そねホームへ  はじめ通信目次へ    05勝利めざして

 はじめ通信・05勝利をめざして5-531
「三〇人学級実施へ中教審でも賛成意見が圧倒的。来年度実施へ急速な動き」


●5月10日に開かれた中央教育審議会で、今後の教員配置をどうするか・・つまり今までどおり習熟度別の少人数指導を続けながら教員を加配していくのか、それとも40人の学級定数の改善で少人数学級を実施するのか、重要な課題での論議が行われました。

●今回は、中山文科大臣も三〇人学級の必要性を認める発言をした後だけに、今までほとんどまともに議論されなかった少人数学級の効果について、圧倒的な多数の委員から評価し、推進する意見が出され、東京都横山教育長もメンバーの一人として発言したらしいのですが、少人数学級を否定する発言は、一つも出なかったようです。

●この中教審部会の各委員の発言の要約が、次の部会に資料として提出されHPで公開されましたので、少人数学級を論議した部分をピックアップして紹介します。
 
第9回中央教育審議会義務教育特別部会議事概要

※ この議事概要は、事務局の責任においてとりまとめたものであり、今後変更の可能性があります。
 
1.日時:平成17年5月10日(火曜日)16:00〜18:30
 
2.場所:丸の内東京會舘「ゴールドルーム」(11階)
 
3.議題:

(1)これからの教職員配置等の在り方

(2)教育費総額と教育費各項目の在り方(家計の費用負担を含む)A

(3)その他
 
4.配布資料:

資料1−1 学級編制及び教職員定数について
資料1−2 学校配置に関する資料
資料2 義務教育特別部会(第8回)における主な意見
―教育費総額等の在り方関係―
資料3 今後の開催日程予定
参考資料1 30人学級等の実施に関する資料(片山委員提出資料)
参考資料2 義務教育特別部会(第8回)田村委員提出資料
参考資料3 義務教育特別部会(第1回〜第8回)における主な意見―教育委員会の在り方、国と地方の関係・役割の在り方―
参考資料4 第8回義務教育特別部会における主な意見の概要(速報版)
 
5.出席者

委員:鳥居部会長、木村副部会長、茂木副会長、赤田委員、吾妻委員、阿刀田委員、荒谷委員、井上委員、小川委員、.山委員、梶田委員、片山委員、加藤委員、見城委員、田村委員、土屋委員、角田委員、渡久山委員、藤田委員、増田委員、無藤委員、横山委員、吉野委員、山本(恒)委員

事務局:中山大臣、塩谷副大臣、結城事務次官、近藤文部科学審議官、丸山総括審議官、田中生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、金森私学部長、板東官房審議官、山中初等中等教育局審議官、吉田調査企画課長、前川初等中等教育企画課長、藤原財務課長、常盤教育課程課長、坪田児童生徒課長、高橋総括教育改革官、その他関係官
 
6.議事

・中山大臣の挨拶の後、概ね以下のような意見交換が行われた(○:委員、●:事務局)。
 
これからの教職員配置等の在り方
 
資料1−1の説明

● 平成13 年度からスタートした第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画が平成17年度をもって完成する。7次計画においては、教科等に応じ、20人程度の少人数指導や習熟度別指導を行うなど、きめ細かな指導を行う学校の取組に対する支援として、トータルで、教職員の26,900人の改善増を実施した。
 
● 定数改善計画は昭和33年の義務標準法制定以降、7次にわたる改善を実施してきた。継続的かつ計画的な定数改善により、間断なく教育条件の充実に寄与してきた。
 
● 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本における教員1人当たり児童生徒数(2002年)は小学校で20.3人、中学校で16.2人とOECDの平均、16.6人と14.4人を上回っている。これは韓国、トルコ、メキシコに次ぐ高い数値である。
 
● 公立小中学校においては、現在、40人を上限とする学級編制を基本としている。その上で、きめ細かな学習指導が行えるよう、少人数指導や習熟度別指導が展開できるよう教職員定数を措置している。少人数指導、習熟度別指導は小学校の6割近くで、中学校の8割近くで実施されている。
 
● 一方、40人を下回る学級編制を地方の判断で実施できるよう、所要の制度改正を行い、平成16年度においては、42道府県において少人数学級を導入した(小学校低学年で少人数学級を導入した道府県の数は37、中学校で導入したのは25府県)。
 
● 少人数学級は少人数指導に比べて、生活面で特に高い評価を得ている。
 
● 地方の自由度拡大については、学級編制の弾力化と教職員配置の弾力的運用を行っている。平成16年度の標準法定数は約66万3千人である。これに対し、標準法に対応する配置人員は約67万1千人と、約8千人が標準法を上回って配置されている。さらに補足すると、小中学校の教職員数が72万と標準法定数を6万人上回っているとの主張があるが、この72万には兼務教員がダブルカウントされている点、教育委員会の事務局等勤務者数や海外の日本人学校での勤務者数、さらには休職者数も含まれている点に注意する必要がある。
 
