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はじめ通信・子どもと教育のはた4−1102

子どもの性行動やネット利用を大人の都合でしばることになるのか
知事から諮問を受け青少年問題協議会で3ヶ月のうちに答申というが

●11月2日午前10時から、新たなメンバーによる青少年問題協議会が発足し、私も三たびそのメンバーに入ることになりました。そしてさっそく竹花副知事が、新たな諮問をもってきました。

 青少年対策の焦眉の課題だとして、
(1)インターネットや携帯電話による有害情報の蔓延を防ぐ課題、
(2)青少年の性行動のありかたの規制の必要について、
(3)青少年に対する保護者の養育のあり方について
 の3点で、「青少年の健全育成に関する条例」改定の必要性も含めた検討が諮問されました。
 しかもいずれも緊急の課題だという事を理由に、来年1月末を目途に緊急答申を求めています。

●まず思い起こされるのが、昨年の10月28日、何と総選挙公示の当日、不健全図書の規制や深夜の連れ出し、古書店への書籍持ち込みとかブルセラとか、漫画喫茶などへの深夜出入り禁止などなど、多岐にわたる規制問題を諮問して、今年1月の答申を要求したのも竹花氏でした。
 結局、不健全図書の包括指定の是非問題などで専門部会や起草委員会で十分議論が尽くされないまま、拡大部会で私たち議会選出の委員が出席した場でも部会や起草委メンバーどうしのやり取りが起こり、複数の委員が批判的な発言を述べるなど、混乱が露呈したのでした。
 (青少協では議会からの委員を除いて専門部会を作り、その中から起草委員を選んで答申を準備するのが慣例です。以前はいきなり総会にかけていましたが、わが党の西田委員のときに、議員を含めた議論ができる場を求める努力の結果「拡大部会」という場が設けられました。ここで専門部会以外の委員の意見も出し合い答申案を手直しして総会にかけます。)
 その場での結論めいたものはもちろんまとまらず、起草委員会に差し戻しとなり、それでもう一度、拡大部会を開いて当初予定の1月中の答申決定を押し切ってしまったのです。

●その上最終答申も、強い反対の声を考慮して包括指定条項はもうけなかったものの、ブルセラショップや深夜の連れ出し、古書店への書籍販売などへの罰則の是非について、議論の不一致を残したまま、「議論を都議会にゆだねる」と言う表現を入れて答申し、その後罰則の追加を条例改定案段階で行なうなどの異例の事態まで起きたのです。
 私は問題点を指摘したうえで答申には賛成しましたが、その後、当局が答申を受けて条例案を作る段階で、答申にはなかった厳しい罰則規定や、書籍の包括規制につながりかねない危険な条文が盛り込まれたため、条例案には反対しました。

●今回も、11月2日の諮問から5回程度の専門部会を経て1月末には答申の予定とまで書かれたスケジュール表を提案されています。
 私は、重要課題であるからこそ、誤まりない方向を答申するためには、青少協での十分な論議を行なうと共に、部会の議論も公開して都民から大いに意見を出してもらうことが必要で、それには2ヶ月の時間ではあまりに短く、前回の答申のときの混乱の教訓が生かされていないと指摘。
 以前、買春禁止規定を設けるときに1年近い時間をかけて議論を尽くした、青少協のよき伝統を継承するよう繰り返し求めました。

●ところが公明党議員の委員が「前回、答申時の混乱は、弁護士の委員が部会に出てこないで全体会で反対したから起きたこと」などと発言。また自民党議員の委員が「5回の部会で結論がまとめられるのか」と聞いたのに対して、前回起草委員会の中心をつとめた委員から、5回では不足だが期限を切らないとまとまらないし事態は重大だから議論を密にしてやっていきたい、という趣旨の発言があって、当局の担当部長は、毎週会議をやるなど精力的に日程を組みたいと受け、ほかの委員からも、慎重な議論は必要だが期限は必要などと発言があり、1月末の答申をめどに検討することになってしまいました。
 わたしは、くれぐれも協議会委員が検討を尽くした上で合意できることに限って答申をまとめ、合意に至らない問題は後の議論に譲ること、また都の当局は、答申でまとまらなかったことまで踏み込んで条例案に盛り込むことのないよう厳しく要請しました。

