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はじめ通信・子どもと教育のはた0111
障害児教育を政治や社会の歪みの押しつけから守りぬこうとする人々の真摯な労作
茂木俊彦著「障害は個性か」と「子どものしあわせ」2月号

●この冬、読んだ本の中で2冊の本を紹介します。
 一つは教育雑誌の「子どものしあわせ」2月号で、障害児教育の特集を組んでいます。私はかつて、いわさきちひろ、その後の長谷川知子(後藤竜二の1年1組シリーズの挿絵画家)の表紙絵見たさにとっていたことがありますが、久しぶりに紹介されて読みました。

●特集記事の大部分は、七生養護の性教育への都議や都教委の理不尽な攻撃、調査と処分について、養護学校の教職員組合、性教育の専門家、七生の教員、保護者など、10数人の関係者の証言を載せています。また障害児教育の見直しの中で、制度が失われようとしている心障学級の問題で、東京のすぐれた固定式学級制度を守る運動の代表者なども寄稿しています。

●障害児の性教育の必要性を説く立場から、粘り強くこの問題に関わってきた第一人者の声を一挙に網羅したメディアは今までなかったでしょう。
 「・・こんな無法なことがまかり通っても、その尻馬にのって学校攻撃のお先棒を担いだ1社をのぞいて、当初ほとんどのマスコミは、この事態にほうかぶりをした。(中略)マスコミが報道しないのなら本誌がやる!と決意したのは昨年9月。本誌が、どんな時代でもいつも市民の味方でいるために」と、編集後記にありました。これだけの取材には大変な手間がかかったでしょう。さすがです。また定期購読しなきゃならない雑誌が増えてしまいました。

●もう1冊は、「障害は個性か」という極めて直載なタイトルの本ですが、著者の茂木俊彦氏は、ご存じ石原知事の横暴な大学構想の押しつけに、大方の予想を裏切り公然と異議を唱えた都立大学総長です。
 彼の勇気ある声明に励まされて、その後続々と大学関係者が知事や大学管理本部に抗議し、大学の自治と学問の自由を守るかつてない歴史的運動が広がりつつあります。

●驚くべきは、大闘争の渦中にある茂木氏が、まさにたたかいの真っただ中の10月にこの本を出版し、自らの専門分野である障害児教育で、政府が進める「特別支援教育」のねらいや方向について、東京においても焦点のひとつとなっている「心身障害学級の特別支援教室への移行」による「障害児教育のダンピング」などに鋭い警鐘を鳴らしていることです。

●総長として自ら職責をかけた激しい論争のさなかでも、自ら学問領域の現実から目をそらさず、教育現場で起きている具体的問題に正面から答えていこうという姿勢に、研究者としての気迫を感じさせられます。
 しかも題名通り、障害は個性だとして障害児への「特別扱い」を拒否し、通常学級で一緒に学習すべきとの論調が教育現場や父母、議会の一部にも広がっている中で、「障害は本人の属性ではあるが個性ではなく克服の対象と捉えるべき」という立場から「障害=個性」論が、障害者を尊重しているように見えながら、実は障害者教育のコスト削減に利用されてきた歴史事実も示しています。今、障害児教育問題を考える時、避けて通れない問題に大きな一石を投じる文献ともなっていることには敬服させられます。

●東京の教育で、たたかいの火が大きく燃え上がっている都立大学と障害児教育とが、こんな結びつきがあったのは、偶然とはいえ何か深い意味を持っているような気がします。
 かつて都民自身の力で誕生した革新都政が、教育現場のすみずみから叡智を集めて、義務教育全員入学をはじめ、障害児に人間の尊厳を保障することを真剣に追求する教育行政を切り開き、またこれに都庁職員や都立大学ふくむ教職員が全面的に支え協力した歴史があり、その伝統が都立大学において脈々と生きていたということではないでしょうか。

●私は、これこそが大学らしい大学である都立大学の真骨頂であり、だからこそまさに石原知事たちが、それを押しつぶしたいと執念を燃やしているのだと思えるのです。

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