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94年7月8日住宅港湾委員会
「応能応益」家賃制度導入への徹底論戦

◯曽根委員 今回の都営住宅の家賃に応能応益的家賃制度を導入する問題については、私も既に住宅政策審議会以来、何度か議論してきましたが、きょうはいよいよ議会での最終決定を控えての審議ですから、改めて基本的な問題を含めて質問したいと思います。
 最初に、この家賃改定案を提出するまでの経過についてなんですが、平成四年の十一月に住宅政策審議会に諮問がされ、一年余りでこの家賃制度の改定案が答申としてまとめられるまでの間、ほとんどの期間を通じて東京都または住宅政策審議会、これは都民にはもちろん、都営住宅居住者にさえ、ほとんどその内容を秘密にして家賃制度をつくり上げてきました。
 そこで、この間に都営住宅の居住者またはその団体の代表者などに、家賃制度についての意見を聞く機会をどれぐらい持ってきたのか、その点について、まずお聞きします。

◯村上住宅政策担当部長 都営住宅の家賃制度につきましての諮問を行いまして後、住宅政策審議会におきまして入居者の代表の方、あるいはその他の参考人の方から、審議会の場でご意見の拝聴を行って、そのご意見を踏まえて、審議会ではご答申をいただいたものと理解しております。

◯曽根委員 いつ、何回ぐらい居住者の意見、またはこれに関する関係者の意見を聞いたんですか。

◯村上住宅政策担当部長 この審議の過程におきましては、住宅政策審議会におきまして行政部会というのが設けられておりますが、この行政部会の第二回の審議の際に、これは平成五年の一月二十七日でございますが、参考人の方四名からご意見を伺っておりまして、その中で、公営住宅の入居者の関係の方にもご意見をちょうだいしているところでございます。

◯曽根委員 昨年の一月二十七日、住宅政策審議会の行政部会、ここではまだ、今回の応能応益的家賃制度についてのたたき台を含めて具体的なプランは何も出ていない段階で、とにかく都営住宅家賃制度についての意見を聞きたいという一般論の聴取にとどまっている。
 それが一回だけ行われただけなんです。その後昨年の秋ごろ、住宅政策審議会の行政部会に小委員会からの素案が出されて以後は、一番大事なとき、具体案が出て以後は、全く意見を聞かないどころか、その中身すら居住者には何ら伝わっていないという事態の中で、二月三日のことしの本審議会まで来てしまったというのが実際の経過です。
 そして審議会は、その日一日だけ四十分の審議で打ち切られて、採決が強行され、答申が出されたという経過であります。
 とにかく審議会で検討しているんだから、居住者の意見も、都民の意見も聞く耳は持たないといわんばかりのやり方、私はどうしても納得できない。
 こんなやり方で答申をつくるから、現にこうやって提案をしてみると、都営住宅や、そこに住んでいる人の実情を無視したとんでもない答申が出てきて、またそれが大きな批判の声を受けることになると思うんです。住宅政策審議会の今後のあり方の、私はこれは教訓にすべき問題だと思う。
 このことは繰り返しになりますけれども、先日の二月二十一日の委員会のときにもいいましたが、これは強調しておきたいと思います。
 ところで、この間の二月二十一日の当委員会で答申の報告が出たときに、私は、これは審議会のあり方はいろいろありますけれども、問題もありますが、いよいよ当局がこれをもとにして家賃の改定案をつくるということで、責任は当局がこれから負っていくわけだから、改めて居住者を含めた関係者の意見も聞き、十分にそれらの意見を反映した改定案をつくるべきだということを私は要望したわけです。
 また、委員会での答弁でも、居住者の意向を反映させた家賃制度にするという趣旨のお答えもあったと思います。これについては、この改定案についての評価、特に答申に対する評価、居住者に対してお聞きになる機会を持ったのか、それをまた反映をされたのか、その点についてお聞きしたい。

◯吉田参事 今回の使用料制度は、ただいまも申し上げましたように、住宅政策審議会が関係者からの意見聴取を含め、幅広い見地から検討し、ご答申をいただいたものでございます。今回実施案を作成するに当たり、その答申を踏まえましてご提案申し上げているものでございますので、ご理解賜りたいと存じます。

◯曽根委員 私が聞いたのは、この家賃の改定によって影響を直接受けるのは都営住宅に住んでいる方、それからさらにこの家賃が変動することによって、近隣の民間賃貸住宅も含めて、東京都内の賃貸住宅の居住者にとって大きな影響を及ぼす問題だということから、当然それらの方々の意見をくみ上げていくべきだというふうに申し上げたはずです。
 しかし、東京都は、これまで結構期間は長かったわけですが、その間居住者の方々にはもちろん、そのほかの都民の意見というものをほとんどくみ上げることはしないで、答申に沿ってだけ具体化をしてきたということじゃないかと思うんですね。
 私は、今度議会に提案がなされた冒頭の委員会のときにも、これは大事な問題ですから、二十五万世帯に及ぼうとしている都営住宅、さらには都民全体に及ぶ問題ですから、この議会としても、参考人を呼んで意見を聴取する聴聞会を開くべきだということで動議を提出いたしましたが、これは残念ながら、ほかの会派の方、すべての反対によって実現できませんでした。これも非常に残念なことですけれども、きょうの委員会の審議だけで決めてしまうというのは、私は極めて早計だというふうにいわざるを得ないと思います。
 それで、実際に出てきた提案を見ますと、やはりこれは居住者にとっては納得のできない内容が多々含まれているというふうに思うんですが、これに対して、先ほどお話のあった、昨年の一月に居住者の代表として意見を聞かれたという東京都公営住宅協議会の代表の方、この代表の方を筆頭人にするこの改定案に対する撤回を求める請願並びに陳情、それからそのほかの居住者の方々の団体、都民団体含めて四百以上の団体の方が、この議会に撤回せよという意見を寄せています。
 また請願、陳情も出されています。結局意見を聞き、反映したというけれども、そういう意見をいった本人が、今度の案は撤回せよといっているんですから、これは居住者の方々にとって願いがかなうどころか、願いとは全く逆行したものが出てきたという評価が出されているんではないでしょうか。これについて、当局はどのように受けとめておられるのか、これを聞きたいと思います。

