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震災レポーとNO.22 <2011・5・1>
原発と震災をめぐり、ふたつの無神経な発言が・・

●最近のしんぶん「赤旗」日刊紙の紙面に、震災と原発問題をめぐって、いかにも日本の政治家らしい二つの無神経な発言がとり上げられていました。

(1)広島・長崎の原爆と異なるから「安心」という乱暴な比較論

●一つ目は、4月25日の参議院予算委員会での、民主党・増子輝彦議員の質問です。
 菅首相に、「もし福島原発が最悪のケースの場合、広島や長崎の原爆と同じようなことになるのだろうか、その辺の比較はどういうふうに考えたらいいんですか」「総理、一言だけ、広島や長崎の原爆と今度の原発の事故は違うと、国民の皆さん、安心してくださいと国民の皆さんに一言言っていただけませんか」という、乱暴な比較論を展開しました。
 首相が「広島、長崎のように巨大な熱が出て、一瞬にして多くの人が亡くなるといったようなことにはもちろんなっておりません」と答えると、これを「安心」の根拠にするというひどい質問です。
(ここからクリックするとその部分の質問の抜粋が読めます)

●この発言には二重の無神経と無理解があります。
 「核の平和利用だ」「安全だ」という名のもとにつくられた原子力を、核兵器という大量殺戮のためだけに製造された兵器と単純に比較して「安心」とか「安全」とかを論ずれば、どんなに危険な原発でも相対的には「安全」もしくは「安心」に見せることができます。
 しかし原爆と比べても福島原発の危険性はいささかも軽減しないし、被害地域の住民に対しても見せかけの「安心」をふりまくだけにしかなりません。

●しかも放射能には直接の熱線や放射線の被害とともに、残留放射能という時間をかけて人の健康といのちをおびやかす被害があり、前者は圧倒的に原爆の脅威が大きいとしても、後者は福島原発の方がたちの悪いセシウム等の影響が残る場合だってありうるのです。

●私がさらに驚いたのは、マスコミのこの質問のとりあげかたです。
 報道のほとんどが、増子議員が菅内閣の対応の鈍さを批判し、「小沢氏の力も借りよ」と求めた「与党内の小沢派による管内閣への造反」としての視点でしか報じていません。

●「こんな時に与野党間だけでなく与党内部も権力争いに躍起」という絶好の絵がらとして描いたのでしょうが、あまりに単純な図式化の繰り返しは真実を見誤らせるもとだと感じました。
 産経新聞は軌を一にするように「今首相にふさわしい政治家」アンケートを行い、小沢氏がトップになったと報じていますが、選択の幅がないときにアンケートして、わずか9%程度で小沢トップを強調して、公明党関係者が「悪名は無名に勝るということか…」などと嘆いていると報じるだけです。

●私はこの増子議員が、原発非難論調一色の3月のテレビ出演で、現地で命がけで放射能とたたかっている人がいることを強調して、懸命に東電非難をかわす発言をしたこと、25日の質問でも原爆との比較による「安心」発言、さらに参考人として出席した東電の社長に、すぐに辞任せず対策に全力をあげると言わせて、現時点で最大限の”花を持たせる”演出など、あけすけに東電擁護の役割を演じていることを、もっときちんと報じるのがマスコミの責任だと思います。

(2)阪神の被災者の今日なお続く苦しみに無関心すぎる発言

 もう一つの無神経な発言は、すでに「復興税」発言でその乱暴ぶりが知られている復興構想会議議長の五百旗頭(いおきべ)氏の、同じ4月14日の会議での発言です。
東北の震災の被害に比べると、阪神・淡路大震災がかわいくみえるという、これも比べてはならない同士の安易過ぎる比較論です。

●この発言については、しんぶん赤旗報道のとおり、阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議による、五百旗頭氏への抗議文と、菅首相への同氏の解任を求める要請文とで、語り尽くされていますので、以下に抗議文を紹介します。
(首相への要請文は、ここからクリック)

●もちろん五百旗頭氏の発言は、「復興税」も「かわいい」発言も復興構想会議の他のメンバーには何の相談もなくいきなり行われたということです。石原知事の天罰発言と類似性を感じてしまうのは、私だけではないと思います。
 こんな軽はずみな人物が担ぎ出されてくるのは、彼が「防衛大学学長」であることと無関係ではないでしょう。
 災害復興に全国民が力を出し合うことが大事なのは当然ですが、この機会にアメリカ軍の救援をことさら宣伝し、自衛隊を10万人規模で復興に動員しながら、あわよくば軍隊の力なしにはこれからの日本は成り立たない雰囲気をつくり上げるようなことの無いよう注意していかねばならないと思います。

●阪神大震災の救援復興県民会議の抗議文は、以下のとおりです。

  防衛大学校長
  五百旗頭真様

         阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議
         代表委員 合志至誠(兵庫県保険医協会名誉理事長)
         代表委員 菊本義治(兵庫県立大学名誉教授)
         代表委員 前田修(神戸合同法律事務所長)

            抗 議 文

 4月15日(金)及び16日(土)の新聞などによれば、あなたは4月14日(木)に開催された「復興構想会議」初会合において、東日本大震災について「16年前の(阪神・淡路大震災の)被災がかわいく思えるほどの、すぎまじい震災だ」と発言されたと報道されていました。

 この報道を眼にし、私たち、阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議(復興兵庫県民会議)は、心の底から大きな怒りを覚え、あなたの非常識さ、無神経さ、感性の鈍さ、理性の欠落などに驚くばかりです。
 1995年1月17日に発生血した阪神・淡路大震災は、死者6,434人、負傷者43,792人、家屋の全半壊(全半焼)約47万世帯、被災総額約10兆円(初期概算)にも及ぶ、戦後50年の最大の惨事となりました。

 一瞬にして家も仕事も店なども破壊され、兄弟、親子などの肉親、友人、知人など多くを失い、コミュニティは破壊され、多く住民は茫然自失の状況に追い込まれ,また、長期の避難所生活、仮設住宅暮らしは多くの「孤独死」を生みました。

 直接給付の公的支援が一切ない中で、暮らし、営業などの再建がどれだけ困難であったか、あなたは当時、被災地の神戸大学教授として、直接、「眼」にし、「耳」にし、「肌」で感じられなかったのでしょうか。

 直接給付の公的支援が拒否され、各種融資に頼らざるを得なかった被災者は、16年余が経過した今日でも、借入金返済の行き詰まりは後を絶ちません。
 旧、住宅金融公庫貸出の住宅ローン返済行き詰まりによる代位弁済は2,465件、事業用融資も5千数百件が代位弁済となり、折角、再建した家や店を手放さざるを得ず、災害援護資金56422件の貸出も、返済期限(10年)が過ぎても、借受人の24.6%、13,894件が未返済となっています。

 復興借り上げ住宅入居者は20年の契約期限を盾に、一層高齢化が進んだ中で4度目のコミュニティ破壊の転居を求められています。

 こうした状況が「阪神の被災がかわいく思える」事態と言えるものでしょうか。災害の規模を比較するなら、もっと別の表現するのが「当たり前」のことです。
 今回のあなたの発言は、「自立、自助」を強要される中で16年余、必死の努力を重ねてきた阪神・淡路大震災被災者の努力を踏みにじるげかりか、被災者を冒涜するものです。

 加えて、初回の「復興構想会議」で復興構想の論議が始まったばかりで「復興税」の提起などは到底、容認できるものではありません。

 私たちはあなたに、今回の発言について強く抗議し、阪神・淡路大震災被災者に心底からの謝罪と「復興構想会議」委員の辞退を強く求めるものです。

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