● スクールミーティングにおいては小中学校ともに少人数指導の効果が出ているとの意見がでている。また、地方議会からも30人学級等少人数学級を含む次期改善計画等策定に関する要望が出されている。
 
● 少人数学級を担当する教員6154人のうち、国庫負担の対象となるのは4382名。
 
○ 教育委員会等の事務局に勤務する教員と外国の日本人学校での勤務者の数は。
 
● 約5000人。
 
○ 休職には育児休業と産休は含まれているか。
 
● 含まれていない。休職者数は3000人、育児休業代替の教職員数が1万2000人、産休代替の教職員数が約3000人。これらは標準法定数には含まれないが、国庫負担の対象である。
 
資料1−2の説明

● 児童生徒数は小中学校ともに一貫して減少傾向にあり、今後もゆるやかな減少が見込まれる。学校数は児童生徒数ほどの減少はなく、横ばい。結果として1校当たり児童生徒数はゆるやかに減少している。
 
● 公立小学校における学級数別学校数の経年変化を見てみると、昭和50年代には規模の大きな学校(25学級以上)がかなりのウエイトを占めていたが、最近では規模の小さな学校(11学級以下)が全体の5割を占めている(中学校の場合も同様の傾向が見られるが、規模の大きな学校のウエイトが若干大きくなる。)
 
● 平成11年までは小中学校ともに統廃合による廃校の数は概ね一定で推移していたが、ここ5年間で廃校数は増加傾向にある。過疎地域における学校統合などが廃校の理由に挙げられるが、都心部においても学校規模の縮小に伴い統合が実施される例もある。
 
● 京都市では地元主導により、34小学校が11校に、11中学校が3校に統合された。統合の成果としては、子どもたちの教育環境が改善された、教職員約300人規模に相当する人件費が削減されたことなどが挙げられる(ただし、京都市への直接的財政効果は限定的。)。
 
○ 千代委員から意見書では30人学級が望ましいという意見が述べられている。大変に参考になるのでご覧いただきたい。
 
○ 鳥取県では、教育関係者からの強い要望を受け、小学校1、2年生、中学3年生で30人学級を導入している(町によっては小学校3年生や中学校2年生で導入しているところもある。)私自身の子育てを通じて40人よりは30人のほうが引き締まっているということを経験した。

○ 少人数学級の導入に伴う教員数増加で約10億円の経費が必要となった。鳥取県では職員一律「5%カット」を実施し、そこで浮いた財源を少人数学級に投資することにした。教員の給与も「5%カット」になるが、その分は国庫負担もなかった。その後、総額裁量制の創設により給与抑制による教員数の拡充が可能になり鳥取県にはメリットが生じた。
 
○ 少人数学級については、「不登校傾向が減少した」「小学校から中学校への環境変化に慣れやすくなる」「学力が改善した」「子どもたちの落ち着きが増した」といった意見を市の教育長や市長から聞くことができた。
 
○ 30人学級の実施に伴う教育効果アンケート調査を平成16年10月に実施した。
 
・30人学級になって「とてもよい」「よい」と回答した教員は小学校、中学校ともに9割を超える。

・効果が現れた分野は、小中学校教員からは「発言の回数が多くなった(65.5%)」「音読・英語の会話活動など表現活動の場が増えた(64.8%)」「体験的な活動・実験・実習などで、一人一人の活動量が増えた(69.0%)」「教員に話しかける回数が増えた(60.6%)」といった回答を得た。一方で保護者からは、「『学校が楽しい。』と子どもがいっている(45.5%)」「子どもが、クラスの友だちと仲がよい(44.2%)」「学校の出来事や先生、友だちの話をよくする(44.6%)」「子どもが入学して先生や友だちに早く馴染むことができた(47.6%)」といった回答が寄せられた。

・国語と算数のテストの平均正答率を学級規模別に見た場合、小学校3年生では10人以下の学級の正答率が国語で79.2%、算数で72.2%と最も高かった。小学校6年生になると、必ずしもすべての分野で最高得点を記録したわけではないが、総じて10人以下の学級が高い得点を示した。
 
○ ただし、このような数字だけを根拠に少人数学級を支持することはできない。「子どもは大勢にもまれてたくましくなる」といった考えや、少人数学級では共同行事が行いにくくなるのではないかといった懸念もあると思うが、鳥取県の取組を一つの参考としてお示しさせていただいた。
 