◯吉田参事 お話のとおり、幾つかの居住者団体から請願等が出されておることは十分承知してございまして、それぞれの立場からのいろんなご意見があることについては、真摯に承っているところでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、この今回の新しい家賃制度は、住宅政策審議会の審議を経ていただいたものでございますので、都としては、引き続きこの新しい制度につきまして、理解を求めていきたいと考えてございます。

◯曽根委員 一部居住者というふうにいいましたけれども、これは東京都生活と健康を守る会連合会からは四万人以上の署名が寄せられて、これは議会じゃなくて、都知事あてで直接要請が行っているはずです。
 それから、この議会にも既に一万人を超える請願、陳情も出ている。これがどうして一部ですか。じゃ、この改定案について、賛成の陳情、請願というのはあったんですか。私は、一つもないと思うんですよ。そういう点で、こういう居住者の意見、それからその願いというものを積み残したまま具体化をしていこうとする姿勢は、かつての東京都政では考えられなかった事態だと思います。
 それから、これに関連して住宅政策審議会にも、民間賃貸住宅の団体の代表の方が出ていました。その方は私と同様、審議会の答申には反対の態度をとったというふうに記憶していますが、その方も含めて民間賃貸住宅にお住まいの方の、この改定案についての意見はどうなんですか。東京都は盛んに民間居住者との家賃の格差を問題にして、今回の都営住宅の改定案を出してきました。しかし、民間の方は、これを歓迎しているんでしょうか、どうなんでしょうか。

◯吉田参事 個別個別の一般都民からではございますが、しばしば電話等でご意見は寄せられているところでございます。一応反対の意見は少ないと受けとめてございます。

◯曽根委員 今、賛成の方はいるとはさすがにいえなかった。私は反対の意見は少ないというのは、それは当局の受けとめだと思うんですが、当局もさすがに賛成の方がたくさんいるとはいえないという状況だと思うんですよ。
 私、改定案が出てから、改めて東京借地借家組合の代表の方にご意見を伺いました。そしたらば、民間の居住者にとって、都営住宅の家賃が上がるということは何のメリットもない、それはそうですよ。今度の改定でもって、東京都の増収分百五十億円といわれていますが、このお金でもって民間の賃貸居住者に何か還元するような政策をやるというようなことがあるわけじゃないわけですから。
 しかも、今バブルがはじけた後、土地の価格が下がってきた。バブル時代にはね上がった民間賃貸住宅の家賃を、値下げによって是正するチャンスが生まれている。これは戦後初めてだそうです。民間の賃貸の家賃が下げられる機会があるということで、裁判闘争を含めて、今運動が始まっている。しかし、そういうときに公営住宅の家賃が、一部は民間賃貸住宅を追い越すぐらいにどんどん上がってくるとすれば、これはそういう裁判闘争を含めた民間の居住者の家賃是正運動に、まさに水をかけることになる、障害になる。そういう点では、非常に困ったことだというふうに受けとめているというお話でした。私は、東京都はそこをきちんと考えなければならない問題だと思います。
 これが二月の委員会でも、高額所得者の家賃が十万円を超えるところが続々出てくると、その近隣で民間賃貸住宅が、それ以下のアパートがいっぱいあるときに、これを引き上げる要因になってしまうというおそれを、私指摘しましたけれども、現実にそういう問題が起きてくるということをいわざるを得ないと思います。
 それで、竹内部長だと思いましたが、この間の二月の委員会のときに、この答申について具体化をする中で、新しい家賃制度への移行に当たっては、何よりも入居者を初めとする広範な都民の理解と協力を得る必要がある、そのための周到なPRを欠かしてはならない。とりわけ入居者に対しては、新しい家賃制度を周知徹底することに十分配慮をしていく、私の質問にわざわざこのように答弁をしておられます。ところが、いまだに居住者には、自分のうちの家賃が上がるのか下がるのかさえわからない。
 これで何が周到なPRかと私はいいたい。一軒ごとの家賃が、もし収入報告が出てからでなければ決定できないというのであれば、せめて自分の住んでいる団地の応益調整率が幾らになるのか、上がるのか下がるのか、それから使用料限度額が幾らと設定されていくのか、どういう予定をされているのかぐらいは、資料として提供すれば、自分の収入をはめ込めば計算ができるわけですから、それぐらいの資料、それぐらいの考える材料を――周知徹底というならば、議会で決める前に、どうして居住者の方に提供できないのか。
 私は十分時間はあったはずだと思うんですが、これがなぜ行われなかったのか、なぜこれがPRとして、周知徹底といいながらやれなかったのか、その点をお聞きしたい。

◯吉田参事 居住者への新しい家賃制度のお知らせにつきましては、「すまいのひろば」におきまして、これまで四回、その答申の内容をお伝えしてございます。
 特に第一回目は、なるべくご理解いただけるようにということで、答申の資料にございました、いわゆる各六つのパターンの家賃の変動を掲げさせております。そのとき、かなり電話等で反応がございまして、私ども説明して、なるほどわかったというご意見等も受けておるところでございまして、確かに個別家賃につきましては、確定の家賃につきましては、これは議会のご審議を経なければ告示、あるいはまたご通知できないわけでございますが、どのような形になるかということにつきましては、極力ご理解いただくように努力をしてきたつもりでございます。

◯曽根委員 家賃というのは個別にかかっているんですよ。しかも、今までのように、大体一律の計算でもって、家賃改定のときに、自分の家賃がどれぐらい上がるか、率はそんなに違いませんから、わかるという形とは、今回制度改定ですから、全然違うわけですよね。それだけに、個別に自分の家賃がどうなるかわからなければ、理解のしようがないじゃありませんか。まず、その家賃の負担はどうなるのかというところから始まるわけでしょう。それがわからない。それで納得をしてくれ、議会ではもう決めてしまいます。これで、私はその中身がどうあれ、結果がどうあれ、入居者に理解を得るのは難しいと思うんですよ、この方法では。
 しかも、この四月というのは、使用料限度額を決める、大体半分ぐらいの決定要因になっている固定資産税評価額が、宅地でいえば平均四倍に上がったわけですね。これが使われるのか使われないのか、それによって使用料限度額が大幅に違ってきてしまう。また、それが家賃の応益調整率にも入ってきて、これが使われる使われないではとんでもない違いが出てくるという時期に、わざわざぶつけてこの改定案が出されてくる。こういうときに、殊さらに居住者の不安をかき立てるようなやり方、これはもうどなたが見ても、やっぱり自分のうちはどうなるのかと不安にならざるを得ないというふうに思うんです。
 しかも、私が大変不可解なのは、いまもって都知事の本会議答弁、それからこの間の提案説明を聞いていますと、これが全体としては東京都の都営住宅家賃の値上げになるんだということを都知事も当局も認めていない、家賃制度の改善だというふうにいっているという点であります。
 そこで、まず本当に初歩的な問題からお聞きしますが、今度の家賃改定で、二十四万数千戸にわたる都営住宅にお住まいの方の中で、実際に自分が払う使用料、家賃負担、これが上がる方は、全体の中で戸数幾つで、何%になるんですか。また、その増額の平均額はどれぐらいになるんですか。

