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はじめ通信・05勝利めざして5−0211

21時間にわたる天然ガス火災ようやく鎮火
天然ガス対策あったのになぜ火災発生後対処が遅れたか

●昨夕、10日の午後5時前に発生した、北区浮間の温泉掘削現場での天然ガスの火災事故は、翌11日午後2時前にようやく鎮火しました。
 この場所は長く赤羽自動車学校という教習所として使われ、不況で閉鎖され約5000平米の敷地は更地になりましたが教習所の建物はまだそのままで、敷地の北のはずれで30メートルほどの鉄塔を建てて温泉掘削が続けられていました。

●事業者が天然温泉の掘削許可を受け、大規模な温泉施設を計画していましたが、昨年、北区内の公衆浴場組合が、ただでさえ苦しい営業に深刻な影響が出ることから、地元の合意抜きの開業に待ったをかける区議会への陳情を提出、採択されました。
 これをうけて温泉事業者は、昨年くれに突然、温泉開業の中止を区に説明していました。一説によれば、金融機関からの借り入れなど資金繰りの関係とも言われていました。
 しかし、温泉掘削への投資を回収するため、温泉つきの分譲住宅への計画変更などを検討していた模様です。したがって、温泉の掘削自体は続けていた様子で、昨日も、その作業中に事故が発生したものです。

●報道によれば、昨日夕刻に地響きと共に地下水の湯が5から6メートルの高さで吹き上げ、これが作業用のライトに当って電球が割れたとたんに、おそらくフィラメントか電気のショートのために発火したと思われます。
 その後、火勢は作業用フェンスを越えて燃え広がり、一晩中燃え続けました。(写真1)
 鉄塔の足元が熱せられ、倒壊する恐れがあったため、近くの民家や都営住宅の住民、20世帯40人が近くの団地集会所や町会会館に避難しました。

●私は会議などのため、避難所に駆けつけたのは午後9時ごろでしたが、そのころフジテレビや日本テレビ、テレビ朝日のカメラマンと記者が次々避難所に訪ねてきてマイクを向けて聞いていました。
 町会の年輩役員が「浮間がこんなことで有名になるよりもっと良いことで名前が知られたいよ」とつぶやくのを聞き本当にそうだと思いました。けが人や建物の被害がなかったことは不幸中の幸いでした。

●その後も消防庁などの放水で、天然ガスの炎は小さくおさえ込まれていましたが、(写真2)、現場を訪ねると消防庁の第5方面本部長が「まもなく粘土を混ぜた泥水(でいすい)を注入してガスを封じこめる予定」と説明しました。
 一回目はうまくいかず、大型の機械を持ち込んで11時半ごろから3時間かけて泥水を注入した結果、午後2時前にようやく鎮火しました。(写真3)
 今後、火災の原因や事業者の責任など解明を進める予定ですが、当面、現地では5日間にわたりガスの発生を検知して安全に万全を期すとしています。(写真4)

●2箇所の避難場所で、東京都から避難住民への説明が午後5時過ぎから行なわれました。以下、その内容です。
 2月11日、17時15分を持って、鎮火。若干、メタンガスが出ているが、人体への影響や爆発の危険性なしと判断。
 17時54分、災害を収束。
 土嚢3000袋、水を入れたが炎を抑えられず、泥水を注入、功を奏した。1500メートルまで。
 環境科学研究所より、埋め戻し穴の上と周辺6箇所を調査し、メタンガスは1・9ppmで大気中濃度程度であった。他の有害物質は検出されず。

●私が釈然としないのは、都側の説明に、事業者の責任を必要以上に小さく見せようとしている節があることです。まず火災発生自体は、過去にあまり例がないとはいえ、当然予想されることのはずです。夕方、ガスが発生し始めてからも、なぜライトまでつけて作業を続けていたのか、万が一電気の防爆(中のフィラメントが発火点にならないようライトを防御すること)が破れたら大規模火災や爆発がありうることを知っていたはずです。
 掘削深度が1500メートルといわれていたのに、1800になっていたのも気になります。
 また、かけつけた消防に、現場監督が平謝りしていたそうですが、私の知る限り、避難住民に事情説明や陳謝に出かけた様すはありません。住民への責任はどう果たすつもりだったのか不可解です。
 今後の安全対策も都の環境科学研究所が担当するかと思ったら、基本は事業者に全てやらせるとのこと。都内ですでに3桁の数に上る温泉掘削現場で、今後も起こりうる可能性がある事故なのに、こうした事例への対応について慎重に研究・検討していこうとする姿勢が、どうも希薄な気がします。このことは温泉掘削の許認可を担当する福祉保健局の総務部長に、多少くどいほどお願いしておきました。

●安易な温泉掘削が、場合によっては地域の安全や環境にどれほどの脅威をもたらすか、今回の事故はその端的な実例となりました。もともと、南関東は、千葉から東京にかけて天然ガス発生地帯です。温泉を掘れば、出てくるのは地下水だけとは限らず、むしろ必ずある程度の天然ガスが付きまとうことは専門業者なら分るはずです。
 私も自然環境保全審議会の委員につい最近就任したこともあり、温泉ブームへの警鐘として研究してみたいと思います。

●以下に、都が発表した文書を添付しておきます。

                      平成17年2月11日
                      福祉保健局・環境局

温泉掘削現場におけるガス噴出・火災発生事故について

1 発生現場
 東京都北区浮間一丁目1番7

2 事業者
 温泉掘削者
  東京都台東区北上野二丁目13番8号 三ツ矢林業株式会社
 温泉掘削請負業者
  東京都千代田匠神田司町二丁目14番 株式会社明聞ボーリング東京支店

3 事故の概要
 2月10日休)16時55分頃、温泉掘削現場で、地中の天然ガスが噴出し火災発生。
 けが人なし。
 火災により掘削用鉄塔が倒壊する恐れあり、約40人が近くの集会所等に避難。
 11日(金)14時35分、火災鎮圧。

4 掘削許可内容
 許可年月日  平成16年8月11日
 掘削口径   311.2〜149.2ミリメートル
 掘削深度  1,800メートル
 ※ 温泉掘削の許可手続
  自然環境保全審議会(環境局所管)に諮問し、知事(福祉保健局)が許可する。
   許可に際し必要に応じて条件を付す。

5 都の対応
(1)本件に対する事業者への指導
  今後、調査を行った後、安全措置とその確認についての指導を行う。(温泉法第7条により、当該掘削が公益を害するおそれがある場合には公衆衛生上必要な措置を命ずることができる。)
(2)その他の掘削地への指導(本日実施)
  江東区及び府中市のニケ所の掘削現場に立入検査を行い、安全対策をさらに徹底するように指導。
(3)住民への対応
 17時15分、可燃性ガス等の環境調査により安全確認。
 17時45分、北区、警察、消防、事業者と、避難住民に対して避難所で説明会を実施し、安心して帰宅できる旨説明。
  消防及び事業者が待機し、終夜ガスもれなどの警戒にあたる。

 ※(温泉掘削に関する問合せ先)
  福祉保健局健康安全室環境衛生課 篠田、芦野 

 ※(大気汚染に関する問合せ先)
  環境局環境改善部大気保全課 野田 

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