全体討議

○ 来年度から8次計画に入る。40人学級のままでいくのか、何らかの工夫をするのかに問題点を絞って審議をして欲しい。
○ 8次計画では少人数学級編制を改善すべき。7次計画策定の際には、30人学級に要する教員の数は10数万人にのぼり、1兆数千億円の追加予算が必要となり財政的に難しいとの議論が行われた。またそれだけの金額を投入するにふさわしい教育効果があるのかという議論もなされた。これのような議論を経て、より確実な教育効果を狙ったチームティーチングなどの導入が検討されることになった。
 
○ 7次計画における少人数授業が、標準法の改正により、この数年間で教育効果を生み出しているとのデータが蓄積されている。少人数学級は授業作りに向けた教師や学校の工夫の幅を広げる条件を作り出してきた。
 
○ 負担金制度の加配を活用して少人数学級を導入している都道府県・市町村が7割以上であることを考えると、都道府県・市町村の裁量で少人数学級を推進することには無理があり、国が財政的負担を含めて主導的な役割を果たすべき。
 
○ 財政状況の厳しい都道府県・市町村が学級編制の改善を行なう場合に短期講師が採用されるケースが多くみられるが、短期講師による少人数学級は、講師の研修など難しい側面もあり、金に見合う教育効果を期待することはできない。
 
○ 米国や英国では少人数学級の導入効果が高いのは小学校低学年とされている。財政上の制約を考えるならば日本でも小学校低学年での導入を優先させるべき。
 
○ 40人学級は子どもや保護者の多様化を考えると難しい。現場としても30人学級の方がやりやすい。ただし、問題となるのは31人になった場合、15人学級と16人学級で学級が機能するのか、という点。生活集団の観点(切磋琢磨して議論する、ゲームをする)からは、15人や16人が十分であるとは言えない。そういった意味で、下限を定める必要がある。私自身は24人が一番良いと思う。
 
○ 小学校の教職員定数が中学校の定数に近づき、校長の裁量でチームティーチングや少人数学級などが導入できるようになると、さらに効果が上がるのではないか。
 
○ 少人数学級には学力改善や不登校件数の減少といった教育効果があるので、少人数学級を推進すべき。
 
○ 日本の学級規模は諸外国と比較しても非常に大きく、この問題に対応する必要がある。一方で財政的な問題があるのも事実。例えば小学校の低学年を25人学級、高学年や中学校を30人学級にするといった工夫も可能ではないか。

○ 学級編制を大胆に改善し、40人学級は少人数学級に移行すべき。指導内容や指導方法だけでは学力向上の問題に対応することはできない。
 
○ ただし、「30人程度学級といっても具体的に何人がいいのか」「上限のみならず下限はどうするのか」「対象学年はどうするのか」「30人程度学級とチームティーチング/習熟度指導のどちらが効果的なのか」といった点は議論の余地はある。また、教科別に人数を定めることも検討できる
 
○ しかし問題が何であれ、学力低下への不安と呼応して、社会的には30程度学級への要請が高く、この傾向は今後どんどん強まるものと思われる。
 
○ 県単独で少人数学級を実施している場合、臨時採用の講師でまかなわれていることがあるが、講師の指導力と子どもの学力向上の問題は見過ごせない。この点、国として取り組むべき。
 
○ 皆さんの意見に賛成。日本には1年の期間で学力を向上させるだけの力がある。少人数学級の効果として「子ども同士のかかわりが多くなった」「教員に話しかける機会が増えた」という点は非常に重要。
 
○ 少人数指導は学習面でも生活面でも大きな効果があったとのことであった。2003年度は日本の子どもの学力がV 字上昇した年であるが、同時に次の2つの問題が浮き彫りとなった年でもある。1)校内暴力件数が史上最高になった。学力重視で精神的に子どもたちを追いつめていないか。少人数学級でケアすべき。2)教職員休職者が3000人を超えたこと。少人数学級は現場の先生を勇気づける。
 
○ 少人数学級の効果で学力テストの平均値は高いが、ばらつきも大きい点が気になる。
 
○ 先のアンケートで生徒の回答はないのか。
 
○ 資料のグラフは学校の数(子どもの数ではない)を縦軸にとっている。このグラフから学校内での成績分布を読み取ることはできない。
 
○ 財政面では、どこを削れば少人数学級が実現できるのか考えるべき。
 
○ 教員1人当たり児童生徒数がOECD 平均を上回っていることは考えるべき点。日本がここまで経済成長を遂げたにもかかわらず、公財政教育支出が低い背景には「安上がりで学校をやろう」という発想がある。この機会にこのような考えは改めるべき。8次計画で教員1人当たり児童生徒数をOECD の平均程度にまで引き下げなければ、国策として教育に取り組んでいることにはならない。
 