◯吉田参事 今回の使用料制度におきまして、使用料負担が増となりますのは、平成五年度の収入報告等に基づく推計でございますが、全世帯の四〇%に当たる収入超過層及び二五%に当たる収入基準内階層、合わせて六五%、十六万一千世帯が負担増になると推計してございます。
 増額の平均額は、高額所得階層が一万六千九百円ほどの増で、新しい負担が五万七千二百円ほどになります。
 また、収入超過階層が約一万七百円増で、新しい負担が四万五千二百円ぐらいが平均でございます。
 一種住宅収入基準階層につきましては八千二百円ほどの増で、新しい負担の平均が三万三千四百円ほどになります。また、二種収入基準階層は約四千七百円の増で、新しい負担の平均が二万三千三百円ほどと推計してございます。

◯曽根委員 全体の六五%、半分以上が値上げになる。それで、今細かく分けて、収入超過層とか一種、二種、基準内の階層に分けて平均額を出されましたが、丸めて六五%の戸数で全体の増額分を割ると、一世帯平均幾ら月々上がることになるんですか。

◯吉田参事 全階層平均いたしますと、増額幅の平均が約一万一千六百円でございます。

◯曽根委員 上がる人が六五%で、しかも、上がる月々の金額が一万円を超える家賃の増額というのは、都営住宅家賃の改定が何度かありましたけれども、これはかつてないことですよ。
 大体もともと東京都は、一万円台の家賃の都営住宅が四割もあるというふうにいってきたが、それに対して一万円を超える家賃の値上げがあるわけですから、もう半分か半分以上値上げというのが軒並み出るということですよ。こんなかつてない値上げをやる。それで東京都は、減額が一部あるとしても、差し引き百五十億円の増収だと。前回の改定のときには、せいぜい四十億円ぐらいですから、増収分だけ見たって、だれが見たって値上げじゃないですか。この点で、これは実質値上げなんだということをきちんとまず認めるところから話は始まると思うんですが、この評価についてはいかがですか。

◯吉田参事 今回の新しい家賃制度は、現在の使用料制度におきましていろいろと課題になっております応益調整についての改善、あるいはまた、これは収入基準内階層の負担の逆転現象を解消する措置でございますが、応能減額の導入、さらに収入超過層の負担の是正、このような制度改善によって都営住宅入居者の適正かつ公正な家賃負担の実現を図るということで、今回実施をお願いしているものでございます。

◯曽根委員 都民も、それからもちろん入居者の方々も、それから今はほとんどのマスコミ、新聞などの扱いを見ても、七割近くは値上げになる、それも大幅な値上げだ、全体としては値上げだという評価をもうしているんですよ。これは、都民全体の世論になっている。
 当局だけが、いまだに家賃の改善だ、是正だと居直っているわけにいかないという状況だと思うんですが、その辺の評価について、どう思っていらっしゃるのか、もう一回お聞きします。改善が値上げだったんなら、値上げは改善だといってください。

◯吉田参事 今回いただきました住宅政策審議会での答申にもございますが、答申をちょっと読み上げさせていただきますけれども、現行制度を抜本的に改善する新しい仕組みの導入により、都営住宅入居者のうち、相対的に収入の低い階層の負担は従来よりも下がる場合があると予想されるが、相対的に収入の高い階層、特に収入超過層の負担は相当の変動が予想されるところである。
 しかし、これは都営住宅の家賃の適正化とその上での入居者の公正な負担の実現を目指す結果であり、十分な理解が求められるべきである、と書いてございます。私どももこのように受けとめて、今回のこの実施案を提案しているところでございます。

◯曽根委員 断固として値上げだと認めない、それでこれは改善なんだと。六五%の値上げで、残り三五%は減額なんだというふうに東京都は説明している。これは、私はごまかしがあると思う。 実際にこの制度の導入で減額になるのはどれぐらいかということを、もう少しはっきりさせておきたい。
 今度、家賃改定の中で減免の対象になっている方、これはきょう資料でもいただきましたが、認定月額で五万円以下の方です。これが今、対象階層が五万四千人ぐらいいるという資料が出ているんですが、今度これを月額六万五千円に引き上げるというのがありますね。この引き上げというのは、どのような理由で、どのような基準に基づいて行われるのですか。

◯吉田参事 生活保護におきます最低生活費保障水準、いわゆる保護基準に対応して引き上げを図るものでございます。

◯曽根委員 これはこれまでの家賃改定でも、家賃改定のときには、そのときどきの生活保護基準というのは年々上がっていきますので、それに準じて、東京都はそれに見合う形での減免対象の基準を引き上げているわけですね。ですから、これは今回の応能応益的家賃負担制度の導入とは区別して、ふだんの改定と同じやり方で行われているというふうに考えるべきだと思います。  それで、月額五万円から六万五千円に引き上がって、対象となる世帯数というのは何軒ぐらいふえるんですか。

◯吉田参事 約四千世帯ふえるものと考えてございます。

◯曽根委員 今、五万四千百八十ぐらいある。六万五千円まで基準が上がれば、それに四千世帯ふえるだろうというのが当局の推定のようですが、そうすると五万八千余の世帯は通常の家賃改定、今までの家賃改定と同じやり方による減免の対象となって、この拡充によって減免が受けられる資格が得られる。これは自分で申告しなきゃ受けられないのはご存じのとおりですが、その部分は、応能応益的家賃負担制度の導入による減額ではありませんから、これは抜いて考える必要がある。
 それで先ほどの資料で、今度の制度の家賃の改定で減額になる世帯数が、二二ページの資料には八万六千世帯と出ているんです。そこから五万八千世帯減免対象となる方を引きますと、二万八千世帯。
 結局応能減額とか、それからたまたま応益調整指数が下がって、それによって家賃も下がる方が一部出たとしても、二万八千世帯だというのが正確なところじゃありませんか。今度の応能応益的家賃負担制度の導入に伴う減額というのは、どうでしょうか。