●子どもの性の問題では、現場の先生たちと教育庁とで大きな違いがあり、都教委による養護学校での性教育に対する調査と処分が行なわれたため、性教育自体を自粛する傾向が小中学校にまで波及して、研究授業では教員が性器の名称も口にできず、とうとう「あそこ」と表現するなど、教育現場に混乱が広がっていることも具体的に紹介し、こういう事態の中で短期間に適切な答申がまとめられるのか、はなはだ疑問だと指摘しました。
 実際に、子どもの中にどれぐらい性交渉が広がっているかなども事柄の性格から調査も少ないとの意見も出ましたが、もし大人の都合で大人の倫理を一方的に子どもに押し付ける形の規制案が出てしまうとすれば、青少年問題協議会や青少年健全育成条例の守ってきた「子どもの自立と成長を支え、自己決定能力を育てる」という目的が大きく崩されることになり、百害あって一利なしの結果になりかねません。

●ましてや親の子育てにまで行政が指導的な規定を作るべきなのか、インターネットや携帯の有害情報の規制についても、弊害の抑制が技術的に可能ならば、青少年条例の改正を行なわなくても、消費生活条例の強化など他の方法もあるのではないか、など基本的な疑問も当然あります。

●部会長を兼任する加藤諦三副会長(協議会は知事が会長と法で定めているので、実質は会長)が、「議論百出になるだろう」と発言するぐらい、今から困難な議論が予想されそうですが、気がかりなのは改選された協議会のメンバーです。
 前回の答申の際、表現の自由の立場から包括指定に反対したり、書店への古本持込まで原則禁止することを批判したり、合意していない段階での答申取りまとめに疑問を呈したり、批判意見を持っていると見えた、ひきこもり問題の研究者、弁護士、不登校の子ども支援のNPO代表、中学校長会代表、教育専門家などは姿を消しており、逆に、包括指定を導入しようと最後まで動いた人や答申案を速くまとめるよう露骨にせかせた人などは、全員ちゃんと残っているからです。
 新しい学識経験者のメンバーについては、私には分りませんが、知事が委嘱する青少年協議会の委員が、全体としてバランスを欠いた構成になっていないことを願うことしかできません。

●今年の8月4日に、竹花副知事をトップとして、青少年対策の本部を立ち上げて以来、青少年の性行動について考える委員会の発足と、知事でさえ疑問を呈した「中学生の性交禁止」の提案、6月の佐世保の事件に対してインターネットのルールの徹底の強調、学校での警察官などによる犯罪防止教育の導入提案、学校と警察の非行少年などの個人情報相互交換協定の広がり、国の審議会でも都立大の前田教授らによる非行少年の親の処罰規定盛り込みの提案、などなど、この間あまりにめまぐるしく子どもと犯罪をめぐるさまざまな動きがありました。
 しかし少なくとも東京都の場合、青少年問題で新たな規制をかけようとすれば、青少年健全育成条例の改正抜きには事実上できないことであり、条例改正にはかならず青少年問題協議会の検討を経ることが法的に義務付けられています。
 この間いろいろな委員会などによる議論や提案も、いよいよこの協議会の議論にもちこまれる段階まで来たことになります。都議会の事実上オール与党の状況を考えると、青少年問題協議会は、都民意見を時間をかけて議論できる最後の防波堤と言っても過言ではありません。

●これから始まる議論を、私も引き続き注目して行きたいと思いますし、多くの都民の皆さんがこの問題に声を上げていただくよう、心から呼びかけたいと思います。

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