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子どもが犯罪に巻き込まれないための方策について激論を経てぎりぎりの合意点がまとまりました

  青少年問題協議会の答申について

●1月19日に、都の青少年健全育成について協議する「青少年問題協議会」の総会が開かれ、「子どもを犯罪に巻き込まないため」の対策について、知事に提出する答申を決定しました。この答申は、青少協としても異例の激論の中で、ようやくぎりぎりの合意点としてまとめられたものでした。

●今回の答申の異例さは、知事の選挙公約とその後の急速な治安対策の動きの中で、青少協への諮問(協議会に対して知事が答申を出すよう求めること)のときから始まっていました。
 知事は2期目の知事選公約で「治安対策の強化」を一番にあげ、当選後の6月議会で、治安担当の副知事を広島県警のトップを引き抜いて任命(我が党は反対)、さらに安全安心まちづくり条例を決めて都内の各自治体や町会・自治会にまで、犬の散歩グループでもいいから「自警団」をつくり防犯カメラを町に張り巡らすことを奨励しました。

●さらに9月の議会には1年前に全会一致で修正削除された「迷惑防止条例」の「つきまとい禁止」条項を導入。次いで出してきたのが、青少年対策でした。
 それも凝ったことに、まず知事の私的諮問機関で都の幹部職員がかなりの割合をしめる「子どもを犯罪に巻き込まないための専門家会議」をつくり「緊急提言」が出されました。

そこで「有害図書の包括指定の検討」「子どもの深夜外出には親を処罰」「万引き本の古書店買い取りに厳しい規制」「学校への行政や警察官の調査・立ち入り権限の強化」などショッキングな内容が盛り込まれており、10月28日に諮問が行われた(なんとこれが総選挙の告示日だったのです)ときには、もう青少年健全育成条例の改定内容がこれで決まったかのような報道までされました。さらに答申は1月までにという乱暴な日程が押しつけられたのです。

●今回の答申は、(1)懸案だった有害図書販売については包括指定を見送り、個別指定の強化にとどめたこと。(2)深夜の青少年の外出については、保護者の努力義務を規定したものの、罰則が必要としたのは「保護者の承諾なく16歳未満の子どもを連れ歩いた場合」にのみ限定されました。(3)深夜の出入り規制の対象となる施設は、現実性のない「アイススケート場」「ボーリング場」などをはずし、カラオケボックスやネット喫茶、漫画喫茶など個室があったり青少年が出入りしやすい施設に切り替えました。(4)警察官の立ち入り調査権は、深夜の出入り規制施設などに限定して付与されました。これまでの規制施設の箇所数に比べて、数が格段に増えるためです。


●この答申案に至るまでには、12月24日の、起草委員会の作成した答申案の素案を協議会全員にはかり、事実上答申を固める場で、起草委員どうしでの起草文を「認めたはず」「いやみとめたつもりはない」「罰則については了解を経ていない」など、はげしいやりとりが、我々の目の前で展開されました。
 あらためて起草委員会を長時間行った上で、何とか知事が求めた「1月の答申」に間に合わせたものです。起草委員の責任者を務めた都立大法学部長の前田氏は、「罰則については、深夜の連れだし以外は、協議でまとまらなかった。罰則を盛り込むかどうかは、議会に任せたい」という問題を残す発言を冒頭の案文説明の中で行いました。

●私は、答申の決定に当たって、次のような趣旨で発言しました。
 まず何より、青少年を巡り、犯罪に巻き込んだり、非行に引き込むような深刻な状況が広がっており、緊急な対策が必要なことは共通の認識である。なおかつその上で、10月の諮問の際に
@青少年の犯罪や事件に調査や取り締まりを強化したり加罰対象年齢を引き下げるのでなく、あくまで健全育成と、自立・自己判断力の育成を支援する立場を貫くこと。
A子どもやその家族を社会的に避難するのでなく、むしろ社会的にケアする体制こそ必要。
B有害図書の規制は、言論表現の自由を侵すおそれの強い「包括指定」は行わず、これまでの規制の強化で対応すべき。
C古物買い入れの規制は、「子どもが万引き本を持ち込み、承知で買い取られている」というのが社会現象になりつつあるとの調査も不明確なままの安易な規制は避け、業界の自主規制を優先して、それでも不十分な場合に限るべき。
D諮問して3ヶ月たたずに答申を求めることには無理があり、それでもなお緊急対策が必要とするなら、協議会として全体が合意できるものに答申を限定し、合意できないものは、今後の検討にゆだねるべき。
と発言したが、答申案は、全体としてこれらの要望・意見に答えていただいたと思う。大変熱心かつ誠実に集中的な議論を重ねていただいたことに敬意を表する。

 その上で、いくつか今後に探求すべきと感じた点を指摘する。
(1)古物の買い入れ規制は、ブルセラショップなどは当然だが、古本まで一律扱いは実態から見て疑問があり、自分のバイト収入で買った本を買い取りに持って行く高校生まで親の承諾書を義務づけるなどは、年齢や実情に応じた対応が必要と考える。
(2)深夜の出入り規制施設に、初めて警察官の立ち入り調査権が付与されるが、あくまで青少年の健全育成の立場をふまえて、取り締まり強化が全面にならぬよう運用は慎重に願いたい。
(3)いずれにせよ規制は業界の自主努力を前提に、不十分な場合に行うようにすべき。また罰則は安易に導入を避け、あくまでその必要性を裏付ける調査が求められる。
(4)最後に、「緊急提言」には、青少年の居場所づくりなど、前向きに検討すべき提案があった。若者の深夜コンビニ前でのたむろなど、非行の温床かどうかはともかく、誰もよいこととは思えない。彼らの社会参加と貢献の場をどう作っていけるか、この協議会でも是非検討していけたらと願う。

●夕方のニュースでは、ちょうど私の前で答申の受け渡しのセレモニーが行われた様子が映っていたようですが、自分では決して手放しで容認した文章ではないことを表情に表していたつもりです。ご覧になった方はどういう印象だったでしょうか。

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