◯吉田参事 減額世帯、増額世帯につきましては、答申のときの資料におきましても注でお断りしておりまして、一般減免の対象階層も含みましてご説明を申し上げているところでございまして、今回も増額戸数、減額戸数につきましては、一般減免対象も含めて記載してございます。
 なお、五万八千世帯でございますが、このうち使用料免除の方は、前後、当初とも新しい負担もゼロ負担で、いわゆる同額でございますが、その他につきましては、千円ないしは二千円の負担減ということで、減額の住戸の方にカウントしているわけでございますので、ご理解賜りたいと存じます。

◯曽根委員 東京都は、都合のいいところだけ一緒くたにしてまとめて考えていますが、これはふだんの改定でもやっているわけですから、私は今度の制度の導入によって、その方々が家賃が減ったんだというふうにいうのは、これはもう全く当たらないと思うんです。結局は応能減額、新しく制度が導入されました。
 それとか、応益指数が今回変動して、都心の方はがあんと上がるけれども、郊外は下がるという中で、一部家賃が減額される方が出てくる。それは正確に詰めていえば、二万八千戸だと。二十四万七千世帯のわずか一一%だけですよ、この制度で、いわば家賃が下がって助かるなというのは。片や六五%は、間違いなく上がるわけです。これを対比してみても、上がる方が下がる方の六倍いるわけですから、どう考えたって全体値上げじゃないですか、百五十億円の増収。
 それで、国がこの間、公共料金値上げ年内凍結を決めましたよね。そのときに、東京都など自治体にもそれに同調するよう求めてきている。
 それに対して、鈴木知事もいろいろ意見をいっていましたが、都営住宅家賃の改定実施時期は、年内十二月を予定していたものを来年の四月にするとか、一部報道されましたし、また最終的にきょう出されているものでは、一月実施だと、年内実施というふうにならなかった。
 それは、結局は国が公共料金、なかんずくその中でも公団住宅家賃の定期的な見直し、家賃値上げ、これを凍結せざるを得ないというところに追い込まれたのに対して、東京都もやはり最小限一カ月おくれただけですけれども、同調せざるを得なかったのは、事実上、この都営住宅の家賃改定を値上げだと認めたということじゃないですか。そうじゃなくて、どういう理屈で一カ月延ばしたんですか。

◯竹内管理部長 今回、国の方から公共料金の凍結についての依頼があったわけでございますが、今回の使用料の制度の改善につきましては、内容的には制度改善であるので、十二月実施が適当であるというふうに考えたわけでございますが、しかし国の方の要請もあり、また一方では、応能減額という減額制度がとられるということで、早期の実施が望まれるということもございまして、一月実施を考えたものでございます。

◯曽根委員 国の要請があったから、この実施をおくらせたということは、国の公共料金凍結という方針に従わざるを得なかった。つまり、これが実際値上げであるということを認めたに等しいと思います。
 実際、この公団住宅の値上げ計画と比べても、都営住宅のこの家賃改定の影響というのははかり知れないものがあります。公団住宅は、値上げ幅がせいぜい九%ですから、それも古い団地に限って。
 都営住宅はそうじゃない。もう六五%が一万円以上の値上げになるんですから、この影響は全然違うわけですよ。公団住宅は定期的な見直しですから、事実上値上げだということを認めて、政府も凍結した。これで東京都だけが、いや制度の改善だ、是正だと居直って、上げるわけにはいかないという状況に陥ったわけでしょう。
 だからこそ十二月に実施すれば、定期的な収入超過者に対する割り増しの付加使用料の改定などが十二月にありますので、この間も本会議で、社会党・市民ネットワークの代表の方が、わざわざ十二月に一回付加使用料を改定して、現行制度で改定した上で、一月にさらにまた改定がある、実務上極めて煩雑だという指摘をしていました。
 私も、実務上はそのとおりだと思います。その意見が、じゃ、値上げを繰り上げて、十二月にやれという意味かどうかは私は知りませんけれども、それを実務上の煩雑さを冒してまで一月に延ばしたのは、結局は値上げだということを認めたんじゃないですか。
 これをちゃんと都民に対して、これが正々堂々たる値上げであれば、それを堂々とPRして、値上げだけれども、制度改善になるんだよというふうになぜいえないのか。それは中身について、都民の理解を得られる自信がないからじゃないですか。
 私は、この点を強く指摘しておきたいと思うんです。
 それで、今回の制度改定の中で非常に罪が深いというふうに思うのは、一つの問題として応益調整率の改定がある。これが立地条件を重視するということで、今回大幅に見直しになりました。大変大きな不安が広がっているわけです。私は住宅政策審議会の審議の過程で、その段階では、まだ具体的な団地名を挙げての資料を求めたら、当局も出してくれたんです。その段階で、都心にある北青山の昭和三十八年建設の都営住宅について、ここがかなり大幅に応益調整の関係で上がりそうだということで資料をお願いした。その時点では、団地名入りで資料を出していただきました。
 その後、全く団地名入りの資料は出なくなったんですが、その資料に基づくと、ここは応益調整が最高の立地条件で一・五、市区町村係数でも、それから固定資産税評価額相当額係数でも一・五、それによって応益調整は最高の〇・六がかかるということで、それだけで一種住宅では〇・六の指数がありますから、三万七千円ぐらいの家賃、それでもう決まりになるわけですね。
 その上に、さらに家屋便益指数が乗るわけですが、結局は、今二万二千円ちょっとの家賃が四万七千円ぐらいになって、二倍以上に上がってしまうということになったわけです。
 大体応益調整で、そんなに立地条件がいいというのは、どういうところかと思って、北青山一丁目、私見に行きましたよ。隣が赤坂離宮ですよ。それで、その向かい側に広い道路があって、オフィスビルが林立しているわけです。その間に挟まれているんです。何かもう時代が、一時代前に戻ったような感じ、その一角だけが。それで、専用面積が三十八平方メートル、おふろがない。三十年以上たっているわけです。
 もう見るからに老朽化していました。見るからにというと失礼ですけれども。これが応益調整が一番高い、立地条件高いというところなんです。
 住んでいる方にも、お話もお聞きしました。買い物どうしていますかと。近くじゃ、高くて物が買えない。結局、生鮮食料品などは地下鉄に乗って上野とか、それから築地まで買い出しに行かなくちゃならないといっていました。おふろも近くになくなっている、一軒だけ残っている。この銭湯がなくなったら、おふろに行くのも電車で行かなきゃならない。これが立地条件が極めていい、ランクAの住宅なんですよ。東京都によって、こういう応益調整がかけられている。
 この立地条件の評定というか、評価というのは一体何なんですか。生活のための住宅でしょう。 それで、最高のAランクがこういう状況というのは、一体どうしてこういうものが出てくるんですか、その点をお聞きしたい。

