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はじめ通信・子どもと教育のはた0731

「不適切」どころか最も優れた教育実践がそこにあった
**七生養護学校訪問記(1)**

●7月の定例議会以来の、養護学校での性教育への都議会一部議員と一部マスコミ、そして都教委も一緒になってのごうごうたる非難・・。これに対して22日には、緊急にもかかわらず、300人以上が参加しての抗議集会も開かれました。
 いったい真実はどちらにあるのか・・。私はそれを確かめるために、焦点となった都立七生養護学校を24日に訪ね、校長先生とともに、現場で実際に教えている教員の方々にも公平に話を伺いました。
 そこで実感したのは、学校の現場では、一部議員や一部新聞の主張する「あまりに過激な性教育」とか「まるでアダルトショップ」などの、これこそが”過激な”評価に組する人は誰一人いないということでした。


●24日、地元日野市の村松美枝子前都議と待ち合わせ、4人で学校を訪問。すると教頭先生を通じて連絡しておいただけなのに玄関前には、教育庁の指導部、学務部、人事部などの課長や係長などが8人から10人ぐらいビッシリ並んで待っていました。
 通された校長室は彼ら都庁の役人でいっぱい。その真ん中にこの4月に赴任したばかりという三苫校長先生が、困ったような表情でちょこんと座りました。見ると教頭先生たちは、ついたての後ろにいすを並べて座っていました。

●異様な雰囲気の中で、私がこの間の経過と校長先生の感想を聞いたところ、三苫校長先生は、ほぼ教育庁の報告書と同じように経過を説明した後、両隣の教育庁の役人をチラッと見ながら、「でも、障害児に性教育は必要なんです。七生の性教育の授業は、不適切な教材はあったといっても優れたところも多い。それを全て否定するような一部のマスコミ報道には残念だし心外です。これからは、現場の先生たちと、学年ごとグループごとに相談し合い、授業内容を良い方向で改善していきたい」と話しました。両側をずらっと役人に取り囲まれた校長先生の顔には、置かれた立場に苦しむ表情が見て取れました。

●「不適切」だという性教育の中身については、校長先生ではなく指導部の役人が説明。要するに、七生養護に30人以上の指導主事が大挙して調査に入り、教員一人一人を尋問しなければならなかった特別の理由とは「からだうた」という性教育の歌を低学年も含めて歌わせていたからということやアメリカからとりよせた性教育用の人形を使っていたからなどということだけ。
 なぜ歌がいけないのか、低学年にいけないのかと聞くと、歌の中に「ペニス」「ワギナ」という性器の名前が1回ずつ出てくるが、この名称は小学校4年生の保健の教科書ではじめて教わるものであり、「低学年から一律に教えるのは不適切」ということと「歌は教科書と違い、日常生活で口ずさむ可能性があるから不適切」・・この2点が理由だと説明。これが30人で家宅捜査まがいの取調べの根拠だというのです。

●私が「ところで報告書には、都議会で性教育問題の指摘があり、調査したら教員の服務や学級編制にも問題が発見されたとあるが、学務部(学級編制を調査)や人事部(服務状況を調査)も指導主事とほぼ同時に調査に入ったのはどういうわけか」と聞くと、「実は、土屋都議らが質問した直後の7月4日に七生に調査に来たとき、性教育のことを聞きただしているうちに、一緒に同行した教育庁の職員が学級編制や服務状況がおかしいことが分かり、9日からあわせて調査に入った」と説明しました。
 「なんとも、みごとなできレースではないか」というのが、私の感想です。

●さらに「校長先生は、今回調査が入るまでは学級編制の問題に気がつかなかったんですか」と聞くと、三苫先生は「正直に言うと、4月に赴任して教育庁への届出と実際の学級編制が違うことに気づき、5月ごろから学務部に相談していたが、もう学年が始まっているので微調整しかできないでいた」と言うのです。
 つまり、今回土屋議員らが質問・調査したりする前から、学務部は学級編制のずれを知っていたのに、わざわざ今回の調査で発見したかのように報告し、またそれを根拠に全養護学校にこの問題の調査を広げるということのようです。

●しかもこの後の教員の皆さんとの懇談で、学級編制問題の多くは、その原因が都教育庁が現場で重度重複障害児が増えているのに予算を盾にクラスや教員の増員配置を認めないために、学校側がやむなく現場でのやりくりのプランを作り学務にも認めさせて調整してきたものだというのが実態だと聞きました。
 「今年になったら担当者が異動していて、都教委は知らなかったと言い出しているのはひどい」と訴えていました。
 これが事実なら私の予想したとおり、教育庁の教育行政にあるまじき卑劣な攻撃といわねばなりません。

●教員の服務問題も、校長先生は「保護者からは論外だといわれた」と説明したが、教員は「修学旅行や泊り込み学習など超過勤務の後で、全教員が期限内に調整休を取るなどは不可能。われわれはほんのわずかずつしか休めないので、調整休を取れる日が期限を越えてしまう」と実情を話してくれました。これも事実なら、教員には障害児を放り出して休暇の権利をとるか、定められた休日数さえ放棄するかのどちらかしか道がないことになります。

●やはり、現場に行って見なければ分からないものだと痛感しました。
 その上、七生養護学校の性教育は、実は非難されるどころか8年の歴史を持ち、その実績はこの間、全国の障害児学校から高く評価され、今回の問題がおきるまで都教委からさえ批判されたりしたことはなかったことも分かりました。
 知事や教育長はもちろん、教育庁の役人も、一部議員の質問や人形の「裸体」は見ても、実際の授業を見ないままで「人前で読むのもはばかられる」などと決め付ける態度や「不適切」などの評価を下したのです。
 教育行政にあるまじきことだと思います。


●先生方との話は、次回レポートします。


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