にわたる結果からいえると思います。  逆にいいますと、米軍にとっては、核武装肯定、否定を避けるということがまさに最高の戦術であって、そのために特定の港がそういう方式をとったときに、もう入港しなくなるということもあえて行うということがこの事態で明らかになったわけです。  そこで、二十年たちまして、最近高知県がこの神戸方式を準用するといいますか、高知新港を開設することを機に、県内すべての港でこの神戸方式を採用するという方針を固めて現在条例策定作業を進めているということです。  私、議会の議事録を取り寄せたんですが、あそこは橋本前首相の弟さんが知事です。高知新港の開設に当たって、平和行政について問うた我が党県会議員の質問に対して、橋本知事は「平和行政という点では、狭い意味では米軍機の低空飛行訓練などに対しまして国に中止を要請したり、抗議をしたりというような行動」を行っていると、「また、もう少し広い範囲で言えば、世界の各国、各地域との国際交流というものも平和的な事業ということに」当たると。狭い意味、広い意味、合わせて平和行政を進めていくという立場を明確にしており、平和を守ることは自治体の基本的役割の一つであるという立場を明確にしているわけです。  兄弟こんなに違うものかと感心もしますが、かつて自衛隊を違憲と断定した答弁を行った我が青島都知事が、最近ガイドラインの問題を聞かれて、記者会見で、これは微妙な問題なのでということであいまいな答弁を繰り返したという姿勢から比べると、ちょっと聞かせてやりたいなという思いです。  この神戸方式を高知が採用したということは、知事が発言しているように、米軍機の低空飛行訓練が墜落事故まで起こしたということが大きな動機になっているんじゃないかと私は思うんです。そういう点では東京にも同じ問題があるわけですから、これは港湾局さんに聞いてもちょっとお答えしようがないでしょうけれども、横田の毎日のように行われている飛行訓練の被害に対する対応、それから東京港における平和の課題にこたえる意味で、世界で唯一首都に外国基地が置かれている東京の港における核兵器持ち込みの危険を抱えているという点で、非核都市宣言はもちろんですけれども、ほかの湾岸都市にも呼びかけて東京港の非核宣言を行うべきだと考えますので、この点を意見としてまず申し上げておきます。  もう一つの論点があると思います。それは港の機能の安全の確保という問題。これは陳情者も二つの理由の一つに挙げております。物流の拠点である、そこに不測の事態が起きれば、都民全体の安全にかかわる、また生活にかかわる問題だという点では、港湾局さんがまさに所管している仕事であります。高知県でもこの点で条例の検討中なんです。高知県には港湾施設管理条例というのがありまして、それを改正することによってこの非核方式ができるんじゃないかということが今検討されております。港の安全を守るという点では、東京港ももちろん共通の使命を持っているわけで、核兵器という最も危険な兵器の持ち込みに関して、現状の灰色状態を解決するために、神戸に続いて高知県でも条例化に踏み切ろうとしているわけですから、東京も物流の拠点ですので、港湾局としてこれらを受けとめて真剣に検討する考えはないかという点でお答えをいただきたいと思います。

◯阿部港営部長 我が国の港湾に入港する艦船はいずれも非核三原則に基づき核を有しないことが前提でありまして、国の責任においてその確認がなされておりますので、東京港において改めて非核証明書の提出を求める必要はないと考えております。