◯吉田参事 応益調整指数、応益調整のうちの立地調整につきましては、審議会でもいろいろとご意見があったところでございまして、いわゆる立地便益、立地応益の受けとめ方につきましては、居住者の生活条件あるいはまた勤労条件等々でかなり異なるということで、なかなか一面的な見方はできないというお話がございました。また、当然ながらそのような生活便益、あるいはまた経済便益のみならず、環境面、これら等の配慮も必要であるといったご議論もいろいろございました。
 しかしながら、それらをやはり総合した指標で測定、判定するということが必要でございまして、いわゆる固定資産税評価額、ある意味でその土地の時価でございますが、そういったものはそれらを反映した総合評価、総合指標であるという面を持っておる。
 したがって、これを一つの代表的な指標として用いることが現実的であるという意見がございまして、そのような答申、応益調整指数の設定に至ったものでございます。

◯曽根委員 総合的に判断すると、結局そこに住んでいる生活実態に全く合わない結果というのが出てくる。そういう総合評価というのは、私は総合評価じゃなくて、偏った評価だと思うんです。
 私は、住宅政策審議会でそのことを指摘しました。特に北青山の場合は、非常に端的なケースとして、近隣の目黒にある平成二年入居ぐらいの新しい住宅、ここは広さも広い、家賃も既に基準家賃に近いか、それ以上の家賃がかかっている、ここと比べて、新しい制度が適用されると、家賃が同じぐらいになって、一割程度の差しかない。そうすると、片や三十八平方メートルの専用面積、片や六十五平方メートルぐらいある。
 一平方メートル単位で見ると、北青山のあの古い住宅の方が、目黒の――同じ都心ですよ――住宅よりも、単位面積当たりが二倍ぐらいになってしまう。これはあんまりひどいじゃないかということを指摘したら、さすがに部会長も、これはやっぱり問題があるということで是正が行われました。
 この点について、これは答申に盛り込まれたわけですが、東京都の方でもこの是正の中身をそのまま使って、一定の係数の変更をやったわけです。当局としてのこの是正を行った理由、そして是正の中身について教えてください。

◯吉田参事 応益調整のうち立地指数につきましては、答申あるいはまたその実施に至るまで幾つかご意見がございまして、一つは、住宅政策審議会の答申に至る過程で、ただいま曽根委員からお話がございましたように、固定資産税評価額相当額係数につきまして、当初、係数の最高が一・七までございましたものが、一・五に引き下げられた経緯がございます。
 もう一つ、区市町村係数につきましても、これは係数の幅は変わってございませんが、中に各区市町村の配分をしてございますが、その配分につきまして、平成六年の公示地価のデータを用いまして、一部改めさせていただいてございます。

◯曽根委員 今の是正を行った当局としての理由は何ですか。

◯吉田参事 若干細かいお話になりますが、立地指数の区市町村係数は、これは国土庁の公示地価の各区市町村の平均地価の配列を基本にしてございますが、六年度公示地価の平均地価の配列を、この答申の表と見比べ、比較考量いたしまして、その順位について、答申の枠組みを前提としながら、新しいデータで微調整をさせていただいたものでございます。

◯曽根委員 今、新しい公示地価、これで微調整をしたというふうな話なんですが、細かいことは抜きにしますが、例えば北青山の固定資産税評価額相当額係数を一・七から一・五に下げた。これは、別に根拠があってやったわけじゃない。とにかくこれは高過ぎるというんで、〇・二下げた。 それによって、北青山は団地の個別家賃が五万二千円になるところが、四万七千円になった。それでも二倍以上上がってしまうわけですが、もうこれはさじかげんですよ。今回の微調整にしても、いろいろ厳しい評価が上がってくる、反対の声が強いというんで、細かく見ると、別に理由がないところもいろいろと下げている。このさじかげんで適当にやられてしまうというところは、私は非常に恐ろしいと思うんですよ。それによって応益調整指数が〇・一変われば、月の家賃が六千百円変わるわけですからね。
 年間にすれば、七万円以上の家賃が変わってきてしまうんですよ、調整指数が〇・一変わるだけで。こういうさじかげんが、どんどんできてしまう。
 固定資産税評価額の、今回四倍になったものがどう影響するかという問題は、後から、また指摘されると思いますけれども、そういった点に、今回、応益調整の中で立地条件を重く見た、このことによる影響があらわれていると思うんです。もう一つ、反面、立地条件を重く見た一方で、家屋便益指数といわれる広さとか何年たったのかというものが、相対的に軽くなったわけです。軽くなった影響、私出ると思うんです。
 一つのこれから起こり得るケースとして質問したいんですが、今、東京都も、型別供給というのをそろそろ本格的に始めようとしています。したがって、今までは各年度ごとに建てられる都営住宅は大体ファミリータイプで、その一つの年度であれば、大体広さは同じだったわけですね。
 昭和三十八年、三十九年、今から三十年ぐらい前には、大体三十七、八平方メートルの面積が、その当時の都営住宅の一般的な面積なんです。これが今回の基準面積七十五平方メートルの、ちょうど半分程度。ところが、これから新築でも、同じぐらいの広さの型別供給の狭い新築住宅というのがつくられる道が開かれてきた。そうすると、三十七、八平方メートルの新築の、例えば高齢者世帯向け住宅というのができてくる可能性がある。これはありますよね、白書にも載っているし、新しい報告が出ています。
 そうした場合、平均的な立地条件の団地で、片や三十年たった三十七・五平米で、ちょうど標準面積の半分の面積の住宅と、片や新築で型別供給で供給された同じ面積の新しい都営住宅ができた場合に、家賃はどれぐらい違うんですか。