○ 学級編制基準が40人のままでいいとは考えないが、基準を超えたため学級を2つに分割する仕組みは変えるべき。これは、学級経営において大きな混乱の基になっている。ドイツのように標準に幅を持たせる方法でいかないといけないのではないか。一人増えたら学級を分割するというのは適切ではない。
 
○ 下限をどのように定めるかが非常に難しい。学力向上の観点からは、確かに子どもの数は少ない方がいいが、日本では学級作りを通して子どもたちの協調性や社会性が育まれてきたことも忘れてはならない。学校の大統合が実施された京都は学力の低下は見られない。むしろよい結果がでたときいている。学級編制基準は引き下げるべきであるが、運用方法に工夫を加えるべき。
 
○ 学級編制については少人数に賛成。これまで日本の先生は、大規模な学級でも指導できる訓練は受けてきたが、少人数への指導法は現在開発中のような気がする。そういう意味では指導上の新たな工夫が必要。
 
○ 現在の教育課程に変わったときに学級編制を検討すべきであった。
 
○ 現在進められている特別支援教育における軽度発達障害のある子どもへの対応という観点からも少人数学級は欠かせない。
 
○ 小学校1年生の段階で数百に及ぶ学習上のしつけの指導を行っていることを考えると、小学校低学年がとりわけ重要。
 
○ 少人数学級の方向で議論を進めて欲しい。現場が機械的にならないよう校長の裁量を相当増やせば状況はさらに改善すると思うので、運用面を十分に検討すべき。
 
○ 少人数学級の問題としては、1人の問題児により学級が完全に崩壊するという事例がある。生活指導や集団生活など、多方面からその問題点も考えるべき。下限は必要。3人、5人の学級はないほうが本当はよいと思う。
 
○ 8次計画には、司書教諭の専任化を強く要望する。保健室登校ではなく、図書館登校をしてもらえればもっとよくなる。図書館は本だけではなく、視聴覚資料もある。司書教諭がその指導をすることが望ましい。
 
○ これまでの例では、改善計画に休む年があるが、休まず18年から実施することをこの部会で確認できればと思う。
 
○ 次期改善計画の議論の際には、第7 次改善計画の際の平成12年の提言を原点に議論いただきたい。その提言では、今後の学級については、生活集団としての機能を主として位置づけるとされていた。家庭における教育力の低下が、学校教育分野に来ていることを考えると、学級の生活集団としての機能を重視すべき。
 
○ 少人数指導や習熟度指導は学力向上に高い効果があると考えるので、今後も国の取り組みとして推進して欲しい。
 
○ 少人数指導は小中学校全体で実施して欲しい。
 
○ 加配措置も継続して欲しいが、運用には縛りが強いので、学校長の裁量で加配教員の運用をできるようにして欲しい。
 
○ 教員の勤務時間の大半は授業時間である。加配教員の弾力的運用においては、担当授業時間数を軽減させる教員配置も検討していただきたい。
 
○ 臨時教員や講師を市・町で採用することになっているが、見つからず苦労している。また、学級崩壊など望ましくない結果になることもある。研修機会がないことも大きな課題。
 
○ 30人学級の方向に賛同する。ただし、悲観的に言えば、少人数学級により子どもは教師とのつながりにおいて息苦しさを感じるのではないか。生活集団における的確な数があるはず。
 
○ 教員の子どもたちと接する時間を増やす必要がある。その上で、管理運営にかかわる仕事が教師の負担となっている。このような教師の負担をどのように軽減できるのか議論するべき。
 
○ 1学年に1人の教師という状況が問題。2つのクラス、2人の教員が切磋琢磨したり教材を共同準備したりするというよい方向に動く場合もある。
 
○ 一方で、教師間の打ち合わせや教材準備の時間を確保できないという問題が小中学校に共通して存在する。少人数指導を行うときの教師の負担を考えるべき。
 
○ 少人数学級を実施したときに教室が足りるのかという問題も議論すべき。
 
○ コミュニケーション能力が低い子どもや閉じこもり傾向にある子ども、肌を接することを嫌う子どもが増加傾向にあるが、生活単位である学級の規模が小さくなることは、学級の活力、目を輝かせるような子ども、学ぶ意欲にどのような影響を及ぼすのか。集団とは関係ないのか、教師が目を光らせれば足りるのか、などについても考えるべき。
 
○ 教職員定数を改善すべきであり、その際、もっと柔軟で新しい次期改善計画を策定すべきという意見が大勢であったように思う。この議題についてこれ以上部会で議論することは難しいので、文部科学省において早急に具体的・専門的に検討いただき、その結果を当部会に報告していただくことを部会としてお願いする。

   (以下、後略)


 そねホームへ  はじめ通信目次へ    05勝利めざして