◯曽根委員 今思わず笑いが起こりましたけれども、さっきの説明と同じ文章なんですね。全く一歩も前に進まない。国に任せておけばいいというのは──青島知事を先頭に、米軍基地の返還を今求めているわけです。姿勢の強弱はありますが、横田基地などについてはそこまで来たわけです。しかし、これに比べても極めて消極的だといわざるを得ないし、港の管理者としての安全に対する責任の自覚という点で、高知の例などと比較しますと、これでいいのかなというふうに私は思わざるを得ないわけです。  高知県での条例の改正の動きについて、私もう少し調べたんです。高知の港湾施設管理条例には第三条に、港の管理者が港の使用行為の規制を行うことができるとして、その根拠は「有毒物、爆発物又は爆発しやすいものその他危険のおそれのあるもの等を取り扱う目的をもって港湾施設を使用し又はこれらの物件を積載した船舶をけい留すること」、つまりこれらの危険なものについては規制をできるという条文が、現に条例の中にある。これを非核神戸方式の根拠とすることで今検討されているわけです。  私、東京都の港湾設備条例を調べてみたら、ほぼ同様の内容がありました。ですから、広い意味では、爆発などの危険のあるもの、係留し、もしくは係留しようとする船舶の入港に対しては、使用禁止の措置がとれるわけです。ここに適切な若干の改正を行うだけで非核神戸方式はできるんだというのが高知県の見解ですし、我々もそれは非常に妥当なものだと思うんです。  そこで、港湾局長にお聞きしたいんですが、今ガイドラインが動き出そうとしている、ガイドラインが動き出せば、米国艦船の入港が日常化するおそれは本当に十分にあると私は思うんです。そういう危険を前にして、商業港としての本来の姿を守るために何らかの措置、今は非核神戸方式が提起されているわけですが、港湾局として何らかの措置を安全確保のためにとる、もしくは動きを示すという考えはとれないものでしょうか。局長、いかがでしょう。

◯今沢港湾局長 お話にございましたように、東京港に入港する一般の船舶あるいは東京港の安全を守るのは私ども港湾管理者としての当然の責務であるということは深く認識しております。しかしながら、ご質問にございました、我が国の港湾に入港する艦船の問題につきましては、先ほども担当の部長からご説明申し上げましたが、いずれも非核三原則に基づき核を有しないことが前提でございます。これに関しましては、国の責任において確認も行われているところでございます。  したがいまして、東京港において改めて非核証明書の提出を求める必要はないというふうに考えております。

◯曽根委員 私は、非核宣言や非核神戸方式の導入だけではなくて、いろいろなやり方が考えられるんじゃないか、そこまで広げてお聞きしたんですが、少なくとも非核神戸方式はとらないんだというお話で、大変残念です。港湾局長を先頭にそういう消極姿勢では困ると私は思います。高知では、橋本知事が条例を制定する動きになったのは、その前に県議会での全会一致の決議が上がったことが橋本知事に決断を促したわけです。  私は、当局がなかなか踏み切れない、もしくはまだ検討する気がないというのであれば、議会が動かなきゃならないときかなというふうに思います。高知県議会というのはそんなに共産党が多くないんですが、何でまとまったのかとお聞きしたら、これは地方分権だと。非核三原則というのは国が決めたこと、国是であり、全国民が支持しています。しかし、それを守る手だてを国はとっていない、そういうときに、地元の港にそういう危険があるならば、地元の自治体がそれを守ろうじゃないか、守る手だてをとろうじゃないか、こういう行為に対して、条例化はふさわしくないとか、外務省などが横やりを入れているそうですが、地方分権の精神を何だと思っているんだと、政府のやり方に対して反発も随分あるそうですよ。  そういう意味で、高知の明治以来のといいますか、維新以来の独立独歩の気風というのが今生きているなというふうにも思います。高知の県民、マスコミもこれを高く評価しているわけです。高知新聞に社説が掲げられて、国だけのものではない非核三原則、高知の県民自身で守る手だてをとるのは当然だ、それを邪魔する政府は何なんだというふうな社説も出ているわけです。  私は、こういった点から都議会でも機運を高めていきたいと考えますので、採択をお願いしたいのはやまやまなんですが、残念ながらまだ機は熟していないという事前のお話がありまして、保留ということになるのはやむを得ないかと思いますけれども、港湾局にもお願いをしたいんですが、ぜひ今後も前向きに検討を進めていただきたい。このことを申し上げて、意見表明並びに質問を終わります。

◯川島委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。  本件は、さらに調査研究を要するので、本日のところは保留といたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

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