◯吉田参事 新築がおよそ四万二千七百円、築後三十年が三万八千百円と推定されますので、差がおよそ四千六百円でございます。

◯曽根委員 したがって、新築の四万二千円に対して、三十年たった住宅でも一割ちょっとしか差がないということです。これは実際には、住宅としては全然違います。
 北青山へ行けばわかりますけれども、本当に三十年たってしまうと、建物が古いだけじゃなくて、中の設備が、これはおふろがあるという条件ですけれども、やっぱり時代おくれになっているんですよ。専門用語でいえば、設備が陳腐化しているわけです。
 それに対して、今から建てられる型別供給の高齢者向け住宅というのは、バリアフリーになっているし、それに配慮したトイレも、おふろも、いろんなことが今技術的にはできるようになっている。そういうものができるんです。この違いがわずか四千六百円、今度の制度では一割の違いしかないんです。これだけ経年変化というものが軽くなってしまっている、応益調整の中では。これは、私は新たな不公平を生みかねないと思うんです、こういう家賃制度は。このこともあえて指摘をしておきたい。
 それから、今度の家賃改定案、もう一つ罪が深いと思うのは、収入超過者、高額認定者に対する扱いの問題です。これは、私も繰り返しいってきました。
 高額認定者が、今一万人をはるかに超える人数になってきている。これは、私たちは入居基準が余りにも低過ぎる、明け渡し基準も低過ぎるからだというふうに考えていますが、それに対して、実際には昨年も千二百名余りしか明け渡し実績がない。
 そうすると、明け渡す数よりも、高額認定になっている数の方が多いわけですから、高額認定者がどんどん膨らんでいく。これは、都営住宅に住むお一人お一人が、みずから働いて収入をふやしていくことが悪いんじゃなくて、それに合っていない都営住宅の入居基準、明け渡し基準の方が私は問題だと思うんです。
 しかし、扱いはどうなるかといえば、基準を超えたからということで、あなたは都営住宅に住む資格がない。収入超過の方に対しては、明け渡しの努力義務が課せられて、それから高額認定になると、いよいよ明け渡し義務ということで出てください、こういうことになるんです。
 それで、かつて東京都はこうした事態に対して、しゃくし定規ではなくて、基準を自治体として見直して、それで都営住宅に住んでいる人が安心して住めるようにするという点で、高額認定者に対する扱いを独自に決めていた時期があります。
 これは国の法律設定時に、国会決議があって、これに基づいて東京都はやったというふうに私は聞いているんです。昭和四十四年ごろですが、明け渡し基準が公営住宅法に盛り込まれたときに、衆参両院で国会の附帯決議というのがあったと思います。この内容についてお答えいただきたい。

◯竹内管理部長 昭和四十四年の公営住宅法の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議がありましたが、その内容でございますが、まず衆議院の要旨でございます。
 高額所得者に対する関係でございますが、高額所得者の明け渡し請求制度の実施に当たっては、収入額の的確な把握、配偶者以外の収入について相当額の控除、定年等により収入が激変する者に対する明け渡しの猶予、公的資金による住宅への優先入居、収入基準の適時改定等の措置をし、運用の適切を期すことでございます。
 次に、参議院の要旨でございますが、明け渡しの収入基準等については適切に定めるとともに、適時改正すること、収入超過者等に対し他の住宅をあっせんするとともに、強制的な明け渡しは極力避けることとなっております。

◯曽根委員 公営住宅法の第二十一条そのものも、明け渡し義務が発生すると同時に、住宅をつくっている事業者である東京都に対して、自治体に対しては、明け渡しが容易になるように公的な住宅のあっせんなど、または融資など特別な配慮をすることというふうに法律上も書かれています。
ですから、当然国会での何らかの議論があったんだろうというふうに思ってお聞きしたわけですが、参議院でも衆議院でも附帯決議はついているわけです。
 この中にありますように、収入超過者または明け渡し請求を受けた者に対する他の住宅等のあっせんについては、それらの者の希望が入れられるよう、その受け入れ体制を十分に整えるとともに、強制的な明け渡しは極力避けること、これは参議院の附帯決議、それから衆議院でも、間もなく定年等で収入が下がることが予想される者については、明け渡しを猶予するように配慮することというふうな決議もされているわけです。
 それを受けて、東京都は住宅対策審議会に、この高額所得者の明け渡し問題についての諮問をしていると思いますが、どういう諮問が行われ、どういう答申が出されて検討されましたか。

◯竹内管理部長 昭和四十七年五月の東京都住宅対策審議会に、高額所得者に対する明け渡し請求について諮問をしてございます。十分な議論の後、昭和四十九年七月に、同審議会の答申をいただいてございます。
 答申の中身でございますが、高額所得者に対する明け渡し請求についての主な内容は、東京の住宅事情では、明け渡し後の住宅の確保が極めて困難であるので、住宅の明け渡しに当たっては、生活不安を生じないよう配慮すること、高額所得者に対する明け渡し請求に当たっては、生活実態に応じた弾力的運用を行うため、収入の実施基準等を含め、個別的運用について公正な機関を設け、その機関に諮問するよう措置していく必要がある、などでございます。

◯曽根委員 こうした答申が出されて、全国の中でもとりわけ東京では、大都市問題の一つとして住宅難の問題があり、明け渡しを請求して義務づけたとしても、その後に入る住宅が、公的にも民間でもきちんと用意されていない。家賃が高過ぎるという問題があるために、特段の配慮をし、柔軟にやれというふうに答申されている。これに基づいて、当局はどのような措置をとりましたか。

◯竹内管理部長 この答申を踏まえまして、昭和四十九年第三回定例会に、東京都営住宅条例の一部を改正する条例案をお諮りしたわけでございますが、大都市における市民の生活の実態や高物価を配慮するとともに、高額所得者が都営住宅を明け渡しても、無理なく公団公社住宅に入居できる水準として、政令基準より五割増しの基準を都営住宅条例の附則に、当分の間として例外的に設けたというふうに、詳細についてはつまびらかではございませんが、このような形で設けられたと聞いております。

◯曽根委員 こういう事態を当時も予測して、やはり東京都では、独自に五割増しという明け渡しの基準の上乗せをしなければならないだろうという判断に立ったわけなんです。それで、私驚いたんですが、この当時は高額認定者、国の基準に従ったとしても、数百名しかいなかったんです。七百名ぐらいしかいなかった。それが東京都の独自基準を設定したことによって、百数十名まで減らされたといいますか、猶予がされた。
 ところが、国の基準ですから、その後続々とそれをオーバーする人が出てきて、当時一番多くなったのが、昭和五十七年から九年にかけて、毎年、国の基準でいう明け渡し義務となる対象者が一万人を超えた時期があります。
 この昭和五十七年から五十九年の三年間で、延べ何人ぐらいの方が、政令に基づく明け渡し基準を超えて、そのうち東京都の独自基準で猶予された人が何人で、東京都の基準も超えた人が何人ぐらいあったのか、この三年間についてお聞きします。

◯竹内管理部長 三年間合わせまして、政令基準による高額認定者の方は三万二千五百四十七人でございます。都の条例基準によります高額認定者の方は、六千六百二十五人となってございまして、その差が二万五千九百二十二人でございます。

◯曽根委員 このようにこの年は、先ほど資料でもいただいたわけですが、国の基準に対して、東京都は、月々の認定月額で約八万円の上乗せをしていたために、年間にしますと、これは百万円近い上乗せをしている。
 十年以上前ですから、この当時としては、かなり大きな上乗せをしていて、そのために三万二千五百四十七人、三年の延べですから、年平均一万人近くの高額所得が発生したところを、東京都の独自基準によって、平均二千人ちょっとに抑えることができた。現在も、ほぼ同じような状況になっているんですが、独自基準がないために、現在、一万人を超える高額所得が、そのまま国の基準で発生してしまっている。これに対して東京都は、そのまま、基本的には一律に明け渡しを請求しているわけです。
 私は都営住宅のあり方、特に収入がどんどん上がっていく方に対する適正な管理のあり方として、当時東京都がとっていた方法、これはやはり居住者の立場に立って考えて、行われていたんじゃないかと思います。ところが、今は全くしゃくし定規、法律をそのままはめ込むだけというやり方になってしまっている、非常に残念なことだと思うんです。
 現在、明け渡しの際に、事業者に課せられている公的な住宅の供給、あっせん、それから融資、こういうものについて、どの程度の実績があるのか。昨年について、明け渡した千名余の方に対して、新規にあっせんされた公団公社の住宅の戸数、また、そのために割り当てとして、どれぐらいの受け皿としての公団公社住宅が用意されていたのか、その戸数を教えてください。

◯竹内管理部長 平成五年度の高額所得者への公社公団賃貸住宅のあっせん実績でございますが、新築住宅で五十二戸、空き家住宅で百五十四戸で、合わせまして二百六戸でございます。また、公社公団賃貸住宅の割り当て戸数でございますが、新規住宅では三百四十一戸、空き家住宅で二百七十三戸、合わせまして六百十四戸でございます。

◯曽根委員 このように、一万人をはるかに超える認定者が出てしまっているのに対して、公共住宅のあっせんに出せる戸数というのは六百戸ちょっとしかないんですよ。そのうち、実際に本人の希望が入れられて、それを利用した方が、その三分の一の二百六戸しかない、あとは自力転出で千人近い方が出ていっているわけです。
 私は都営住宅のあり方、かつて東京都がやっていた制度を今適用すれば、五割増しとはいわないまでも、その辺に近い上乗せ基準を設ければ、今高額認定とされている方の大多数は助かるだろう、猶予される。また、それが同時に、東京都が用意できる公的な住宅の数にも匹敵するところまで認定者を事実上下げることにもなるだろうし、東京都の扱い方も、これに対する扱い方だって是正することができるという道は私はあると思うんです。
 そういう点、非常に残念なんですが、実際に高額認定になっている人たちの世帯主の年齢というのは、働き盛りで、定年間近いという人が多いと私は思うんです。
 これは、高額認定者全部について統計をとるのは難しいんで、私の地元の北区の都営住宅にお住まいの方で、高額認定の収入額に達している方、二年連続になると認定になりますが、一年目の方も含めて、この収入額に達している方の世帯主の年齢構成、五十歳から五十九歳の、この十年間の年齢の中に、どれぐらいの割合の方が入っていますか、高額の認定の金額の中に。

◯竹内管理部長 北区所在の都営住宅の場合でございますが、高額所得階層全体が二千四百四十五人でございまして、うち五十歳から五十九歳の方は千二百六人で、比率は四九・三%であります。

◯曽根委員 ちょうど半分、五十歳から五十九歳、勤労者でいえば、もう定年が目の前にぶら下がっているわけです。
 そういう段階に来て、大体高額という基準にぶつかるんです。それで高額、明け渡し義務ですから、もう出なきゃならない。しかし、目の前に定年がある。収入が激減することは、もうわかり切っているわけです。定年になって、年金暮らしになって、それで再就職も不況で難しい。
 そういうときに、子供に仕送りしてもらったりしないで、自立して暮らしていける住宅制度、家賃制度というのは都営住宅しかないわけです。ほかの公団住宅も含めて、年金だけで暮らし続けられる住宅はないわけです。
 しかし、明け渡し義務はかかってくるというところで苦境に立っているわけです。それが四九・二%、北区――大体都内も同じだと思いますが、半分こういう年齢の中にいるわけです。  皆さんも勤めていらっしゃるからわかると思いますが、老後の不安を何とか解消するために蓄えてきたものを、今回高額認定で、もし高い家賃をかけられたら、ここを崩すしかないといっているんです。ほかに出しようがないんです、生活費の中から。
 それで結局は、老後のための蓄えを取り崩しながら、高額所得の、この青山でいえば十七万円という家賃を払わなきゃならない。これがこの人たちの実態なんです。
 こういうのに対して、少しでも人間的な気持ちを持った行政マンならば、この高額所得で、出るに出られない人に対して追い打ちをかけるようなことは、私はできない。
 しかし、東京都はこれをやっていこうというんです。適正管理として、どちらが本当に行政としてとるべき道なのか。居住者の立場、都民全体の立場を考えたとしても、私はやはりやるべき道があるはずだと、かつての東京都はそれをやっていたじゃないかというふうに声を大にしていいたい。  東京都は、この明け渡し基準の都の独自基準、これを復活することはどうしてできないんですか。

◯竹内管理部長 高齢者の定年退職につきましては、退職後再就職する場合や再雇用する場合など、個々の事情によりまして対応はさまざまでございます。
 したがいまして、これらの方々の明け渡し事業につきましては、個別の相談が大切であると考えてございます。この相談に応じる中で、個々の世帯の事情等をきめ細かく把握しながら対応しているところでございますが、都が政令基準を超えまして、再び独自の基準を設けることについては、高額所得者制度の定着、社会的公平、国の強い指導等から極めて困難でございます。

◯曽根委員 東京都は住宅の問題に関しても、本当に冷たくなったと思います。百五十億円も増収して、こういう方々から搾り取って増収をして、そして居住者の方々を実際上、こうやって痛めつけるような政策を私はもう撤回すべきだというふうに思います。
 しかも、今回、明け渡し基準も入居基準も建設省、国の基準が変わったわけではありません。この基準が変わらないけれども、東京都の家賃制度の変更によって、今回改定が行われるわけですね。前回の建設省の入居基準、明け渡し基準の改定はいつあったのか、そして次はいつごろ行われる見通しなのか、わかりますか。

◯吉田参事 前回の入居収入基準等の変更は平成三年の四月でございましたが、次にいつあるかということは定かでございません。

◯曽根委員 大体三年ごとにというのがめどになっているんですが、三年ごとだったら、もう過ぎている。前回の建設省の基準変更は、東京都の家賃改定の直後にありましたから、その基準変更に基づく東京都の基準を全部変えると、また家賃値上げになるというふうになったわけですが、実際には家賃値上げが行われませんでした。
 前回の建設省の基準変更のとき、家賃についてはどのような適用の仕方をしましたか。

◯吉田参事 平成三年四月の入居収入基準等の変更に際しましては、その新しい収入基準に基づく新しい基準家賃、これは平成三年四月以降公募の新築住宅の家賃に、現在まで適用されてきているものでございます。

◯曽根委員 つまり、平成三年四月以降新築されて入居する住宅については、当時新しい基準の五万七千円の基準家賃を適用し、それ以前に建てられたものについては、それまでの五万九百円の基準家賃をそのまま適用させる、二重構造で来たわけですね。
 ですから、今大半の住宅は、建設省の基準が決まる前の基準のままできているわけですね、その後建ったのは数が少ないですから。こういう二重構造の家賃制度というのは、もし今度改定が行われてから、建設省の基準が変わった場合、これは方法としてとることができるんですか。

◯吉田参事 新しい制度、特に応能的負担という考え方からすれば、入居収入基準が変更された場合、いわゆる基準家賃というものは、新しい収入区分に対応して設定されますが、今回は従来の制度と異なりまして、それぞれの収入区分に応じて、現在、新しい制度では、いわゆる基準家賃と対応する基準負担額が設定されてございます。
 これらにつきましても含めて、すべての住宅について基準家賃及び基準負担額を設定いたしますが、ただ基準家賃の方は新しい金額に変更されますが、基準負担額自体は、それぞれの収入区分に対応した金額でございますので、これ自体は変更されないで続くというような形になろうかと考えてございます。

◯曽根委員 そうしますと、収入基準が、今度建設省の基準改定で変わった場合、いずれにしても基準家賃のところ、団地の個別家賃もそうですが、それに基づいて基準家賃の変更に伴う応益調整全部かけて、全部変更になるわけですね。ですから、収入基準が上がった分だけ、基準のところは全部上がっていくというわけで、今までのような二重構造はできないということですよね。
 そういう点でも、これはいつになるかわかりませんが、建設省の基準改定がもし近々行われるならば、再び家賃改定がすぐ来るというふうに考えなければならない。こういう点でも、いままでの制度と大きく違うという点を指摘しておきたい。
 今回は傍聴者の方も大勢見えておられますが、私は、結局居住者の立場に立って、最初から最後まで全く考えていないというふうにいわざるを得ない。特に一番問題なのは、居住者に対して堂々と、家賃改定はこうなりますということをきちんとわかるように説明しないまま、もう近々議決をしようとしている。
 決めたものを押しつけるというやり方、こういうやり方は、一般の民間の賃貸住宅じゃ到底考えられないと思うんです、借地借家法でもって守られておりますので。公営住宅だからといって、しかし私は、こんな理不尽が通っていいはずはないと思うんです。
 そういう点でどうですか、借地借家法との関係で、民間賃貸住宅ではこういうやり方は私はあり得ないと思うんですが、東京都の今度の改定のこの決め方について。

◯吉田参事 住宅の家賃につきましては、確かにお話のように、民間の場合には、民法及び借地借家法に基づきまして、家主さんからの変更通知、あるいはまた当事者間の協議が定められているところでございます。
 しかしながら、公営住宅につきましては、公営住宅法及び事業主体の条例に、その家賃の変更要件あるいはまた手続が定められている場合には、それらの手続によるというのが判例等でも明らかにされているところでございます。

◯曽根委員 私は東京都が家主であり、都営住宅の居住者はたな子であるという関係というのは、公営住宅法の位置づけは別にして、そういう都営住宅居住者であり、都民である方々と東京都との関係は、やはり信頼関係をきちんとつくっていかなければ、公営住宅を事業者としてやっていくことは私はできないと思います。
 そういう点で、今回の改定のやり方、もちろん中身も大問題ですが、やはりたな子の心を知らないで、冷たくやっていく大家の姿が私は見えてくると思うんです。そういう点で、東京都がもうこれ以上、こうした都民いじめのやり方を続けることに対して、私は本当に怒りと憤激を禁じ得ません。今回の家賃改定について撤回することを強く求めて、質問を終わります。

◯吉田参事 基準家賃につきましては、ちょうど今お話しの、いわゆる法定限度額、あるいはまた使用料限度額、いわゆるコストに基づいたものと全く離れまして、こちらの方は、今度は入居者の収入に着目して設定しているものでございます。すなわち公営住宅でございますので、それぞれ入居収入基準がございます。
 その収入基準の幅、これまでの制度ではその幅の中間値、いわゆる平均の収入の一六%、一種住宅、二種住宅は一五%の家賃負担ということで基準家賃を設定してございますが、これは同時に、標準的な新築の住宅の一種、二種それぞれの家賃として適用され、古いものはそれから調整される、そのような形で設定してございます。

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